起業する、会社を設立する、事業を立ち上げる、これらを考えている方にとって一番気掛かりなことは売上・資金繰り等の「お金」ではないでしょうか。
以前のコラム 「独立・起業を決断!誰もが通るリスク・不安を解消するためには」でも、リスクや不安を解消する一番の手段は「資金」であると解説してきました。
今回は、起業時に検討される「創業者融資」についてお伝えしていきます。
融資とはお金を借りることなので、一般的にはマイナスイメージが強いですが、事業家の融資は個人の借入とは全く考え方が違います。
むしろスタート時にある程度の資金があったとしても、創業者融資の活用を強くお薦めします。
創業者融資は他の融資に比べ、好条件で借りることが出来ます。
さらにこれから事業を行う上で、事業のスピードを加速させ、降りかかるリスクを軽減させます。
これらをそれぞれ項目を分けて、細かく解説していきましょう。
自己資金だけで事業展開をお考えの方も、
「創業者融資」を受けて一気に事業を推し進めようとされている方も、
今回のコラムを読むことで、「創業者融資」がどれ程の役割を果たすのか、理解を深めることができるでしょう。
①まとまった資金があると事業は圧倒的に有利になる
②好条件で借りられるのは基本的に創業時だけ
③まとまった資金はあらゆるリスクから守ってくれる
このページの目次
①まとまった資金があると事業は圧倒的に有利になる
創業時は、誰もが「最低限の経費で始めよう」と考えます。
ここ最近は店舗や事務所を構えずとも、この身一つPC1台で成り立つ事業も増え、「借入はせずにミニマムに低リスクで」という考え方も増えています。
もちろんその考えは非常に堅実であり正しいことなのですが、スタートアップの時には、ある程度投資すべきところに資金を投じなければ、後々会社経営、事業のさまざまな面で影響が出てきます。
よくある例として事務所を借りずにバーチャルオフィスを利用したり、webサイトにお金をかけないというものがあります。
しかし、
バーチャルオフィスは社会的信用が乏しいということで下記のようなデメリットがあります。
・法人用の口座が作れない
(対処法はコラム「合同会社・株式会社を設立したのに法人口座が作れない?その理由と解決策」にて
・郵便物の受け取りなど、利便性に難がある
・お金がない(売れていない)企業だと下に見られる
webサイトに関しても同様です。
広告が表示される無料webツールで公式サイトを作る、企業専用ブログ等を専門家に依頼せずに自作で済ませていると、「サイトを作るお金もない企業=うまくいっていない」と判断されます。
また、経理・財務・社会保険の手続きは調べながら自分で進めることもできますが、時間がかかります。専門家に依頼しない場合は全て自分で行わなくてはいけません。特に法人になると複雑な業務も少なくありません。
バックヤードの業務に時間を取られて、本来やるべき仕事に従事できなくなり売上が下がるとなると本末転倒ですよね。
専門士業との顧問契約は本来の事業に集中する為にもぜひ契約しておきたいところです。
そして一番深刻なことは、
いざ事業拡大のチャンスが舞い込んできた時にお金がないと、チャンスを諦めなくてはいけなくなってしまうことです。
チャンスの一つとして、事業者に対する各種補助金・助成金制度があります。これらは事業で必要な経費の何割かを補助してくれるものなので、是非とも活用したいものですが、事業者が先払いして、実際にお金が支給されるのは数ヶ月後となります。
ある程度の資金がなければ取り入れること自体が難しいのです。
これらは非常にもったいないことです。
自己資金だけで何とかしようと思うと、どうしても経営のスピードは遅くなります。
後発の事業者がライバルと肩を並べて互角に戦っていく為にも、初期投資をしっかり行い、数ヶ月分の運転資金を確保した上で戦いに挑んでいきましょう。
②好条件で借りられるのは基本的に創業時だけ
一般的に創業前後の融資は一番通りやすいと言われています。
特に創業時は金融機関の方から融資のアプローチが来る程です。
起業家から人気なのは日本政策金融公庫が実施する新創業者融資制度です。
日本政策金融公庫新創業者融資制度についてはこちら
低金利で都市銀行や地方銀行よりも融資は受けやすいと言われています。
また、少し金利が高めになりますが、無担保無保証型の融資制度もあります。
お金を借りるのですから、当然審査はあります。
本当に事業で安定した売上を築き、返済能力があるかは厳しくチェックされます。
その際には代表者個人の信用情報も審査対象です。
「カードローンを利用した経験がある」「住民税を滞納したことがある」「奨学金の返済が残っている」など、信用情報について不安な方は、諦めずに税理士に一度相談することをお薦めします。
日本全体の動きとしては起業自体は応援されているため、起業家にはこのようにチャンスが多く与えられています。
けれども融資を一切受けず、最初の決算が赤字であった場合、もしもそのタイミングで「お金を借りたい」と思っても創業時のような好条件で借りることはできません。
赤字や税金・社会保険料の滞納がある場合は種類関係なく融資の審査には落ちやすくなります。
新創業者融資は期間としては2期目の決算前まで申し込み可能ですが、1期目の決算内容は評価対象です。
決算書はまさに会社の通知表。けれども起業経験がない1年生は赤字が普通です。
※タイトルで、好条件で借りられるのは基本的に創業時だけと書きましたが、
コロナ禍で実施された低金利の融資のような中小企業を支援する国の施策は
本当に特別な場合だけに限られるからです。
創業時というのは一度きりです。
好条件で借りれるチャンスはぜひ活かしましょう。
③まとまった資金はあらゆるリスクから守ってくれる
事業というのは何があるか分かりません。
新型コロナウイルス蔓延も、一体誰が予想できたでしょうか? 過去にもバブル崩壊、震災やテロ、リーマンショック等ここ数十年の間でも何度も経済を打撃する大きな危機が起こっていますし、これからも起こるでしょう。
また、ミクロで考えてみると事業者自身は下記のようなリスクにも対応していかなくてはいけません。
・経費が予想以上にかかる
・売上が予想よりも低くなる
・仕事の進行が遅れ入金も遅れる
・取引先の倒産やトラブルで売掛金が回収できなくなる
・代表者の怪我や病気
数多くのリスクがありますが、そのような時に資金に余裕があれば気持ちの上でも余裕を持って経営できます。
サービスを買い叩かれた時、「お金がない」とその月の売上欲しさに悪条件でも応じざるを得なくなります。
そのようなことが繰り返されると徐々に事業は先細りしていくことでしょう。
会社は赤字では倒産しません。現金が尽きた時に倒産するのです。
資金に余裕があるということは「猶予」、つまり「時間」が与えられていることと同じです。
ある程度余裕のある経営を行うためにも、先を見据えて資金調達をしていきましょう。
早めの対策が事業成功の鍵!迷っているのであればぜひ一度ご相談ください。
事業融資は上手に活かせば事業を伸ばし、経営のリスクを回避させてくれます。
けれども、融資は借入であり自己資金でないことも十分に理解しなくてはいけません。
預金通帳の数字を見てつい気が大きくなってしまうのが人間ですが、専門家のアドバイスをしっかり聞いて、堅実な資金繰りをしていくことは何よりも事業を存続させていくためには重要なことです。
また、融資を受けようと思った場合は、金融機関に事業計画書を提出して返済能力を証明する必要があります。
返済計画の根拠を論理的に説明することや、細かい質問への対応など、対策全般は経験豊富な専門家に任せることが審査通過の鍵になります。
・事業計画書をどのように書けばよいのか
・融資の相談はどのようにすれば良いのか
・自分一人では断られるかもしれなくて不安だ
・審査に通るためのプレゼンや面談のポイントを知りたい
創業者融資のチャンスを活かしていくためにも融資の際はぜひ税理士にご相談ください。
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