年末年始は、取引先や顧客との関係を深める大切なタイミングです。
「古い文化だ」「今どきそんなのは無駄だ」との声もありますが、オンラインが主流の時代だからこそ、リアルなやり取りは関係構築のチャンスでもあります。
さらに、会社ロゴが入ったノベルティを活用することで、相手の目に触れる機会を増やし、印象を強く残すことができます。
年末年始に配布されるカレンダーやタオルなどの贈り物は、「接待交際費」または「広告宣伝費」として経費に計上することが可能です。
ただし、計上方法は相手や目的に応じて異なるため、適切な判断が求められます。
この記事では、接待交際費と広告宣伝費の違い、それぞれのケース別計上例、具体的な仕訳方法を詳しく解説します。
このページの目次
接待交際費と広告宣伝費の違い
接待交際費とは?
接待交際費は、企業や事業者が取引先や顧客との関係を維持・強化するために使う費用を指します。
具体的には、接待、贈答品、会食費用などが該当します。
【特徴】
特定の相手に向けた費用であることが前提です。
取引促進や関係強化を目的とした支出が含まれます。
接待交際費では、支出の対象となる人物や企業・目的を明確に記録する必要があります。
【例】
・年末年始の挨拶時に、特定の取引先にオリジナルカレンダーを配布
・プロジェクト完了時に、感謝の意を込めて贈る記念品
・顧客との商談時に持参した手土産
広告宣伝費とは?
広告宣伝費は、事業や商品の認知度を広げるための支出を指します。
不特定多数の人々を対象とし、広く情報を届けることを目的としています。
【特徴】
不特定多数に向けた支出であり、事業や商品、サービスの認知拡大が目的です。
自社名やロゴ入りのアイテムを通じて、企業のPRを行う費用が含まれます。
【例】
・来店顧客に無料で配布する会社ロゴ入りカレンダー
・地域イベントで来場者全員に配布する企業名入りタオル
・新規顧客開拓のために作成・配布した販促用アイテム(ノベルティグッズ)
この違いを理解し、適切な勘定科目を選択することで、正確な経費処理が可能になります。
以下では、仕訳について具体的なケースに基づいて解説します。
接待交際費として計上するケース
接待交際費は、 特定の取引先や顧客 に向けたビジネス関係の維持・強化を目的とする費用です。具体的には以下のようなケースが該当します。
【具体例】
①取引先への年末挨拶回り用カレンダー
長期契約のクライアントにオリジナルカレンダーを贈るケース。
➡カレンダーに取引先名を記載し、「ご愛顧ありがとうございます」とのメッセージを添える。
②プロジェクト成功の感謝としてのタオル
建設プロジェクトが完了した際、クライアントに限定配布する記念タオル。
➡取引先との関係を深めるための感謝の気持ちを伝える手段として。
③商談時に持参する地元特産品
新製品のプレゼンテーションや商談の際に、地元のお菓子や特産品を手土産として贈るケース。
➡特定の顧客との関係構築を目的とした贈り物。
【仕訳例】
勘定科目:接待交際費
仕訳方法
借方 / 貸方
接待交際費 5,000円 / 現金 5,000円
摘要:「取引先〇〇社への年末挨拶用カレンダー代」
⚫︎接待交際費に関する過去コラム
広告宣伝費として計上するケース
広告宣伝費は、 不特定多数に向けたPRや認知度向上を目的 とした費用に該当します。
具体的には、以下のようなケースが考えられます。
【具体例】
①店舗で顧客に無料配布するカレンダー
来店客に会社ロゴ入りのカレンダーを無料で配布。
➡広くブランドを認知してもらうのが目的。
②地域イベントでのタオル配布
地域イベントのブースで、来場者全員に会社ロゴ入りタオルを提供。
➡不特定多数への配布で、PR効果を高める。
③営業活動用の挨拶品
新規顧客への訪問時にオリジナルカレンダーを贈る。
➡新規顧客開拓の一環としての配布。
【仕訳例】
勘定科目:広告宣伝費
仕訳方法
借方 / 貸方
広告宣伝費 10,000円 / 未払金(クレジットカード)10,000円
摘要:「来店客用カレンダー製作費」
取引になる可能性が高い相手への贈り物はどうなる?
まだ取引が発生していない相手への贈り物の場合、 将来的なビジネス関係の構築を目的としている場合が多いです。
この場合、 接待交際費に該当するケースが一般的ですが、判断基準は以下の通りです。
【判断基準】
①相手が特定されているかどうか
特定の企業や担当者に向けたものであれば、接待交際費
例:商談中の企業への年末年始の挨拶品
➡取引開始前の関係構築を目的としており、接待交際費に該当します。
②ビジネスの進展可能性
明確に取引開始が見込まれる場合(商談中など)は接待交際費
一方、営業活動全般の一環である場合は広告宣伝費
例:展示会で名刺交換した顧客へのカレンダー送付
➡営業活動の一環とみなされ、広告宣伝費扱いとなります。
③配布対象の範囲
不特定多数を対象とする場合は広告宣伝費
例:新規開拓の営業用ロゴ入りタオルを配布
➡多くの潜在顧客に配布するため、広告宣伝費です。
勘定科目を選ぶ際の注意点
仕訳の際に勘定科目に迷った場合は以下の3点を基準に判断していきましょう。
①特定の相手向け
特定の顧客や取引先に向けたものであれば、接待交際費として計上します。
②不特定多数への配布
PR目的で、会社ロゴ入りのノベルティを多くの人に提供する場合は広告宣伝費となります。
③PR要素の有無
会社ロゴや連絡先が記載されている場合、広告宣伝費に該当する可能性が高くなります。
ノベルティグッズの棚卸しについて
最後に、ノベルティグッズの棚卸しについて補足します。
広告宣伝費として扱うノベルティグッズは、大量に購入して在庫として保管している場合、棚卸しが必要な資産とされます。
特に、期末時点で未使用の在庫品は資産計上し、適切に処理する必要があります。
また、接待交際費に該当するグッズについても、未使用の在庫がある場合は棚卸しの対象になることがあります。
ただし、接待交際費に該当するグッズは、特定の取引先や顧客への贈与が目的であるため、広告宣伝費とは取り扱いが異なる場合もあります。
この点について、不安があれば税理士に相談することをおすすめします。
⚫︎過去コラム
まとめ
年末年始のカレンダーやタオル等のノベルティは、経費として処理できますが、 対象者や目的に応じた適切な勘定科目の選択が必要です。
接待交際費と広告宣伝費を正しく使い分けることで、税務調査時にも安心して説明が可能です。
取引の進展が期待できる新規顧客への贈り物の場合も、基準を明確にして処理を行いましょう。
不安な場合や迷う場合は、 専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
当事務所でもご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。