フリーランスの法人成・株式会社・合同会社どちらが良い?

フリーランスを続けていて、売上が増えてくると「法人成(法人化)」を意識される方も増えていくかと思います。

フリーランスが法人成(法人化)する第一歩目は「一人社長」ではありますが、ここで「株式会社」か「合同会社」か、どちらが良いか迷われる方は少なくありません。

「もう自分は株式会社(または合同会社)一択だ!」と決められている方はそのまま決断された道を進んでいただければと思います。

結論としては、どちらを選んでいただいても問題ありません。

けれども、フリーランスで法人成(法人化)をする際に「株式会社と合同会社のどちらが良いか迷っている」という方もいらっしゃいますので、この記事をお届けしたいと思います。

今回は、法人設立で「株式会社」「合同会社」で迷った際にぜひ読んでいただきたい「それぞれの特徴とメリット・デメリット」をお伝えしていきます。

法人とは多くの人が言う「会社」と同義語だと考えて問題ありません。

法人は営利法人と、非営利法人(一般社団法人・社会福祉法人・NPO法人など)の二つに大きく分類されます。

ここでは、法人成(法人化)をお考えの皆さんに最も関係がある「営利法人」(株式会社・合同会社・合資会社)の中でも、「株式会社・合同会社」についてそれぞれ詳しく解説していきます。
(合資会社は1人では設立ができないため、ここでは省きます。)

株式会社と合同会社それぞれの特徴

どちらも共通している部分としては、

株式会社・合同会社どちらも社長が1人でも設立可能で、出資者が出資額までしか責任を負わない有限責任である点です。

株式会社とは

株式会社は、投資家やビジネスパートナーとして参加する株主たちが、所定の資本金を出資することで成立する会社形態です。

出資した金額に応じて株式が発行され、これが株主の権利を示すものとなります。株式会社の特徴として、会社が経済的な困難に直面したとしても、株主の責任は彼らが出資した額までに限られる点が挙げられます。この特性から、リスクを分散させつつ、必要な資金を集めることが容易になります。

また、株式を市場で売買することができるため、資金の調達や投資の機会も広がります。これらの利点から、さまざまな規模や業種の企業が株式会社という形態を採用しています。

株式会社の設立や運営にはぞれぞれメリット・デメリットが存在します。

また次章で詳しく見ていきましょう。

次に、「合同会社」の特徴を紹介します。

合同会社とは

合同会社は、2006年に導入された比較的新しい法人形態です。

合同会社では、社員が出資し、その出資比率に基づいて運営されます。

法人格を持つため、経営者の責任は出資額までと制限されますが、株式会社と違って株式が発行されません。そのため、社員間の契約に基づいて自由に運営することが可能です。

合同会社の特性として特筆すべきは、資本金の最低限度額がないことです。つまり資本金が「0円」でも設立は可能ということです。ただ、制度として「0円」でも可能ということですが、あまり意味がないとされています。また資本金を極端に少なく設定することは事業経営にあまり良い影響を与えないのでおすすめはしていません。

詳細については、資本金に関して紹介している過去のコラムをご覧ください。

資本金の役割を正しく理解して、起業の第一歩を踏み出そう

余談ですが、

合同会社は新しい法人の形態ですが、誰もが知る有名企業も実は合同会社の形態をとっているのです。

Google合同会社

アマゾンジャパン合同会社

Apple Japan合同会社

これらは誰もが知る大企業です。
合同会社を選択している理由としては、経営の柔軟性や税法上のメリットを鑑みてかもしれません。

合同会社というと、設立費用が安いことから、規模が小さいイメージを持たれやすいものですが、このような実例を見ると「合同会社=規模が小さい」とすぐに結びつけてしまうのもどうかというところですね。

株式会社・合同会社それぞれのメリット・デメリット

それでは実際に株式会社・合同会社、それぞれのメリット・デメリットを簡単に紹介していきます。

株式会社のメリット

①株式発行による資金調達ができる

ビジネスを拡大するためには、「資金」は避けて通れない要素です。
個人事業主として運営している場合、資金調達法は自己資本や金融機関からの融資が主となります。
しかし、株式会社の場合、企業が株式を発行することで資金調達が可能となるのです。
これにより、新たなプロジェクトや事業展開、設備投資などのための資金を迅速に確保することができます。

けれども、資金調達をしたいからと言って、やたらと株式を発行することは、株の価値を下げたり、経営権の分散や、信用の低下に繋がりますので安易にやるべきではありません。

「知らない間に会社を乗っ取られていた」ということがないように、株式の発行数には常に注意しましょう。

②社会的な信用度が高い

一般に、株式会社という法人格は、信用性や信頼性の象徴と見なされることが一般的です。
取引先や顧客、金融機関などの第三者との関係において、株式会社としての経営は、ビジネスの安定性や継続性を高める要因となります。特に、新しい取引先や顧客を開拓する際に、株式会社としての法人格は大きなアドバンテージとなることでしょう。

スポーツジムや店舗のFC契約について「法人限定」としているところも少なくありません。

③株主が力を持つので決定権がある

一人社長としての株式会社設立は、全ての株式を所有することが一般的です。

この結果、株主総会や取締役会において、一人社長が全ての決定権を握ることができます。株主総会に関してもただ議事録を発行するだけなのです。これにより、迅速な意思決定や戦略の実行、方針転換などがスムーズに行えます。

株式会社のデメリット

一方で株式会社にはデメリットもあります。

①設立費用が高い

株式会社の設立には、合同会社や個人事業主に比べて高い設立費用が必要となります。

定款の認証手数料や登録免許税、初期の法務サポートなど、初期投資としてのコストは高めです。

②定期的な手間と費用がかかる

株式会社としての運営には、決算公告や役員の任期満了に伴う再登録登記といった手続きが定期的に必要となります。これには手間だけでなく、それぞれの手続きに伴う費用も発生します。

特に、一人社長の場合、これらの手続きを外部の専門家に依頼するか、自身で行うかの選択が求められ、それぞれに時間やコストがかかることとなります。

③意思決定に時間がかかる

法律上、株式会社の運営には一定の手続きや形式が求められます。

たとえ一人社長であっても、株主総会の開催や取締役会の手続きなど、意思決定にあたっては一定の手間や時間が必要となることがあります。これにより、迅速な意思決定や柔軟な対応が難しくなることも考えられます。

合同会社のメリット

①設立コストが安い

合同会社は、株式会社とは異なり、定款の公証人の認証を必要としないため、その分の設立コストを削減できます。

電子定款を使用すれば収入印紙代も必要ありません。さらに、設立時の登録免許税は「資本金の金額×0.7%」で計算されます。最低ラインにしておけば6万円で済みます。(6万円は最低かかります。)
株式会社では少なくとも15万円必要なので、合同会社の設立費用はだいぶ安くなります。

また、役員任期は無期限なので、株式会社に必要な役員任期満了に伴う再登録登記も必要ありません。

このような都度かかる費用を抑えられるのが合同会社のメリットです。

② 柔軟な運営

合同会社は、株式会社のように外部の株主から影響を受けることはないため、定款に基づき柔軟な経営が可能です。経営の参加者や利益の分配比率、議決権の調整なども比較的自由に設定できます。

意思決定も早く、出資メンバーだけで意見が一致すればすぐに決まるため、株主総会を行う必要もありません。

③ 継承や事業承継が簡単である

合同会社の出資権の譲渡や継承は比較的簡単です。
合同会社は、中小企業の後継者問題などにも対応しやすい形態と言えます。そのため、家族経営の場合は合同会社を選ぶ方がメリットがあると言われています。

合同会社のデメリット

①資金調達の難しさ

合同会社は株式発行が許されていないため、資本市場を活用した調達が難しくなります。上場して公開株を発行するという手段も選べません。

このため、合同会社での資金手当ては、日本政策金融公庫のような公的機関の融資、補助金、あるいは特定の少数投資家からの私的な資金提供などに限られることが多いです。

②一般的な信頼性の問題

合同会社の運営は、株式会社と比べると少ない監督や外部のチェックがあるため、ある程度の信頼性が欠ける可能性があります。
特に、起業初期段階や小規模な事業者が合同会社を選択する場合、設立のハードルが低いというイメージが持たれやすく、経営基盤の弱さや計画性のなさを疑われるリスクもあります。

③経営判断の複雑さ

合同会社では、業務の意思決定を進める際に、全ての出資者の同意が求められる場面が多々あります。

全員の意見が一致すればスムーズに業務が進行しますが、意見が分かれる場面では意思の統一が難しくなるのです。
出資者が経営に深く関与する構造ゆえの、合同会社特有のリスクと言えるでしょう。

友達同士で合同会社を設立したものの、続けるうちにお互いの考え方が変わり、意見が合わずに衝突するというのはよく聞く話です。
株式会社の場合は、いわゆる株式を一番多く保有している株主の「絶対王政」で成り立っています。ある意味シンプルです。

よく映画やドラマで、大手株式会社の経営者が、大株主の顔色を伺っているシーンを見ると「株式保有割合が高い株主」が絶大な権限を持っていることがよく伝わってきますね。

結論 どちらを選んでも問題ありません

ここまでそれぞれの特徴やメリット・デメリットを紹介しましたが、結論としてはどちらを選んでいただいても問題ありません。

「将来、会社をどのようにしたいか」をある程度思い描き、それぞれのメリット・デメリットを正しく理解した上で決めるのが一番です。

上記のメリットデメリットには入れませんでしたが、本当に自分の方向性を確認したい場合に

割と分かりやすい質問が2点あります。

・「代表取締役」の肩書が欲しいと思うか?

・将来会社を大きくしたいと思うか?

この2点をぜひ自問自答してみてください。

名刺交換した時に、「代表取締役」という肩書きだと「なんだかかっこいいなぁ」と思われる方も多いでしょう。

「肩書き」については本当に人それぞれ価値観が違います。

「代表取締役」である事実が、仕事を頑張るモチベーションにもなるのであれば上手に利用すべきですね。

実際に名刺交換をした相手から「しっかりビジネををやっている」と一定の信用を得られるのもビジネスをする上で非常に大切です。

ある主婦の起業家が、法人成(法人化)したときに株式会社にしたことで、事業に本気で取り組んでいると周囲から評価されて仕事が大幅に増えたという実体験があります。
それだけ「株式会社の代表取締役」とはインパクトが大きいのでしょう。

けれども

「肩書きや信用よりも、とにかく自由にコストをかけずに経営がしたい」

「会社は小規模のままで大きくしていくつもりはない」

ということであれば、合同会社でも問題はありません。

デメリットの一つであるメンバーとの意見の食い違いによる意思決定でも、一人社長であればその点は心配ありません。

「株式会社は信用がある」と言われますが、そこは最初の印象だけです。
実際に取引をしてみれば、会社が株式なのか合同なのかよりも、実際の仕事のやり方や人間性で信用というのは積み上がっていきます。

ぜひ、ご自身の向かう先に合わせた法人形態を上手に選んでください。

余談ですが、

株式会社も合同会社も「負債が生じた場合でも出資範囲のみの責任で済む」というのが共通点とされていますが、実際は会社が倒産すると、多くの社長が多額の借金を背負い破産に追い込まれています。

理由は、資金調達の際に銀行や金融機関からの融資を受ける場合、個人保証を求められますが、一般的に保証人は会社の代表者個人がなるためです。会社が倒産などで融資を返済できなくなった場合、保証人として経営者が返済の責任を負うこととなるのです。

他にも、経営が困難となった際、会社を支えるために経営者が私的な資金を投入することがよくあります。それでも足りない場合、親や親族から借りてしまうこともあるのです。

この場合、経営者の個人的な資産はもちろんですが、周囲の親族の資産さえもリスクにさらされてしまいます。

このような話をすると、「法人経営って怖い!」と感じられる方もいらっしゃることでしょう。

けれども法人経営は、しっかりと計画を立ててその通りに実行をしていけば生き残ることは可能です。

もちろん経営なので紆余曲折はあります。そんな時は、自分一人だけで全てをやろうとせずに、専門家をどんどん頼ってください。

フリーランスからの法人成(法人化)については山本聡一郎税理士事務所にご相談ください

山本聡一郎税理士事務所では、フリーランスの法人也について、相談に乗っております。
事業計画の作成から資金調達など、経営はとにかく「資金」が全てです。

飛行機は、飛び立つ時に「いかに助走をつけて飛んだか」でその後の飛距離が大きく変わります。
経営も同じく、最初の準備や計画が最初の関門である1期目と、3期目の命運を分けるのです。

税理士は数多くの会社のサポートに携わっています。

より確実な法人成(法人化)を目指す方こそ、法人設立前に税理士にご相談ください。

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