本当に節税?新人経営者が決算前にやる間違い節税5選

本当に節税?新人経営者が決算前にやる間違い節税5選

会社の決算は1年の総まとめです。決算で今期の業績が数字ではっきりと分かります。決算期が近づくにつれて、経営者の緊張感は増していきます。

なぜなら決算後は、法人税の納付と、専門家への決算処理報酬支払いもあり、お金が大きく出ていく時期でもあるからです。

多くの経営者はこの法人税の納付額を少しでも減らしたいと考えます。

そこで今回は決算直前の節税について、新人経営者がついやりがちな節税間違い5選についてお伝えしていきます。

今や公式の情報以外にもブログやSNSの情報発信が増え、さまざまなところで節税に関する情報を手に入れることができます。中には「裏技」のような表現をしている情報もあります。

けれども、それらの情報全てが正しいわけではありません。情報そのものが間違っているというよりも、その情報が有効かどうかは、タイミングや状況によって変わってくるということです。また、正しい情報だとしても、それらを参考しにしたつもりが実は間違ったやり方をしていたということもよくあります。

今回は、決算期に注意していただきたい税金に関する数多くの注意点の中で、特に経験の浅い経営者がやりがちな5つについて解説していきます。

1・プライベートの出費を経費に入れる

少しドキッとされた方もいらっしゃるかもしれませんね。経営者自身の私的な出費を、会社の経費として計上してしまうケースが見受けられます。よくあるのが家族との食事や、趣味の出費、私的な旅行など、プライベートでの出費を会社の経費としてしまうことです。

もしかしたら、他の経営者や事業主がそのようにしているのを見て「プライベートの出費も全て経費にできる」とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、プライベートの出費を経費にすることはできません。

接待交際費や会議費を経費として計上する場合は、厳密には「相手は誰か、どんな話をしたのか」を記録しておく必要があります。

また、「仕事用の服は特に決まっていないから」と、私服や靴・鞄なども経費にしてしまうケースもよくありますが、それもNGです。制服や安全靴など、明確に仕事でしか使用しないものだと客観的に認められるものは、経費の対象になります。しかし、私服や日常でも履けるスニーカーなどの場合、プライベート利用も十分できてしまうので、仕事専用だとは言えません。もちろん腕時計もNGです。(アップルウォッチのような特殊な機能を持つものは対象になる場合があります。)カバンは仕事用とプライベート用を明確に分けている場合は経費にすることが可能です。

プライベートの出費ではないかと思われるものは、税務調査の際に指摘されるリスクが高く、税金の追徴や罰金が科される可能性があります。悪質だと判断された場合は「脱税」扱いになることもあるので、十分注意が必要です。

けれども実際には、新人社長は一人経営の場合が多く、プライベートと仕事の区別がなかなかつきにくいというのはあります。例えば、自宅で仕事をする場合の家賃はどうなるのか、個人のスマホと仕事用のスマホを兼用している場合はどうなるのかなど、どうしても判断が難しい場面が出てきます。

その場合は、少し面倒かもしれませんが税理士に1件1件確認を取ると安心です。

2・車を購入する

予想以上に利益が出てしまい、慌てて「何かお金を使わなくては」と決算直前に車を購入しようとする人がいますが、車の購入についてはさまざまな面で慎重に考えなくてはいけません。

理由は3つあります。

① 実は大して節税にならない

事業用の固定資産として車を購入する場合、その価格全額を全て経費として計上することはできません。税法で定められた計算方法で経費計上をしていきます。

新車の場合、減価償却は6年とされています。(定額法と定率法という計算方法がありますが今回は解説を省きます。)さらに事業年度途中で車を購入した場合、実際に車を使用した期間(所有ではなく使用です。)の分しか経費としては計上することができません。これを「月数按分」と言います。

例えば、事業年度が4月から翌年3月末とします。1月下旬に新車を購入し、2月から使用を始めたとしたら、まずは購入価格から6年の減価償却の計算を行い、さらに12ヶ月中2ヶ月分(2月・3月)を計算します。つまり単純計算で購入額1/6のさらに1/6しか経費として認められないということです。

360万円の新車購入の場合、定額法で1/6と単純計算して、毎年60万円ずつ償却されるとしましょう。さらに使用した期間が2ヶ月分なので、2/12で1/6となります。つまり、360万円も支払ったにも関わらず、経費計上できるのはたった10万円ということになります。

もちろん、新年度すぐに車を購入・使用すれば、月数按分されず1年分を経費計上されます。また中古車の場合は、新車よりも耐用年数が短い関係で減価償却期間も短めです。けれども、その年に利益が出るかどうかは未知数である以上、安易に数百万単位の出費をすることは好ましくありません。車に関しては、「お金を使う必要が出てきたのでとりあえず購入する」のではなく、本当に必要になった時に初めて購入を検討するくらいが良いでしょう。

② 無計画な出費は資金繰りに大きなダメージを与える

①で計算したように、大きな資産(車)の購入は高額な出費をしているにも関わらず経費計上できる金額が10万円しかありません。車の購入がいかに節税目的としては向いていないかがよくわかります。

さらに、それだけ大きな出費をすると当然現金や預金は減るので、資金繰りは一気に悪くなります。元々計画的に車の購入を考えて資金を準備していたのであれば話は別ですが、予想以上に多くなってしまった利益を減らすために慌てて節税のために取る対策としては決してお薦めすることはできません。

③ 本当に車を購入する必要があるのか

そもそも論ですが、社用車を購入する必要があるかどうかを考えてみましょう。節税の視点で考えると、カーシェアやリースの方が出費分をそのまま経費計上できるのでその点ではお薦めです。

リースも1年以内の場合は、減価償却対象外となり、そのまま費用計上できます。(リース契約については、また別のコラムでご紹介します。)

車の導入を考えている場合は、資金繰り面と、費用計上面でもどのような形がベストなのかを税理士に確認をするようにしましょう。

3・慌ててweb広告を打ったり、ホームページ制作の発注をする

決算直前に大幅に黒字になってしまい「予算を使っておきたい」と、次の期で予定していたホームページ制作の発注やweb広告を慌てて出す経営者がいます。「来期に向けた計画を前倒しで行っている」と言えば、なんとなく聞こえが良いように思えますが、こちらも節税の観点ではあまり得策ではありません。

 ルールとしては、その注文がいつ実行されたか、いつ納品されたかで経費計上できる時期が変わります。バナー広告を開始する場合でも、指示を出した次の日にポンと出すことはなかなかありませんし、目的によっては長期運用も考えられます。また、ホームページ制作などは制作に1-2ヶ月を要することもよくあります。そのように考えると実際発注は期末に行っても、実施されるのは来期になってからというケースが多く、結局費用計上できるのは来期になるという事がよくありますので注意が必要です。

また、今回に限ったことではありませんが、あまりに決算直前に極端に発注が増えると税務調査では意図的に行っていると受け取られる場合があります。

4・決算前に役員報酬を増やしたりボーナスを出す

以前のコラムでも紹介しましたが、役員報酬やボーナス額は期首から3ヶ月以内に決定しなくてはいけないという決まりがあります。

報酬も賞与も、あらかじめ決めた支給日に決められた金額通りに支給しなくてはいけないということです。これは「支給自体が禁じられている」という意味ではなく、「損金」扱いにできないという意味です。「損金」扱いにできないとは、経費として計上できないということなので、仮に事前に決めていなかった賞与を100万円支給したとしても、その100万円は経費計上できないので、課税対象になります。当然支給された側にも所得税の納税義務はありますので、「損金にできない」ということは、法人で課税され、個人に支給された後も課税される、ということで二重に税負担がかかってしまう。それは踏んだり蹴ったりですね。

全ては計画的に行う必要があるということです。

詳細は過去の役員報酬に関するコラムをご覧ください。

マイクロ法人・一人社長の役員報酬額を決定する時の3つのポイント

5・在庫や備品を大量購入する

こちらも、新人社長がやりがちな間違いです。

「黒字分の現金・預金を使ってしまえば大丈夫」と思い込んで、決算直前に大量発注・仕入れをして在庫を増やそうとする方がいらっしゃいますが、それは節税にはなりません。

ならないどころか、資金繰りの悪化や、過剰在庫によりさまざまな問題が発生して、むしろ経営を圧迫することになります。

まず一番お伝えしたいことは、「在庫は棚卸資産として計上され課税対象になる」ということです。

小売業や商社など在庫を抱える企業や店舗は、必ず半期に1回棚卸しを行います。これは、在庫数を正確に把握するのに必要だからです。この在庫数に応じて納税金額が決まります。

よく洋品店で、「決算前在庫処分セール」というのを見かけたことはありませんか?
古い在庫があると税金がかかってしまうので、売れ残ってしまったものや、定価で売れそうにないものについては、例え当初の半額以下の価格にしてでも決算前に在庫処分してしまいたいと企業や店舗は考えます。その為に「セール」を行うのです。「福袋」もその一環ですね。

また、大量在庫発注以外にも、事務用品や消耗品などの備品を大量購入するという手段に出る方もいますが、これらも同様に、全くお薦めできません。

備品の消費にも限度があります。1ヶ月で使い切れる量を遥かに超えた量の備品発注は明らかに不自然です。あまりに過剰な量の備品購入は「決算前の度を超えた節税」と判断され、税務調査で指摘されるリスクがありますので、過剰な仕入れ同様に避けた方が良いと言えます。

決算直前に大きな資産を購入したり、大量発注を行うと、税務調査の際にその背景や必要性について詳しく説明する必要が出てきます。必要性が低いと判断されたり、必要性について明確に答えることができなかった場合は、問題となることもあります。

結論・短期的な「節税」に焦点を合わせずに、計画的な経営を

いかがでしたでしょうか。

今回は、新人経営者がやりがちな「間違った節税方法」について5つ例を挙げて解説していきました。節税は大切なことですが、正しく効果的に行わなければ資金繰りが悪化したり、税務調査で目をつけられたりします。また一歩間違えると、自分でも知らないうちに「脱税」をしていたりと、大変なことにもなります。

決算直前の行動は、短期的な視点に基づくものであることが多いと言われています。経営者としては、長期的な視野での経営判断が求められるため、短期的な節税策に走ることは推奨されません。

結論として、節税を目指す際には、単に経費を増やすだけでなく、それが企業の中長期的な健全性や成長にどのように影響するかをしっかりと考慮することが重要です。節税だけを追求するのではなく、経営全体のバランスを保ちながら適切な判断を下すようにしましょう。

山本聡一郎税理士事務所に相談してください

経営で大切なことは資金繰りとも言われていますが、それは短期的にどうこうできるものではありません。「節税は決算直前に行うもの」と認識されている方も多いですが、会社の資金繰り同様に中長期的視野で全体のバランスを考えて行う必要があります。決算が近づいたタイミングで税理士に相談することも大切ですが、何よりも決算時期に慌てることがないように期首からしっかり資金繰りを含めた事業計画を立てておくことが何よりも大切です。

山本聡一郎税理士事務所では、事業計画の設計から相談に乗っています。期首で立てた計画について定期的に数字を追うことで、達成率やどのような対策が必要なのかを早い段階で知ることができます。決算直前に慌てることがないように、計画した数字と実際の数字を見比べて早め早めに対策をとっていきましょう。

今回のコラムを読まれて、「自分は大丈夫かな?」と少しでも思われた方は、ぜひ一度ご相談ください。

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