個人事業主・法人どちらもOK 少額減価償却資産の特例を活かして賢く節税

「減価償却」という言葉は経理用語の中でも比較的多くの方に知られている言葉です。今回は「減価償却」の一種である「少額減価償却資産の特例」について解説していきます。この特例を「知る・知らない」では、資金繰りのアドバンテージが大きく変わります。

※「減価償却」とは、設備投資などの費用について、一定期間に配分する会計処理のことです。

個人事業主・法人どちらもOK 少額減価償却資産の特例を活かして賢く節税

決算前に慌てて節税対策をしたり、利益の調整をすることは税務署目線ではあまり好ましいことではありません。しかし、この特例の活用はリーガルに節税ができるので、ぜひとも上手に使いこなしていただきたいと思います。

30万円未満なら一括でOK!少額減価償却資産の特例とは

個人事業主や法人が備品を購入すると、通常は耐用年数に応じて減価償却が行われます。例えば、車であれば耐用年数は6年なので、6年かけて経費計上していきます。

それが「少額減価償却資産の特例」を利用することで、1個または1組あたり30万円未満のものは一括して購入・使用した年度に経費計上をすることができるのです。

対象備品は幅広く、オフィスで使用するパソコン・机・椅子・電話機や、飲食店のガズレンジ・冷蔵庫などの厨房機器、サロンのシャンプーユニット・スチーマーなど、さまざまな機器が特例の対象となります。

上記に挙げた「器具及び備品」の他にも、30万円未満の減価償却資産であれば、機械・装置、車両、ソフトウェアまでも対象になります。

さらに、新品に限らず、中古品の購入にも適用が可能です。つまり、車も中古購入で30万円未満であれば一括で経費計上することができるということです。

この特例を活用すれば、利益が多い年には、税金を抑えるために「少額減価償却資産の特例」を利用し、一括での経費計上を選ぶことができますし、利益が少なく赤字にしたくない年であれば、資産を固定資産として計上し、年数をかけて減価償却する方法を取ることができます。

少額減価償却資産の特例を取り入れる際の注意点

注意1:事前に青色申告の届出をしている必要がある

この特例を受けるには、事前に青色申告の届出をしている必要があります。

もしも出し忘れていた場合は白色申告扱いになるため、この30万円の特例を受けることができません。

※白色申告の場合、10万円未満の減価償却資産しか一括で経費計上できません。10万円以上の減価償却資産は、固定資産として計上し、数年にわたって減価償却費として経費計上する必要があります。

青色申告の届出には期限があります。

個人事業主の場合は、青色申告をしようとする年の3月15日まで、または開業してから2ヶ月以内です。法人の場合は、会社設立日から3カ月以内に提出する必要があります。

時々聞く話ですが、会社設立時に税理士と顧問契約をしていなかったため、青色申告の手続きが必要であることを知らず、決算時に初めて知ったという事例があります。届出の際に、窓口でも「青色申告されますか?」と聞かれることはありますが、必ず確認してもらえるとは限りません。

会社設立方法・手順はネットでも記載がありますが、一生の間でそう何度も経験することはありませんので、どうしても抜けや漏れが発生します。会社設立手続きを司法書士に依頼される方は多くいらっしゃいますが、「税理士探しは落ち着いてからで良い」と顧問契約を後にすることで、届出漏れが発生するリスクがあります。

国税庁HP 「A1-9 所得税の青色申告承認申請手続

この特例を受けるためには、事前に青色申告の届出をしておく必要がありますので、開業・会社設立の時には必ず青色申告の届出をするようにしましょう。

注意2:一度決めた償却方法は変更できない

選択した償却方法は、2年目以降に変更することは認められていません。

30万円未満の償却資産を購入した際、事業者はそれをすぐに経費として計上するか、通常の固定資産として登録し、法定耐用年数に基づいて減価償却するかを自由に選べます。けれども一度決めた償却方法は変更できないということを覚えておきましょう。

つまり、この特例を利用するしないの判断は、その時の状況だけでなく、来期以降の資金繰りについてもある程度計画を立てておく(予想をつけておく)必要があるということです。

注意3:年間300万円までの上限がある

「少額減価償却資産の特例」は、利用できる限度額が設定されています。年間の取得価額が合計で300万円までという限度があり、これを超えた場合は特例の適用が受けられません。

例として、29万円のパソコンを年間で12台購入した場合、290万円分(10台分)までが特例の適用を受けられます。しかし、11台目以降は300万円を超えるため、通常の固定資産として計上し、法定耐用年数で減価償却を行う必要があります。

補足 税込?税抜?「30万円のライン」判断はどこで行うの?

30万円の基準は経理処理方法や消費税によって変わります。

税込み経理を採用している課税事業者は、「税込価額」で30万円未満とします。

一方で、税抜き経理を採用している課税事業者は、「税抜価額」で判定を行います。

免税事業者の場合は、税込価格で30万円未満を判定する必要があります。

結論 「少額減価償却資産の特例」は、計画的な使い分けが大切です

メリットの大きい「少額減価償却資産の特例」ですが、今回挙げた3つの注意点に気を付けて計画的に使うことが大切です。

特に青色申告の届出に関しては、提出期限を過ぎてしまった場合は来期までどうすることもできません。

「少額減価償却資産の特例」は比較的柔軟性が高い節税対策です。

「知らなかった」という方は、ぜひこのコラムを読み返していただき、ご活用いただきたいと思います。

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