起業された方は、「自分の夢を実現したい」「自由な働き方をしたい」「経済的な成功を得たい」など、様々な思いを持って一歩を踏み出されたことでしょう。
しかし、実際には起業は自由である反面さまざまなリスクに晒された働き方でもあります。
収入は不安定ですし、自分で情報収集したり、準備しない限りは福利厚生もありません。退職金についても誰かが用意してくれるわけでもありません。
企業だけに許されている支援や制度を十分に活用して、資本主義の荒波をうまく乗り越えていく必要があります。
今回は、そんな経営者や中小企業をサポートする制度の一つである企業型確定拠出年金(401k)について紹介します。企業型確定拠出年金(401k)は国が力を入れている制度の一つです。
企業型確定拠出年金(401k)は中小企業の一人社長の退職金や社会保険対策、節税対策として有効な手段になります。
また、従業員の採用のうえでも企業型確定拠出年金(401k)を導入することは福利厚生の面でもメリットが多くあります。
しかしながら、企業型確定拠出年金(401k)について、その恩恵があまり知られていないためなのか、実際に取り入れている中小企業は全体の1%ほどしかありません。
今回のコラムを読んでいただくことで、企業型確定拠出年金(401k)についてメリット・注意点を含めた詳細を正しく理解いただき、その上で制度を上手に活用していただきたく思います。
このページの目次
企業型確定拠出年金(401k)のメリット① 節税と保険料負担軽減の効果
企業型確定拠出年金(401k)を導入すると、拠出金額は給与から天引きされ、所得税や住民税の対象額から除外されます。つまり、拠出分は全額控除となるため節税が可能となるのです。
もしも給与の一部を預貯金で積み立てる場合、預貯金分も所得税や住民税の課税対象となります。
つまり同じ年収でも、積立方法を企業型確定拠出年金(401k)にするか預貯金にするかで大きく税金の額が変わってくるということです。
また、効果は節税だけではありません。
拠出金額が所得から差し引かれることにより、雇用保険料や厚生年金保険料の計算対象額も減少します。その結果、これらの保険料の負担も軽減されるのです。
節税と保険料負担軽減の効果に関する注意点
節税効果は個人の所得水準や税率によって異なります。
また、企業型確定拠出年金(401k)の拠出金額には上限が設けられており、これを超える部分については節税効果が適用されません。
そのため、節税効果を最大限に活用するためにも、自身の所得状況や税率を考慮して適切な拠出金額を設定するようにしましょう。
一人社長であれば、企業型確定拠出年金(401k)の上限額を考慮した上で役員報酬を決める、ということも可能です。
企業型確定拠出年金(401k)のメリット2 自分で資産運用ができる
企業型確定拠出年金(401k)では、参加者が自分で選んだ投資商品(株式、債券、投資信託など)で拠出金を運用することができます。
また、拠出金は「毎月(または毎年)○○円」という形で定期的に積み立てることが可能です。
これにより、自分のリスク許容度や運用目標に合わせた投資ポートフォリオを構築することが可能です。
企業型確定拠出年金(401k)は、将来の年金資産を築くことを目的とした制度であるため、長期的な運用が前提となります。これにより、短期的な市場の変動に左右されにくい運用が可能となり、資産形成に有利です。また長期的な運用の場合、複利の力がより大きく働き、短期的な運用よりも資産が多く形成されやすくなります。
また、利益や配当が発生した場合、自動的に再投資されるため、それらにさらに時間と福利の力が加わることで、資産をさらに成長させることができうるのです。
ここまで読まれて、「企業型確定拠出年金(401k)とは、個人型確定拠出年金(iDeCo)と同じではないか」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
確かに、両者とも確定拠出年金制度の一環として設けられており、長期的な資産形成と将来の年金資産の確保を目的としています。
また、同等の節税効果があり、自分で選んだ投資商品で拠出金を運用することができるという点も同じです。
けれども、この2つには明確な違いが3点あります。
これらの違いを理解した上で、両制度を上手く組み合わせて、資産形成を計画されることをおすすめします。
(加入状況によって拠出金額の上限額が変わりますのでご注意ください。)
企業型確定拠出年金(401k)と個人型確定拠出年金(iDeCo)の違い
①対象者
企業型確定拠出年金(401k)は、所属する企業が導入している場合に限り利用できる制度です。一方、個人型確定拠出年金(iDeCo)は、自営業者や個人事業主、フリーランスなどの働き方に関係なく、加入資格がある場合に利用できます。
②拠出方法
企業型確定拠出年金(401k)は、給与から一定額が天引きされ、企業も一部負担することがあります。個人型確定拠出年金(iDeCo)は、個人が自分で設定した金額を拠出します。
③投資限度額
企業型確定拠出年金(401k)の拠出限度額は、月額5.5万円(他の企業年金を併用している場合は月額2.75万円)です。個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出限度額は(個人の属性や年金加入状況によって異なりますが)自営業者の場合、月額6.8万円です。詳細は厚生労働省のHPで確認できます。
自分で資産運用ができることに関する注意点
企業型確定拠出年金(401k)は、預貯金ではなく投資商品を選んで運用するため、商品の選択や運用にはリスクが伴い、場合によっては資産が減少することもあります。
また、投資商品の選び方や拠出金額についてはある程度お金の知識がないとその辺りの判断を大きく誤る恐れもあります。
企業型確定拠出年金(401k)を導入して自分で運用を行う場合は、あくまで自己責任ということになりますが、大切な資産を減らさないためにも、無理な運用を避けるべく投資商品について学ぶことも必要です。
また、企業側も従業員が投資について理解を深めるための勉強会を実施するなど、教育が必要となります。
企業型確定拠出年金(401k)のメリット3 従業員への福利厚生として提供可能
従業員に対して、将来の年金資産の確保や節税効果などのメリットを提供することで、会社に対する満足度が上がることが期待できます。「この会社に長く居たい」という意欲が高まり、従業員の定着率向上につながることもあり得ます。
また、福利厚生が充実しているという印象を持たれやすく、企業のイメージアップにつながったり、採用が他社よりも有利に働く可能性もあります。
従業員への福利厚生に関する注意点
企業型確定拠出年金(401k)では、運用管理や事務手続きに関する費用(管理費用)が発生します。
また、企業型確定拠出年金(401k)は福利厚生としては有効ですが、それが直接的に離職率を下げることにつながるとは限りません。離職率を下げることを考えるのであれば、一番大切な労働環境の改善に努める方がよほど効果があると言えます。
企業型確定拠出年金(401k)のメリット4 退職金制度の代替として利用可能
企業型確定拠出年金(401k)を導入することで、企業の退職金制度の負担を軽減できる場合があります。
従来の退職金制度は、企業が従業員の退職時に一定額の金銭を支払うものであり、企業にとって非常に負担が大きいものでした。
けれども企業型確定拠出年金(401k)を退職金制度の代替として導入することで、企業の負担を軽減するだけでなく、従業員に「自分で資産運用をするチャンス」を提供することが可能になります。会社の規模や業績だけで退職金額が決められてしまうよりも柔軟性が高く、従業員のニーズや企業の財務状況に応じた自由な制度設計が可能なのです。
これにより、従業員の満足度が向上することが期待できます。
退職金制度の代替に関する注意点
企業型確定拠出年金(401k)を導入する際には、定期的に制度の運用状況を評価し、必要に応じて改善策を検討することが重要です。また、運用にはリスクが伴うため、従業員には制度を理解してもらうための教育やサポートが必要です。
このように、企業にとって負担軽減や財務の安定化などのメリットがある一方で、制度運営や従業員へのサポートに関するコストも発生します。
そのため、企業型確定拠出年金(401k)の導入を検討する際は、これらの要素を総合的に考慮し、企業の状況やニーズに合った選択を行うことが重要です。
最後に「企業型確定拠出年金(401k)を今すぐ始めたい!」そんな方はぜひご相談ください。
今回は、中小企業に導入をぜひおすすめしたい企業型確定拠出年金(401k)についてメリットと注意点を紹介いたしました。
いかがでしたでしょうか?企業型確定拠出年金(401k)は大手企業しか利用できないと思われがちですが、一人社長の企業でも導入することができます。
一人社長として、企業型確定拠出年金(401k)の導入を検討する際は、これらのメリットとデメリットを総合的に判断し、企業や従業員のニーズに合った選択をすることが重要です。
適切な導入計画と運用方法を検討することで、あなたのビジネスにプラスの効果をもたらすことができるでしょう。
今回の記事を読まれて、「少し興味をがわいた。」「ぜひ話を聞いてみたい。」という方はぜひ一度、山本聡一郎税理士事務所までご相談ください。
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