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食品の消費税引き下げで事業者はどうなる?メリット・デメリットと消費税1%の仕組み

2026-09-14

「食品の消費税が1%になる」

そんなニュースを聞くと、消費者にとっては「食品が安くなる」という喜ばしいイメージが先に来るのではないでしょうか。

一方、食品を販売したり仕入れたりする事業者にとっては、必ずしも単純なメリットになるとは限りません。

消費税は、売上にかかる消費税だけでなく、仕入れや経費にかかった消費税もあわせて計算する仕組みだからです。

この記事では、食品の消費税引き下げを題材に、事業者にどのような影響が考えられるのかを見ながら、消費税の基本的な仕組みをわかりやすく解説します。

食品の消費税1%への引き下げはいつから?

2026年9月現在、政府は2027年4月1日から2年間、現在軽減税率(8%)が適用されている飲食料品の消費税率を1%に引き下げる基本方針を示していますが、関連法案はまだ成立していません。

2026年8月5日に閣議決定された基本方針では、物価高への対応として、軽減税率の対象となっている飲食料品の消費税率を1%とする方針が示されました。

消費税1パーセントへの引き下げは、今後の法案提出・国会審議によって実際の制度内容が確定するため、この記事では「仮に1%になった場合」を前提に、事業者への影響を考えていきます。

●参照:内閣官房 「給付付き税額控除」の制度導入の基本方針(令和8年8月5日閣議決定)

そもそも消費税はどう計算される?「売上の消費税-仕入の消費税」が基本

消費税を理解するうえでまず押さえておきたいのが「仕入税額控除(課税仕入れにかかった消費税額を、納付する消費税額から差し引ける制度)」です。

納付税額は、次のように計算します。

課税売上にかかる消費税額-課税仕入れにかかった消費税額=納付する消費税額

例えば、100万円の商品を消費税率10%で販売し、仕入れに60万円(消費税率10%)かかったとします。

売上にかかる消費税は10万円、仕入れにかかった消費税は6万円なので、差額の4万円を納付します。

反対に仕入れにかかった消費税額のほうが多ければ、一定の要件のもとで還付を受けられます。

●参照:国税庁 消費税のしくみ

食品の税率が1%になっても、仕入れがすべて1%になるわけではない

ここで注意したいのは、食品の税率が1%になるからといって、事業者が行うすべての取引が1%になるわけではないという点です。

現在の軽減税率制度では、酒類を除く飲食料品の販売に8%の軽減税率が適用され、外食やケータリングなどは対象外で標準税率10%が適用されています。

また、食品を販売する事業者が購入するパック(包装資材)や機械・設備なども、食品そのものではないため、原則として標準税率10%の課税仕入れになります。

●参照:国税庁 No.6102 消費税の軽減税率制度

つまり仮に食品の税率が1%になった場合、食品の売上・食品の仕入れは1%になる一方、パック(包装資材)や機械・設備などには10%となるものがあり、外食の売上は10%のままになります。

このように、取引ごとに税率を確認する必要があります。

食品小売・食品製造業では、消費税率の引き下げで何が変わる?

食品の売上と食品の仕入れがどちらも1%になると仮定すれば、この部分だけを見た税率差は小さくなります。
一方、パック(包装資材)や冷蔵設備・製造機械などを購入する場合には10%の消費税を支払うことになります。

例えば、食品の年間売上1,000万円(税抜)・食品の年間仕入700万円(税抜)の食品小売店が、冷蔵設備を200万円(税抜)で購入したケースで考えてみましょう。

仕入れの本体価格(消費税を除いた金額)は、食品仕入700万円+設備投資200万円=900万円です。

ここでは、税率が変わっても本体価格は変わらないものとします。

まず、売上にかかる消費税を比べてみましょう。

現在(食品の税率8%):食品の売上にかかる消費税=80万円
仮に食品が1%になった場合:食品の売上にかかる消費税=10万円

食品の税率が8%から1%に下がれば、消費者が支払う税込価格がその分下がる場合、事業者が売上時に受け取る消費税額も70万円減少します。

一方、事業者が納める消費税も、仕入税額控除との関係で変わります。
したがって、「納税額が70万円減った=事業者の利益が70万円増える」というわけではありません。

消費税率の引き下げによる影響を考えるときは、納税額だけでなく、販売価格、仕入れ価格、仕入税額控除、そして実際にお金が入る・出るタイミングまで含めて考える必要があります。

また、消費税率が8%から1%に下がった場合でも、実際の販売価格がどのように変わるかは、事業者の価格設定などによって異なります。
例えば、本体価格1,000円の商品について、税率引き下げ分をそのまま販売価格に反映すれば、税込価格は1,080円から1,010円になります。一方で、税込価格を維持する場合など、価格設定によって事業者や消費者への影響は変わります。

このため、「消費税率が7ポイント下がる=事業者の利益率が7ポイント上がる」ということではありません。

さらに、設備投資を行う場合には、仕入先への支払いと消費税の還付を受けるタイミングにズレが生じることがあります。

設備投資の消費税20万円分は購入時に一括して支払いますが、仕入税額控除による還付を受けるのは、原則として確定申告後です。
そのため、最終的に還付を受けられる場合でも、還付されるまでの間は一時的に資金を用意しておく必要があります。

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農家はどうなる?農産物が1%でも、すべての仕入れが1%になるわけではない

農家についても考え方は同じです。

農産物の販売に1%の消費税が適用されても、農業機械や設備などがすべて1%になるわけではありません。

例えば、農産物の年間販売額500万円(消費税率1%)の農家が、農業機械を150万円で購入したとします。

まず、現在の軽減税率8%で、お金の流れを順番に見てみます。

①仕入先への支払い(消費税込み)
農業機械:150万円+消費税15万円(10%)=165万円
支払い合計:165万円②消費税の申告・納税
売上にかかる消費税:500万円×8%=40万円
差し引ける仕入税額:15万円(機械)
納付額:40万円-15万円=25万円③消費税の精算まで含めた支出額
165万円+25万円=190万円

続いて、仮に農産物が1%になった場合も、同じ手順で計算します。

①仕入先への支払い(消費税込み)
農業機械:150万円+消費税15万円(10%)=165万円
支払い合計:165万円②消費税の申告・納税
売上にかかる消費税:500万円×1%=5万円
差し引ける仕入税額:15万円(機械)
納付額:5万円-15万円=▲10万円(10万円の還付)③消費税の精算まで含めた支出額
165万円-10万円(還付)=155万円

現在の8%から1%に税率が下がると、農産物の売上にかかる消費税は40万円から5万円に減少します。

一方、農業機械の購入時には10%の消費税15万円を支払いますが、本則課税の課税事業者であれば、一定の要件のもとで仕入税額控除の対象となります。

このため、今回の単純化した例では、1%への引き下げによって消費税の納付・還付額が大きく変わります。

ただし、「35万円得をする」と考えるのは適切ではありません。

農産物の販売価格が税率引き下げ分だけ変われば、顧客から受け取る税込売上も変わるためです。

このように、消費税率の変更による事業者への影響は、納税額や還付額だけでなく、販売価格や仕入れ価格を含めたお金の流れ全体で考える必要があります。

ただし、この還付を受けられるのは課税事業者に限られます。

政府の基本方針でも、仕入税額控除の還付を受けられない農業従事者等への影響を見極めたうえで対応を検討する方針が示されています。

免税事業者(課税売上高が一定以下などの理由で消費税の申告・納税義務がない事業者)は、そもそも還付を受けられないため、10%の仕入れにかかった消費税がそのままコストとして残ってしまう点に注意が必要です。

飲食店はどうなる?食材が安くなっても、資金繰りのリズムが変わることに注意

店内飲食などの外食は軽減税率の対象外なので、売上にかかる消費税は10%のままです。

一方、仕入れる食材は軽減税率の対象になるため1%になります。

「食材が安くなる分、飲食店も得をするのでは」と思うかもしれませんが、仕入先への支払いまで含めて計算すると、単純にそうとは言えません。

年間売上1,000万円(消費税率10%)、食材の年間仕入れ400万円の飲食店で考えてみます。

まず、現在の軽減税率8%で、お金の流れを順番に見てみます。

①仕入先への支払い(消費税込み)
食材:400万円+消費税32万円(8%)=432万円
支払い合計:432万円②消費税の申告・納税
売上にかかる消費税:1,000万円×10%=100万円
差し引ける仕入税額:32万円(食材)
納付額:100万円-32万円=68万円③消費税の精算まで含めた支出額
432万円+68万円=500万円

続いて、仮に食材が1%になった場合も、同じ手順で計算します。

①仕入先への支払い(消費税込み)
食材:400万円+消費税4万円(1%)=404万円
支払い合計:404万円②消費税の申告・納税
売上にかかる消費税:1,000万円×10%=100万円
差し引ける仕入税額:4万円(食材)
納付額:100万円-4万円=96万円③消費税の精算まで含めた支出額
404万円+96万円=500万円

今回のように、仕入先が税率の引き下げ分を販売価格に反映し、飲食店が本則課税で仕入税額控除を受ける場合、年間の資金流出額は単純化するとほぼ変わりません。

食材の税率が下がった分、仕入先への支払いは減りますが、その分だけ仕入税額控除も小さくなるため、納付する消費税額が増える方向に働くからです。

ただし、これはあくまで単純化したケースです。

仕入先が価格を据え置く場合や、飲食店が簡易課税を選択している場合などは、結果が異なります。

簡易課税の場合や、仕入先が価格を据え置く場合はこの限りではありません。

とはいえ、「年間合計が同じだから問題ない」わけでもありません。

仕入先への支払いは仕入れのたびに少しずつ発生する一方、消費税の納税は確定申告のタイミングでまとまった金額を一度に納める必要があります。

この支払いのリズムのズレこそが、飲食店にとっての本当の資金繰りの論点です。

簡易課税を選択している飲食店は計算方法自体が変わらない

簡易課税を選択している場合は事情が異なります。

飲食店業は簡易課税の「第4種事業」に区分され、みなし仕入率は60%です。

この計算方法では売上高だけをもとに納税額が決まるため、食材の仕入れ税率が変わっても計算方法そのものは変わりません。

●参照:国税庁 No.6505 簡易課税制度

●参照:国税庁 No.6102 消費税の軽減税率制度(外食の定義)

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同じ事業者でも、本則課税と簡易課税で結果が変わる

ここまでの例は、実際の仕入れにかかった消費税額を控除する「本則課税」が前提です。

簡易課税制度※を選択している事業者は、実際の仕入税額ではなく、売上にかかる消費税額に業種ごとの「みなし仕入率」を乗じて仕入控除税額を計算します。

※簡易課税を選択できるのは、基準期間(原則2期前)の課税売上高が5,000万円以下の事業者に限られます。

先ほどの「食品小売・食品製造業」のパートで見た食品小売店の例を、今度は簡易課税で計算し直してみましょう。

食品の年間売上1,000万円(消費税は1%で 10万円)食品の年間仕入700万円(消費税は1%で 7万円)冷蔵設備投資200万円(消費税は10%で 20万円)

この例では、売上にかかる消費税は10万円でした。

食料品の譲渡に係る小売業は「第2種事業」に区分され、みなし仕入率は80%です。

仕入控除税額は10万円×80%=8万円となり、納税額は10万円-8万円=2万円です。

本則課税であれば、食品仕入・設備投資の実際の消費税額(27万円)をもとに計算されるため、10万円-27万円=▲17万円、つまり17万円の還付になります。

一方、簡易課税では売上にかかる消費税だけをもとに機械的に計算されるため、実際の仕入れの内容が反映されず、2万円の納税になります。

この例に限って言えば、17万円の還付が受けられる本則課税のほうが、簡易課税より19万円有利という結果です。

ただし、これは今回の例(設備投資という大きな10%の課税仕入れがある年)に特有の結果です。

設備投資のような大きな買い物がない年や、10%の課税仕入れが少ない事業者では、簡易課税のほうが有利になることもあります。

同じ売上・仕入れでも、課税方式によって結果が大きく変わることがある、という点は覚えておきたいところです。

とはいえ、簡易課税には計算・申告の事務負担を軽減できるメリットもあります。

「簡易課税は不利」と単純に決めつけず、自社の売上・仕入れ構成をもとに本則課税との有利不利を確認しておくことをおすすめします。

●参照:国税庁 No.6509 簡易課税制度の事業区分

消費税引き下げのメリット・デメリットは「売上・仕入れ・課税方式」で変わる

消費税引き下げのメリット・デメリットは、すべての事業者に同じように現れるわけではありません。

売上にどの税率が適用されるのか、仕入れや経費にはどの税率が適用されるのか、さらに本則課税か簡易課税かによって、影響は変わります。

そのため、「食品の消費税が1%になれば事業者は得」「飲食店は損」と単純に判断することはできません。

ここまでの内容を、事業者目線のメリット・デメリットとして整理してみましょう。

消費税引き下げのメリットとしては、食品小売業・食品製造業・農家のように、自社の売上そのものが軽減税率の対象となる事業者では、税率が下がることで消費税の納付額が減少する可能性があることが挙げられます。

また、本則課税の事業者が大きな設備投資を行った場合には、売上にかかる消費税額よりも仕入税額控除の対象となる消費税額が大きくなり、結果として還付が生じることがあります。

ただし、これは食品の税率引き下げそのものによって「設備投資が得になる」という意味ではありません。

設備投資に伴って10%の消費税を支払う一方、売上側の消費税率が1%になることで、控除しきれない仕入税額が生じる可能性があるということです。

一方、消費税引き下げのデメリットとしては、飲食店のように売上には10%、仕入れた食材には1%が適用される事業者では、食材にかかる仕入税額控除が小さくなり、納税額が増える方向に働く可能性があることが挙げられます。

また、仕入先への支払いと消費税の納税は同じタイミングで行われるとは限らないため、税率変更によって資金が出ていく時期と納税する時期の関係が変わる可能性があります。

また、税率変更に伴うレジや会計システム、請求書・価格表示などの対応が必要になることも考えられます。

ただし、これまで見てきたとおり、「消費税の納付額が減ること」と「事業者の手元に残るお金が増えること」は同じではありません。

メリット・デメリットのどちらであっても、税率変更によって売上・仕入れ・経費・資金繰りがどのように変わるのかを個別に確認することが大切です。

消費税率が変わるとき、事業者が確認したい4つのポイント

ここまで見てきたように、食品の消費税引き下げの影響は業種ごとに異なり、「納税額が増える/減る」だけで損得を判断することもできません。

税率が変更されることになった場合、まずは次の4点を確認しましょう。

  1. 自社の売上にどの税率が適用されているか(食品だからといって、すべてが1%になるとは限りません)
  2. 仕入れ・経費にどの税率が適用されているか(食品の仕入れだけでなく、機械・設備、外注費、包装資材なども確認)
  3. 本則課税か簡易課税か(同じ売上・仕入れでも、計算方法によって結果が変わります)
  4. 納税額・還付額だけでなく、資金が出ていく・戻ってくるタイミングも確認する

まとめ

食品の消費税引き下げは、「税率が下がる=事業者の負担が軽くなる」「納税額が増える=事業者が損をする」と単純に判断できるものではありません。

消費税の影響を考えるには、①売上にかかる消費税、②仕入れ・経費にかかる消費税、③仕入税額控除、④本則課税・簡易課税の違いを分けて考える必要があります。

さらに、消費税の納付・還付は、実際の売上代金や仕入代金の支払いとはタイミングが異なるため、税額だけでなく資金繰りまで含めて考えることが重要です。

食品の消費税が実際に1%へ引き下げられる場合には、自社の売上・仕入れ・経費にどの税率が適用されるのかを確認し、税率変更による影響を事前にシミュレーションしておきましょう。

自社にとってどんな影響があるのか判断に迷ったときは、早めに専門家へ相談してみましょう。


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※本記事の税率・制度情報は2026年9月時点の情報に基づいています。今後の国会審議等により、内容が変更される可能性があります。

損益計算書の読み方|5つの利益から会社の改善点を見つける実践ガイド

2026-09-07

多くの経営者が、損益計算書(P/L)を見ながら次のような疑問を感じています。

  • 売上は伸びているのに、なぜ利益が残らないのか
  • どの数字を改善すれば会社の利益は増えるのか
  • 決算書を経営改善にどう活かせばいいのか


損益計算書の数字は「見るだけ」では意味がありません。
本当に重要なのは、数字から次の経営アクションを導き出すことです。


以前の記事「決算書を正しく読むために押さえたいポイント・損益計算書の読み方(基礎編)」
では、損益計算書に登場する「5つの利益」の定義や、収益・費用の違いといった基本を解説しました。

今回は一歩進んだ【実践編】として、5つの利益から会社の改善点を見つける方法を解説します。

1. 実践・損益計算書の読み方:利益の「差(ギャップ)」から課題を見抜く

損益計算書(P/L)を経営に活かすための第一歩は、5つの利益を単体で追うのではなく、利益と利益の間の「差(ギャップ)」に注目することです。

引き算で残っていく利益のプロセスを確認することで、「どこまでは順調で、どこから利益を失っているのか」という会社のボトルネックが浮き彫りになります。

5つの利益・構造マップ:引き算の過程にヒントがある

まずは、売上から最終利益にいたるまでの全体像を整理しましょう。

どのステップで、どのようなコストが引かれているかを把握することが、正しい現状分析のスタートです。

項目

計算内容

残る利益

経営的な意味(山さんの視点)

売上高

すべての源泉

1年間にお客さまから頂いたお金の総額

() 売上原価

商品の仕入や製造コスト

売上総利益(粗利)

商品・サービスそのものの実力値。
ここが薄いと商売が成り立ちません。

() 販管費

給料·家賃·広告費など

営業利益

本業で稼ぐ力。★最重要。
会社を運営した結果、いくら儲かったかを示します。

() 営業外収益

() 営業外費用

支払利息や配当金など

経常利益

会社の総合的な実力。
財務活動を含めた「普段の会社の状態」を表します。

() 特別利益

() 特別損失

資産売却や災害損失など

税引前当期純利益

今期だけの特殊事情。
毎年のことではない、臨時的な損益を含めた結果です。

() 法人税等

国に納める税金

当期純利益

最終的に残る軍資金。
来期への投資や貯金に回せる、真の利益です。

① 売上総利益と営業利益のギャップ(販管費の妥当性)

売上総利益(粗利)は出ているのに、営業利益がほとんど残っていない場合。

これは商品力はあるが、販管費(販売管理費)が重すぎる状態です。

具体的には、人件費・家賃・広告費・外注費などが利益を圧迫している可能性があります。

売上を増やす前に固定費の見直しや業務効率化を検討する必要があります。

② 営業利益と経常利益のギャップ(財務の健全性)

営業利益は出ているのに、経常利益が低い場合。

これは借入金の利息負担が大きい可能性があります。

また、株式投資・為替・不動産投資など、本業以外の投資で損失が出ているケースもあります。

この状態では本業で稼いだ利益が財務コストで消えてしまうため、資本構成の見直しが必要になります。

③ 経常利益と当期純利益のギャップ(一過性のリスク)

経常利益は出ているのに、当期純利益が低い場合。

これは、固定資産売却損・災害損失・役員退職金など、一時的な特別損失が発生している可能性があります。

来期の経営判断を行う際には、こうした特殊要因を除外して分析することが重要です。

2. 損益計算書 5つの利益:数字に隠れた「経営のヒント」

5つの利益にある数字は、会社の実態を把握するための大切な情報源です。

正しく読んで、現状を正確に把握しましょう。

読み方① 売上総利益(粗利):商品力の証明

売上総利益(粗利)は、売上から原価を引いたもので、商品1つを売ったときにどれだけの価値を生み出せるかを示すバロメーターです。

もし粗利率が下がっているなら、原価高騰を価格に転嫁できていない、あるいは不必要な値下げ競争に巻き込まれている危険信号です。

まずは商品自体の「稼ぐ力」を見直す必要があります。

読み方② 営業利益:本業の稼ぐ力

営業利益は、会社を組織として運営し、本業のビジネスでどれだけの儲けを出せたかを表す最重要指標です。

ここが赤字ということは、売れば売るほど会社の資金が流出する「負の構造」に陥っていることを意味します。

販促費や人件費などの固定費が、今の売上規模に見合っているかを厳しく精査すべきタイミングです。

読み方③ 経常利益:会社の実力

経常利益は、本業だけでなく、借入金の利息支払いや受取配当金など、会社の経常的な活動すべてを反映した「実力値」です。

銀行融資の審査において、この経常利益が最も重視されるのは、会社が平時の状態でどれだけ安定して利益を出せるかを見られているからです。

経営者にとって、まさに会社の「地力」を証明する数字といえます。

読み方④ 税引前当期純利益:特殊要因を含む利益

経常利益に、固定資産の売却や災害による損失など、その期にしか発生しない臨時的な損益(特別損益)を加味したのが税引前当期純利益です。

あくまで今期特有の事情を含んだ結果であるため、会社の将来を予測する経営判断においては、一過性の「参考値」として冷静に見極める必要があります。

読み方⑤ 当期純利益:会社の体力

当期純利益は、法人税などの支払いをすべて終えた後に、最終的に手元に残る利益です。

この利益をコツコツと積み上げることで内部留保が厚くなり、将来の設備投資や新規事業への余力が生まれます。
これこそが、銀行借入に頼らない無借金経営への確かな一歩となります。

法人税は企業の所得(益金 - 損金)に対して課税されます。

●参照:国税庁 No.5759 法人税の税率

3. 損益計算書の分析例:営業利益を1%改善するシミュレーション

「営業利益を1%改善したい」と考えた場合、多くの経営者は売上を増やそうと考えます。

しかし、実際にはもっと効率的な方法があります。

【事例】年商1億円、営業利益500万円(5%)の会社

  • 売上高:1億円
  • 売上原価:6,000万円(粗利率40%)
  • 販管費:3,500万円
  • 営業利益:500万円(5%)

ここで「営業利益を1%(100万円)増やして600万円にしたい」場合の打ち手を比較してみましょう。

改善ルート 必要なアクション 難易度 山さんのアドバイス
A:売上アップ 250万円の売上アップが必要 広告費や営業コストも増える罠に注意!
B:原価ダウン 原価を1.6%下げる 仕入交渉やロス削減。利益率が直接上がる!
C:固定費削減 8.3万円をカット まずここから。 無駄なサブスク等、即効性アリ!

【解説】
ルートA:売上アップ(250万円の増収が必要)

「利益を100万円増やすなら、売上も100万円増やせばいい」と考えがちですが、売上が増えると同時に「売上原価(材料費など)」もセットで増えることを忘れてはなりません。

計算式: 増加させたい利益 ÷ 粗利率 = 必要な売上高
当てはめ: 100万円 ÷ 40%(0.4) = 250万円


粗利率が40%の会社の場合、売上のうち40%しか利益になりません。
そのため、手元に100万円の利益を残すためには、その2.5倍にあたる250万円分を売ってこなければならないのです。

ルートB:原価ダウン(原価を1.6%下げる)

売上はそのままで、仕入価格の交渉や廃棄ロスの削減によって「原価」そのものを削るパターンです。

計算式: 増加させたい利益 ÷ 現在の売上原価 = 必要な削減率

当てはめ: 100万円 ÷ 6,000万円 = 約1.66%

現在の原価6,000万円のうち、わずか1.6%をカットできれば、その削った分が丸々「利益」にスライドします。

売上を250万円伸ばすよりも、仕入先との交渉やオペレーションの改善(ロス削減)のほうが現実的であるケースは非常に多いです。

ルートC:固定費削減(月8.3万円をカット)

家賃、人件費、広告宣伝費、通信費などの「販管費」を削るパターンです。

計算式: 増加させたい利益 ÷ 12ヶ月 = 1ヶ月あたりの削減額

当てはめ: 100万円 ÷ 12ヶ月 = 約8.33万円

固定費は売上の増減に関係なく出ていくお金です。
ここを月々約8.3万円削ることができれば、年間で100万円の利益が確実に上乗せされます。

ルートAのように必死に営業をかけたり、ルートBのように仕入先と交渉したりする前に、「今すぐ解約できる不要なサブスクや、過剰な広告費はないか?」を見直すのが最も確実で低リスクな方法です。

このようにどのレバーを動かすと最も効率的に利益が改善するかを分析することが、損益計算書を経営に活かすポイントです。

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4. 損益計算書をリアルタイム経営に活かすクラウド会計

従来の経営では決算が終わってから数字を見るというケースが多くありました。

しかし現在ではクラウド会計freeeを活用することでリアルタイムで会社の利益を把握することが可能になっています。

自計化で「数字の鮮度」を保ち、銀行口座やクレジットカードを連携することで、売上・経費・利益を自動で集計できます。

これにより「先月は粗利が下がったから値上げ交渉をしよう!」といったスピーディな経営判断が可能になります。

5. まとめ:損益計算書を読み解き、攻めの経営へ

損益計算書の「5つの利益」を理解することは、会社の経営状態を正しく把握することにつながります。

数字を正しく読み取り、リアルタイムで管理することで根拠のある経営判断ができるようになります。

もし

  • 自社の損益計算書の分析方法がわからない
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  • 経営数字を改善したい

という方は、ぜひ一度ご相談ください。

山本聡一郎税理士事務所
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初めての採用、従業員雇用で活用できる助成金・補助金とは

2026-08-31

「いよいよ事業が拡大してきた。そろそろ一人、スタッフを採用したいな。」 

そう考えたとき、経営者の頭をよぎるのは

「給料以外にどれくらいコストがかかるのか?」

「何か国からのサポートはないのか?」

という不安と期待ではないでしょうか。

初めての採用は、会社にとって大きな一歩ですが、同時に雇用保険や社会保険の負担など固定費も一気に増えます。

そこで賢い経営者が必ずチェックしているのが、従業員の採用や雇用継続に活用できそうな助成金や補助金の存在です。

今回は、初めて従業員を雇う際に検討すべき主要な支援策と、失敗しないための準備について解説します。

1. そもそも助成金と補助金は何が違う?

雇用シーンでよく耳にするこの2つ、実は性質が全く異なります。

要件を満たせばもらえる助成金

主に厚生労働省が管轄しており、財源は企業が支払う雇用保険料です。

「正社員化した」「研修を行った」など、国が定める要件を満たし、適切な手続きを行えば、高い確率で受給できるのが特徴です。

採択に通ればもらえる補助金

主に経済産業省などが管轄しており、財源は税金です。

事業拡大やIT導入などの投資を支援するもので、予算枠が決まっているため、申請しても審査(採択)に通らなければ1円ももらえません。

2. 狙うべきは助成金

初めての採用において、確実性を重視するなら狙うべきは助成金です。

 「人を雇用する」という行為そのものが受給のきっかけになるため、制度を正しく理解していれば、採用コストを大幅に軽減できるからです。

3. 初めての採用で検討したい主要助成金

初めての雇用で使いやすい、代表的な助成金を紹介します。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)

もっともメジャーな助成金です。有期雇用(アルバイト等)で雇い、半年後に正社員へ転換させることで受給できます。
メリット: ミスマッチを防ぎつつ、まとまった資金を確保できる。

●参照:厚生労働省 キャリアアップ助成金

非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を行った事業主に対して助成される制度です。

特定求職者雇用開発助成金

高齢者や障害者など、就職が困難な求職者をハローワークなどの紹介により雇い入れた事業主に助成される制度です。


●参照:厚生労働省 特定求職者雇用開発助成金

高齢者(60歳以上)や障害者、母子家庭の母など、就職が困難な方をハローワーク等の紹介で雇い入れる場合に受給できます。※対象者によって助成額が変わります。

両立支援等助成金

育児休業や介護休業を取りやすい環境を整え、実際に利用者が選ばれた場合に支給されます。最初から「働きやすい職場」であることをアピールできるため、採用力の強化につながります。

●参照:厚生労働省 両立支援等助成金

育児休業や介護休業など、仕事と家庭の両立を支援する制度を導入・利用した事業主に対して支給される助成金です。

人材開発支援助成金

採用した従業員に対して、専門的な研修や訓練を行った際にかかる経費や、訓練期間中の賃金の一部が助成されます。未経験者を採用して育てたい場合に非常に有効です。

●参照:厚生労働省 人材開発支援助成金

企業が労働者に対して職業訓練や研修を実施した際の費用や賃金の一部を助成する制度です。

4. 【重要】助成金を受け取るために、採用前に準備すべきこととは

助成金は「雇ってから考える」では手遅れになるケースがほとんどです。

雇用保険・社会保険の加入

助成金の原資は雇用保険です。

また、正社員雇用であれば社会保険への加入も必須要件となります。

これらへの未加入は法律違反とみなされ、助成金の申請資格を失います。

就業規則の整備

多くの助成金で「就業規則に転換ルールが明記されていること」などが求められます。

10人未満の事業所でも、助成金申請のためには規則を作成し、実態に即した運用が必要です。

法定帳簿の管理

出勤簿(タイムカード)、賃金台帳、労働者名簿の「法定三帳簿」が1分単位で正確に管理されている必要があります。

5. 従業員雇用後にも活用できる助成金とは

人を雇った後も、会社の成長段階に合わせて活用できるものがあります。

働き方改革推進支援助成金

生産性を高めるために、新しい勤怠管理システムの導入や、労働時間の短縮に取り組む際に活用できます。

●参照:厚生労働省 働き方改革推進支援助成金

労働時間の削減や勤務間インターバル制度の導入など、働き方改革に取り組む中小企業を支援する助成金です。

業務改善助成金

生産性を向上させ、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を引き上げた場合に、設備投資費用の一部が助成されます。

賃上げと設備投資を同時に考えているなら必見です。

●参照:厚生労働省 業務改善助成金

生産性向上のための設備投資などを行い、事業場内最低賃金を引き上げた場合に費用の一部が助成されます。

6. 山さんのアドバイス:助成金は「後払い」という罠

ここが一番の注意点です。

助成金は、先にお金を払って(給料を半年~1年払い続けて)、その実績を報告した後に入金されます。 

「助成金が入るから給料が払える」という考えは大変危険です。

まずは「助成金なしでも半年間は雇用を維持できるキャッシュフロー」があるかを確認しましょう。

採用や雇用で活用できる補助金はあるのか

「採用」そのものを直接の目的とした補助金は、実はそれほど多くありません。

しかし、「新しい事業を始めるために人を雇う」という文脈であれば、活用できる強力な補助金が存在します。

事業再構築補助金、ものづくり補助金

これらは本来、設備投資やシステム開発を支援するものですが、事業の拡大に伴う人件費が加味されたり、雇用を増やすことで審査が有利になったり、補助率がアップする特例が設けられることがあります。

●参照:中小企業庁(経済産業省) 事業再構築補助金

新分野展開や事業転換などの大胆な事業再構築を行う中小企業を支援する補助金制度です。

●参照:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金総合サイト

中小企業の革新的な設備投資やサービス開発を支援する補助金制度です。

デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)

新しい従業員を雇う際、その人のためのパソコンや、非効率な業務を改善するためのクラウドソフト(勤怠管理や給与計算など)を導入する費用を補助してもらえます。

●参照:中小企業庁(経済産業省)デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)

中小企業が生産性向上のためにITツール(ソフトウェアやクラウドサービス等)を導入する際の費用の一部を補助する制度です。

山さんの視点:補助金は「攻め」、助成金は「守り」

補助金は「新しいことを始めるための資金」として活用し、助成金は「雇用という継続的なコストを支える資金」として活用するのが賢い経営者のやり方です。

どちらも「公的な支援」であることに変わりはありませんが、自社のフェーズに合わせて使い分けることが重要です。 

7. 従業員の長期的な雇用のために大切なこと

助成金をもらうことだけがゴールではありません。

大切なのは、雇った人が「この会社で長く働きたい」と思える環境を作ることです。 

適切な給与、明確な評価制度、そして何より経営者との信頼関係。

これらが揃って初めて、採用はコストではなく投資に変わります。 

まとめ:採用は守りを固めてから攻める

初めての採用における助成金活用は、雇う前の書類準備と雇った後の資金繰り計画がセットで必要です。 

「うちはどの助成金が使える?」

「手続きが難しそう」

と不安な方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

提携する社労士とともに、貴社の「攻め」の採用を全力でサポートいたします。

山本聡一郎税理士事務所 YouTubeチャンネル:【創業支援】税理士の山さん

家賃収入の確定申告は必要?副業でも税務署にバレる理由とは

2026-08-24

不動産投資や駐車場の経営を副業で始めると、ふと頭をよぎるのが「副業であれば少額だし、確定申告をしなくてもバレないのでは?」という誘惑です。

しかし、税務調査の現場を知る立場から言わせていただくと、不動産の無申告ほどバレやすいものはないというのが現実です。

本記事では、なぜ家賃収入の無申告がバレるのか、その裏側と正しい申告のポイントを解説します。

1. なぜ家賃収入・駐車場収入の無申告は税務署にバレるのか?

「現金で受け取っているわけではないし、通帳を見られなければ大丈夫」という考えは非常に危険です。

税務署は独自のルートで情報を掴んでいます。

① 不動産登記情報のネットワーク

不動産を売買したり、相続したりすると必ず登記を行います。

税務署はこの登記情報を把握しており、「この人は新しく物件を手に入れた=家賃収入が発生しているはずだ」という目星を付けています。

② 「支払調書」による包囲網

借り主が法人や個人事業主の場合、彼らは支払った家賃を自社の経費として申告します。

その際、誰にいくら払ったかを記した「支払調書」を税務署に提出する義務があるため、あなたの氏名と受取額は筒抜けになります。

③ 銀行口座の入出金履歴と実地調査

税務署は、税務調査において必要がある場合、金融機関に対して預金口座の照会を行う権限を有しています。

また、賃貸物件や駐車場の現地確認を行うケースもあります。

2. 副業の家賃・駐車場収入、確定申告が必要なボーダーライン

副業として不動産所得がある場合、申告が必要かどうかは以下の基準で決まります。

所得が20万円を超えたら確定申告が必要

会社員などの給与所得者で、勤務先で年末調整を受けている場合、給与以外の所得(不動産所得など)の合計額が年間20万円を超えると、所得税の確定申告が必要になります。

ここで注意すべきは、売上(家賃総額)ではなく「所得(利益)」で判断するという点です。

【申告すべき不動産所得の計算方法】

所得 = 総収入金額(家賃・礼金・更新料など) - 必要経費

※この20万円基準は所得税に関する特例であり、住民税には適用されません。

●外部リンク
国税庁 No.1906 給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合

【要注意】20万円以下でも副業で利益が出れば「住民税」の申告は必須

「20万円以下なら何もしなくていい」というのは誤解です。

所得税(国税)の申告は不要でも、住民税(地方税)には「20万円ルール」が存在しません。

 1円でも利益が出ればお住まいの市区町村への申告が必要です。

これを怠ると、後に市役所から通知が届き、副業が勤務先にバレる原因にもなります。

(h3)会社員が不動産経営の副業をするのは禁止されている?

一般的な会社員の場合、不動産所得は投資や資産運用の側面が強いため、就業規則で副業禁止となっていても、家賃収入や駐車場収入は認められるケースが多いです。

(※ただし、管理業務を自分で行わず委託するなどの配慮が必要な場合もあります)

税務上は5棟10室以上が事業的規模の目安とされていますが、公務員の兼業判断は別途人事院規則等に基づき総合的に判断されます。

●外部リンク

国税庁 No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分

3. 家賃収入・駐車場収入の確定申告で 経費 にできる項目一覧

副業としての家賃収入や駐車場収入は、通常の事業に比べて経費が少ないと思われがちです。

しかし、確定申告時に正しく計上することで大きな節税メリットがあります。

経費項目家賃収入(アパート等)駐車場収入
租税公課建物・土地の固定資産税など駐車場の土地の固定資産税など
管理費・委託費共有部の清掃、管理会社手数料管理委託手数料、集金手数料
修繕費退去後のリフォーム、設備修理アスファルト補修、白線引き直し
減価償却費建物本体、エアコン、給湯器フェンス、精算機、舗装費用
支払利息物件購入ローンの利息分土地購入ローンの利息分
その他経費火災保険料、仲介手数料看板代、現地までの交通費

4. 青色申告で65万円の控除を受けよう

「確定申告=税金をたくさん取られる」と考えがちですが、実際にはその逆です。

確定申告は「所得を正確に申告し、適切な税額を計算する」公平な制度です。

不動産経営が税務上「事業的規模」と認められ(一般的には5棟10室以上が目安とされていますが、実態により判断されます)、さらに以下の要件を満たした場合には、最大65万円の青色申告特別控除の適用を受けることができます。

・複式簿記による帳簿作成
・貸借対照表および損益計算書の提出
・期限内申告
・e-Taxによる電子申告、または電子帳簿保存の要件を満たすこと

事業的規模に満たない場合でも、青色申告を行えば10万円の控除を受けることが可能です。

●参照リンク 国税庁:No.2072 青色申告特別控除

5. 無申告がバレた時の恐ろしいペナルティ

無申告がバレるタイミングはすぐではありません。

何年か経って忘れた頃に突然指摘されるケースが最も厄介です。

無申告が発覚した場合、本来納めるべき税金に加えて、次のような附帯税が課されます。

無申告加算税:原則15%(納付税額が50万円を超える部分は20%)
延滞税:法定納期限の翌日から納付日までの日数に応じて課税(税率は特例基準割合により毎年変動)
重加算税:仮装・隠蔽など悪質と判断された場合は40%

さらに、悪質でない場合でも原則5年、悪質な場合は最長7年まで遡って課税される可能性があります。

数年分の税額と加算税・延滞税を一括で納付することになれば、想像以上の負担になるケースも少なくありません。

まとめ:正しい申告が「最強の資産防衛」

副業での家賃収入や駐車場収入は、一度仕組みを作れば安定して入ってくる貴重な収益源です。

だからこそ、「いつかバレるかも」という不安を抱えながら経営を続けるのは得策ではありません。

正しく経費を計上し、しっかり確定申告を行うこと。

それが、あなたの資産と信用を守る唯一の方法です。

「自分の場合は経費に何が含まれる?」「青色申告にした方がいい?」と迷われた方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

山本聡一郎税理士事務所

YouTubeチャンネル:【創業支援】税理士の山さん

※この記事は2026年8月時点の法令・情報に基づき作成しています。
 最新の法改正等については、国税庁のウェブサイトをご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。

在宅ワークなら自宅の家具・家電は経費?税理士が教える家事按分の正解とNG

2026-08-17

個人事業主やフリーランスにとって、自宅は「オフィス」でもあります。
最近では在宅ワークだけで仕事が完結する方も珍しくありません。
そこで気になるのが、自宅で購入したデスクやエアコン、空気清浄機などは経費にできるのか?という点です。
在宅ワークの場合、「家賃や電気代は家事按分できる」というのは共通認識かと思います。

結論から言えば、「仕事に必要であること」を客観的に証明できれば経費になります。
ただし、何でもかんでも按分すればOKというわけではありません。

1. 経費に「できるもの」と「できないもの」の選別

判断の基準は、そのアイテムが「仕事の遂行に直接関連しているか」です。

① 経費にできる可能性が高い家具・家電

家具: ワークデスク、オフィスチェア、資料保管用の棚など。

家電: 仕事用のパソコン、モニター、プリンター、撮影用ライトなど。

空調: 仕事部屋に設置したエアコンや暖房器具。

② 経費にするのが難しい家具・家電(家事按分もNGな例)

家賃や電気代を按分しているからといって、家の中の物すべてが按分対象になるわけではありません。

家事用家電: 洗濯機、冷蔵庫、電子レンジなどは、生活に不可欠なものであり、仕事に直接必要とは説明しにくいため、原則として経費(家事按分)は認められません。

娯楽用品: リビングのテレビやゲーム機、マッサージチェアなど。

寝具: 「仕事で疲れるから良いベッドを買う」というのは個人の健康管理の範囲とみなされます。

家具や家電も、家賃みたいに家事按分は可能か?

家具や家電の家事按分は理論上は可能ですが、実務では「使い分け」が重要です。

家賃や光熱費と違うのは、「100%仕事専用」と言い切りやすいアイテムが多いという点です。

「按分」して計上すべきもの 

1台のパソコンやタブレットを、日中は仕事、夜はプライベートの動画視聴などで兼用している場合。

この場合は、使用時間の割合(例:仕事7割、私用3割)で按分します。

「100%仕事用」として計上すべきもの

仕事部屋に設置したワークデスクやオフィスチェアなど。

これらは「仕事をするために購入したもの」であり、仕事をしていない時間にわざわざその椅子に座ってくつろぐことは考えにくいため、中途半端に按分せず、100%仕事用として計上するのが自然です。

結論として、家具や家電にも家事按分の概念はあります。

ただし、実務上は按分して計上するよりも仕事専用として100%計上する方が、税務署への説得力が高いという特徴があります。

◼︎山さんの補足:金額に注意!
1つ10万円を超える家具・家電を購入した場合、その年に一括で経費にはできず、減価償却(数年間に分けて経費にする)が必要になります。

ただし、青色申告なら40万円未満まで一括で経費にできる特例があるので、高価なオフィスチェアやPCを買う際は覚えておきましょう。

国税庁:No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示

国税庁:主な減価償却資産の耐用年数表

2. 税務調査で問われる「空間の独立性」

家事按分を正当化するために最も重要なのは、物理的に空間を分けることです。

税務署は、生活の場と仕事の場が混ざっている状態を非常に厳しく見ます。

① 理想は、仕事専用の部屋を作ること

物理的に生活空間と仕事空間を分けてしまうのが最も良いとされています。
その部屋の面積をベースに家賃や光熱費を按分すれば、税務署も納得するでしょう。

② ワンルームの場合は、分かりやすく明確に

ワンルームの場合は、誰が見ても分かるようにパーテーションで区切る、あるいは「このデスクの一角だけは仕事専用」と明確に分ける工夫が必要です。
生活のついでにダイニングテーブルで仕事をしているだけでは、「プライベートとの区別がついていない」と判断され、按分そのものを否定されるリスクがあります。

3. 家事按分のルール:納得感のある「根拠」を

100%仕事専用でない場合、全額を経費にすることはできません。
「仕事で使っている割合」を算出して計上します。

使用面積で分ける

家の総面積のうち、仕事部屋が占める割合が20%だから、家賃の20%を経費にする。

使用時間で分ける

1日のうち仕事をしている時間の割合で電気代や通信費を算出する。

職種別:家事按分の具体例と計算シミュレーション

出張カメラマン(移動と機材管理がメイン)

移動が多いため「車両関連」を厚めに、自宅は「機材保管場所」として計算するのが合理的です。

車両費(ガソリン・保険・税金・駐車場)

 根拠: 使用日数(週5日撮影に使用など)

 計算例:月の維持費合計が50,000円。

     週5日撮影、週2日プライベート利用の場合。
     50,000円 × 5日 ÷ 7日 = 約35,700円(按分率 約71%)

家賃・光熱費

 根拠: 機材保管スペース + 編集作業の面積

 計算例:家賃 100,000円(40㎡)

     撮影機材(防湿庫やバック紙)の保管と編集デスクで計6㎡を使用。

     100,000円 × 6㎡ ÷ 40㎡ = 15,000円(按分率 15%)

在宅ライター(自宅作業がメイン)

家賃や通信費は高く設定できますが、車の按分は「仕事で使った時だけ」に絞るのが安全です。

家賃・光熱費

 根拠: 仕事部屋の面積 + 仕事時間

 計算例:家賃 80,000円(30㎡)。

     仕事部屋が6㎡。

     80,000円 × 6㎡ ÷ 30㎡ = 16,000円(按分率 20%)

     電気代: 月10,000円。1日10時間仕事(週5日)。

     10,000円 × 10時間/24時間 × 5日/7日 = 約2,900円(按分率 約29%)

通信費(ネット・スマホ)

 根拠: 仕事での使用時間

 計算例:月の通信費12,000円。起きている時間の半分はリサーチや入稿作業。

     12,000円 × 50% = 6,000円(按分率 50%)

車両費

 根拠: 取材や打ち合わせの走行距離

 計算例:月のガソリン代10,000円。総走行距離500kmのうち、取材先への往復が50km。

     10,000円 × 50km ÷ 500km = 1,000円(按分率 10%)

◼︎山さんのワンポイントアドバイス:税務署を納得させる「一行」

確定申告書や帳簿の摘要欄には、単に「家賃」と書くのではなく、「家賃(面積按分20%)」や「ガソリン代(走行距離按分10%)」と、計算の根拠を一言添えておきましょう。

これだけで「ちゃんと計算しているな」という印象を与え、税務調査の呼び出しリスクを下げることができます!

まとめ:領収書と一緒に「現場の写真」を残そう

税務調査で「これ、本当に仕事で使っていますか?」と聞かれた際、最も強い証拠になるのは、「実際にそのデスクや空間を使って仕事をしている風景の写真」です。

物理的に分けられた仕事空間を見せることができれば、説得力は一気に高まります。

当事務所では、あなたの職種や住環境に合わせた最適な按分比率のアドバイスを行っています。「これは経費になる?」と迷ったら、お気軽にご相談ください。

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銀行口座を差し押さえられたらどうなる?突然の凍結を防ぐ手順と解決への出口

2026-08-10

「税金・支払いを滞納していたら、突然口座からお金が引き出せなくなった」――これはドラマの話ではなく、現実に起こる非常に深刻な事態です。

しかし、差し押さえのリスクは銀行口座だけにとどまりません。

また、自己破産を選べばすべてが解決するわけでもありません。

本記事では、差し押さえのリアルな実態と、最悪の事態から抜け出すための方法を解説します。

1. どのような場合に口座を差し押さえられるのか

差し押さえは、債権者(お金を貸している側や役所)が、法律の力を借りて強制的に回収する手続きです。

主に以下の4つのケースで実行されます。

税金・社会保険料(国保・年金)の滞納

税務署や役所は、裁判所の許可を必要とせず、独自の権限で差し押さえを実行できます。

督促状を無視し続けると、ある日突然口座が凍結されます。

●参考リンク 日本年金機構の取り組み(保険料徴収)

奨学金の返済遅延

「教育支援だから厳しいことはされない」という思い込みは危険です。

日本学生支援機構(JASSO)などは、滞納が3ヶ月を超えると個人信用情報機関に登録され、さらに放置すれば裁判所を通じて口座や給与の差し押さえを非常に事務的に執行してきます。

●参考リンク 日本学生支援機構(JASSO) 滞納した場合

借金・ローンの返済延滞

消費者金融等の返済を放置し、裁判所からの「支払督促」を無視し続けた場合、最終的に口座が差し押さえられます。

婚姻費・養育費の未払い

法改正により運用が厳格化されています。
一度でも不払いがあれば、給与や預貯金を差し押さえられるリスクが極めて高い項目です。

2. 差し押さえはどのような手順で行われるのか

差し押さえは、ある日突然、抜き打ちで実行されます。

  1. 督促状・催告書の送付:納期限を過ぎると、郵便物で「最後通告」が届きます。
  1. 身辺・財産調査:執行機関が、あなたの預貯金、勤務先、取引先、所有不動産などを徹底的に調べ上げます。
  1. 差し押さえ実行:銀行や勤務先に「差押通知書」が届いた瞬間に完了します。
    あなたへの通知は、差し押さえられた「後」に届きます。
    事前の予告は100%ありません。

3. 差し押さえの対象は銀行口座だけではない

「口座にお金を置かなければ大丈夫」というのは大きな間違いです。

給与の差し押さえ

勤務先に通知が行き、給料の一部が天引きされます。

滞納の事実が会社にバレるため、社会的信頼を失うリスクがあります。

売掛金の差し押さえ(個人事業主・経営者の場合)

取引先に「〇〇さんへの支払いを止めて、役所に振り込んでください」という通知が行きます。

取引先からの信用は一瞬で崩壊し、事実上の廃業に追い込まれるケースがほとんどです。

生命保険の解約返戻金

積み立て型の保険も調査対象です。強制的に解約させられ、返戻金が回収に充てられます。

動産・不動産

自宅、土地、車、貴金属なども対象となります。

自宅が差し押さえられたらどうなる?
差し押さえ=即退去ではありません。
登記簿に「差押」と記載され、勝手に売却できなくなるのが第一段階です。
その後、競売の手続きが進み、買い手が決まるまでは住み続けることが可能ですが、精神的なプレッシャーは計り知れません。

車の差し押さえはどうなる?
車の場合、いきなりレッカー車で持っていかれるよりも先に、タイヤに「タイヤロック(車輪止め)」をされ、物理的に使用不能にされるケースがあります。
「これから仕事なのに、突然車が使えなくなった!」という事態が突然やってくるのです。

全てを奪われるわけではない、差し押さえ禁止財産

差し押さえは非常に強力な権限ですが、一方で「最低限の生活」を守るためのルールも法律で定められています。
これを「差し押さえ禁止財産」といいます。

生活に欠かせない家財道具

テレビ(1台)、冷蔵庫、洗濯機、ベッドなどは差し押さえられません。

現金(66万円ルール)

手元にある現金であれば、原則として66万円までは差し押さえが禁止されています。
これは「標準的な世帯の2ヶ月分の生活費」として憲法上の生存権を守るためのルールです。
【要注意】 あくまで「手元の現金」の話です。
銀行口座に入っているお金は、1円からでも差し押さえ対象になりますので、過信は禁物です。

年金受給権そのもの
将来受け取る年金自体を差し押さえることはできません(※口座振込後は預金扱いになるため注意)。

差し押さえは、あなたを路頭に迷わせることが目的ではありません。
あくまで支払わせるための強制手段です。
全てを失う前に、まずは今の生活を維持しながらどう解決するかを話し合うことが大切です。

4. 【重要】「自己破産」でも消えない支払いがある

資金繰りに行き詰まった際、「最悪、自己破産すればいい」という声を耳にしますが、法律には自己破産をしても免除されない非免責債権(ひめんせきさいけん)が存在します。

【自己破産しても消えない支払い】

  • 税金・公的な保険料(所得税、住民税、社会保険料、国保、年金など)
  • 養育費、婚姻費用
  • 罰金
  • 慰謝料

これらは自己破産をしても、支払い義務が一生残ります。
また、奨学金は破産で免責されますが、保証人(親族など)に請求が一括で行くため、家族を巻き込む深刻な事態を招きます。

5. 根本的な解決として「債務整理」を検討する

「税金も払えないし、他の借金も膨らんでいる」という場合、弁護士や司法書士を通じて「債務整理」を検討すべきです。

  • 任意整理:利息をカットし、返済額を調整する。
  • 個人再生:借金を大幅に(多くは5分の1程度に)圧縮する。
  • 自己破産:税金(非免責債権)以外の借金をすべてゼロにする。

「税金が消えないのに自己破産する意味があるのか?」と思うかもしれませんが、大いにあります。

他の借金を整理して「月々の返済」を無くすことで、浮いた資金を「税金の完納」に回せるようになるからです。

6. もしも差し押さえられたら?まずやるべきこと

  1. すぐに執行機関(税務署・役所など)へ連絡する 
    払えない、今はお金がないからと、放置することが最も危険です。
    誠実に交渉のテーブルにつくことが第一歩です。
  1. 「換価の猶予」を申請する
    差し押さえられた財産の売却を待ってもらう制度です。
    誠実な納税の意思を見せれば、猶予を相談できる可能性があります。
  2. 専門家に相談する
    税金の滞納は税理士
    へ、借金の整理は弁護士へ。
    どこに相談すべきか迷った場合は、当事務所へ一度ご連絡ください。

まとめ:督促状は「助けて」のサインを送るラストチャンス

差し押さえは、法的手段の最終段階です。

特に公的な支払いから逃げ切ることは不可能です。 

「今は払えない」という時こそ、放置せずに相談してください。

手遅れになる前に、当事務所のような専門家を介して、再建の道を探りましょう。

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ぜひチャンネルをご覧ください。

【創業支援】税理士の山さん https://www.youtube.com/channel/UCVJNYZOHxKC6axaCeq8GxZQ

融資の返済が苦しい場合はリスケ・減額できる?決断のタイミングとデメリットとは

2026-08-03

売上が落ち込み、銀行への返済がキャッシュフローを圧迫している――。
そんな時、検討すべきなのが返済の減額、つまり融資のリスケです。

しかし、リスケはあくまで最終手段です。

まずは今の状況がどれほど危険なのかを知り、自力でできることがないかを確認しましょう。

1. あなたの会社は大丈夫?理想の「借入返済比率」とは

銀行がチェックし、経営者が目安にすべき指標の一つが「債務償還年数(さいむしょうかんねんすう)」です。

理想的な目安:(借入金残高 ÷ キャッシュフロー※1) ≦ 10年以内 

※1 キャッシュフロー ≒ 当期純利益 + 減価償却費※2
※2 減価償却費は、帳簿上の費用であって、実際には手元に残っている現金のため、キャッシュフローに含まれます。

銀行が正常な会社と見なす絶対的なボーダーライン、それが債務償還年数10年以内です。

これが15年、20年を超えてくると、自力での返済は困難とみなされます。

また、売上に対する年間返済額の割合は、一般的に売上の5%~10%以内に収まっているのが理想的です。

これを超えると、資金繰りが一気に苦しくなります。

シミュレーション:もしA社長(飲食店経営)が相談に来たら

売上がコロナ前の8割までしか戻らず、毎月の返済が苦しくなったA社長を想定してみます。

状況(仮定)
 ・借入残高:4,000万円

 ・年間利益:100万円 + 減価償却費:100万円 = 年間キャッシュフロー:200万円
 ・年間返済額:600万円
 ・すでに税金や社会保険料に滞納がある状態

【放置した場合のリスク】 

「あと1,000万円追加で借りて一発逆転!」と考え、銀行へ追加融資を申し込んでも、債務償還年数が20年(デッドラインの2倍)を超えている状態では、審査に通る可能性は極めて低いです。

焦ってビジネスローン等に手を出すと、さらに資金繰りが悪化し、最終的には役所からの差し押さえで事業停止に追い込まれる「最悪のシナリオ」が現実味を帯びてきます。

【専門家が提案する解決のステップ(一例)】 

このような切迫した状況では、追加融資(借金を増やすこと)ではなく、「リスケと分納による止血」を優先的に検討します。

  1. 役所への相談(差し押さえの回避)
    滞納がある場合は、まず税務署や年金事務所へ。
    誠実に現状を報告し、「経営改善計画」を提示することで、差し押さえを猶予してもらいながら分納を継続できる道を探ります。
  2. 銀行へのリスケ要請
    役所との調整状況を報告しつつ、返済条件の変更を依頼します。
    例えば、年間600万円の返済を一時的に「利息のみ」に抑えることができれば、その分を納税や事業立て直しの原資に回せます。
  3. 事業モデルの見直し
    浮いた資金で「不採算メニューの廃止」や「コスト削減」を断行し、年間CF(キャッシュフロー)を改善して、自力返済ができる体質へ戻していく計画を立てます。

◼︎補足として

この指標は、労働集約型や知識集約型をベースとした中小企業の一般的な基準です。
※例に挙げた飲食店もこのカテゴリーに入ります。

不動産賃貸、設備投資型製造業などの資本集約型の場合、債務償還年数が20年でも許容される場合があります。
理由としては、資本集約型の場合、建物や機械などの資産が手元に残っており、その資産価値で借金の担保が取れているからです。

また、ITスタートアップ、SaaSなどのコンテンツ・プラットフォーム型の場合、初期段階では「計算不能(赤字)」でも融資や投資が実行されます。

これらのビジネスはJカーブを描く成長を前提としているため、今の利益ではなく将来の市場シェアで判断されるためです。

一方で薄利多売モデルと言われる卸売業・商社の場合、返済比率が売上の5%でも死活問題になります。
粗利益(利益率)がそもそも2~3%しかないケースが多く、売上の5%を返済に回すと、利益がすべて吹き飛ぶからです。

ここでは「売上」に対する比率よりも、「粗利益」に対する返済比率を見るのが実務的です。

2. リスケを決断すべき本当のタイミング

リスケを検討すべきなのは、資金がショートする3~6ヶ月前で、その時点でリスケの相談をするかどうかを決めなくてはいけません。

来月で資金が尽きるという段階になってから相談に行くのでは手遅れということです。

翌月以降の資金繰り表を作成し、半年以内に現金が底をつくと予見できたときが理想のタイミングです。

この段階であれば、まだ銀行も「再建の意思がある」と見てくれます。

一度でも引き落としができず延滞が始まってしまうと、銀行の態度は一気に硬化し、リスケの交渉難易度は格段に上がります。

3. 【要注意】返済減額と税金・社会保険料の危険な関係

経営が悪化すると、銀行の返済を優先し、税金や社会保険料の支払いを後回しにするケースが非常に多くなります。

しかし、これは経営上最もやってはいけないことなのです。

① 国や税務署は銀行より強い権限を持つ

銀行は話し合いに応じ、合意があれば返済を待ってくれます。

しかし、税務署や年金事務所は法律に基づき、裁判所の許可なく独自の権限で口座や売掛金を差し押さえることができます。

② 返済減額の絶対条件とは

銀行がリスケを承認する際、ほとんどの場合、税金や社会保険料を滞納していないこと(または分納の正式な合意があること)を求められます。

滞納があると、銀行は「リスケで返済を待ってあげても、そのお金が役所に差し押さえられるだけなら意味がない」と判断し、リスケを拒否します。

4. 融資リスケの相談前に!社内で検討すべきこと

銀行へ行く前に、自社でやれることをやり切っているかが成否を分けます。

① 遊休資産や過剰在庫の売却

会社に遊休資産がある場合は、それらを現金化させましょう。
過剰在庫についても同じく現金化し、少しでも返済に回す姿勢を見せることが大切です。

② 役員報酬の見直し

社長や役員自身の痛みを伴う改革は必要です。

返済の減額を相談しても、社長・役員が多額の報酬を受け取っているのが分かれば、「まずは社長自身の生活費を削るのが筋ではないですか?」と、厳しい指摘を受ける可能性が高くなります。

③ 徹底的なコスト削減

サブスク、賃料、広告費などを削り、1円でも多く返済に回す努力をしているかを銀行はチェックしています。

5. 【要注意】銀行は社長のSNSをチェックしている

リスケの交渉中、あるいはリスケを実行している期間中、絶対に気をつけなければならないのがSNSでの発信です。

① 銀行員や税務署員もSNSで実態を調査している

今や金融機関の担当者が融資先の社長のSNS(Instagram、X、YouTubeなど)をチェックするのは常識です。

「返済が苦しい」と頭を下げている一方で、高級レストランでの会食、海外旅行、ブランド品の購入などを投稿していれば、一瞬で信頼を失います。

② 格付けへの影響

銀行員は「貸したお金が社長の放蕩に使われているのではないか?」と疑います。

不適切な投稿が続けば、「この社長に再建の意思なし」と判断され、リスケの打ち切りや追加融資の永久拒絶に繋がるリスクがあります。

③ 税務署への「証拠」提供

SNSで「プライベートを満喫!」と書いた旅行を、帳簿で「視察研修費」として経費計上していれば、税務調査で言い逃れができません。

これらは何も、今回のようなリスケに限った話ではありません。

通常の税務調査や借入審査の際にも、社長のSNSは常にチェックされているということを忘れないようにしましょう。

6. 融資リスケのメリットと最大のデメリット

リスケのメリットは、元金の返済をストップし「利息のみ」にしたり、返済額を半分にしたりして、手元に現金を残せることです。

一方でデメリットとして、新規融資が止まります。リスケ期間中は追加で借りることができません。

7. 追加で融資を受けて、返済に充てることはできる?

「リスケをして融資が止まるくらいなら、新しくお金を借りて今の返済に充てればいい」と考える経営者は少なくありません。

しかし、これは非常に危険なタコ足配当ならぬタコ足返済の状態です。

① 借金で借金を返すのは延命に過ぎない

根本的な経営改善(赤字の解消)ができていない状態で追加融資を受けても、それは問題を先送りにしているだけに過ぎません。

借金が膨らむほど、将来払うべき利息も増え、再建のハードルはどんどん高くなります。

② 銀行は返済原資を見ている

銀行が追加融資をするのは、あくまでそのお金を使って利益を出し、返せる見込みがある時だけです。

返済のために借りるという姿勢が見えた瞬間、銀行の審査は一気に厳しくなります。

「これ以上借りても、返済のために消えていくだけだ…」と感じた時こそが、追加融資を諦め、リスケによって「流出を止める」決断をすべきタイミングなのです。

8. リスケを成功させるための「経営改善計画書」

銀行がリスケに応じてくれるのは、今だけ待てば、将来的に立て直せるという根拠がある時だけです。

・なぜ資金繰りが悪化したのか?

・どのような施策で黒字化するのか?

・いつから返済を元に戻せるのか? 

これらをまとめた経営改善計画書の提出が不可欠です。

まとめ:リスケの成否は税理士との連携が不可欠です

返せないから黙って引き落としを止める(延滞)のが最悪のパターンです。

一度でも延滞すれば、銀行の態度は硬化し、その後の支援は極めて困難になります。

融資のリスケを成功させ、事業を再建させるためには、税理士との密な連携が不可欠です。

銀行が求めているのは、経営者の精神論ではなく、税理士の視点で作成された客観的で緻密な経営改善計画です。

現状の資金繰りを正しく分析し、将来の黒字化に向けた筋道をプロが数字で証明することで、銀行は初めて安心して返済を待ってくれます。

また、社会保険料や税金の滞納がある場合、銀行交渉はさらに複雑になります。

資金がショートする数ヶ月前に、まずは私たちと一緒に数字を整理し、銀行へ再建の意思を伝えに行きましょう。

当事務所では、銀行交渉に強い計画策定と、経営者の皆様の伴走支援を全力で行っています。

山本聡一郎税理士事務所でもYouTube発信を行なっております。 

ぜひチャンネルをご覧ください。 

【創業支援】税理士の山さん

 

YouTuberの撮影で使った旅行・食事は本当に全額経費?税理士が教える『経費の境界線』

2026-07-27

YouTuberの方の中には、「YouTubeの企画で使ったんだから、全部経費で落ちるでしょ?」

そう考えて、旅行代や高級レストランの領収書をすべて経費に計上していませんか?

最近、税務署はYouTuberやインフルエンサーへの調査を強化しています。
そこで最も厳しくチェックされるのが、「プライベートの支出を無理やり経費にしていないか」という点です。

「動画に出演させた=事業用」という単純な理屈は、税務調査では通用しません。
本記事では、YouTuberが迷いがちな経費の境界線と、税務調査で否認されないためのポイントを同じくYouTube発信をしている税理士が解説します。

1. 原則:「売上に貢献しているか」がすべて

税務上の経費の定義は、「事業を遂行するために直接必要なもの(売上を作るために必要な支出)」です。

YouTuberの場合、動画の再生数やチャンネル登録者数を増やすために必要な支出であれば経費になります。
しかし、以下の場合は「経費」とは認められにくくなります。

動画の趣旨と関係ない支出

料理チャンネルなのに、旅行動画を1本出したからといって、その旅行代すべてを経費にするのは困難です。

プライベートとの混同

家族旅行にカメラを持って行って一部を撮影しただけでは、その旅行は「家族旅行(私的支出)」とみなされます。

2. 【ケース別】旅行・食事・美容・実況の境界線

実務で特によく聞かれる3つの項目について、OK・NGの目安をまとめました。

① 旅行・交通費(旅行系・Vlog [ビデオブログ] など)

旅行系YouTuberやVlogの場合、どこまでが「取材」でどこからが「プライベート」かの区別が厳しく問われます。

経費として認められやすいケース
撮影場所の事前下見や、撮影許可を正式に取ってロケを行った際の交通費・宿泊費は、事業に必要な「取材費」です。

また、特定のホテルや観光地のレビューそのものが動画のメインコンテンツであれば、その滞在費も認められる可能性が高くなります。

注意が必要なケース(NGの可能性)
家族や友人が同行した場合、その同行者分の旅費まで経費に含めることはできません。

また、「実家への帰省」などプライベートな目的に対して、ついでにカメラを回した程度の動画では、旅費の全額を経費にするのは非常に困難です。

② 食事代(グルメレポ・大食いなど)

食事代は「人間が生きていくために必要な支出」とみなされるため、税務署のチェックが非常に厳しい項目です。

経費として認められやすいケース

動画内で実際に食べてレビューを行う「実食シーン」がメインの企画であれば、その食材費や外食代は「材料費」となります。

また、動画制作のスタッフや外部の協力者と企画について話し合うための会食(会議費・交際費)も、実態があれば認められます。

注意が必要なケース(NGの可能性)

編集作業の合間に一人で食べた単なる昼食代は、動画に出さない限り、事業主の生活費として扱われます。

また、動画に一瞬映っていたとしても、実態が友人との飲み会であれば、それはプライベートな支出と判断されるリスクが高いです。

③ 美容・衣装代(美容系・コスプレなど)

美容や衣服は「私生活でもメリットがある」とみなされるため、YouTuberとしての特殊性が問われます。

経費として認められやすいケース
普段使いができないようなコスプレ用の衣装や、舞台用の特殊なメイク用品、あるいは「新作コスメの全色レビュー」といった企画のために購入した化粧品は、事業に必要なコストと言えます。

注意が必要なケース(NGの可能性)

撮影で着用するとしても、普段の私服としても使えるブランド服などは、按分(プライベート分を差し引くこと)が必要、もしくは否認される恐れがあります。

また、普段の自分の身だしなみを整えるためのエステや散髪代は、原則として経費には認められません。

④ ゲーム実況・パチンコ実況(課金・軍資金など)

エンタメ系の実況動画では、「遊び」と「仕事」の区別が最も曖昧になりやすいため、非常に慎重な判断が求められます。

経費として認められやすいケース
ゲーム実況の場合、動画で紹介するために購入した新作ソフトや、実況に不可欠な専用の機材(キャプチャーボード等)は「備品」として認められます。

また、ソーシャルゲームの「ガチャ動画」などの企画のために支出した課金代も、その動画から売上(再生数等)が発生しているのであれば、制作費としての側面が強くなります。 

パチンコ実況等では、撮影を行うために必要な「軍資金」が経費の対象となります。

ただし、勝った際の「景品交換所での換金(収入)」を売上に計上していることが大前提です。

注意が必要なケース(NGの可能性)

撮影を行わずに個人的に楽しんでいるゲームの課金代や、動画には出していないプライベートなパチンコでの負け額は、当然ながら経費にはなりません。

また、スマホゲームの課金などで「数百万単位」の高額な支出がある場合、その動画単体で得られた収益とのバランスが著しく悪いと、税務調査で「趣味の支出」と指摘されるリスクが高まります。

3. 「家事按分(かじあんぶん)」を活用する

YouTuberは自宅で編集や撮影を行うことが多いため、「家事按分」が重要になります。

100%経費にするのが難しいものでも、「仕事で使っている割合」を合理的に計算して、その分だけを経費にする方法です。

家賃・光熱費: 部屋の面積比や、撮影・編集に使っている時間比で算出。

通信費・スマホ代: 動画のアップロードやSNS運用に使っている割合で算出。

PC・カメラ: 仕事用とプライベート用で分けるのが理想ですが、共有なら使用頻度で按分。

4. 税務調査で勝つための「証拠」の残し方

税務調査が入った際、調査官を納得させるのは「領収書」だけではありません。

以下の3つをセットで残しておくことが最強の防衛策になります。

領収書の裏にメモ: 「〇月〇日公開の〇〇企画用」と記載。

企画書や台本: 撮影のためにわざわざその場所・物が必要だったという経緯。

動画のURLやスクリーンショット: 実際にその支出がどう動画に使われたかの視覚的証拠。

5. YouTuberの税務について、税理士からアドバイス

「映っているから経費」ではなく、「この支出があったから、この動画が完成し、これだけの収益(またはその可能性)が生まれた」と説明できるかどうかが境界線です。

まとめ:グレーゾーンこそ専門家に相談を

YouTuberの経費は、一般的な事業に比べて「公私の区別」が非常に難しいのが特徴です。

安易に何でも経費にしていると、数年後の税務調査で重加算税を含めた多額の納税を強いられることにもなりかねません。

「これはどこまで経費になるの?」「この按分比率は妥当?」と不安になったら、ぜひ一度当事務所にご相談ください。

エンターテインメント業界特有の税務に精通したスタッフが、貴社の健全な運営をサポートいたします。

山本聡一郎税理士事務所でもYouTube発信を行なっております。
ぜひチャンネルをご覧ください。

【創業支援】税理士の山さん

経営セーフティ共済の貸付は2種類。共済金貸付「10分の1没収」の仕組みと一時貸付金の使い分け

2026-07-21

You Tubeの動画をアップしました。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は節税の文脈で語られがちですが、本来の価値は取引先倒産時の貸付制度にあります。貸付には2種類あり、性格がまったく異なります。

1つ目の「共済金貸付」は、取引先の倒産で売掛金債権等の回収が困難になった際に、無利子・無担保・無保証で借りられる制度です。上限は回収困難額と掛金総額の10倍(最高8,000万円)のいずれか少ない額。ただし重大な注意点として、貸付を受けると貸付額の10分の1に相当する掛金の権利が消滅します。500万円借りれば掛金50万円が戻らなくなる計算で、実質的な調達コストは決して低くありません。また、倒産日から6か月以内の請求が必要で、夜逃げは対象外、倒産前6か月以内の掛金増額分は貸付算定から除外されます。

2つ目の「一時貸付金」は、取引先の倒産がなくても利用でき、解約手当金の95%(最高760万円)を年0.9%で借りられます。掛金を担保にした低利の調達手段であり、緊急時の第一選択として有力です。

取引先の倒産に直面した際は、日本政策金融公庫のセーフティネット貸付、一時貸付金、共済金貸付を並べ、コストと据置期間を比較して順番を設計することが重要です。弊社では調達の順番設計から申請サポートまで無料相談で承っています。

その昇給本当に大丈夫?社員の基本給アップとボーナス、会社にとって良いのはどっち?

2026-07-20

経営者として「頑張っている従業員の給与を上げてあげたい」という気持ちは非常に大切ですが、昇給は慎重に行う必要があります。

なぜなら従業員の給与「上げ方」ひとつで会社の財務負担は大きく変わるからです。

月給(基本給)を上げるのと、ボーナス(賞与)で報いるのでは、どちらが会社にとって賢い選択なのでしょうか。

税務と労務の観点から、知っておくべき「隠れたコスト」を整理します。

1. 基本給アップに潜む「雪だるま式」のコスト増

基本給のベースアップは、従業員にとって最も嬉しい形ですが、会社にとっては「固定費」が永続的に増えることを意味します。
さらに、額面以上のコストが以下の形で膨らみます。

① 「残業代」の単価が連動して上がる

残業代は「1時間あたりの基礎賃金」を元に計算されます。

基本給を上げれば、1時間あたりの単価も当然上がります。
残業が多い職場の場合、基本給の数千円のアップが、年間で見ると予想以上の人件費膨張を招く原因となります。

② 「社会保険料」の会社負担が毎月増える

社会保険料は、毎月の給与額(標準報酬月額)に基づいて決まります。

基本給を上げ、一定のライン(等級)を超えると、会社が折半して負担する社会保険料(法定福利費)も毎月確実に増えていきます。
これは、一度上げると業績が悪くなっても簡単には下げられない「固定的なコスト」となります。

2. ボーナス(賞与)を厚くする経営上のメリット

「上げるなら基本給かボーナス、どちらが良いか」という問いに対して、会社の財務的な柔軟性を優先するなら、答えは「ボーナス」です。

業績連動ができる(変動費化)

基本給は一度上げると下げるのが法的に非常に困難(不利益変更の禁止)ですが、ボーナスは業績に応じて支給額を調整できます。
「利益が出たときに還元する」という仕組みにできるため、経営のリスクを抑えられます。

残業代に影響しない

ボーナスをいくら高くしても、毎月の残業代の計算単価には影響しません。

社会保険料の効率性

社会保険料には月ごとの上限や、賞与における上限額の設定があります。
年収が同じであれば、月給を高くするよりも、ボーナス比率を高くした方が社会保険料の総額を抑えられるケースがあります。

3. 【比較表】経営へのインパクトの違い

比較項目 基本給アップ ボーナス(賞与)
コストの性質 固定費(減らしにくい) 変動費(調整可能)
残業代単価 上がる 変わらない
社会保険料 毎月確実に増える 支給時のみ(上限あり)
採用・定着 非常に強い(住宅ローン等に有利) やや弱い(変動するため)

4. 従業員のモチベーションをどう維持するか?

会社にとってメリットが多い「ボーナス重視」の体系ですが、一歩間違えると従業員の意欲を著しく削ぎ、離職を招くリスクがあります。

経営上のメリットと、従業員の満足度をどこで着地させるべきか、その「落とし所」を考えます。

従業員の不安:「頑張っても報われない」の正体

基本給のアップ(ベースアップ)は、一度上がれば「来月もその次ももらえる」という強い安心感に直結します。

住宅ローンの審査や将来の生活設計においても、不安定なボーナスより「高い基本給」が信頼されるのが現実です。

一方で、ボーナスを主軸にすると、従業員には次のような心理的負担が生じがちです。

不透明感:「結局、会社のさじ加減で決まるのではないか」という疑念
無力感: 「個人の頑張りより、外部環境や業績で決まってしまう」というあきらめ

これらが重なると、「どうせ頑張っても……」というモチベーションの低下を招きます。

解決策:従業員の納得感を高める「給与設計」3つのポイント

固定費(基本給)を抑えつつ、従業員のやる気を最大化するためには、「還元のルール」を言語化・数値化し、不透明感をなくすことが不可欠です。
①基本給は「世間相場」を死守する
まずは「生活を支えるベース」としての基本給が、近隣の同業種と比較して見劣りしない水準であることが大前提です。
ここが崩れていると、どんなに高いボーナスを提示しても不安が勝ってしまいます。

②インセンティブの「計算式」を公開する
個人の成果がどうボーナスに反映されるか、計算式を透明にします。

「〇〇円の売上・貢献に対して〇%還元」と明確にすることで、ボーナスが「会社の都合」ではなく「自分の成果」に変わります。

③決算賞与の「利益分配ルール」を決める 

「営業利益が〇〇円を超えたら、その一部を全社員に一律分配する」といったルールをあらかじめ共有します。

会社が儲かれば自分も必ずトクをする、という連帯感を生む仕組みです。

基本給で「安心感(世間相場)」を担保しつつ、プラスアルファの還元は「決算賞与」や「インセンティブ」で報いる。

この固定費と変動費のバランスをあらかじめ設計しておくことが、会社と従業員の双方が納得できる唯一の道です。

まとめ:昇給を決める前にシミュレーションを

「たかが5,000円の昇給」と思っても、社会保険料の会社負担分や残業代の増加分を含めると、実際の支出はそれ以上に膨らみます。

また、従業員の昇給も大切ですが、実は「最初の給与設定」こそが最も重要です。
入り口の金額を何となくで決めてしまうと、その後の昇給ルールが歪み、将来的な人件費の爆発を招きかねません。
採用時の給与を決める段階から、数年後の昇給までを見据えた明確なルール作りが必要です。

昇給や賞与の配分を検討される際は、「1年後、3年後のキャッシュフローにどう響くか」を一度数字で確認しておくべきです。

当事務所では、貴社の現在の給与体系に基づき、「基本給アップ vs ボーナス」のコストシミュレーションを承っております。
経営を圧迫せず、かつ従業員に喜ばれる還元方法を、社会保険労務士や税理士といった専門家とともに、一歩先まで考えていきましょう。

 

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