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税務会計について-財務会計や管理会計との違いも解説
企業は、事業活動から生じる収入と支出をまとめて利益を算出し、利益に対して税金を国に納める義務があります。これを遂行するためには、税務会計をおこなわなければなりません。
本記事では、税務会計とはどのようなものかについて解説した上で、税務会計と管理会計・財務会計の違いや、税務会計をおこなう際の注意点についてもご説明します。
税務会計についてより詳しく知りたい方も、ぜひ最後までお読みください。
税務会計・管理会計・財務会計の違いとは
税金を計算するために必要な税務会計
税務会計とは、企業の課税額を算出して申告するための業務です。
収益や費用に基づき一定期間のお金の流れを計算して決算をおこなった後、決算書や納税申告書を作成して、国に税金を納めます。
税金には、所得税や法人税がありますが、税務会計では法人税に関係する申告書の作成がメインです。
税額を決定するために必要なのは課税所得です。
税務会計では課税の対象になる収益は「益金」、費用は「損金」と言われます。
課税所得は、課税対象となる「益金」から「損金」を差し引いて算出されます。
収益となる「益金」から、費用に該当する「損金」を引いた額が、課税所得です。
税務会計は、企業が国に収めるべき税金を算出した「法人税の申告書」の作成が目的です。
法人税の申告書は、事業年度ごとに法律で定められた様式で提出する必要があるでしょう。
経営判断に役立つ管理会計
管理会計とは、企業が自社の状況を社内に伝えるためにおこなう会計です。
財務会計と違って必ずおこなう必要がないため、企業によっては実施されない場合もあります。
管理会計は多くの場合、経営者や上層部が会社の内容を確認し、今後の経営の判断材料にするために利用されます。
つまり、管理会計は外部への開示や報告を目的とした会計ではないため、作成した書類を税務署に提出する必要はありません。
株主や金融機関への外部に開示するための財務会計
一方、会社の経営状態を株主や金融機関などの外部に開示するための書類を作成するのが、財務会計です。
法人になると決算書類の公表が義務づけられるため、事業年度ごとに会社の利益や資産をまとめて外部に明らかにする必要があります。
経営状態を外部に開示することで、会社を支援する人たちが現状を把握できます。
課税所得は、財務会計をもとに算出するので、税務会計には欠かせないデータと言えるでしょう。
税務会計は、税務署に提出する確定申告書を作成することが目的なので、企業の利益ではなく課税所得の計算が必要です。
業務形態による税務会計の違い~個人事業主と税務会計、法人と税務会計~
個人事業主か法人かといった事業の種類によって、税務会計の計算方法も違ってきます。
個人事業主は多くの場合税務会計のみをおこない、法人の場合は決済について開示義務があるため、税務会計と財務会計を両方おこなうのが大きな違いです。
個人事業主は、事業所得などの所得に対して税金がかかります。
売上や経費などの収支を記帳する必要がありますが、財務諸表の作成・公表の義務はありません。
また、個人事業主は、決算書を作成する必要がないため、一般的に財務会計をおこないません。
しかし、所得税を算出して納付する義務があるため、税務会計は会計処理に包括されます。
このように、個人事業主は税務会計のみをおこない、比較的簡単に計算できる確定申告で税額を申告します。
一方、法人の場合では個人事業主の所得税に代わり、その事業年度の利益に対して法人税を納める必要があるほか、財務諸表の開示が義務付けられています。
利害関係者に公開される財務諸表を作成するためには、財務会計をおこなう必要がありますが、財務会計の計算に使う利益と法人税の計算に必要な課税所得金額は、計算方法やもととなるデータも異なります。
そのため、法人税を計算するための税務会計は、財務会計でおこない、法人税の別表にて税務会計へと加算・減算する必要があります。
税務会計の3つの注意点
税務会計をおこなう際には、以下のような注意すべき点が3つあります。
- 税務会計だけで経営判断をしない
- 税法改正に注意する
- 財務会計と数値が異なる場合がある
税務会計は、税務署に納める税金を計算することが目的であるため、経営状況を判断する材料としては信頼性に欠けます。
したがって、税務会計だけで経営判断しないようにしましょう。
また、税制の改正は毎年実施されるため、最新の税法や税制に沿って計算するよう注意が必要です。
税法や税制の変化に対応できるように、確実な情報を集めましょう。
さらに、算出した税額が、財務会計とでは異なる結果が出る場合があります。
その理由は、財務会計で算出した支出でも、税務上では計上できるとは限らないからです。
以上の3つの注意点に気をつけ、税務会計をおこなうようにしましょう。
まとめ
税務会計とは、企業の収支をもとに、申告に必要な税額を計算するための会計です。税理士事務所で使用する会計は税務会計が主となります。
財務会計は、会社の経営状態を株主や金融機関などの外部に開示するための書類を作成する会計で、管理会計とは、企業が自社の状況を社内に伝えるためにおこなう会計です。
山本聡一郎税理士事務所では、2020年7月開業時から積極的にクラウド会計の大手の会計freeeをメインの会計ソフトを利用しています。
管理会計を自社に取り入れて経営判断の指標にしたいと思われる方もいるかもしれません。
管理会計やクラウド会計を導入してみたいけれど、自社で対応できるか不安とお悩みであれば、無料相談も実施しておりますので、お気軽にお問合せください。
主婦が夫の扶養内で起業する方法とメリット・デメリット
少し前までは「主婦が働く」といえば、短時間勤務やパートタイマーのどちらかを選ぶという形が主流でした。
けれどもここ数年は「主婦起業」がブームとなり、家庭や育児の負担がある一方で、「自分の才能やスキルを活かして働きたい」と考える主婦が増えてきました。
その背景には、これらの3つが要因であるとされています。
- 「自分らしさ」という価値観を大切にする人が増えたこと
- 晩婚化・核家族化が進み、家事・育児・介護の「ワンオペ」が増えたこと
- インターネットの普及も後押しして、起業のハードルが下がったこと
そのため、「自分らしい、自由な働き方」を求めて、業務委託やフリーランス・起業という道を選ぶ方が増えてきたのではないでしょうか。
主婦の起業は、通常の起業とは少し違います。
スタートアップの社長がよくやる「睡眠時間以外を仕事の時間に費やすような長時間労働」ではなく、家事・育児、介護の両立を前提とした働き方が求められている故に「夫の扶養内で起業する」という考え方があるのです。
そこで今回は、夫の扶養内で起業する方法と、扶養内起業のメリット・デメリットをそれぞれ3つずつご紹介します。
今回の内容は、サラリーマンの妻に焦点を当てています。
自営業者の妻の場合、また少し条件が異なってきますので、ご注意ください。
主婦が夫の扶養内で起業する方法
収入を130万円以内(さらに夫の収入の1/2以内)に抑える
起業しても夫の扶養に入るためには、収入が130万円以内かつ、夫の収入の半分以下であることが必要です。
夫の収入にもよりますが、月に10万円程度に抑えられれば問題ないでしょう。
ここでいう年収とは、個人事業主の場合は「売上金額から必要経費を差し引いた所得金額」を指します。
給与所得者の手取りとは少し違いますので、ご注意ください。
健康保険組合に扶養家族だと認められる
起業しても夫の扶養に入るためには、夫の加入している健康保険組合に扶養家族として認められなければいけません。多くの場合は、条件を満たしていれば扶養に入ることができますが、一部の健康保険組合では認められないケースもあります。
特に起業の場合は、青色申告で自宅の家賃の一部や携帯電話料金などの家事按分が認められているため、同じ年収額のパート主婦と同じ条件で見てもらえない場合があるからです。
そのため、起業する前に夫の会社の人事担当者や健康保険組合に確認しておくことをお勧めします。
個人事業主のままでいる
扶養内で起業する場合は、個人事業主のままでいることが望ましいです。
法人化させた場合、役員に該当するため社会保険は強制加入になります。収入が130万円以内でも扶養を外れてしまいます。
法人の場合「役員報酬を0円にすれば社会保険に加入しなくて良い」とは言われてますが、それでは何のために働いているのか分からなくなってしまいますよね。
扶養内起業を希望される間は、個人事業主を継続していきましょう。
主婦が夫の扶養内で起業するメリット
年金と健康保険料を払わなくていい
扶養内で働く場合、年金や健康保険料を自分で負担する必要がありません。これにより、経済的負担を軽減することができます。
夫の会社から扶養手当(家族手当)がもらえる
扶養内で働くと、夫の会社から扶養手当を受け取ることができます。これにより、家計の収入が増えることが期待できます。
この扶養手当(家族手当)は企業により条件や金額が大きく異なります。
収入制限を設けずに支給する企業もあれば、扶養手当自体がない企業もあります。
また、多くの企業では扶養手当を見直す動きが増えており、扶養手当を廃止した企業も数多く存在します。
日本全体が経済的に厳しい状況に置かれていることもあり、大手企業さえも生き残りをかけて戦うこの令和時代では、社員に対して昭和・平成時代のような待遇を維持することが難しくなってきているのです。
また、共働き世帯が増えてきたこともあり、扶養を外れて働いている主婦も多い中で、扶養に入っているサラリーマンの妻(第3号被保険者)だけが優遇されることに対して「不公平である」という主張が増えてきたことも背景としてあります。
このような現状を十分理解した上で、扶養内起業を選択する必要があります。
配偶者の扶養控除が受けられる
扶養内起業で収入を抑えると、配偶者の扶養控除を受けることができます。これにより、節税効果が期待できます。
扶養控除が外れる年収は150万円以上ですが、夫の扶養に入るためには収入を130万円以内に抑える必要があるため、扶養に入る条件を満たしていれば配偶者扶養控除は問題なく受けることができます。
主婦が配偶者扶養控除を活用することは想像以上にメリットがあります。
認可保育園の保育料やこども手当(児童手当)支給の有無や、福祉サービスの利用料なども前年の所得額で決定します。
税金にはさまざまな控除がありますが、中でも配偶者控除の金額は大きいのでその辺りもしっかり加味した上で「扶養内か・扶養を外れるか」を決めていきましょう。
主婦が夫の扶養内で起業するデメリット
事業を拡大することができない
扶養内の起業では収入を抑えなくてはいけないため、事業を拡大にどうしてもブレーキがかかります。そのため、せっかく事業を大きくするチャンスが来ても、「扶養内」という制限によりそのチャンスを逃してしまうことがあります。
事業を長く続けていると、多くの場合は扶養を外れる時期が来ます。
なぜなら、事業を誠実に続けていると、実績が積み上がり、信用が高まっていくからです。
それにより扶養を超える金額を「稼げるようになってしまう」のです。
(それはそれで非常に良いことであります。)
けれども、小規模事業が一気に成長することは稀です。
そのため、もしも扶養を外れた際には保険料や年金支払いの負担割合が高い時期を耐え忍ぶ期間がどうしても必要になります。
しかし、国民年金保険料は収入額によって変動しないため、収入が多くなるにつれて保険料の負担割合は徐々に小さくなります。
(国民健康保険料は収入額によって変動しますが、上限があります。)
そのラインを突破できれば、扶養を外れることの負担を気にする必要がなくなります。
事業を長く続けていくと、
・扶養内で働き続けることを選択して、事業拡大の可能性を断つ
・扶養を外れて、保険料・年金の支払い割合が大きい期間を耐えて、事業を拡大していく
このどちらかを選ぶことになります。
どちらを選ぶかは、自由です。
どちらかが正解ではありません。
ただ、扶養内起業は「事業拡大が難しい」というデメリットがあるということをお伝えしておきます。
収入を上げられないので、モチベーションの維持が難しい
前項に関連しますが、事業を拡大できないということは、収入を上げることができません。
扶養内起業では収入を月10万円ほどに抑えなくてはいけません。
けれども起業は例え一人だけの小規模であっても事業で必要な一通りの業務は発生します。起業家は想像以上に忙しいものです。
始めたばかりの頃はあまり知識もないので、経理作業などバックオフィスの業務に時間がかかります。
営業や集客活動も慣れていない場合は、結果に結びつくまでに試行錯誤を繰り返す必要があります。
また「起業」は自分で道を切り拓いていかなくてはいけないため、「どうすればうまくいくか」「あの件はどうだったか」など、考えることが膨大にあります。
「気が付いたら一日中仕事のことを考えていた」というのはよくある話です。
このようなことをしていると、毎日が忙しく「時給換算したらパートの時給よりもずっと低かった!」ということがよくあります。
事業を拡大できれば、その時給が大幅に上がることが期待できますが、扶養内と決めている場合は時給を大幅に上げることが難しくなります。
その時にモチベーションの維持ができるかどうかが鍵となります。
「なんだか忙しいばかり。」
「結局、毎日長時間労働になっているのに、収入は10万円以上は上げれない。」
「それだったらパートしている方がお金になったし楽だった。」
起業して長時間労働が続くと、どうしてもこのようにモチベーションが低下することがあります。
扶養内で働く場合は、その点に注意が必要です。
個人の信用がない・事業として認めてもらえない
扶養内で起業を行うと、周囲から「本気で事業をしていない」「ただの趣味」というレッテルを貼られることがあります。これは、自分の努力や才能が正当に評価されない原因となり、自身のサービスについて高めの価格設定ができない、法人から相手にしてもらえないなどのデメリットがあります。
また、扶養内での起業では、個人の信用力や資産が資金調達の際に制約となることがあります。つまり銀行融資や投資家からの資金調達が非常に難しくなるのです。
扶養内起業をされる方は「事業での融資は考えていない」という方も多いかと思いますが、個人で融資を受けることがこの先「全くない」とは言えない以上、事業でも個人でも必要な時に資金調達ができる信用力はあるに越したことはありません。
さらに、このデメリットは外部だけでなく、家族間でも問題を発生させることがあります。
扶養内起業を「趣味」だと言われ「仕事」だと認められないことで、家庭内での家事や育児の分担について正当に自分の権利を主張できなくなることがあります。
特に日本は「家事・育児・介護は女性の仕事」という意識が諸外国よりも強く、「仕事を理由にそれらの分担を求めるなら、それなりの金額を稼がないと受け入れてもらえない」ということが実際に家庭内でよく起こっています。
夫の扶養内で起業することは、経済的な負担を軽減するメリットがありますが、事業の成長や周囲からの評価についてはデメリットも存在します。
自分の目標やライフスタイルに合わせて、扶養内での起業が適切かどうか慎重に検討することが重要です。
最後に 扶養内起業でも必ず開業届を出し、確定申告を行いましょう。
主婦起業の場合、長時間を費やせない分どうしても事業の成長速度は緩やかになります。
けれども「月の売上が数万円しかない」というような小規模であっても、起業したらすぐに開業届を出し、必ず確定申告をするようにしましょう。
よく「ある程度売上られるようになってから開業届を出した方が良い」という情報が出回っていますが、これは税理士としてはおすすめしていません。
事業家には会社員やパートタイマーでは受けられない恩恵が数多くあります。それらは開業届を提出して正式に事業家と認められることで活用することができるのです。せっかく起業をして事業家となったのです。恩恵は十分に活用していただきたいと思います。
実際、開業届を出すメリットは数多くあります。ぜひこちらで過去に配信した記事をご覧ください。
「税務署に届出していますか?個人事業主が開業届をすぐに出す5つのメリット」
起業全般や開業届の提出・確定申告について不安がある場合は、ぜひ税理士にご相談ください。
山本聡一郎税理士事務所では、子どもが小さく外出できないという主婦で起業された方向けにzoomによるオンラインでの打合せや無料相談も可能です。
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まだ間に合う!個人事業主がすべきインボイス対策とは
2023年10月1日からインボイス制度がいよいよ始まります。
この制度により、消費税の仕入税額控除をするためには、インボイスの発行を受けなくてはならなくなります。
個人事業主の中には売上が少なく、免税業者を選択している方も多いのではないでしょうか。
しかし、免税業者にもデメリットはもちろんあります。どのような影響があり、どのような対応が必要か確認しておきましょう。
インボイス制度がいよいよ始まる
インボイス制度が始まると、仕入れを行った買い手は、売り手からインボイスの発行を受けない限り、これまでのような消費税法上の仕入税額控除ができなくなります。
仕入税額控除ができないと、売り手が納税するはずの消費税まで納税しなくてはならなくなり、その分利益が減少してしまいます。
一方、売り手がインボイスを発行するには、課税事業者として適格請求書発行事業者の登録をしなくてはなりません。
そのため、現在、免税事業者を選択して消費税を納税していない個人事業主が、インボイスを発行したい場合には、課税事業者になって、自らの仕入れ分について消費税を納税するとともに、適格請求書発行事業者の登録を行うことが必要です。
現在、課税事業者として消費税の納税をしている個人事業主も、インボイス発行をするには適格請求書発行事業者になるための事前登録が必要です。
適格請求書発行事業者になるかの検討
インボイス制度が始まると、適格請求書発行事業者以外から仕入れると、買い手は消費税の納税額が増え、その分利益が減ります。
そのため、免税事業者や適格請求書発行事業者の登録を受けていない事業者からの仕入れを取りやめ、仕入先を変更されてしまうおそれがあります。
また、負担が増える消費税の分、値引きを求められるかもしれません。値引きであればまだしも、取引先を失うのはかなりの痛手です。
もっとも、買い手が一般消費者であれば、仕入税額控除ができるかは影響しません。
そのため、個人事業主が適格請求書発行事業者になるかの選択は、販売先や売上額、納税の手間などを踏まえて、よく検討する必要があります。
また、インボイスを発行するには適格請求書発行事業者の登録だけでなく、必要な項目を掲載したインボイスを発行するための仕組みづくりも必要です。
電子インボイスの発行に対応するためのシステムやソフトの導入などを行う場合、設備投資もかかるので、コスト負担も考えて検討しましょう。
適格請求書発行事業者になるには
インボイスを発行するには、納税地の税務署長に登録申請書を提出して審査を受け、登録を受けなくてはなりません。
登録申請書は、e-Taxでも提出でき、個人事業者ならスマートフォンでも手続きできます。
登録にあたっては、マイナンバーカードなどの電子証明書と利用者識別番号などが必要です。
登録が認められると、登録番号などが記載された登録通知書が送付されます。
インボイスには登録番号をはじめ、適用税率と消費税額などの必要事項を記載しなくてはなりません。
現在、課税事業者として区分記載請求書を発行している場合も、登録番号など追記事項が必要となります。
専用のフォーマットを用意することや電子発行できるシステムの導入などの検討も必要です。
個人事業主が買い手となる場合
個人事業主が仕入れを行い、仕入業者が納税している分の消費税額を控除し、自分が負担する分だけを納税するためには、仕入先からインボイスの発行を受けなくてはなりません。
そのうえで、インボイスの保存をし、仕入税額控除の申請を行う必要があります。
仕入先が免税事業者である場合や適格請求書発行事業者ではない場合には、仕入税額控除が受けられなくなるのです。
もっとも、ご自身も免税事業者で、売上が1,000万円に満たない事業を続けていくのであれば、納税は免税されるので、大きな影響はありません。
売上が1,000万円以上で、インボイス制度の開始に伴い、納税額が増えることが負担になる場合には、仕入先を適格請求書発行事業者に変更するなどの検討も必要です。
インボイス制度が始まる前にシステムづくりが必要
個人事業主の中には、免税事業者の選択をしている方が少なくありません。
インボイス制度が導入されると、免税事業者から仕入れた事業者は仕入税額控除ができなくなり、消費税を仕入額の分まで払わなくてはいけなくなります。
その分、利益が減るので、免税事業者からの仕入れをやめるおそれがあります。
事業者とスムーズに取引をしていくためには、課税事業者になり、適格請求書発行事業者になるための登録をすることも検討しましょう。
インボイスを発行するには事前の登録と、システムづくりが必要です。
個人事業主が買い手として仕入税額控除を受けたい場合は、取引相手からインボイスの発行を受け、保存することが求められます。
免税事業者などインボイスを発行できない事業者から仕入れた場合には、消費税分を仕入先分も含めて納税しなくてはならなくなります。
その分、利益が減るので取引先の見直しの検討も必要です。
インボイス制度が始まる前に税理士にご相談ください
正直、個人事業主がCMで行っているインボイス対応や電子帳簿保存法のシステムをを導入した場合、かなりな負担となります。
このタイミングだからこそ、経理・税務業務を税理士にアウトソーシングを検討してみてはいかがでしょうか?
山本聡一郎税理士事務所では、クラウド会計を用いて電子帳簿保存法やインボイス制度の導入に向けて、新たなシステムを導入しております。
正直、自社でインボイスを対応するには負担が大きすぎると多くの方からご相談を受けておりますので、お気軽にお問合せください。
税務署に届出していますか?個人事業主が開業届をすぐに出す5つのメリット
開業届を出す・出さないで悩まれている方へ
これから個人で事業や副業を始めようと考えられた方の中には「開業届をいつ出すか。」「そもそも開業届を出すべきか出さないべきか。」で悩まれている方も少なくないでしょう。
ここでお伝えしたいことは一つだけです。
開業届はすぐに出しましょう。
「本当は届けなくてはいけないことは分かっているけれど、メリット・デメリットがあるから迷っている。」
というお気持ちも分かります。
実際に、
・売上が少ないうちは開業届を出す必要はない
・開業届を出さなければ確定申告をしなくて良いので楽だ
・開業届を出したら夫の扶養を外れるので、出さない方が良い
という情報も多く、
開業届を出したくないと思われる方も多くいらっしゃることでしょう。
開業届はすぐに出しましょう
けれども税理士としては、
例え月の売上が2-3万円しかないとしても、この先本気で事業をやるのであれば開業届はすぐに出すことをお薦めします。
開業の届出をしないことでの罰則は特にありません。
しかし、決まりを守るべきというよりは、開業届をすぐに出す方が出さないよりもメリットが大きいため、すぐに届け出ることをお薦めしています。
今回は、開業届をすぐに出す5つのメリットをお伝えしていきます。
開業届をすぐに出す5つのメリット
- 開業届を出すことは一つのケジメであり、個人事業主である認識を持ち覚悟が決まる
- 補助金・助成金等が利用できるようになる
- 事業者向けのサービスが利用できる
- 開業届を出すことで、社会的に「事業者」と認められる
- 個人事業主になると青色申告控除が受けられる
・開業届を出すことは一つのケジメであり、個人事業主である認識を持ち覚悟が決まる
入学式・卒業式・入社式など、私たちは社会生活を営む間に数多くのセレモニーに参加してきました。
これらは「節目」ということで、気持ちを切り替える場としても必要とされています。
開業届を出すということで、同じような効果が期待できます。
税務署まで実際に足を運び、書類を記入します。
職員からは、「事業の代表者」として対応されますし、どんな事業をするのかなど、詳細を聞かれることでしょう。
開業届を出すことで個人事業主としての自覚が生まれ、自分自身の覚悟が決まるのです。
自分で事業を行いお金を稼ぐというのは、誰にとっても新しい挑戦です。
個人事業主の自覚を持って新しい気持ちで一歩を踏み出す為にも、開業届を出す機会を上手に活用していきましょう。
・ 補助金・助成金等が利用できるようになる
開業届を出せば、どんなに小規模であっても「事業」であることには変わりありません。
「事業」と認められれば、補助金・助成金が利用できたり、場合によっては融資が受けられるなど、資金繰りが有利になります。
「補助金・助成金なんて、自分のような小さなところは関係ない。」
そのように思われがちですが、規模は関係なく、事業計画書・必要書類を作成して採択されれば補助金の交付を受けることができます。
また、不定期に自治体が特別な補助金制度を打ち出すこともあります。
これらは主に中小企業や個人事業主を応援するためのものなので、開業届を出してさえいれば交付を受けることが可能です。
その際、条件として過去の確定申告書Bの提出を求められることがあります。開業したばかりの個人事業主は対象外となる場合もあります。
つまり、開業届は早めに出した方が資金繰りでも有利になるのです。
個人事業主向けの補助金でよく活用される「小規模事業者持続化補助金」
・事業者向けのサービスが利用できる
個人事業主には、会社員では利用できない様々なサービスがあります。
ここではお金に関する代表的なものを2つだけ紹介します。
個人事業主向けのクレジットカードと退職金積立制度です。
クレジットカードは個人向けよりも豊富なサービスが付随しているものが多く、利用しない手はありません。
ガソリン代が値引きされたり、ポイント還元率が高かったり、(カード会社によって違いはありますが)特典が多く、上手に活用すれば得することも多くあります。
また個人事業主の退職金積立ができる「小規模企業共済」というものがありますが、掛金が全額所得控除できるという最大のメリットがあります。
「将来の為に」と銀行に貯金したものは課税されますが、この共済を利用した積立の全額が非課税になるのは「個人事業主」にしか受けられない恩恵の一つです。
他にも個人事業主だからこそ利用できるサービスは数多くあり、これらを知れば知るほど開業届を早めに出すメリットを実感できるかと思います。
・開業届を出すことで、社会的に「事業者」と認められる
社会的に「事業者」であると認められることは、公的サービスを利用する上でとても重要です。
公的機関は、開業届を出していない個人事業主について「働いている」とみなしません。
つまりそれは、就労していることで利用できるはずの公的サービスが利用できないということです。
一番身近な例は、認可保育園や学童・放課後デイサービスの利用です。
就労証明の提出を求められるケースが多くありますが、個人事業主でない場合は提出ができません。
これは子育てをされている方にとって、非常に切実な問題です。
子育て中の主婦がフリーランスになる時に、開業届を出さないでやっていこうと考えられる方は多くいらっしゃいますが、このような形でデメリットを受けることになります。
「仕事時間が短いので、売上がほとんどない。事業として認められないのでは…。」
「売上額が少ないので書類を出すのが恥ずかしい。」
その辺りを気にされる方は多いですが、売上金額が少ないから事業として認められないということはありません。
個人事業主になると青色申告控除が受けられる
「開業届を出して個人事業主になると税金を取られる。出さなければ税金を支払わなくて良い。」
という情報もあるかも知れませんが、
どちらにしても、稼いだ金額に応じて、税金を納めなくてはいけません。
個人事業主が余分に税金を支払わなくてはいけないということもありません。
むしろ節税だけの視点で考えると、会社員やパート勤務よりも個人事業主の方が有利なのです。
開業届を出す時に、青色申告の申請をすれば青色申告の控除が受けられます。
青色申告の詳細やメリットについてはこちらの記事を参考にしてください。
これから事業を始められる方に伝えたい。青色申告と白色申告の特徴とメリット・デメリット
確かに確定申告は手間です。
けれども、事業をしていくのであれば、確定申告を含む、事業のお金の流れについてしっかり学んでおいた方が良いでしょう。
売上が少ないスタートのタイミングで学んでおけば、いざ仕事が増えて忙しくなった時にも余裕を持って対応することができます。
補足・開業届を出すと扶養を外れるのではと心配されている方へ
開業の届出を躊躇される理由の一つとして「扶養を外れてしまう」というものがあります。
しかし、ただ開業届を出すだけで扶養から外れることは滅多にありません。
基本的に個人事業主であっても所得が48万円を超えなければ扶養の範囲として認められます。
健康保険組合によって基準は様々で、個人事業主というだけで扶養を外れなくてはいけなくなることもあるため、事前に確認することは必要です。
けれども多くの場合は、年収が基準値を超えていないこと、事業が極めて小規模であること、これらが認められれば被扶養者になることはできます。
開業届を出して、個人事業主のメリットを存分に活かしましょう
ここまでで紹介した通り、開業届を出して社会的に「事業主」と認められることにはメリットがたくさんあります。
もちろん、お一人お一人置かれている状況は違います。
この記事を読まれた上で、「自分の場合はメリットよりもデメリットが大きいのではないか」と不安に感じられている場合は、一度税理士にご相談ください。
数多くの事業をサポートしてきた税理士目線で、
事業を始めるタイミングや、資金繰り、事業計画など、幅広い面でお役に立てるアドバイスが可能です。
個人事業・フリーランス・独立をご検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。