医療費控除はどこまで対象?「自分は病院に無縁」でも医療費控除が受けられるかもしれません

所得税から控除されるものの中に、「医療費控除」というものがあります。

風邪をひいて受診したクリニック代や日帰り手術費用、処方箋代などの医療費が一定額を超えた場合に利用できる控除の一つです。

この医療費控除は、本人が受診して支払った費用だけでなく、配偶者や子供・親族でも、生計を共にしている場合は合算させて申請することが可能です。

実はこの医療費控除、決して軽く見ることはできません。

医療費控除は自営業者・給与所得者関係なく受けることができます。つまりサラリーマンにとって少ない節税チャンスの一つでもあるのです。

「自分は健康だから、控除受けるほど医療費使わないよ。」という方もいらっしゃるかもしれませんが、本当にそうでしょうか?

実は医療費控除の対象となるものは、何もクリニックや手術・処方箋に限ったことではありません。健康な人でも、案外医療費控除対象になる費用を使っていることがあるのです。さらにご家族の分も合算されると、知らないうちに一定額を超えていたということはよくあります。

今回のコラムをご参考に、医療費控除について、正しく理解いただき、お得に節税をしてしまいましょう。今からしっかり医療費控除のために領収書は保管しておいてください。

実はこれらも医療費控除の対象になります

医療費控除について、「病院・クリニックでかかった治療費や、処方箋で受けた薬代しか控除できない」と思われている方が多くいらっしゃいますが、実は下記も医療費控除の対象になります。

①治療目的の漢方・ビタミン剤

漢方・ビタミン剤は、医薬品とは異なるイメージがありますが、治療目的であることが証明できる場合は医療費控除の対象になります。医師の診断のもとで漢方やビタミン剤を処方された場合などです。

②タクシー・公共交通機関での通院費

通院のために利用したバス・鉄道・タクシーなどの交通費も医療費控除の対象になります。

診察を受けた際の領収書とセットにして保管しておくようにしましょう。公共交通機関利用で領収書が取れなかった場合は、リストを作って、通院履歴と照合できるようにしておくと良いでしょう。

③不妊治療・妊娠・出産に関する費用

妊娠・出産に関する費用も医療費控除が使えます。不妊治療、人工授精費用も対象です。

妊娠関係は、通常、健康保険対象外となります。(妊婦定期健診や出産では国や自治体の補助が使えます。)どうしても高額になりがちの妊娠に関する費用ですが、医療費控除が使えることで節税できる確率が高まります。

また、お産のための入院でタクシーを利用した場合もタクシー代は控除対象になります。ただし、里帰り出産のための実家までの交通費は対象外ですのでご注意ください。

④入院中の食事代・差額ベッド代

入院中の食事代・差額ベッド代も医療費控除申請が可能ですが、それぞれ注意点があります。

入院中の食事は、病院で出され、入院費に含まれますので控除可能ですが、自分で出前を取ったり、売店で買ってきたものについては「入院中の食事代」とはみなされません。

差額ベッド代については、治療のためなど、必要な場合に限ります。入院者本人や家族の都合により個室にした場合は、医療費控除対象外となります。

また、入院生活で必要な備品を購入した費用も控除できません。

⑤はり灸・柔道整復師による施術

鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師などの国家資格所有者の施術は、それが治療であると認められる場合は、健康保険対象のもの自費のもの問わずに控除対象です。

その為、鍼灸院や接骨院に行った際には必ず領収書をもらうようにしましょう。

また、通院のための交通費も医療費控除の申請ができますので、領収書を取っておくようにしましょう。②にもあったように、領収書がもらえない時は、日にちや利用交通手段・金額などをメモしておいて、通院日記録と照らし合わせできるようにしておきましょう。

他にも、接骨院などでコルセットやサポーターを購入した場合も控除可能な医療費に含めることができます。

⑥歯の治療・必要と認められた歯科矯正費

歯科医院による治療は、クリニックと同じく医療費となります。

歯科矯正については医療費控除は基本NGとされていますが、止むを得ない事情による歯科矯正の場合は、医療費控除が可能です。やむを得ない事情とは、噛み合わせの問題で歯科矯正を行わないと日常生活に支障が出る、などの明らかに治療が必要と判断された場合です。

歯科矯正費用も健康保険適外で、かなり高額になります。医療費控除で節税するためにも領収書はなくさないように保管しておきましょう。

また、歯の治療としてよく耳にするインプラントですが、治療に使われる素材(金・セラミックなど)一般的なものであれば医療費控除が使えます。不安な場合は歯科医院に確認するようにしましょう。

⑦松葉杖・義手義足・補聴器などの購入費

骨折してしまった際に使用した松葉杖や車椅子のレンタル代や、治療で必要な義手・義足代、補聴器の購入費用も医療費控除の対象になります。

ただし、どれもスペックが一般的なものであることが条件とされています。どこまでの機能が対象となるのかについては、購入先に問い合わせをしてみましょう。回答から判断できない場合は、税理士などの専門家に確認してみてください。

視力矯正のためのメガネ・コンタクトは対象外になります。

⑧レーシック治療

先ほど、視力矯正のためのメガネ・コンタクトは医療費控除の対象にはならないという話でしたが、逆に視力回復レーザー手術(レーシック手術)は医療費控除対象になります。

これは目の機能を医学的な手法で回復させる治療であると定義されているためです。

医療費控除の対象にならないもの

先ほどは、医療費控除対象のものを紹介しましたが、一方で医療費でも医療費控除として申請できないものもありますので、そちらを紹介いたします。

①美容整形など、容姿を変える目的の手術

医療費控除はあくまで病気の治療目的で使った費用が対象です。美容整形の場合、必要な治療ではなく個人の嗜好などが入ります。そのため、控除の対象外となります。

「ほくろ」の除去について例を挙げてみましょう。

顔に「ほくろ」があることで、長年クラスメイトからからかわれてコンプレックスだから除去したい、という場合に行った除去手術は医療費控除の対象にはなりません。

けれども、「ほくろ」だと思ってたものが、悪性黒色腫や上皮悪性腫瘍であり除去(治療)が必要であると医師が判断した場合の除去手術は、医療費控除の対象となるのです。

②リラクゼーション目的の施術

こちらは治療ではなく癒しの目的が強いものです。街によくある「もみほぐし」などが該当します。同じマッサージでも、接骨院や鍼灸院のような治療ではなく、あくまでリラクゼーション目的になるため、医療費という扱いになりません。

長い時間施術を受けてリラックスしたいという目的であれば、リラクゼーションが良いでしょう。ただし医療費控除対象外になります。

また、先ほど鍼灸院や接骨院は医療費控除になるという話をしましたが、治療ではなくリラクゼーション目的の利用の場合は、除外されますのでご注意ください。

美容鍼や、エステ・脱毛なども美容の要素が強いため、医療費控除対象外です。

③容姿を美しくするための歯科矯正

「歯並びをきれいにして見た目を美しくする」という目的の歯科矯正は、医療費控除適用になりません。美容目的の要素が強く、日常生活に支障をきたすような「必ず必要なもの」と言えない為です。

④自家用車での通院費

タクシー・公共交通機関を利用した通院費用は医療費控除の対象ですが、自家用車を使用した場合は対象外になります。ガソリン代・駐車場代が実際かかってはいますが、医療費控除申請をすることができません。

理由は、国税庁のHPにも記載されていますが、通院費とは「人的役務の提供の対価として支出されるもの」と明確に定義されています。つまりタクシーや公共交通機関のみ対象になるということです。

⑤健康診断や人間ドックの費用

健康診断・人間ドッグはあくまで検査であって、治療したわけではありませんので、医療費にはなりません。

ただし、これらの検査で大きな病気が発見され、そのまま治療になった場合は、病気の治療のために先立って行われた検査とみなされるため、医療費控除の対象とすることができます。

⑥未病のためのサプリメント代

治療目的で処方された薬や漢方・ビタミン剤はOKですが、一方で治療前の段階(未病)での健康を促進するためのものは医療費控除対象外です。

過去に東京地裁で、医師の指導のもとで購入した不妊治療用のサプリについて、医療費控除適用有無の裁判が行われましたが、「対象外である」という判決が出ました。たとえ、医師の指導のもとで購入したサプリメントであっても、医師の治療・診療の対価には当たらないというのが理由でした。

もしも医師の勧めでサプリメントなどを購入した場合でも、基本的に医療費には含められないということです。

入院給付など、保険金を受け取った場合の医療費控除申請はどうなるの?

医療保険に入られている方は、入院や手術を受けることで給付金(保険金)を受け取る機会があるかと思います。

医療保険から保険金を受け取った場合は受け取った金額分は医療費から除外する必要があります。保険金の受け取りにより実際に負担した金額よりも多く保険金を受け取る場合があることを鑑みて、除外する場合は、合計の医療費から受け取り金額を引くようにしましょう。

医療費控除申請分の金額が計算できたら、今度は自分の所得(年収ではない)金額でいくら医療費控除ができるのか確認してみましょう。

よく「10万円以下なら意味がない」という声を耳にしますが、所得が200万円未満の場合は、医療費が10万円未満だとしても控除が可能な場合がありますので、必ず確認するようにしてください。

賢く医療費を使い、上手に節税しよう

今回は医療費控除について対象・対象外のものも含めて解説いたしました。

いかがでしたでしょうか?「医療費=風邪や怪我で病院やクリニックに行った時の費用」と思われがちの医療費ですが、多くの人が、知らず知らずのうちに医療費控除の対象になる費用を使っていることがお分かりいただけたかと思います。

今年もまだ始まって3ヶ月ほどです。病院に無縁な健康な方でも、日常的に歯科医院に受診したり、鍼灸院・接骨院に通うこともあるかもしれません。

来年の確定申告で所得税が少しでも還付されたら良いなぁという方は、とりあえず「領収書を保管する」ところから始めてみませんか?もちろん生計を共にしているご家族の分も全てです。

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