一人社長のバーチャルオフィスはダメ?法人口座開設のハードルとその対策

「会社設立もしたし、銀行口座を開設するぞ!」と、意気込んで銀行窓口に行ったものの、口座開設がなかなかできずに苦労した、という経験をされたことはありませんか?

個人口座は簡単に開設できるのに対し、法人口座は審査が厳しく、特に起業1年目の一人社長で法人口座開設に苦労される方は少なくありません。

なぜなら、法人名義の口座は犯罪に利用されるリスクが高く、金融機関も法人口座の開設には慎重にならざるを得ないためです。

「犯罪なんかするわけないじゃないか、信じて欲しい!」と、言いたくなるお気持ちも分かりますが、社会的な「信用」は、法人の客観的な情報で判断してもらうしかありません。

今回は、起業1年目の一人社長が銀行口座開設に苦労する理由と、その対処法についてお伝えします。

起業1年目の一人社長が銀行口座開設に苦労する理由

①登記場所がバーチャルオフィスだから

「バーチャルオフィス」と呼ばれる住所貸しのサービスがあります。法人登記が可能で、郵便物転送サービスも付加されて、月数千円というリーズナブルな価格で契約が可能です。しかし、バーチャルオフィスに登記している法人の口座開設はかなり厳しいと言われています。

これは、マネーロンダリング等の犯罪を防止するために定められた「犯罪収益移転防止法」が関係しているためです。

※総務省資料 犯罪収益移転防止法等の 概要について

バーチャルオフィスでの法人登記は、初期費用や運転資金を安く済ませられるメリットがありますが、法人口座開設のハードルを上げてしまうというデメリットもあるのです。

②事業内容が分かりにくいから

事業内容がよく分からないのも、口座開設の審査で不利になります。

この時代、ITや、コンサルティング・コーチング・スクールなど、目に見えないサービスが増えてきました。そのようなサービスほど、事業内容について誰が聞いてもイメージできるような具体的で分かりやすいものにしておく必要があります。

法人設立登記をする際に事業内容について、「分かりやすさ」を意識するようにしましょう。

③取引実績が少ないから

起業1年目はまだ取引実績が少ないものですが、口座開設では実績がある方が有利です。実績があれば、しっかり事業を行っている事が客観的に証明できるからです。

口座開設の際には、申込書に取引先を書かせる金融機関もあります。彼らとしては、本当にまともに事業をしているのかどうかを知りたいのです。

個人事業から法人成をした場合は、個人事業時代の通帳や確定申告書などを過去の実績として提出されることをお勧めします。

そのためにも、個人事業の時から、口座は事業用とプライベート用と分けておきましょう。

④資本金が少ないから

資本金が少ないのも審査ではマイナスポイントになります。

いくら資本金「1円」から株式会社設立ができるとは言っても、実際に資本金が「1円」しかない会社が、金融機関から高評価を得ることはありません。そもそも経営はキャッシュフローが命であり、そこには計画性が必要です。資本金「1円」は、「起業するのにそれだけのお金しか用意できていないの?」という誤解を与えてしまいます。

資本金に関する過去の記事はこちら

金融機関の審査で、一人社長はどこを見られているか

ここでは、実際に法人口座を開設する際に、審査で金融機関がどのような部分をチェックしているかをお伝えします。

①登記簿謄本の情報をチェック

銀行口座開設の審査では、「登記簿謄本」の提出が求められます。

登記簿謄本には、事業内容・登記住所・資本金のほか、役員名など、会社に関する様々な情報が書かれています。

先ほどお伝えしたように、ここでどんな事業をしているのかチェックされますし、資本金に関しても同様です。また、役員に前科がないかも念入りに調査しているのです。

②事務所の実態チェック

金融機関は、登記した本店の住所について「本当に事務所が存在するか」を担当者を訪問させてチェックをします。

オフィスを借りている・自宅を登記している場合は問題ありませんが、バーチャルオフィスの場合は、そもそも訪問ができません。

それでは、シェアオフィスはどうでしょうか。

シェアオフィスの場合、

  1. 実際にオフィスとして利用している
  2. 専用の郵便ポストがある(郵便物を確実に受け取れる)
  3. 入口に表札がある

これらがあれば、「オフィス」に関しては口座開設の条件を満たすことになります。

起業1年目で事業がまだ軌道に乗っていない状態から専用オフィスを借りて固定費を上げることは、大きな負担になります。法人口座開設の為だけであれば、シェアオフィスを上手に活用するようにしましょう。

③固定電話の有無

固定電話の有無も審査の対象になります。

けれども、今の時代はスマホが普及しており、中小企業で複数の事業所がある会社でも固定電話を使用せずスマホだけという法人は少なくありません。そのため、他の要件と比較するとそこまで重要であるとは言えませんが、それでももしも準備できるようであれば、あるのがベストです。

こちらも、電話番号利用と電話取次サービスが付加されているシェアオフィスを活用することで対応が可能です。

④ホームページの有無

SNSの時代とは言っても、ホームページの有無で事業者への評価は大きく変わります。それは集客だけでなく金融機関からの評価も同じです。

ホームページを開設しているだけで、起業の準備をしっかりしていることや、予算をかけていることが伝わります。また、ホームページは事業内容を明確に伝える手助けにもなるので、法人口座開設前には作っておくことをお勧めします。

⑤取引実績の有無

先ほども書きましたが、取引実績の有無も審査の対象になります。

既に十分な取引実績があれば問題ありませんが、起業したばかりの頃は、まだ実績が積み上がっていません。

口座開設の際に、実際に取引があるかどうかを証明する資料の提出を求められたり、取引先名を聞かれることがあります。例え小さな案件でも、実績がたった1-2件だとしても、取引実績がある場合は、通帳や取引の契約書など、見せられるものは見せるようにしましょう。

⑥株主名簿

銀行は法人の株主についてもチェックを行います。

当該法人の実質的支配者を確認する意味でも重要なことなのです。一人社長の場合、株主は100%社長であることが多いですが、起業でも数人の仲間と会社を立ち上げた場合は、株主が複数人になる可能性があるので、所有比率を確認する必要があります。
また、手続きの際には本人確認を求められますので個人情報の提出も必要とされます。

ここまで読まれて、「私は、法人口座開設はできないのでは…。」と思われたかも知れませんが、方法はありますのでご安心ください。

ここからは一人社長の法人口座開設に向けた、お勧めの方法をお伝えします。

起業一年目の一人社長は、信用金庫・ネット銀行から始めよう

法人口座開設の候補となる金融機関は、主に4つに分類されます。

①メガバンク

②地方銀行

③信用金庫

④ネット銀行

それぞれ特徴・メリット・デメリットがありますが、起業1年目で法人口座開設を目指すのであれば、圧倒的にお勧めなのが③信用金庫と④ネット銀行です。

メガバンクは一人社長にはメリットがない?

メガバンクとは、みずほ銀行や三菱UFJ銀行・三井住友銀行などの都市銀行です。

「誰もが知っている大きな銀行」と取引しているというのは、それだけ会社の信用があるということにもなります。

しかし、メガバンクは審査が厳しく、なかなか創業したばかりの一人社長では相手にされないというのが正直なところです。なぜならメガバンクのメイン法人顧客は年商1億円レベルの会社ばかりで、規模が全く違うからです。

けれども一人社長の場合、起業1年目からメガバンクで口座開設をするメリットはあまりありませんので、メガバンクで口座が開けなくても事業には影響はありません。

メガバンクでは、巨額の融資が受けられますし、海外展開もしていますが、これらのメリットは主に大手企業向けのものになります。社員を雇用したり、大きな事務所を借りたり、資本金を増資したりなど、将来企業規模を拡大し、年商1億を超えるようになったタイミングで考えてみても遅くはありません。

地方銀行への挑戦は、事業が軌道にのってきてから

地方銀行は、第一地銀・第二地銀と分類されます。その中で、東海地方の第一地銀と言えば、名古屋銀行や大垣共立銀行・十六銀行などが知られています。

地銀は地域では信用力があり、店舗数も多いので、使い勝手が良いのが特徴です。地域のニーズに合わせたサービスも多く、地元企業の融資を積極的に行うなど、地域経済への影響力が強いとも言われています。

けれども、起業1年目で地銀へ口座開設に行くのも、ややハードルが高めです。

地銀の場合、年商1千万~数千万円クラスの法人顧客がメインになるため、事業が軌道に乗ってきたタイミングで口座開設を検討されることをお勧めします。

一人社長は信用金庫からスタートしよう

起業1年目の一人社長は、信用金庫での口座開設から始めましょう。

信用金庫がお勧めな理由は、地銀と同じく地域密着なのはもちろんのことですが、何よりも小規模事業者に優しく、創業時から相談に乗ってくれるところです。融資もおりやすいので、創業者融資を希望されるのであれば、信用金庫に口座を作りましょう。

けれども、実態のないバーチャルオフィスでは、やはり信用金庫での法人口座開設は厳しいと言わざるを得ません。信用金庫で口座開設を希望するのであれば、最低でもシェアオフィスの契約が必要です。

バーチャルオフィスの場合は、ネット銀行から始めよう

起業したてでまた実績がない場合は、シェアオフィスの数万円も負担になるかと思います。「やはり最初はバーチャルオフィスでないと…。」という方は、「ネット銀行口座開設サービス」と連携したバーチャルオフィスを契約することで、ネット銀行の法人口座を比較的簡単に開設することができます。

GMOオフィスサポートはバーチャルオフィスの利用者に、GMOあおぞらネット銀行の口座開設サポートを行なっています。また、住信SBIネット銀行でもDMMバーチャルオフィスと連携をしているため、スムーズな口座開設が可能です。

もちろん、ネット銀行でも審査はあります。けれども、バーチャルオフィスとの連携サービスであれば、少なくとも「バーチャルオフィスを利用している」という理由で審査に落ちることはありません。

ネット銀行はスマホアプリでお金の管理や振込が簡単にできます。事業が軌道に乗って信用金庫や地銀で口座開設をした後でも、ネット銀行口座があると便利です。振込手数料も安いため、お金の移動はネット銀行を上手に活用することでコストが削減できます。

ネット銀行のデメリットは、やはり「信用」の部分になります。けれども、時間をかけて実績を積み、売上を増やしてオフィスを借りることができれば、それまでの取引実績を携えて信用金庫や地銀に口座開設に行くことができます。それができれば、融資や更なる事業拡大の道も開けることでしょう。

もしも法人口座が作れなかったらどうなるのか

法人口座を開設できない場合は、しばらくの間は個人口座で取引をしましょう。

法人口座が作れなかったからと言っても、法人として事業ができないわけではありません。しばらくは社長個人名義の口座を使用して、取引実績が増えたタイミングでもう一度法人口座開設に行きましょう。

もちろん、最初に紹介した金融機関の審査基準を満たす必要があります。

一人社長にとって大きな課題となるのがオフィス問題ですが、事業に集中して売上を増やしてオフィス問題を克服していきましょう。

また、法人口座開設がうまくいかない時は、顧問税理士に相談に乗ってもらうことも有効です。的確なアドバイスをもらえることでしょう。

法人口座開設でお困りの方は、山本聡一郎税理士事務所までご相談ください

法人口座は想像以上に作りにくいことがお分かりになりましたか?

起業1年目の一人社長で、法人口座開設に苦労されている方はとても多くいらっしゃいます。

山本聡一郎税理士事務所では、起業したい方やスタートアップの支援をさせていただいています。起業時のお金に関することはもちろん、法人口座開設についてもサポートしておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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