秋になり、今年も残り3ヶ月を切りました。年末は、確定申告や年末調整など多くの方にとってお金に関する「締め」のタイミングでもあります。
手続き関係はどうしても後回しにされがちですが、今のうちにできる限りのことをやっておくと、ゆとりを持って年末を過ごすことができますので、ぜひ積極的に動いていきましょう。
今回は、このタイミングでぜひやっていただきたい「ふるさと納税」について解説していきます。
誰もが一度は耳にしたことがある「ふるさと納税」ですが、納税者にも受入れ側にも非常にメリットがある制度であるにも関わらず、その利用率は日本全体で14.9%と、まだ一部の人しかその恩恵を受けていないのが現状です。
【参考記事】
ふるさと納税の都道府県別「利用者数・利用率」と「平均寄附金額」を発表|2023年最新データ PR TIMES
やらない理由として「仕組みや利用方法が分からない」が37%(1位)で、二番目の「面倒臭いから」という理由も20%を超えていました。
【参考記事】
約8割が「ふるさと納税をしたことがない」 理由の2位は「面倒だから」、1位は?
けれども、メリットばかりの「ふるさと納税」をこれらの理由で利用しないのはあまりにもったいないことです。
2023年10月より制度が変わり「メリットが減った」「改悪した」という声も聞きますが、それでも「ふるさと納税」を活用することを強くお勧めします。
今回の記事を読み、そのメリットを十分理解して「よく分からない・面倒くさい」という壁を突破していていただければ幸いです。
【参考記事】
読売新聞オンライン
「ふるさと納税のルールが10月に変わる? 早めの納税でお得に」
このページの目次
ふるさと納税の仕組み
ふるさと納税は、2008年に導入された制度で、この制度を利用することで翌年に納める所得税や住民税を減らすことができます。
好きな地域へ寄付をして、その寄付額を税金から控除することができる仕組みなのです。
この制度は、地域資源を活用した地域振興を進めることや、地域への愛着や関心を高める目的で作られましたが、今はどちらかと言えば魅力的な返礼品や「節税効果」で注目されることが増えてきました。
「ふるさと納税」の流れは下記の通りです。
①寄付先の選定
まず寄付を受け付けている全国の自治体を選びます。多くの自治体が、特産品や体験などの「お礼の品」(返礼品)を提供しています。地域から選ぶ場合もあれば、返礼品の種類から選ぶ方法もあります。
②寄付の実施
寄付先の自治体の公式サイトやふるさと納税ポータルサイトを利用して寄付を行い、お礼の品(返礼品)を受け取ります。
2023年10月の制度変更を受けて、返礼品のラインナップが従来と少し変わりますが、それでも魅力的な返礼品は数多く存在しています。
③控除の申告
翌年の所得税の申告時に、寄付の控除を受けるための手続きを行います。
今さら聞けないふるさと納税 3つのメリット
メリット①:寄付をすると特産品などのお返しがもらえる
寄付に応じて、地域の特産品や体験などのお礼の品を受け取ることができます。
よく見かけるのがお米やお肉、魚介や農作物などの食品です。魅力的な返礼品はインスタグラムを始めとしたSNSでも頻繁に紹介されています。その影響からか、日常で使う食品や、トイレットペーパーなどの日用品・消耗品を返礼品に選び、上手に家計の負担を減らす人々も増えてきましたように思います。
返礼品には食品や日用品以外にも、美容・旅行チケット・家電など多種多様で、ふるさと納税を毎年楽しみにされている方も少なくありません。
メリット②:寄付した分は来年の税金の前払いとして税金の控除を受けられる
寄付した分については正しい手続きを行うことで、来年の税金について控除を受けることができます。
「ふるさと納税の品物は高い」という認識の方は、控除ついて正しく知っていただくことでその部分を解決させることができます。
本当に簡単にお伝えしてしまうと、「寄付した金額分を、来年納めるべく税金の前払金として充当できて、さらにおまけとして返礼品がもらえる」ということなのです。
ふるさと納税は買い物ではなく、「納税したらいただけるもの」と認識していただくと分かりやすいかもしれません。ですので、ふるさと納税自体には節税効果はないのですが、その分、返礼品分だけ得することができるのです。
メリット③:寄付先は好きな地域を選べる
ふるさと納税では、寄付先は自由に選ぶことができます。自分の故郷や、応援したい地域に寄付することで、その地域を直接サポートできます。
例えば災害に遭った地域を応援したいという場合であればふるさと納税を利用することで応援ができるのです。もちろん自分の生まれ故郷でも良いですし、旅先で訪れたことがある地域、将来移住したいと考えている地域を活性化させたいなど、自由に選ぶことができます。
ふるさと納税利用時の注意点
控除限度額と自己負担2,000円について
とてもお得な制度ですが、税金の控除が受けられる上限金額(控除限度額)は所得に応じて決まっています。
寄付すれば、税金から全て控除される、というわけではありません。
まず、寄付をどれだけ行なっても最低2,000円の自己負担が必要になります。
けれども、逆に「2,000円であれだけの物や体験(返礼品)をいただける」と考えるとふるさと納税の制度がいかにメリットが大きいかが分かりやすく伝わるかと思います。
税金の控除の仕組みは、総務省のページや各ふるさと納税ポータルサイトに詳しい図解が載っていますのでご確認ください。
【参考記事】
控除限度額を調べたい場合も、各ふるさと納税ポータルサイトで計算することができます。去年の源泉徴収票・確定申告書をご用意いただきぜひ一度調べてみてください。
年末まで所得が確定しない個人事業主は限度額に注意も
寄付の時点ではその年の収入が確定していないため、正確な控除限度額が分からない状態で寄付を行うことになります。去年と今年で大きく所得が変わる場合には控除限度額が大幅に変わる可能性があります。その点だけ注意が必要です。
会社員でほぼ変動がない場合は問題はありませんが、経営者・個人事業主の場合は、税理士に一度確認を取られることをお勧めいたします。
控除限度額を超過した場合は自己負担額は2,000円を超えます。
所得が所得税率区分の変わり目ギリギリの場合や、住宅ローン控除との併用や、扶養家族の年齢・iDeCoの利用など様々な要素が控除限度額を大きく変える要因になります。控除限度額を計算する際には一度お金の流れを細かく確認するようにしましょう。
控除を受けるには所定の手続きが必要
ふるさと納税利用で税金の控除を受けるには所定の手続きが必要です。
基本的には確定申告が必要とされていますが、一定の条件を満たせば「ワンストップ特例制度」を利用して確定申告をせずに控除を受けることができます。
確定申告を行う場合は、寄付した自治体から送られる「寄付金受領証明書」または、ポータルサイトで発行される「寄付金控除に関する証明書」を使用します。
自動的に控除されるわけではありませんので注意しましょう。
ワンストップ特例制度とは
下記の2つの条件を満たす場合は、確定申告なしで、ワンストップ特例制度を利用して控除を受けることができます。
・年間でふるさと納税の寄付先が5自治体以内である
・年末調整を行う給与所得者で、ふるさと納税制度以外で確定申告や住民税申告をする必要がない
ワンストップ特例制度の利用には、寄付先の自治体に必要書類を期間内に提出する必要があります。ワンストップ特例制度利用の場合、所得税からの控除ではなく、翌年に支払う住民税から控除される仕組みです。
このように確定申告をする必要はありませんが、所定の手続きは発生しますので、忘れないようにしましょう。
年末は申請が殺到するので早めに行うこと
ふるさと納税は、毎年秋から年末に向けて駆け込みで寄付が殺到します。
殺到すると自治体も処理が追いつかなくなり、12月ギリギリのタイミングで寄付を行った場合、年明けの扱いになる場合もあります。そのようなことがないように期限までに余裕を持って行うようにしましょう。12月になる前に終えておくと安心です。
メリットだらけのふるさと納税を活用して、上手に節税して地域を応援しましょう
今回の記事を読まれて、ふるさと納税のメリットについてご理解いただけたかと思います。
いくつかの注意点や忘れてはいけない手続きもありますが、非常にお得な制度なのでぜひ上手に活用してください。
事業をされている経営者・個人事業主など所得が毎年変動する場合や、既に様々な節税対策をされているという方で、できるだけ正確な控除上限額を知りたいという場合は、一度税理士にご相談ください。
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