「確定申告してない人が多い」という事実に、ドキッとした方もいるかもしれません。この記事では、なぜ多くの人が申告を怠るのか、その背景にある5つの理由を解説。さらに、税務署に無申告がバレる仕組み、厳しいペナルティ、そして今からでも間に合う具体的な解決策まで、専門家の視点で網羅的にご紹介します。放置は禁物です。
このページの目次
確定申告してない人は意外と多い?その実態と背景
「自分は会社員だから確定申告は関係ない」「少しの収入だから申告しなくても大丈夫だろう」――そんな風に考えている方はいませんか?確定申告のシーズンが近づくと、ニュースなどで話題になるものの、どこか他人事のように感じている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、確定申告を正しく行っていない、あるいは全くしていないというケースは、決して珍しい話ではないと言われています。実際に、国税庁の発表によると、令和4事務年度(令和4年7月から令和5年6月までの期間)においては、所得税の無申告に対する実地調査等(※)で把握された申告漏れ所得金額は920億円、追徴税額は171億円に上っています。これは、税務調査によって指摘されるケースは後を絶たず、実際にはさらに多くの無申告者が存在すると考えられます。(※実地調査及び簡易な接触によるもの。出典:国税庁「令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況について」)
では、なぜ確定申告をしていない人がこれほどまでに多いのでしょうか。その背景には、制度の複雑さや誤解、あるいは意図的な油断など、様々な要因が絡み合っていると考えられます。この章では、まずその実態と背景に迫ります。
この記事を読めばわかること
この記事を通じて、あなたは以下の点を明確に理解することができます。
- 確定申告をしていない人が多いと言われる背景と、その具体的な理由
- 税務署はどのように無申告を把握するのか、その具体的な調査手法
- 無申告が発覚した場合に待ち受ける厳しいペナルティの具体的な内容
- 現在無申告の状態でも間に合う可能性のある解決策と、専門家への相談の重要性
- 将来にわたって正しく確定申告を行うための基本的な知識と心構え
確定申告に関する漠然とした不安を解消し、ご自身が取るべき適切な対応を見つけるための一助となれば幸いです。
なぜ?確定申告してない人が多いと言われる5つの理由
確定申告は国民の義務の一つですが、実際には申告していない人が少なくないと言われています。その背景には、制度の複雑さや個人の認識不足など、さまざまな要因が絡み合っています。ここでは、確定申告をしていない人が多いとされる主な5つの理由について掘り下げていきます。
理由1 確定申告の制度や対象者であることを知らない
確定申告の制度自体が複雑で分かりにくいと感じる方は少なくありません。特に、会社員で年末調整を受けている方や、初めて副業を始めた方、年金生活に入られた方など、自分自身が確定申告の対象者であるという認識がないケースが多く見受けられます。また、どのような所得が申告対象になるのか、どのような場合に控除が受けられるのかといった具体的な知識が不足していることも、申告に至らない一因です。税に関する情報は専門用語も多く、積極的に情報収集をしなければ正確な理解が難しいのが現状です。例えば、「医療費控除」や「ふるさと納税のワンストップ特例制度」など、特定の条件下で申告が必要になるケースや、逆に申告すれば還付が受けられるケースを知らないまま過ごしている方もいらっしゃいます。税務署や市区町村からの個別通知は、必ずしも全ての対象者に行き届くわけではないため、自ら情報を確認する姿勢が求められます。
理由2 手続きが面倒で時間がないと感じている
確定申告の手続きは、必要書類の準備や所得・経費の計算、申告書の作成など、多くの手間と時間を要するというイメージが根強くあります。実際に、一年間の領収書や請求書を整理し、正確な金額を計算するのは煩雑な作業です。特に個人事業主やフリーランスの方は、日々の業務に加えて経理作業もこなさなければならず、大きな負担となりがちです。また、国税庁のウェブサイトで提供されている「確定申告書等作成コーナー」やe-Tax(電子申告)は便利ではあるものの、初めて利用する方にとっては操作方法が難解に感じられたり、マイナンバーカードやICカードリーダライタの準備が必要だったりと、ハードルが高いと感じる方もいるでしょう。日々の仕事や家事に追われ、確定申告のためのまとまった時間を確保するのが難しいという現実的な問題も、申告を後回しにしたり、諦めてしまったりする大きな理由となっています。
理由3 自分は確定申告の対象外だと思い込んでいる
確定申告が必要な条件を正確に理解しておらず、「自分は対象外だ」と誤って判断してしまうケースも非常に多く見られます。この思い込みは、後々大きな問題に発展する可能性があるため注意が必要です。
会社員だから関係ないという誤解
多くの会社員は年末調整によって所得税の精算が完了するため、「確定申告は自分には関係ない」と考えがちです。しかし、年末調整で全ての税務処理が完了するわけではないケースがあります。例えば、以下のような場合は会社員であっても確定申告が必要になります。
- 給与の年間収入金額が2,000万円を超える場合
- 1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得(例:副業の所得)の金額の合計額が20万円を超える場合
- 2か所以上から給与の支払を受けている人で、主たる給与以外の給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える場合(年末調整されなかった給与収入がある場合など)
- 医療費控除、セルフメディケーション税制、寄付金控除(ふるさと納税ワンストップ特例の適用を受けない場合や、寄付先が6団体以上の場合など)、雑損控除などを受けたい場合
- 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を初めて受ける年、または年末調整で控除を受けられない事情がある場合(例:住宅ローン控除等証明書の紛失など)
- 年の途中で退職し、年末調整を受けていない場合
- 特定口座(源泉徴収あり)以外の株式取引で利益が出た場合や、一般口座での取引、FX取引などで一定以上の利益が出た場合
これらのケースに該当するにもかかわらず、「会社員だから大丈夫」「年末調整で済んでいるはず」という思い込みで申告を怠ってしまうと、後から追徴課税やペナルティが発生する可能性があります。詳細は国税庁のウェブサイト「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」などで確認できます。
副業の収入が少ないから大丈夫という油断
副業による所得(収入から経費を引いた額)が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要とされる場合があります(給与を1か所から受けている場合など、一定の条件があります)。しかし、この「20万円ルール」を誤解している方が少なくありません。所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要になるのが原則です。住民税にはこの20万円ルールは適用されず、所得があればその金額にかかわらず市区町村への申告が必要です。この点を理解せず、「副業収入が少ないから何も手続きしなくて良い」と油断していると、後日、市区町村から住民税の申告漏れを指摘される可能性があります。また、所得税の申告が不要な20万円以下の所得であっても、医療費控除などで確定申告をする際には、その副業の所得も合わせて申告する必要があります。少額であっても所得を隠していると見なされれば、問題となることがあります。
理由4 バレないだろうと軽く考えている
「少額の所得だから税務署にはバレないだろう」「周りにも申告していない人がいるから大丈夫だろう」といった安易な考えから無申告を選択してしまう人もいます。特に、現金手渡しでの収入や、フリマアプリやネットオークション、個人間のスキルシェアなど、インターネットを通じた小規模な取引の場合、発覚しにくいのではないかという期待があるのかもしれません。しかし、税務署はさまざまな方法で個人の所得情報を把握しており、無申告や所得隠しを見抜く体制を強化しています。マイナンバー制度の導入により、行政機関間での情報連携が進んでいるほか、企業や個人事業主が税務署に提出する支払調書や法定調書、金融機関への調査(反面調査など)、さらには第三者からの情報提供(通報やタレコミ)など、所得を把握する手段は多岐にわたります。近年では、インターネット上の取引情報やSNSからの情報収集も行われていると言われています。「バレないだろう」という考えは非常にリスクが高く、後々大きな代償を支払うことになる可能性があります。
理由5 過去の申告漏れがありどうすれば良いか分からない
過去に確定申告をすべきだったにもかかわらず、申告していなかったことに後から気づくケースもあります。そのような場合、「今さらどうすれば良いのか分からない」「ペナルティが怖い」「どのくらい遡って申告すればいいのか」といった不安や疑問から、問題を先送りにしてしまう方がいます。一度申告漏れをしてしまうと、その後の年も申告しづらくなり、結果として無申告の状態が続いてしまう悪循環に陥ることもあります。また、過去の申告漏れをどこに、どのように相談すれば良いのか分からず、一人で抱え込んでしまう方も少なくありません。無申告の期間が長引けば長引くほど、延滞税などのペナルティも増えていく可能性があります。しかし、過去の申告漏れに気づいた場合でも、放置せずに適切な対応を取ることが重要です。自主的に期限後申告を行うことで、ペナルティが軽減される場合もありますし、税理士などの専門家に相談することで、具体的な解決策を見つけることができます。
確定申告してないのが税務署にバレたらどうなる?
「自分は大丈夫だろう」「少額だからバレないだろう」と安易に考えて確定申告を怠っていると、ある日突然、税務署から連絡が来るかもしれません。確定申告をしていない事実は、税務署の調査能力を甘く見てはいけないほど、様々な方法で発覚する可能性があります。そして、無申告が発覚した場合には、本来納めるべき税金に加えて、重いペナルティが課されることになります。
ここでは、税務署がどのようにして無申告を発見するのか、そして無申告が発覚した場合にどのようなペナルティが待っているのかを詳しく解説します。
税務署はどうやって無申告を見つけるのか
税務署は、国民の納税状況を正確に把握するために、様々な情報網を駆使しています。「まさかこんなところから?」と思うような情報源からも、無申告の事実は露見する可能性があります。
マイナンバー制度による情報収集
マイナンバー制度の導入により、個人の所得情報が一元的に管理されやすくなりました。勤務先から支払われる給与はもちろん、副業で得た報酬、年金、不動産収入など、様々な所得情報がマイナンバーに紐づけられています。税務署はこれらの情報を照合することで、申告されていない所得を把握しやすくなっています。特に、複数の収入源があるにもかかわらず一部しか申告していない場合や、全く申告していない場合には、マイナンバーを通じて発覚するリスクが高まっています。
取引先からの支払調書や法定調書
企業や個人事業主が、フリーランスや個人に対して報酬や料金を支払った場合、その支払いの詳細を記載した「支払調書」を税務署に提出する義務があります。例えば、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」などがこれにあたります。この支払調書には、誰に、いくら、どのような内容で支払ったかが記録されており、税務署はこれを受け取ることで、支払いを受けた側の収入を把握できます。あなたが受け取った報酬について、支払元の企業が支払調書を提出していれば、あなたの無申告は容易に発覚します。
法定調書には様々な種類があり、これらも税務署が個人の所得を把握するための重要な情報源となります。詳しくは国税庁の「法定調書の種類」に関するページもご参照ください。
金融機関への調査
税務署は、法律に基づいて金融機関(銀行、証券会社など)に対して口座情報の照会を行う権限を持っています。税務調査の過程で、申告内容に疑義が生じた場合や、無申告が疑われる場合には、個人の預貯金口座の入出金履歴や残高などが調査されることがあります。特に、事業を行っているにもかかわらず申告がない場合や、海外からの送金、高額な入出金など、不自然なお金の動きは調査の対象となりやすいです。
第三者からの情報提供(通報)
意外かもしれませんが、第三者からの情報提供、いわゆる「タレコミ」や内部告発によって無申告が発覚するケースも少なくありません。例えば、取引先の関係者、元従業員、あるいは個人的なトラブルを抱えた人物などが、税務署に対して情報を提供することがあります。国税庁は「課税・徴収漏れに関する情報の提供」という窓口を設けており、匿名での情報提供も受け付けています。このような情報が調査の端緒となることもあります。
無申告が発覚した場合のペナルティ詳細
確定申告を怠り、それが税務署に発覚した場合、単に「遅れて申告すれば良い」というわけにはいきません。金銭的なペナルティが複数課され、場合によっては非常に大きな負担となることがあります。主なペナルティは以下の通りです。
ペナルティの種類 | 内容 | 税率・計算方法など |
---|---|---|
本来納めるべき税金(本税) | 申告していなかった所得に対して計算される、本来支払うべきだった所得税や住民税、消費税など。 | 所得の種類や金額に応じて計算されます。 |
無申告加算税 | 期限内に申告しなかったことに対する罰金。 | 原則として、納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%。ただし、税務調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合は5%に軽減されます。調査の事前通知後に自主的に申告した場合は、50万円までは10%、50万円を超える部分は15%となります。 |
延滞税 | 納期限の翌日から実際に納付する日までの日数に応じて課される利息に相当する税金。 | 納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは、原則として年「7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合。2ヶ月を経過した日以降は、原則として年「14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合。この割合は変動するため、国税庁のウェブサイトで確認が必要です。放置すればするほど高額になります。 |
重加算税 | 意図的に所得を隠したり、事実を仮装したりするなどの悪質なケースに課される、最も重いペナルティ。 | 無申告加算税に代えて、納付すべき税額の40%(過去5年内に無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合は50%)。例えば、帳簿書類の隠匿、二重帳簿の作成、売上除外などが該当します。 |
これらのペナルティは、一つだけでなく複数組み合わせて課されることが一般的です。例えば、無申告が発覚し、本税に加えて無申告加算税と延滞税が課されるというケースはよくあります。もし悪質と判断されれば、無申告加算税の代わりに重加算税が課され、さらに延滞税も加わるため、本来納めるべき税額の倍以上の金額を支払うことになる可能性も否定できません。
加算税や延滞税の詳細は、国税庁の「加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし」や「延滞税の計算方法」のページで確認できます。
社会的信用への影響も無視できない
無申告が発覚した場合のダメージは、金銭的なペナルティだけにとどまりません。社会的な信用を大きく損なう可能性があることも理解しておく必要があります。
例えば、以下のような影響が考えられます。
- 融資審査への悪影響:住宅ローンや事業資金の融資など、金融機関からの借入れが難しくなることがあります。納税証明書は融資審査の重要な書類の一つであり、無申告や滞納の事実はマイナス評価につながります。
- 取引先との関係悪化:特に法人や個人事業主の場合、税務調査が入ったことや追徴課税を受けたことが取引先に知られると、信用問題に発展し、取引の継続が難しくなるケースもあります。
- 公的給付や許認可への影響:一部の公的な給付金や補助金の申請、特定の事業を行うための許認可の取得・更新において、納税状況が審査項目となる場合があります。
- 周囲からの信頼低下:「税金をきちんと納めていない人」というレッテルは、社会生活を送る上で大きなハンディキャップとなり得ます。
このように、確定申告をしないことのリスクは非常に大きく、「バレなければいい」という考えは極めて危険です。もし申告漏れに気づいた場合は、速やかに正しい手続きを行うことが重要です。
確定申告してない人が多い現状でも大丈夫?専門家が教える解決策
「確定申告をしていないけれど、どうすれば良いのだろう…」と不安を抱えている方は少なくありません。しかし、適切な手順を踏めば、問題を解決し、将来の不安を解消することができます。 この章では、確定申告をしていない方が今からでも取れる具体的な解決策を、専門家の視点から詳しく解説します。
まずは自分が確定申告の対象者か正しく確認する
確定申告をしていない理由の一つに、「自分が対象者だと思っていなかった」というケースがあります。まずは、ご自身が本当に確定申告の義務があるのか、あるいは申告することでメリットがあるのかを正確に把握することが第一歩です。思い込みで判断せず、正しい情報を元に確認しましょう。
会社員でも確定申告が必要になるケース
会社員の方は、基本的に会社が年末調整を行ってくれるため、確定申告は不要と思われがちです。しかし、以下のようなケースでは確定申告が必要になったり、申告することで税金が還付されたりする可能性があります。
確定申告が必要・有利になる主なケース | 具体例 |
---|---|
給与所得以外の所得がある | 副業での収入(アフィリエイト、Webライティング、配達業務など)、不動産収入、株式の売却益(特定口座で源泉徴収ありを選択していない場合など)が年間20万円を超える場合。 |
2か所以上から給与を得ている | 主たる給与以外の給与収入が年間20万円を超える場合や、年末調整を受けていない給与がある場合。 |
年収が2,000万円を超える | 給与収入が2,000万円を超える場合は、年末調整の対象外となるため確定申告が必要です。 |
医療費控除を受けたい | 1年間の医療費の自己負担額が10万円(または所得金額の5%のいずれか少ない方)を超えた場合。生計を一にする家族の分も合算できます。 |
住宅ローン控除(初年度) | 住宅ローンを利用してマイホームを購入・新築・増改築した場合の最初の年。2年目以降は年末調整で対応可能です。 |
ふるさと納税(ワンストップ特例を利用しない場合) | 寄付先の自治体が6か所以上である場合や、ワンストップ特例制度の申請書を提出しなかった場合など。 |
特定の寄付金控除を受けたい | 認定NPO法人への寄付など、特定の団体への寄付を行った場合。 |
年の途中で退職し、年末調整を受けていない | 退職後、年内に再就職しなかった場合など。源泉徴収された所得税が還付される可能性があります。 |
雑損控除を受けたい | 災害や盗難などにより資産に損害を受けた場合。 |
これらのケースに該当するかどうか、ご自身の状況を照らし合わせて確認してみてください。詳細は国税庁のウェブサイト「確定申告が必要な方」も参考になります。
個人事業主やフリーランスの場合
個人事業主やフリーランスとして事業所得や不動産所得、山林所得がある方は、原則として確定申告が必要です。 所得の計算や経費の計上など、会社員とは異なる知識が求められます。青色申告を選択すれば、最大65万円の特別控除や赤字の繰り越しなどのメリットがありますが、事前の承認申請や複式簿記による記帳が必要です。白色申告でも記帳や帳簿類の保存は義務付けられています。
収入から必要経費を差し引いた所得金額に対して税金が計算されますので、日頃から領収書や請求書などの証拠書類を整理・保存しておくことが重要です。
年金受給者や退職者の場合
公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、その公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には、確定申告は不要です。ただし、この条件に当てはまっても、医療費控除や生命保険料控除などで所得税の還付を受けられる場合は、確定申告をすることができます。
また、退職金を受け取った際、「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出していれば、通常は源泉徴収で課税関係が終了するため確定申告は不要です。しかし、提出していない場合や、他の所得と合わせて確定申告を行う必要があるケースもあります。
期限後申告という手続きがある
「確定申告の期限(通常は翌年3月15日)を過ぎてしまった…」と諦める必要はありません。「期限後申告」として、期限を過ぎてからでも申告手続きを行うことができます。
税務署から指摘を受ける前に、自主的に期限後申告を行うことで、ペナルティである無申告加算税が軽減される場合があります。具体的には、法定申告期限から1か月以内に自主的に申告し、かつ、納付すべき税額の全額を法定納期限(口座振替の場合は振替日)までに納付しているなどの一定の要件を満たせば、無申告加算税は課されません(ただし、過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合を除く)。
放置しておくと延滞税も日々加算されていくため、気づいた時点でできるだけ早く対応することが重要です。
どうしても自分で対応できない場合は税理士に相談
「過去数年分まとめて申告が必要で、どう手をつけて良いかわからない」「帳簿付けや税金の計算が複雑で自信がない」といった場合は、税金の専門家である税理士に相談することを検討しましょう。
税理士に依頼するメリットは以下の通りです。
- 正確な申告書の作成: 複雑な税法や制度を理解し、適切に処理してくれます。
- 節税に関するアドバイス: 利用できる控除や特例を見逃さず、最適な申告方法を提案してくれます。
- 税務署との対応代行: 税務調査が入った場合など、専門家として対応してくれます。
- 時間と手間からの解放: 面倒な作業を任せることで、本業や他の活動に集中できます。
相談料や依頼費用は、申告内容の複雑さや依頼範囲によって異なります。初回の相談は無料で行っている税理士事務所も多いので、まずは気軽に問い合わせてみるのがおすすめです。複数の税理士に相談し、信頼できると感じる専門家を見つけることが大切です。
税務署に正直に相談することも検討する
税務署と聞くと「怖い」「取り立てられる」といったイメージを持つ方もいるかもしれませんが、税務署は納税者の相談にも応じてくれる機関です。確定申告のことで分からない点や、無申告の状態をどう解消すれば良いか困っている場合は、正直に税務署の窓口や電話相談を利用してみるのも一つの方法です。
匿名での相談も可能な場合がありますし、事情を説明することで、どのように手続きを進めれば良いか具体的なアドバイスをもらえることがあります。特に、自主的に相談し、誠実に対応する姿勢を示すことは、悪質性が低いと判断される材料になり得ます。
国税庁のウェブサイトには「タックスアンサー(よくある税の質問)」やチャットボットによる税務相談など、様々な情報提供ツールがありますので、これらも活用してみましょう。
今後のために知っておくべき確定申告の基礎知識
一度、確定申告の対象となったり、無申告の状態を経験したりした方は、今後同じ過ちを繰り返さないために、確定申告に関する基本的な知識を身につけておくことが重要です。
- 帳簿付けの習慣化: 特に個人事業主や副業で収入がある方は、日々の取引を記録する帳簿付けを習慣にしましょう。会計ソフトやアプリを利用すると効率的です。
- 経費の範囲を理解する: 事業に関連する支出は経費として計上できますが、何が経費になるのか、ならないのかを正しく理解しておく必要があります。
- 領収書や書類の保存: 申告の根拠となる領収書、請求書、契約書などの書類は、法律で定められた期間(通常5年または7年)きちんと保存しましょう。
- 申告期限の確認: 確定申告の期間は、原則として毎年2月16日から3月15日までです。期限を意識し、早めに準備を始めることが大切です。
- e-Taxの活用: 国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用すれば、自宅からインターネット経由で申告手続きができます。マイナンバーカードと対応するスマートフォンまたはICカードリーダライタがあれば利用可能です。
正しい知識を身につけ、計画的に準備することで、確定申告は決して難しいものではありません。 不明な点は早めに専門家や税務署に相談し、適正な申告・納税を心がけましょう。
まとめ
確定申告をしていない人が多い背景には、制度への無知や手続きの煩雑さ、誤解など複数の理由があります。しかし、税務署はマイナンバー制度などを通じて無申告を把握しやすく、発覚すれば無申告加算税や延滞税といったペナルティが課されます。不安な方は、まず自身が対象か確認し、期限後申告や税理士への相談を検討しましょう。放置せず、適切に対応することが大切です。