「うちの税理士、大丈夫?」多くの経営者が抱える税理士への不満。本記事では、そのリアルな不満ランキングTOP5と、なぜ期待外れが起こるのか、その根本原因を深掘りします。後悔しない税理士選びの秘訣から、現税理士への対処法まで具体的に解説。ミスマッチを防ぎ、事業成長を共に目指せる税理士を見つけるための羅針盤となるでしょう。
このページの目次
なぜ多くの経営者が税理士に不満を感じるのか
税理士は、企業の経理・税務の専門家として、経営者にとって最も身近な相談相手の一人です。日々の記帳代行から決算・税務申告、さらには節税対策や経営アドバイスまで、そのサポート範囲は多岐にわたります。しかし、多くの経営者が現在の税理士に対して何らかの不満を抱えているという声も少なくありません。本来であれば事業成長のパートナーであるべき税理士との間に、なぜこのようなすれ違いが生じてしまうのでしょうか。この章では、税理士に対する不満が生まれる背景にある、業界の構造的な問題点や経営者の期待と現実のギャップについて深掘りしていきます。
税理士業界の構造的な問題点
税理士への不満が生じる背景には、税理士業界が抱えるいくつかの構造的な問題点が影響していると考えられます。これらの問題は、個々の税理士の資質だけでなく、業界全体の慣習や制度に起因するものも含まれます。
問題点 | 詳細と経営者への影響 |
---|---|
業務範囲の曖昧さと期待値のズレ | 税理士の独占業務は税務代理、税務書類の作成、税務相談ですが(日本税理士会連合会「税理士とは」参照)、経営者はこれに加えて積極的な経営コンサルティングや資金調達支援まで期待するケースが多くあります。しかし、全ての税理士がこれらの業務を得意としているわけではなく、契約内容にも含まれていない場合、期待外れに終わることがあります。 |
顧問契約の慣習化と見直しの機会不足 | 一度税理士と顧問契約を結ぶと、長期間にわたり関係が継続する傾向があります。これは安定したサポートを受けられるメリットがある一方、サービス内容がマンネリ化したり、料金体系が現状に見合わなくなったりしても、見直しのきっかけがないまま不満が蓄積されることがあります。 |
税理士の高齢化とIT・最新情報への対応 | 一部の税理士事務所では、高齢化が進み、新しい会計ソフトやクラウドサービスの導入、頻繁な税制改正へのキャッチアップが遅れがちになることがあります。これにより、経営者が求めるスピーディーな情報共有や、最新の節税スキームへの対応が十分でないと感じられることがあります。 |
専門分野の細分化とマッチングの難しさ | 税理士と一口に言っても、得意とする業種や専門分野(例:国際税務、事業承継、医療・介護、スタートアップ支援など)は異なります。しかし、自社のニーズに最適な専門性を持つ税理士を見つけることが難しく、ミスマッチが生じると期待したサポートが得られません。 |
コミュニケーションスタイルの多様化への未対応 | 経営者の世代交代やビジネス環境の変化に伴い、コミュニケーション手段も多様化しています。従来の対面や電話だけでなく、チャットツールやオンライン会議を希望する経営者も増えています。しかし、税理士側がこれらの新しいコミュニケーションスタイルに柔軟に対応できない場合、円滑な意思疎通が妨げられ、不満の一因となります。 |
これらの構造的な問題点を理解することは、税理士選びの失敗を避け、より良い関係を築くための第一歩となります。
期待と現実のギャップ 税理士への不満が生じる理由
税理士への不満は、経営者が抱く「期待」と、実際に税理士から提供される「現実」のサービスとの間にギャップが生じることで顕在化します。経営者は税理士に対してどのような期待を寄せ、それがどのように裏切られると感じてしまうのでしょうか。
経営者の主な期待 | 現実とのギャップ(不満が生じる典型例) |
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プロアクティブな節税提案と経営アドバイス | 決算前に具体的な節税提案があると思っていたが、実際には試算表の報告のみで、こちらから質問しないと何も教えてくれない。経営状況について相談しても、税務以外の視点からのアドバイスが乏しい。 |
迅速かつ丁寧なコミュニケーション | 質問や相談へのレスポンスが遅く、数日経っても返信がないことがある。専門用語が多く、説明が分かりにくい。定期的な訪問や報告がなく、税理士が何をしてくれているのか把握しづらい。 |
顧問料に見合う価値と透明性 | 毎月顧問料を支払っているが、具体的な成果やメリットを感じられない。料金体系が不明確で、何にどれくらいの費用がかかっているのか分からない。追加の相談や業務で予期せぬ費用を請求された。 |
業界や自社事業への深い理解 | 自社のビジネスモデルや業界特有の慣習を理解してもらえず、的外れなアドバイスをされることがある。新しい補助金や助成金の情報を期待していたが、税理士側から提供されることがない。 |
親身で頼りになるパートナーシップ | 税務調査の際に、もっと親身になって会社を守る姿勢で対応してくれると思っていたが、事務的な対応に終始した。経営者の孤独や悩みに寄り添ってくれることを期待したが、距離を感じる。 |
このように、経営者が税理士に寄せる期待は、単なる税務処理の代行に留まらず、事業を成功に導くための良き相談相手、頼れるパートナーとしての役割にまで及んでいます。この期待値の高さと、税理士の実際の業務範囲や能力、コミュニケーションスタイルとの間に齟齬が生じたとき、経営者は大きな不満を感じることになるのです。
経営者が選ぶ 税理士 不満ランキングTOP5
多くの経営者が税理士との関係で何らかの課題を感じているのは事実です。顧問契約を結んだものの、「期待していたサポートが得られない」「コミュニケーションがうまくいかない」といった声は後を絶ちません。ここでは、経営者が実際に感じている税理士への不満をランキング形式で詳しく見ていきましょう。これらの不満は、税理士選びの失敗を避け、より良いパートナーシップを築くための重要なヒントとなります。
第1位 コミュニケーション不足と遅いレスポンス
経営者が税理士に抱く不満の中で、常に上位に挙げられるのがコミュニケーションに関する問題です。迅速な意思決定が求められる経営において、税理士との円滑な連携は不可欠ですが、ここに大きな壁を感じるケースが少なくありません。
税理士との意思疎通に関する不満事例
- 質問や相談に対する税理士からの返信が著しく遅い、または忘れられてしまう。
- 電話をしても担当者が不在がちで、折り返しもないことが多い。
- メールの返信に数日を要し、緊急の案件に対応してもらえない。
- 専門用語ばかりで説明され、内容が理解しづらい。
- 質問しづらい雰囲気があり、気軽に相談できない。
- 月次報告や試算表の送付が遅れがちで、経営判断に必要な情報がタイムリーに得られない。
- 税理士側からの積極的な情報提供や連絡がほとんどない。
なぜ税理士とのコミュニケーションに不満が生まれるのか
税理士とのコミュニケーションギャップが生じる背景には、いくつかの要因が考えられます。
- 税理士が多くのクライアントを抱え、一人ひとりに割ける時間が物理的に限られているケース。特に確定申告時期などの繁忙期には顕著になります。
- 事務所内の情報共有体制が未整備で、担当者以外が状況を把握していない。
- 税理士側のコミュニケーションスキルや、メールやチャットツールといったITツールの活用に対する意識の低さ。
- 経営者側も、期待する連絡頻度や報告形式、レスポンスの期限などを契約時に明確に伝えていないことによるミスマッチ。
- 税理士の世代によっては、対面でのやり取りを重視し、オンラインコミュニケーションに不慣れな場合もあります。
第2位 節税提案や経営アドバイスが物足りない
税理士に期待するのは、単なる記帳代行や税務申告だけではありません。多くの経営者は、会社の利益を最大化するための節税提案や、経営判断に役立つアドバイスを求めています。しかし、この期待に応えられない税理士も少なくないようです。
税理士の提案力に対する不満事例
- 決算書の作成や税務申告は行うが、具体的な節税策や税制優遇措置の提案が全くない。
- 資金繰り改善や融資獲得に向けた具体的なアドバイスが得られない。
- 月次決算データに基づいた経営分析や、将来の事業計画に関する助言が浅い、または皆無。
- 最新の補助金・助成金制度について情報提供がなく、申請機会を逃してしまう。
- 業界特有の会計処理や経営課題に対する理解が浅く、的外れなアドバイスをされることがある。
- リスクマネジメントや事業承継といった中長期的な経営課題に対する提案がない。
提案が少ない税理士の特徴とは
経営者が満足するような提案ができない税理士には、以下のような特徴が見られることがあります。
- 業務の中心が記帳代行や申告書作成といったルーティンワークに偏っており、コンサルティング業務に対する意識やスキルが低い。
- 税理士自身に経営経験が乏しい、またはクライアントの経営に深く関与することへの関心が薄い。
- 常に新しい税制改正や経営手法、補助金制度などを学ぶ姿勢が不足している。
- クライアントの事業内容、ビジネスモデル、経営ビジョンへの理解が浅く、通り一遍の対応に終始する。
- 「税務の専門家」という意識が強すぎ、経営全般に関するアドバイスは範囲外と考えている。
第3位 税理士費用が高い 料金体系が不透明
税理士に支払う顧問料は、企業にとって決して小さくないコストです。そのため、提供されるサービス内容と費用のバランス、そして料金体系の透明性に対する不満は根強く存在します。
税理士の顧問料に関する不満事例
- 提供されるサービス内容に対して、顧問料が高すぎると感じる。特に、期待した節税効果や経営改善が見られない場合。
- 契約時には説明のなかった追加料金(例:税務調査立会料、年末調整費用、特殊な相談料など)が別途請求される。
- 料金体系が複雑で、具体的にどの業務にいくら支払っているのか内訳が不明瞭。
- 記帳代行のボリュームが減ったり、訪問回数が減ったりしても、顧問料が一切見直されない。
- クラウド会計ソフトを導入し、自社である程度の経理業務を行うようになっても、料金が変わらない。
税理士との料金トラブルを避けるために
料金に関する不満やトラブルを未然に防ぐためには、契約前の確認が極めて重要です。以下の点をしっかり押さえましょう。
確認項目 | チェックポイント |
---|---|
基本顧問料に含まれる業務範囲 | 記帳代行の範囲(丸投げか一部か)、月次試算表の作成・報告、決算申告業務、通常の税務相談など、どこまでが標準サービスか具体的に確認する。 |
オプション業務とそれぞれの料金 | 給与計算、年末調整、償却資産税申告、税務調査立会い、融資支援、経営計画策定支援など、追加で費用が発生する業務とその明確な料金基準を確認する。 |
訪問頻度や面談時間と料金の関係 | 月1回訪問、四半期に1回訪問など、訪問頻度によって料金が変わるのか。オンラインミーティングの場合の扱いも確認する。 |
記帳代行の料金基準 | 仕訳数、売上規模、従業員数など、何に基づいて記帳代行料が算定されるのかを確認する。 |
契約期間と解約条件 | 最低契約期間の有無、中途解約時の違約金や手続きについて確認する。 |
これらの点を書面で明確にし、双方合意の上で契約することが、後のトラブル防止につながります。
第4位 専門知識のアップデート不足や業界理解の欠如
税法は毎年のように改正され、経済環境も目まぐるしく変化します。このような状況下で、税理士が最新の専門知識を維持し、クライアントの業界特有の事情を理解していることは極めて重要です。しかし、この点で力不足を感じさせる税理士もいるようです。
税理士の専門性に関する不満事例
- 頻繁に行われる税法改正の内容を正確に把握しておらず、古い知識のままアドバイスされたり、誤った処理をされたりする。
- インボイス制度や改正電子帳簿保存法といった新しい制度への対応が遅い、または具体的な指導ができない。
- クラウド会計ソフトの導入やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に消極的で、時代に即した経理体制の構築が進まない。
- 自社が属する業界特有の会計処理、税務慣行、ビジネスモデルへの理解が浅く、適切なアドバイスが得られない。
- 国際税務、組織再編、事業承継、M&Aといった高度な専門知識が必要な分野への対応力が低い、または対応できない。
税理士の知識レベルを見極めるポイント
税理士の専門性や知識レベルを判断するには、以下のような点に注目すると良いでしょう。
- 税理士会や各種団体が主催する研修への参加状況や、保有資格(中小企業診断士、行政書士など税理士以外の資格も参考になる場合があります)。
- 得意とする業種や専門分野を明確に打ち出しているか。ウェブサイトやパンフレットで確認しましょう。
- 最新の税制改正やITツール(特にクラウド会計やRPAなど)に関する情報提供を積極的に行っているか。セミナー開催や情報発信の頻度も参考になります。
- 無料相談などの場で、具体的な事例を交えながら、分かりやすく説明できるか。専門用語を避け、こちらの理解度に合わせて話せるか。
- 弁護士、司法書士、社会保険労務士といった他の専門家との連携体制が整っており、ワンストップで相談できる窓口があるか。
第5位 受け身で積極性に欠ける税理士の対応
経営者は、税理士を単なる事務代行者ではなく、共に事業を成長させていくパートナーとして期待しています。しかし、指示待ちで積極性に欠ける受け身な対応の税理士に対しては、大きな不満を感じることになります。
税理士の姿勢に関する不満事例
- こちらから質問や具体的な依頼をしない限り、税理士側から能動的なアクションや提案がほとんどない。
- 月次報告や決算報告が、数字の読み上げや形式的な説明に終始し、経営改善に繋がるような具体的な示唆や分析がない。
- 経営上の課題(例:資金繰りの悪化、利益率の低下など)を相談しても、他人事のような対応で、主体的に解決策を一緒に考えようとしない。
- 税務調査の連絡があった際も、事前の対策や準備について具体的な指示やサポートが不十分。
- 会社の将来のビジョンや成長戦略に関心を示さず、現状維持の業務に終始しているように感じる。
税理士に主体的な関与を促す方法
税理士の姿勢に不満を感じる場合、まずは経営者側から働きかけてみることも一つの手です。ただし、根本的な改善が見られない場合は、税理士変更も視野に入れる必要があります。
- 経営者側から、自社の経営状況、将来のビジョン、現在抱えている課題などを積極的に、かつ具体的に共有する。
- 税理士に対して、どのようなサポートを期待しているのか(例:月次での経営分析会議、資金調達支援、節税対策の積極的な提案など)を明確に伝える。
- 定期的な経営会議への参加を依頼し、意思決定のプロセスに税理士を巻き込む。
- 設定したKPI(重要業績評価指標)の進捗状況を共有し、税理士の視点からのアドバイスを求める。
- 小さなことでも感謝の言葉を伝えたり、良好なコミュニケーションを心がけたりすることで、税理士のモチベーション向上に繋がる場合もあります。
これらの不満ランキングは、多くの経営者が直面する可能性のある問題点を示しています。自社にとって最適な税理士を見つけるためには、これらのポイントを念頭に置き、慎重な選定プロセスを経ることが不可欠です。
こんなはずじゃなかった 税理士選びで不満を抱える原因
税理士との契約後に「こんなはずじゃなかった」と後悔する経営者は少なくありません。その多くは、税理士選びの初期段階での確認不足や誤った判断が原因となっています。ここでは、税理士選びで不満を抱えがちな典型的な原因を深掘りし、同じ轍を踏まないための教訓とします。
知人の紹介のみで安易に税理士を決めてしまう
経営者仲間や取引先、あるいは親族からの紹介で税理士を決めるケースはよくあります。紹介には安心感があり、信頼できる人物からの推薦であれば間違いはないだろうと考えがちです。しかし、紹介だからといって、必ずしも自社に最適な税理士であるとは限りません。
紹介の主な問題点は以下の通りです。
- 客観的な比較検討がしにくい:紹介者の顔を立てなければならないという心理が働き、他の税理士と比較検討したり、シビアな質問をしたりすることをためらってしまうことがあります。
- 自社の業種や規模とのミスマッチ:紹介してくれた会社と自社では、事業内容、企業規模、成長フェーズ、抱える課題が異なる場合があります。特定の業種に強い税理士、スタートアップ支援が得意な税理士など、税理士にも専門性や得意分野があります。紹介された税理士が、必ずしも自社のニーズに合致するとは限らないのです。
- 断りにくい状況:万が一、面談で相性が合わないと感じたり、提案内容に疑問を感じたりしても、紹介者との関係性を考慮して断りにくくなることがあります。その結果、不満を抱えたまま契約を継続してしまうことになりかねません。
- 期待値のズレ:紹介者から「とても良い先生だよ」と聞かされていても、その「良さ」の基準は人それぞれです。自社が求めるサービスレベルやコミュニケーションスタイルと合致しない可能性も十分にあります。
知人の紹介はあくまで選択肢の一つとして捉え、必ず複数の税理士と面談し、自社の目で比較検討することが重要です。
顧問料の安さだけで税理士を選んでしまう危険性
事業を運営する上でコスト意識は非常に重要であり、税理士の顧問料もできるだけ抑えたいと考えるのは自然なことです。しかし、顧問料の安さだけを判断基準にして税理士を選んでしまうと、後々大きな不満につながる危険性があります。
「格安」を謳う税理士には、以下のような背景がある可能性を考慮する必要があります。
安さの理由(推測) | 潜むリスク・不満の原因 | 確認すべきポイント |
---|---|---|
経験の浅い税理士・事務所 | 節税提案や経営アドバイスの質が低い、最新の税制改正への対応が遅い、複雑な案件に対応できない | 担当税理士の実務経験年数、得意とする業種や業務、過去の実績、保有資格(税理士資格以外も) |
記帳代行がメインのサービス | 月次の試算表作成や決算申告のみで、経営に関する相談や積極的な提案が期待できない | 契約に含まれる具体的なサービス範囲(月次報告、経営分析、資金繰り相談、節税対策の提案など)、相談の頻度や方法 |
業務の大部分を無資格のスタッフが担当 | 税務判断に関する責任の所在が曖昧、専門的な質問への回答が遅い・不正確 | 有資格者(税理士)が直接担当する業務の範囲、面談時の担当者 |
オプション料金が多い | 基本料金は安くても、年末調整、償却資産税申告、税務調査対応などが別途高額な追加料金として請求される | 基本料金に含まれるサービスと、別途料金が発生するサービスの一覧、それぞれの料金目安 |
コミュニケーション手段が限定的 | メール対応のみで電話相談が有料、レスポンスが遅いなど、迅速なコミュニケーションが取りにくい | 主な連絡手段(電話、メール、チャット、訪問)、相談のしやすさ、レスポンスの目安時間 |
税理士は単なる記帳代行業者ではなく、経営のパートナーとなり得る存在です。提供されるサービスの質や範囲、そして担当者との相性などを総合的に判断し、費用対効果に見合う税理士を選ぶことが肝心です。安易に料金だけで選ぶと、「安物買いの銭失い」になりかねません。
契約内容の確認不足が招く税理士への不満
税理士との顧問契約は、提供されるサービス内容や範囲、料金、責任の所在などを明確にするための重要な取り決めです。しかし、この契約内容の確認を怠ったために、後々「こんなはずではなかった」という不満が生じるケースが後を絶ちません。
特に注意すべき点は以下の通りです。
- 業務範囲の曖昧さ:「税務顧問」という言葉で一括りにされがちですが、具体的にどこまでの業務を、どの程度の頻度で行ってくれるのかは税理士事務所によって異なります。例えば、月次決算の報告、経営分析資料の提供、資金繰り相談、融資支援、事業計画策定支援、年末調整、給与計算、社会保険手続き代行など、期待していた業務が契約に含まれていなかったり、オプション料金だったりすることがあります。「当然やってくれるだろう」という思い込みは禁物です。
- 報告・連絡の頻度や方法:月次報告の形式(書面、対面、オンライン)、定例ミーティングの有無や頻度、緊急時の連絡手段やレスポンス時間など、コミュニケーションに関する取り決めが明確でないと、情報共有がスムーズにいかず不満が募ります。
- 料金体系の不透明さ:月額顧問料以外に、決算料、年末調整費用、税務調査立会料などが別途発生する場合があります。どのような場合に、いくらの追加費用がかかるのかを事前に確認しておかないと、予期せぬ請求に驚くことになります。
- 担当者の変更:契約時の担当者が魅力的でも、実際の業務は別のスタッフが担当するケースや、途中で担当者が変わることもあります。担当者のスキルや相性も重要なので、担当者変更の可能性やその際の対応についても確認しておくと良いでしょう。
- 解約条件の確認不足:契約期間の縛りや、中途解約時の違約金の有無、解約申し出の期限など、解約に関する条件を確認しておかないと、いざ税理士を変更したいと思ってもスムーズに進められないことがあります。
契約書は専門用語が多く難解に感じるかもしれませんが、疑問点は必ず契約前に税理士に質問し、納得できるまで説明を求める姿勢が重要です。口頭での約束だけでなく、必ず書面で内容を確認するようにしましょう。
もう税理士選びで後悔しない 満足できる税理士を見つける秘訣
税理士選びは、会社の将来を左右する重要な決断です。しかし、多くの経営者が税理士とのミスマッチに悩み、後悔しているのも事実。「こんなはずじゃなかった…」とならないために、ここでは満足できる税理士を見つけるための具体的な秘訣を詳しく解説します。これらのポイントを押さえることで、あなたのビジネスを力強くサポートしてくれる理想のパートナーと出会えるはずです。
複数の税理士事務所を比較検討する重要性
「知人の紹介だから安心」「一番最初に見つけた事務所でいいや」と安易に税理士を決めてしまうのは非常に危険です。必ず複数の税理士事務所を比較検討することで、客観的な視点から自社に最適な税理士を見極めることができます。
比較検討する際には、以下の点を意識しましょう。
- 料金体系とサービス内容のバランス:単に安いだけでなく、提供されるサービス内容が自社のニーズと合致しているかを確認します。
- 専門分野や得意業種:自社の業種や解決したい課題に強みを持つ税理士を選びましょう。例えば、IT業界に強い、スタートアップ支援が得意、国際税務に精通しているなど、税理士によって得意分野は異なります。
- 実績と経験:特に自社と類似規模や業種のクライアント実績が豊富かを確認します。
- 担当者との相性:最終的には人と人との付き合いです。コミュニケーションが取りやすく、信頼できると感じる担当者かどうかが重要です。
- レスポンスの速さやコミュニケーション方法:質問への回答速度や、連絡手段(メール、電話、チャットツールなど)が自社の希望と合うかを確認します。
比較検討の方法としては、税理士紹介サービスを活用したり、複数の事務所に直接問い合わせて面談を申し込むのが一般的です。手間を惜しまず、最低でも3社程度は比較することをお勧めします。
無料相談を最大限に活用し税理士との相性を見極める
多くの税理士事務所では、契約前に無料相談の機会を設けています。この無料相談は、税理士の能力や人柄、そして何よりも自社との相性を見極める絶好のチャンスです。遠慮せずに積極的に活用しましょう。
無料相談で確認すべき主なポイントは以下の通りです。
- 現状の課題や悩みへの理解度:自社の状況をどれだけ的確に把握し、共感してくれるか。
- 具体的な提案の有無と質:漠然とした話だけでなく、具体的な節税策や経営改善策のヒントを提示してくれるか。
- 説明の分かりやすさ:専門用語を多用せず、素人にも理解できるように丁寧に説明してくれるか。
- 質問への対応:こちらの質問に対して、誠実に、かつ的確に答えてくれるか。
- コミュニケーションの取りやすさ:話しやすい雰囲気か、威圧感はないかなど、フィーリングも大切です。
- 料金体系の説明:顧問料や追加費用の発生条件などが明確に説明されるか。
無料相談の際には、事前に質問したいことや相談したい内容をリストアップしておくと、時間を有効活用できます。また、複数の事務所で無料相談を受け、それぞれの対応を比較することで、より客観的な判断が可能になります。
契約前に必ず確認すべき税理士選びのチェックリスト
税理士との契約は、長期的なお付き合いになることが多いため、契約前の確認事項は非常に重要です。後々のトラブルを避けるためにも、以下のチェックリストを参考に、契約内容を隅々まで確認しましょう。
確認項目 | チェックポイント |
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税理士の業務範囲と提供サービスの詳細 |
月次決算、記帳代行、給与計算、年末調整、確定申告、税務調査対応など、どこまでの業務をどの程度の頻度で対応してくれるのかを具体的に確認します。オプションサービスとその料金も明確にしておきましょう。 |
明確な料金体系と追加費用の有無の確認 |
顧問料の内訳、決算料、記帳代行料など、料金体系が明確であるか。また、どのような場合に別途費用が発生するのか(例:税務調査立会い、特別な相談など)を事前に確認し、書面に残してもらうことが望ましいです。 |
税理士との連絡手段と報告頻度 |
主な連絡手段(電話、メール、チャット、訪問など)と、月次報告や試算表の提出頻度、面談の頻度などを確認します。自社の希望するコミュニケーションスタイルと合致しているかが重要です。 |
担当税理士の実績と得意分野 |
実際に担当してくれる税理士の経験年数、実績、得意とする業種や分野(例:相続、事業承継、国際税務、医業など)を確認します。所長税理士ではなく、担当者が誰になるのかも重要なポイントです。 |
契約期間と解約条件 |
契約期間はどのくらいか、中途解約する場合の条件(違約金の有無、通知期間など)を契約書でしっかり確認しましょう。 |
秘密保持義務 |
企業の財務情報という機密情報を扱うため、秘密保持契約がきちんと締結されるかを確認します。 |
これらの項目は、口頭での確認だけでなく、必ず契約書に明記されているかを確認し、不明な点は契約前に解消しておくことが肝心です。
自社の業種や事業フェーズに強い税理士を選ぶ
税理士と一口に言っても、その専門性や得意分野は多岐にわたります。自社の業種特有の会計処理や税制、さらには事業フェーズ(創業期、成長期、安定期、事業承継期など)に応じた課題に精通した税理士を選ぶことで、より的確なアドバイスやサポートが期待できます。
例えば、以下のようなケースが考えられます。
- 飲食業や小売業:日々の売上管理や在庫管理、消費税の軽減税率対応などに詳しい税理士。
- IT・Web業界:無形固定資産の扱いや、最新の補助金・助成金情報、研究開発税制などに詳しい税理士。
- 建設業:建設業会計特有の勘定科目や工事進行基準などに精通した税理士。
- 医療法人・クリニック:医療法人特有の会計・税務、診療報酬改定への対応に強い税理士。
- 輸出入業:国際税務や外貨建て取引の会計処理に詳しい税理士。
また、事業フェーズによっても税理士に求める役割は変わってきます。
- 創業期:資金調達支援(融資・補助金)、事業計画策定サポート、会計ソフト導入支援など。
- 成長期:節税対策、経営分析、資金繰り改善提案、内部統制構築支援など。
- 安定期・成熟期:事業承継対策、M&A支援、相続対策など。
税理士事務所のウェブサイトやパンフレットで得意業種や実績を確認したり、無料相談の際に自社の業種や事業フェーズにおける具体的な課題について質問してみることで、その税理士が本当に自社に適しているかを見極めることができます。
税理士の口コミや評判を正しく見極める方法
税理士を選ぶ際、インターネット上の口コミや評判を参考にする方も多いでしょう。しかし、口コミ情報は玉石混交であり、鵜呑みにするのは危険です。正しく見極めるためのポイントを押さえておきましょう。
- 複数の情報源を確認する:特定の口コミサイトだけでなく、Googleマップのレビュー、SNS、知人からの紹介など、複数の情報源を比較検討します。
- 具体的な内容に注目する:「良かった」「悪かった」といった抽象的な評価だけでなく、どのような点が良かったのか、あるいは悪かったのか、具体的なエピソードが書かれているかを確認します。
- 良い口コミ・悪い口コミの両方を見る:良い点ばかり、あるいは悪い点ばかりが強調されている場合は、客観性に欠ける可能性があります。両方の意見を参考に、総合的に判断しましょう。
- 投稿時期や投稿者の傾向を確認する:あまりにも古い情報は現状と異なる場合があります。また、特定の事務所を不自然に称賛したり、逆に誹謗中傷したりするような投稿には注意が必要です。
- 過度な期待はしない:口コミはあくまで個人の感想です。最終的には無料相談などを通じて、ご自身の目で直接確かめることが最も重要です。
信頼できる情報源としては、既存のクライアントからの紹介や、同業者からの評判などが挙げられます。ただし、紹介であっても、必ず自分自身で相性やサービス内容を確認するプロセスを省略しないようにしましょう。日本税理士会連合会のウェブサイトでは、税理士検索サービスを提供しており、登録されている税理士の情報を確認することも可能です。(参考:税理士情報検索サイト – 日本税理士会連合会)
現在の税理士に不満がある場合の賢明な対処法
現在の税理士に対して何らかの不満を感じているものの、具体的にどう行動すれば良いのか分からず、問題を抱え続けてしまう経営者の方は少なくありません。しかし、不満を放置することは、経営判断の遅れや不適切な税務処理、最悪の場合は税務調査での指摘といったリスクに繋がりかねません。ここでは、現在の税理士に不満がある場合に、経営者が取るべき賢明な対処法を段階的に解説します。
まずは税理士に直接不満を伝えて改善を求める
税理士変更を考える前に、まずは現在の税理士に直接、感じている不満を具体的に伝え、改善を求めることが重要です。誤解が生じているだけであったり、税理士側がクライアントの期待を正確に把握できていなかったりするケースも少なくありません。正直なコミュニケーションを通じて、関係が改善される可能性もあります。
不満を伝える際は、感情的にならず、以下の点を意識しましょう。
- 具体的な事例を挙げる:「レスポンスが遅い」といった抽象的な表現ではなく、「〇月〇日に質問した件について、〇日経っても返答がない」など、具体的な状況を伝えましょう。
- 期待する改善策を伝える:「もっと頻繁に連絡が欲しい」「節税について具体的な提案が欲しい」など、どう改善してほしいのかを明確に要求します。
- 冷静かつ建設的な態度で:あくまで問題解決のための話し合いであることを意識し、相手を非難するような口調は避けるべきです。
- 記録を残す:可能であれば、話し合いの内容や日時、決定事項などをメールなどで記録しておくと、後のトラブル防止に繋がります。
直接会って話すのが理想的ですが、難しい場合は電話やメールでも構いません。勇気を出して一歩踏み出し、対話の機会を持つことが、問題解決の第一歩となります。
税理士の変更を検討するタイミングと判断基準
直接不満を伝え、改善を求めても状況が変わらない場合や、そもそも信頼関係が大きく損なわれてしまっている場合は、税理士の変更を検討する必要があります。しかし、どのタイミングで、何を基準に判断すれば良いのでしょうか。
税理士変更を検討する主なタイミングとしては、以下のような時期が挙げられます。
- 決算申告が終わった後
- 契約更新の時期が近づいた時
- 事業年度の途中であっても、経営に支障をきたすほどの深刻な問題が発生した場合
そして、税理士変更の判断基準としては、以下の点を総合的に考慮しましょう。
判断基準 | 具体的な内容 |
---|---|
コミュニケーションの質 | レスポンスの速さ、説明の分かりやすさ、相談のしやすさなどが改善されない。約束が守られない。 |
提案力・専門性 | 節税提案や経営アドバイスが依然として不足している。業界知識や最新の税制改正への対応に不安を感じる。質問に対する回答が曖昧、または間違っている。 |
料金体系への納得感 | 提供されるサービス内容に対して顧問料が高いと感じる。料金体系が不透明で、追加費用の説明もないまま請求される。 |
業務の正確性・信頼性 | ケアレスミスが頻発する。税務調査で指摘を受けるような処理をされた。約束や期限を守らない。 |
相性・信頼関係 | 話し合いをしても不信感が拭えない。担当者との人間関係がうまくいかない。自社のビジネスへの理解や共感が感じられない。 |
これらの基準に複数当てはまるようであれば、税理士変更を前向きに検討すべきサインと言えるでしょう。ただし、一時的な感情で判断するのではなく、客観的な事実に基づいて慎重に判断することが大切です。
スムーズな税理士変更のための準備と引き継ぎのコツ
税理士を変更すると決断した場合、スムーズな移行のためには事前の準備と適切な引き継ぎが不可欠です。円満な関係解消と、新しい税理士へのスムーズな業務移行を目指しましょう。
税理士変更の準備段階でやるべきこと
新しい税理士を探し始める前に、また現在の税理士に解約を申し出る前に、以下の準備を行いましょう。
- 現在の税理士との契約内容の確認:契約期間、解約条件、解約申し出の期限、違約金の有無などを確認します。特に解約申し出の期限は重要で、これを過ぎると自動更新される場合があります。
- 引き継ぎに必要な資料のリストアップと収集:過去の決算書・申告書控え(通常3~5期分)、総勘定元帳、試算表、固定資産台帳、給与台帳、年末調整関連書類、定款、登記簿謄本など、新しい税理士が必要とするであろう資料を事前に把握し、可能な範囲で手元に集めておきましょう。税理士事務所によっては、預かり資料の一覧表を作成している場合もあります。
- 新しい税理士の選定:本記事の「もう税理士選びで後悔しない 満足できる税理士を見つける秘訣」で解説するポイントを踏まえ、自社に合った新しい税理士を探し、契約を進めます。複数の候補を比較検討し、無料相談などを活用して慎重に選ぶことが重要です。
円滑な引き継ぎのためのコツ
現在の税理士に解約の意思を伝えた後、新しい税理士への引き継ぎを円滑に進めるためのコツは以下の通りです。
- 解約の意思は明確かつ丁寧に伝える:解約理由を正直に伝える必要はありませんが、感謝の意と共に、書面(解約通知書など)で明確に意思を伝えましょう。感情的な伝え方は避け、事務的に進めるのが賢明です。
- 引き継ぎ期間と協力体制の確認:現在の税理士に対して、新しい税理士への資料提供や質疑応答に協力してもらえるよう依頼します。通常、1ヶ月程度の引き継ぎ期間を設けることが多いですが、契約内容や状況によって異なります。
- 新旧税理士間の直接のやり取りを促す:可能であれば、新旧の税理士間で直接コミュニケーションを取ってもらうことで、情報の伝達漏れや誤解を防ぎ、スムーズな引き継ぎが期待できます。経営者が間に入ってすべての情報を仲介するのは負担が大きいため、専門家同士で連携してもらうのが理想です。
- 預けている資料の返却を確実に受ける:税理士事務所に預けている原本資料(領収書、請求書、契約書など)やデータは、漏れなく返却してもらいましょう。返却時にはリストを作成し、確認しながら受け取るのが確実です。
- 最後の報酬の精算:未払いの顧問料や決算料などがあれば、速やかに精算し、円満な関係解消を心がけましょう。
税理士の変更は、企業にとって大きな決断であり、一時的に労力もかかります。しかし、より良いパートナーシップを築ける税理士と出会うことは、長期的に見て企業の成長に不可欠です。不満を抱えたままにせず、適切な対処法を講じることで、より良い経営環境を整えましょう。
まとめ
多くの経営者が税理士に不満を感じる背景には、コミュニケーション不足や期待外れの提案力など、様々な要因があります。税理士選びで後悔する原因の多くは、事前の情報収集不足や安易な決定です。本記事で解説した不満ランキングや失敗例を参考に、複数の税理士を比較検討し、無料相談を活用して相性を見極め、契約内容をしっかり確認することが、満足できる税理士選びの秘訣と言えるでしょう。信頼できるパートナーを見つけ、事業成長を加速させましょう。