経営改善に役立つ損益分岐点とは?活用方法と注意点

創業や起業をするうえで、一番最初に考えることは何でしょうか?多くの方がどれだけの売上をあげれば会社としてお金が回るのかではないでしょうか?

 まずは1千万円?それとも5千万円?もちろん売上は1円でも多く上げた方がいいのですが、売上を考えるうえでひとつの指標となるのが損益分岐点です。

 今回は、損益分岐点について考えていきたいと思います。

今さら聞けない損益分岐点とは

 

損益分岐点とは、ある商品やサービスを提供するために必要な費用と、その商品やサービスから得られる収益とが等しくなる点のことを指します。

 つまり、その点を超えると利益が生じ、その点を下回ると損失が発生するということです。

 損益分岐点は、事業の収支を把握する上で非常に重要な指標となります。なぜなら、冒頭でお伝えしたとおりに損益分岐点を把握することで、どの程度の売り上げが必要なのか、あるいは、どの程度の費用を削減しなければならないのかがわかるからです。

 また、損益分岐点を下回ると、事業の継続が困難になる場合があるため、事業の存続にも関わる重要な要素となっています。

 

こんなに簡単!?損益分岐点の計算方法とは

 損益分岐点を計算するには、以下のような式が使われます。

損益分岐点 = 固定費 ÷ (1 – (変動費 ÷ 売上高))

 例えば、ある会社が月額固定費が100万円、商品の単価が1,000円で変動費300円の場合、損益分岐点は、以下のようになります。

損益分岐点 = 100万円 ÷ (1 – (300円 ÷ 1,000円)) = 1,428,571円

 つまり、この会社は、月に1,428,571円以上の売り上げを上げる必要があるということになります。損益分岐点を上回れば、その先は利益が生じることになります。

 ここでいう(1-(変動費÷売上高))は限界利益率とも呼ばれます。

 限界利益率とは、ある商品やサービスを1つ追加生産する際に、その商品やサービスの売上高からその分の変動費を引いた金額である限界利益を、その商品やサービスの売上高に対しての割合で表したものです。

 以上のように、損益分岐点は、事業を運営する上で非常に重要な指標となります。事業を計画する際には、損益分岐点を把握し、収支計画を策定することが大切です。

 ここで問題となるのが、固定費や変動費をどのように考えていくかです。これらの費用をもっと掘り下げていきましょう。

損益分岐点でおさえるべき固定費の考え方

 固定費とは、商品やサービスを提供するために必要な、毎月一定額の費用のことを指します。固定費には、以下のようなものがあります。

  • 賃料:事業用の店舗やオフィス、倉庫などを借りる場合、その家賃が固定費となります。また、貸し借りに関する手数料や保証金なども含まれます。
  • 給与:従業員の給料、手当、社会保険料、退職金など、事業を運営するために必要な人件費が固定費となります。ただし、売上が増えると、生産拡大のために労働者の採用や残業代の支払いが必要となると考えると変動費としても考えることができます。
  • 光熱費:事業用の電気、ガス、水道などの光熱費が固定費となります。これらの費用は、使用量に応じて変動することはありますが、基本的には毎月一定額の請求が来るため、固定費として扱われます。
  • 通信費:事業用の電話、インターネット回線などの通信費が固定費となります。これらの費用も、基本的には毎月一定額の請求が来るため、固定費として扱われます。
  • 保険料:事業用の保険料、例えば、火災保険や労災保険などが固定費となります。これらの保険料は、保険金の支払いに関わるリスクに対する保険料のため、毎月一定額の支払いが必要となります。

以上のように、固定費は、毎月一定額の支払いが必要となる事業運営に必要な費用です。固定費を抑えることで、収益性の高い事業運営が可能になるため、事業計画を立てる際には、固定費の見直しも重要なポイントの一つとなります。

損益分岐点でおさえるべき変動費の考え方

変動費とは、商品やサービスを提供するために必要な費用で、売上高や生産量などの変化に応じて金額が変わる費用のことを指します。以下に変動費の具体例を挙げてみます。

  • 材料費:商品を製造する場合に必要な原材料や部品などの費用が変動費となります。売上が増えると、原材料や部品の必要量も増えるため、その分だけ材料費が増えます。
  • 運送費:商品の輸送に必要な費用が変動費となります。売上が増えると、商品の輸送量も増加するため、運送費も増えます。
  • 広告費:広告宣伝活動に必要な費用が変動費となります。売上が増えると、商品やサービスのPR活動が必要となり、広告費も増加します。
  • 消耗品費:事業運営に必要な文具や消耗品、清掃用品などの費用が変動費となります。売上が増えると、オフィスや店舗の清掃回数や文具の使用量も増えるため、消耗品費も増加します。

 以上のように、変動費は、売上高や生産量などの変化に応じて変動する費用です。事業計画を立てる際には、変動費の見積もりが必要となるため、事業運営に必要な費用を正確に把握し、見積もりを行うことが重要です。

損益分岐点を活用した経営改善方法

損益分岐点を求めたところでどのように経営に役立てれば良いのでしょうか?具体的には、以下のような経営改善が考えることができます。

損益分岐点を下げるためのコスト削減

 コスト削減することで損益分岐点を下げることができるように、コストを削減することが重要です。例えば、固定費を減らす、変動費を削減する、労働力を見直すなどが考えられます。

製品ごとの損益分岐点の見直し

 損益分岐点は製品・商品ごとに活用することも有効です。 損益分岐点を見直すことで例えば、売上が低い商品の生産・販売を中止する、需要の高い商品に注力する、新商品の開発をするなどが考えられます。

損益分岐点を改善するための価格の見直し

価格を見直すことで、損益分岐点を下げることができます。例えば、価格を下げることで販売量を増やす、価格を引き上げることで利益率を上げるなどが考えられます

以上のように、損益分岐点を利用して経営改善を行うことで、企業の収益性向上や経営の効率化が期待できます。

損益分岐点を経営に活用するうえで注意すべきこととは

損益分岐点を利用する際には、以下のような注意点があります。

損益分岐点のみならず市場環境・変化も考慮すること

損益分岐点は、あくまで理論上の計算結果です。実際の経営環境や市場状況によっては、損益分岐点よりも多くの売上が必要となることもあります。そのため、損益分岐点を利用する際には、理論上の計算結果であることを理解し、実際の環境や市場の変化を常に意識することが必要です。

固定費にすべきか変動費なのか?コストの分類方法に注意すること

損益分岐点の計算には、固定費と変動費を正確に分類することが必要です。しかし、どの費用が固定費であり、どの費用が変動費であるかには、一定の判断が必要です。そのため、コストの分類方法に関しては、経験豊富な専門家の意見を聞くなど、慎重な判断が必要です。

経営戦略と損益分岐点の関連性を考慮すること

損益分岐点は、費用と収益のバランスが悪くならないための目安として利用されますが、それだけで経営戦略の判断材料にすることはできません。経営戦略と損益分岐点の関係性を考慮して、損益分岐点を利用することが必要です。

損益分岐点の期間による変動に注意すること

損益分岐点は、あくまである一定期間における売上高と費用のバランスを示したものであり、期間が長くなればなるほど、費用や売上高が変動することがあります。そのため、損益分岐点を利用する際には、期間による変動に注意して計算を行うことが必要です。

以上のように、損益分岐点を利用する際には、上記のような注意点があります。これらを踏まえて正確に計算を行い、経営戦略の判断材料として利用することが重要です。

最後に

今回は、損益分岐点についてまとめてみました。顧問税理士を付けている事業者の多くが税理士事務所から一定期間の会社の状況を示した試算表を提示していただけるのではないかと思います。

多くの方が、損益計算書の一番下の項目である利益に注目しがちとなります。

ただ、利益にだけ注目するのではなく、損益分岐点の考え方を用いて、さらに利益を出すにはどうすればいいのか?コストで無駄がないのか?考えるようにしてみましょう。

You Tube「【創業支援】税理士の山さん」にて最新の税務・経営の情報発信

山本聡一郎税理士事務所では、ホームページにおけるコラムによる情報発信のみならず、2023年10月よりYou Tubeチャンネル【創業支援】税理士の山さんをスタートしております。

最新の税務はもちろん、経営など役にたつ情報を発信しておりますので、ぜひチャンネル登録のほどよろしくお願いいたします。

youtube バナー

 

 

author avatar
税理士 山本聡一郎
山本聡一郎税理士事務所 代表税理士。1982年7月生まれ。名古屋市中区錦(伏見駅から徒歩3分)にてMBA経営学修士の知識を活かして、創業支援に特化した税理士事務所を運営。クラウド会計 Freeeに特化し、税務以外にも資金調達、小規模事業化持続化補助金などの補助金支援に力を入れている。
無料相談ご予約・お問い合わせ

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

0120549514電話番号リンク 問い合わせバナー