対応済み?2024年から本格スタートする電子帳簿保存法について解説

この秋にインボイス制度が本格始動し、年明けの電子帳簿保存の義務化がいよいよ始まるということで、この2023年度は事業をされる全ての方にとって、まさに激動の1年です。

「電子帳簿保存法」について、聞いたことがあるという方は多いかと思いますが、副業だから・個人事業主だから・うちは売上そんなにないから、などの理由で「自分には関係ない」なんて思っていませんか?

知らないと後悔する2024年最新電子帳簿保存法

You Tubeの私のチャンネルでもお伝えしておりますが、電子帳簿保存法は様々な要素が混ざり、分かりにくくなっているのが実情です。

個人事業主でも副業でも、電子帳簿保存は義務である

インボイス制度は売上や事業内容によって影響を受けない方もいらっしゃいますが、「電子帳簿保存法」の対象事業者は、電子取引を行う全ての法人・個人事業主なので、全ての事業者が当てはまります。そのため、ここでしっかり理解を深めていきましょう。

電子帳簿保存法はインボイスほど話題にされていない印象を受けますが、年明けから始まる正式な決まりであり、違反することで大きなペナルティを受けることになります。電子帳簿保存法は「ただ、お金関係の書類を電子化すれば良い」というものではなく、国税庁が定めたルールに従う必要があり、想像以上に細かい指定があります。

今回は、主に電子帳簿保存法の概要と、違反したときのペナルティについて解説していきます。
保存方法の詳細はまた次回のコラムで解説いたします。

今回の記事で、電子帳簿保存法について正しく知っていただき、年明けからのデータ保存義務化にしっかり対応いただければと思います。

2024年からいよいよ開始!新 電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法とは、「電子取引」に関するデータについて、「データでしっかり保存管理しなさい」という決まりです。

この決まりは、実は2022年1月から始まっていましたが、「小規模企業や個人事業主の経理ですぐそのような体制を構築するのは難しいだろう」と、2023年12月までの2年間猶予が与えられ、その間は電子取引の領収書を紙にプリントアウトしても認められていました。けれども、いよいよ来年1月からは正しく対応することが求められます。

電子帳簿保存に関する歴史は案外古く、コンピューターが一般に普及した1990年代後半から、このようなペーパレス化の動きが少しずつ浸透していきました。この法律自体は1998年に施行され、何度か改正をされて今に至ります。

国税庁のホームページで電子帳簿保存法の始まりや経緯が確認できます。

国税庁ホームページ 制度創設等の背景・電子帳簿保存法創設の経緯

今回の法令は、経理のデジタル化を進める目的ですが、「税務関係帳簿書類のデータ保存を可能とする法律」ということで「可能」と謳いながらも、実際は「する・しない」という自由はなく義務として保存しなければいけないのです。

これにより、経理作業の負担は増えると言わざるを得ません。今後はますます、事業者(経理担当者)と税理士の連携が必要になっていくことでしょう。

「電子帳簿保存法」何をどのように保存するのか

ここでは、具体的に電子帳簿保存法の保存ルールについて説明します。

まず、保存区分が3つに分けられます。

1・電子帳簿保存(任意)

「電子帳簿保存」とは、電子的に作成した帳簿や書類をデータのまま保管することです。

自身で作った見積書・請求書・領収書などが該当します。昔は手書きの見積書や請求書は少なくありませんでしたが、今はエクセルや会計ソフトで作られている方が多いので、作ったものはそのまま保管しておきましょう。領収書に関しては手書きの領収書を発行している方もいらっしゃるかもしれません、その場合は、電子帳簿保存の対象外になります。もしもエクセルや会計ソフトで領収書を作成している場合は、そちらは保存の対象です。

少しややこしいですね。「パソコンを使って作ったものは全てデータ保存、紙で作成したものは紙のまま保存」と覚えていただくとイメージしやすいです。

会計ソフトの場合は、電子帳簿保存法に対応した機能がついていて、各種書類作成をすると、自動的に専用のクラウドBOXに保存されます。取引先名や、日付などでデータ検索ができるので、自分でフォルダを作って保管するよりも事務の手間は幾分かは削減できることでしょう。

2・スキャナ保存(任意)

「スキャナ保存」とは、紙で受領または作成した書類をスキャナで取り込みデータで保存することです。

対象書類は、紙で受け取った・領収書・契約書などです。店舗で受け取ったレシートも該当します。

これらは、正しくスキャナで取り込めて保存できていれば、原本は破棄しても問題はありません。(ただし、これには要件がありますので、破棄する前に顧問税理士に確認するようにしましょう。要件については、次回コラムでお伝えします。)

完全ペーパレス化を求めている方にとっては、このスキャナ保存はありがたいと感じるかもしれません。また店舗のレシートは感熱紙なので、文字が薄くなったり消えてしまうことがあります。データにしておく方が安心な場合もあります。

他にもスキャナ保存の対象となるものは、請求書・納品書・借用証書・預金通帳・小切手・約束手形などが挙げられます。事業のお金の動きに関するものは全て保管すると思っていただければ良いでしょう。最も優先するのは、領収書・契約書です。

スキャンでデータを取り込む際は、カラーで行いましょう。グレースケールはNGです。

スキャンは、スキャナ以外にもスマホやデジカメの撮影でも問題ありません。その場合は内容がしっかり確認できるように気をつけて撮影するようにしましょう。

スキャン作業はどうしても作業時間が必要になります。実店舗利用が多い方や、店舗経営で紙の領収書発行を頻繁に行なっている場合は、スキャン作業を想像するだけで卒倒してしまいそうですね。

これは義務ではなく任意なので、紙で受領したものは紙のまま保存しても法令違反にはなりませんのでご安心ください。けれども、いつ法律が変わってスキャナ保存が義務化するか分かりません。現段階では任意ですが、義務化された時に備えて、概要の理解だけはしておきましょう。

3・電子取引(義務)

3つの保存区分の中で、義務化されるのが、この「電子取引」です。

領収書や請求書などお金の動きに関するもので、データでやり取りしたものはそのままデータ保存が義務化されました。今や各種事業者との取引でも、請求書を郵送ではなく「メールやLINEという手段でPDFデータにして送る」という方法がメジャーになりました。このような場合は全て保管しなくてはいけません。

ネット通販でも領収書を自らダウンロードするサービスも増えました。これらも全て保管対象です。注意しなくてはいけないのは、ネット購入=データ保管ではないということです。時々、商品と一緒に領収書や請求書が同梱されている場合もありますので、どのように受け取ったかで判断するようにしましょう。

以上が3つの保存区分です。

1・2は任意ですが、3は義務として守らなくてはいけません。

法令対応や整備がまだ・・・という場合でも、3だけは対応できるようにしましょう。

電子データは実物がないので、保管の抜け漏れが発生しやすくなります。会計ソフトでカード情報の同期と自動仕訳の設定をしていると手入力を行わないため、ネット取引に関する電子データの保管漏れが発生することがあります。漏れ防止のためには、経理処理を行う際に「自動仕分けのタイミングで必ず領収書をダウンロードする」または「週に1回は電子帳簿保存の作業時間を確保する」など、ルールを設定することがおすすめです。

電子帳簿保存法に違反した際の4つのペナルティ

電子帳簿保存法の対応は手間がかかりますが、法令ですので違反した際にはペナルティを受けることになります。どれも手痛いものです。税理士目線でも絶対に避けるべきだと言いたくなるものばかりです。

1.青色申告承認の取り消し

これは事業をされている方にとって手痛いペナルティですね。

青色申告の承認が取り消しされると、取り消しの通知日から1年間は青色申告の承認を受けることができません。青色申告ではないことでのデメリットは大きく、資金繰りが不利になると言わざるを得ません。青色申告のメリットについては、過去のコラム記事をご覧ください。

これから事業を始められる方に伝えたい。青色申告と白色申告の特徴とメリット・デメリット 

電子取引のデータ保存が不完全でも、正しく申告が行われていて、なおかつ電子データ以外で確認が取れれば、すぐに青色申告取り消しということにはならないと言われていますが、最終的な判断をするのは税務署(国税庁)ですので、万全の対策をしておきましょう。

2.追徴課税

追徴課税とは、決算・確定申告で税金を少なく申告してしまった場合に課せられるものです。
税務調査で、電子帳簿保存法に違反していることが発覚した場合、本来納める税金の5%もしくは10%加算して支払わなければなりません。さらに、意図的な電子データの隠ぺい・改ざんがあった場合は、悪質だと判断され35%または40%の重加算税にさらに10%が加重されます。

3.推計課税

所得税の計算に必要な資料が不十分な場合は、間接資料から税務署が推計した税金額を課せられます。それを推計課税と呼びます。これは本来納める金額よりも高額になるケースがあります。
また推計課税は白色申告でしか利用できません。つまり、青色申告事業者の場合は承認が取り消された上で課税されるという、二重に痛手を被ることになるのです。

4.過料

帳簿や書類を正しく保管していないことは、会社法違反にも該当します。その場合、100万円以下の過料が科せられることがあります。

電子帳簿保存法の準備は税理士と連携をとって行いましょう

いかがでしたでしょうか?
電子帳簿保存について、「ただの書類の保管」と考えずに今から準備しておきましょう。

今回記事を読まれた通り、この法令はただデータ保存すれば良いということではありません。定められた方法で保存する必要があります。

次回のコラムで紹介しますが、データ保存の際は各々の要件を満たす必要があり、要件を満たしていない場合は、最悪ペナルティを受けることもあります。先ほど紹介した4つのペナルティはどれも絶対に避けたい恐ろしいものですが、今から正しい知識を身につけて、しっかり準備しておけば問題はありません。これらは、「ルールを守り、誠実に事業をする事業者を守るために行っている」と考えれば非常に理にかなっているとも言えます。

インボイス制度も重要ですが、この電子帳簿保存法もお忘れないようにしましょう。

新しい対応が増えて経理処理の煩雑化が予想されますが、顧問税理士としっかり連携をとって進めていくことで、業務の効率化が期待できます。

事業者の会計は複雑になっていきます。これまでご自身で申告をされている方も、その業務の負担を考えると税理士と顧問契約を結ぶことを検討しても良いかもしれません。

山本聡一郎税理士事務所では、インボイス制度の導入や、電子帳簿保存の義務化により「事務作業が増えて本業に支障が出そうだ」「具体的にどのようにすれば良いのか分からない」というお悩みを持つ事業者様のお役に立つことができます。ぜひ一度ご相談ください。

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