売上高・売掛金の違いを正しく理解して黒字倒産のリスクを軽減させよう

事業をしていると、本当に「契約が決まった瞬間」は嬉しいものです。売上管理表に確定した額を入力すると、もう既に売上金が手元に入ってきたような気にさえなってしまいます。

けれども、「売上」が決まり、実際に仕事をして安心したのも束の間、月末に通帳を見て青ざめたことはありませんか?
「売上」が確定していても、実際の入金は来月末で、現時点で「売掛金」は残ったまま。けれどもこれらのお金を回収する前に、社会保険料や専門家報酬などいくつもの支払いが発生している。さぁ、どうしよう。そのような状態です。

「売上高」と「売掛金」の違い

これからお伝えすることは勘定科目の基本的な知識です。「売上高」と「売掛金」の2つは似ていますが、この違いを正しく理解しておかないと、資金繰りはかなり不利になります。ぜひ、ここでしっかり理解を深めておきましょう。

「売上高」は商品やサービス提供で入るお金を計上する会計処理で、サービス提供時に立てることが一般的です。会計ソフトによっては請求書の発行を行うと「売上高」から「売掛金」(下記の図の①ー②)の自動仕訳がされます。「売掛金」とは、売上を計上しても代金が未回収の状態を指します。

例えば100,000円の商品の売買について、3月10日に納品・末締め翌月末支払いで取引をした場合、このような形で仕訳がされます。

①3月10日 商品を納品・納品日付で請求書を発行した

日付 /            借方       /       貸方

3/10       売掛金 100,000円     売上高 100,000円

②4月末日、相手方から請求金額が振込された

日付 /            借方       /       貸方

4/30      普通預金 100,000円   売掛金 100,000円

この仕訳は「売掛金消込」と呼ばれています。

ここまででようやく「取引が無事に終わった」ことになります。

「売掛金」は、すぐ手に入る「現金」ではない

先ほど紹介した仕訳例の通り、「売掛金消込」が行われて取引は無事完了となります。つまり「売上」が確定しても、入金があるまでは決して気を抜くべきではないということです。

毎月取引をしていて、ある程度信頼関係が出来上がっている場合は問題ありませんが、初めての取引であれば、初回の入金があるまでは少し様子を見るようにしましょう。

時々、初回の取引のみ事前入金・クレジットカード払いなど、支払いについて制限を設けている事業者もあります。

自分が取引先の立場であった場合、「信用されていないのか」と少し残念に感じるかもしれませんが、これは「売掛金未回収のリスク」を回避する一つの方法です。「初回はそういうもの」と割り切って、自分の事業でも取り入れられる部分は取り入れていきましょう。

「売掛金未回収のリスク」と聞いてピンとこない方もいらっしゃるかもしれませんが、事業をしていると、一定の確率で売掛金の回収ができない「貸倒」(かしだおれ)が起こります。

この「貸倒」とは何なのか、次の項目で解説していきます。

「売掛金を回収できない!」貸倒とは何か

「貸倒」(かしだおれ)とは、取引先の倒産などの事情により売掛金・受取手形などの債権が回収できなくなることです。
「借金を踏み倒す」という言葉を聞いたことがあるかと思います。「借りたお金を返さない」という意味ですが、逆の立場では「倒された」と言います。

前項目でも書きましたが、事業を行なっていると、この「貸倒」が一定の確率で起こります。売掛金が回収できない場合はその分を損金に計上することが可能ですが、それには「ただ入金されない」という事実だけでなく、「貸倒」が確定することが必要です。

それでは、どのような場合に「貸倒」が確定するのか、税務署が設けた3つの「貸倒が成立する」基準を簡単に紹介します。

1・取引先が事実上倒産した場合

2・破産手続きなどで、書面により債務免除など法的に債権が消滅した場合

3・取引停止後1年以上経過しても回収の見込みがなさそうな場合や、回収のコストが債権金額よりも大きい場合

「回収できそうにない」と分かれば、誰もが「一刻も早く回収できなかった売掛金を『損金』として処理したい」と考えることでしょう。

上記で「貸倒」が確定する3つの基準を紹介しましたが、その中でも、税務署で「貸倒」が認められるには細かい条件があり、非常にややこしいものです。そのため、「売掛金」の回収が遅れたタイミングで、すぐ顧問税理士に相談をすることをお勧めします。

小規模事業者の場合、「貸倒」が一件でも発生してしまうと一気に事業が傾いてしまう危険性があります。できる限り「貸倒」が起こらないようにすることが重要です。

「貸倒」のリスクを減らす方法

それでは、貸倒を起こさせない・貸倒のリスクを減らす具体的な方法はあるのでしょうか?
こちらでは「貸倒」のリスクを減らす方法を3つ紹介していきます。

① 取引相手をしっかり選ぶこと

取引する相手はしっかり選ぶようにしましょう。起業初期はまだ顧客数が少ない事情もあり、「誰もで良いから仕事が欲しい。」と考えてしまいますが、ここに罠があることをしっかり理解しておいてください。

そもそも支払い能力がない相手と取引をしてもマイナスなだけです。前回の決算書に関するコラムで書いた通り、決算書を見ることができれば相手の経営状況もよく分かりますが、現実的にそれは難しいので、必要に応じて調査会社を利用するようにしましょう。取引金額が大きい場合、安全な取引のためであれば、調査費用も必要経費と割り切ることができます。

前回の決算書に関するコラムはこちら

もしも特定のコミュニティに参加している場合は、コニュニティ内や、共通の知り合いが多数いる間柄から徐々に仕事を増やしていくのも防衛策としては有効です。

② 必ず契約書を結ぶこと

契約時には、必ず契約書を結ぶようにしましょう。

店舗販売など、品物と代金の同時交換の場合を除くと、どうしても一定期間は帳簿上に「売掛金」が残る状態になります。そのような場合は、とにかく書面で取引の証拠を残すことが大切です。

特にコンサルティング・マーケティング・ウェブ制作関係や代行業などは、形のないサービスなので、サービスの範囲や価格・支払い方法について契約書で取引内容を明確にしておくことが必要です。「口約束で仕事を請け負い、そのまま支払いがされなかった」というトラブルで泣き寝入りしたフリーランスは現実に数多くいます。

もちろん、契約書を交わしても「貸倒」のリスクがゼロになるわけではありません。

けれども契約書という形で「取引をした」という証拠が残ると、口約束で「言った・言わない」の論争がそもそも起こりません。つまり、裁判に発展する前に話し合いで解決できる確率が高くなるということです。仮に、裁判にまで発展した場合でも、話を有利に進めることができます。もちろん裁判にも費用がかかるので、売掛金の額によってそのあたりの判断は変わってくることでしょう。

このように「契約書」は強い味方になるので、多少面倒臭いと感じても契約締結は必ず行うようにしましょう。

③ とにかく債権者の中で一番口うるさくなること

それでも、万が一「今は払えない」と言われた場合は、とにかく「口うるさく」「しつこく」「根気よく」言い続けるようにしましょう。

「いつでも大丈夫ですよ。」という態度では、相手は逃げてしまいます。

相手は、あなた以外にも、多くの債権者に対して「支払遅延」をしています。数多くの債権者が「今すぐに払ってください!」と主張する中で、「いつでも大丈夫ですよ。」なんて言ってしまえば、確実に後回しにされてしまいます。もしかしたら「あわよくば、逃げられる相手」と判断されるかもしれません。
手間がかかっても、何度もメールやLINE連絡、他にも電話で催促したり、近くであれば事務所や自宅に訪問するなどアピールするようにしましょう。もちろんその時は「冷静に・丁寧に」です。

これは最後の手段です。

このようなことをしなくてはいけなくなった場合も、まずは顧問税理士に相談するようにしましょう。既に「支払いトラブル」にはなっていますが、更なるトラブルを防止するためにも税理士からアドバイスを受けることをお勧めします。トラブルの内容によっては弁護士の力を借りる必要もあります。

事業の理想は、支払い能力があり、信頼できる相手とだけ取引をすることです。契約書を締結して計画通り売掛金回収ができる相手だけと仕事をするようにしましょう。

創業時はなかなか難しいことかもしれませんが、事業を続ける上で非常に大切なことなので、意識して取り組んでいきましょう。

黒字倒産はなぜ起こるのか

最後に、誰もが一度は耳にしたことがある「黒字倒産」について解説していきます。

黒字倒産とはB to Bビジネスで主に起こるものです。
(※「B to Bビジネス」とは「Business to Business」の略で、企業間取引のことを指します。)

商品・サービスは売れていて帳簿上は利益が出ている(売掛金が計上されている状態)にもかかわらず、実際の入金(売掛金回収)までのタイムラグにより、その前に発生する支払いに必要な資金が不足して資金ショートを起こして倒産してしまうのです。

これは、計画的な資金繰りがなされていなかったことが主な原因です。つまり、資金繰りがプラスになるように上手にコントロールすることで黒字倒産を回避することができます。

具体的には、売掛金回収の期間を短く・支払い期間を長くするように調整することや、事業の拡大時には銀行の融資を受けるなどの資金調達を行う、補助金・助成金の積極的な活用、物販の場合は過剰在庫を避けるなど…が挙げられます。
もちろん、経営者が入出金を正しく把握すること、キャッシュフローをより意識することは言うまでもありません。「うちは、お金のことは経理担当者に任せているから…」なんてことがないように、経営者は必ず事業のキャッシュフローを把握するようにしましょう。

また、黒字倒産の回避には「売掛金」に対する意識を強く持つことが重要です。売上が上がっただけでは、事業は安泰ではないということを強く覚えておいてください。お金を回収するところまでが仕事なのです。

貸倒・黒字倒産のリスク回避については、税理士にご相談ください

今回は、「売上高・売掛金の違い」と「貸倒・黒字倒産のリスク」について解説いたしました。

いかがでしたでしょうか?
帳簿上の利益ももちろん大切ですが、実際手元にキャッシュがあるということは事業を存続させていく上で欠かせない要素です。

創業時に、自己資金を事業の運転資金に充てている経営者は少なくありません。自分の会社や事業に貸し付けをすることはよくある話です。

けれども、私財を投入することで事業を存続させるよりも、具体的な施策でキャッシュフローを安定させた方が、苦しい経営から脱却することができます。融資や補助金・助成金など、小規模事業者には国や自治体、金融機関からの応援があります。正しい知識と情報さえあれば、創業時の資金調達は決して難しいことではないのです。

B to B事業をされている方、資金繰りでお困りの方はぜひ一度、山本聡一郎税理士事務所にご相談ください。

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税理士 山本聡一郎
山本聡一郎税理士事務所 代表税理士。1982年7月生まれ。名古屋市中区錦(伏見駅から徒歩3分)にてMBA経営学修士の知識を活かして、創業支援に特化した税理士事務所を運営。クラウド会計 Freeeに特化し、税務以外にも資金調達、小規模事業化持続化補助金などの補助金支援に力を入れている。
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