中小企業にとって、経営者や役員に支払う退職金は通常の役員報酬や給与に比べて節税になることをご存じでしょうか。
この記事では節税になる役員の退職金の支給メリットを活かしたい中小企業の経営者に向けて、その準備方法などを分かりやすく解説していきます。
このページの目次
退職金を支給する3つのメリットとは?
退職金を支給することは、実際にどのようなメリットがあるのかを以下で見ていきましょう。
メリット①退職金は経費になる
まず退職金は、経費とみなすことができる部分が大きなポイントです。
そのため、法人税の負担をスムーズに軽減させられるでしょう。
メリット②社会保険の負担がゼロ
退職金は給与やボーナスと異なり、社会保険の負担がありません。
また、退職金は所得税の課税対象にはなりますが、役員報酬や給与などに比べると税負担が軽いため、受け取る側にとってもメリットが大きいでしょう。
メリット③退職金から退職所得控除を引いた分の1/2しか課税されない
退職所得控除とは、勤続年数20年以下で1年につき40万円、勤続年数20年以上で1年につき70万円が控除される制度です。
つまりこの退職所得控除額の範囲内であれば所得税、住民税の対象にならないため、無税で退職金を受け取れます。また、退職所得控除の範囲内に該当していなくても、退職所得控除を差し引いた額の1/2しか課税されないので、役員報酬で受けとった場合よりも税負担は軽減されるでしょう。
【中小企業向け】役員退職金の種類について
ここからは、役員に支払われる退職金にはどのような種類があるのかを解説します。役員退職金を準備する前に確認してみてください。
退職慰労金
企業の代表取締役や監査役などの役員が退職した際に支払われる退職金を「退職慰労金」と言い、金額は役員の勤続年数や功績などによって算出されます。
また、役員退職金は一般従業員の退職金と異なり、支給する際には定款の定め、あるいは株主総会の決議が必要になります。なお、退職慰労金は損金に算入することができるため、節税に有効です。
死亡退職金
死亡した日を退職日とし、定款の定め、あるいは株主総会によって支給額や支給時期、方法を決議した上で支払われるものが「死亡退職金」です。
遺族の生活や相続税などを保証するために支払われます。
節税メリットを活かした役員退職金の準備方法
中小企業が役員退職金を積立金だけで準備するのはなかなか難しいのが現状です。
そこで、中小企業が役員退職金を準備するときに利用しやすい制度や手段について解説します。
方法①小規模企業共済
小規模企業共済は、経営者や役員自身が毎月退職金を積み立てる制度です。
役員個人で加入するため会社の積立金でまかなう必要がなく、掛金は月1,000円から500円ごとに加算できます。掛金は全額が所得控除の対象となるため、高い節税効果が期待できるでしょう。
また、万が一会社が倒産した場合には「共済金A」、65歳以上や病気・ケガで退職した場合は「共済金B」、それ以外の理由で退職した場合は「準共済金」といった形で受け取ることが可能です。
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方法②法人契約の生命保険
役員退職金は法人契約の生命保険でもまかなうことが可能です。
生命保険の中でも解約返戻金がある保険を利用することで、その金額を役員退職金に充当することができるでしょう。
また、20~30年といった長期にわたって保険料の1/2を損金として算入し、税金を抑えながらの退職金準備が可能です。
方法③確定拠出年金
確定拠出年金制度を利用して役員退職金を準備することも可能です。
確定拠出年金とは、加入者が毎月拠出した一定の掛金で資産運用することで、将来の年金給付額が決まる年金制度のこと。
この制度には「個人型確定拠出年金(iDeCo)」と「企業型確定拠出年金(DC)」の2種類があります。詳細をそれぞれ以下にまとめます。
【個人型確定拠出年金】
老後の資金作りを目的とした年金制度で企業に就労していない方でも加入することが可能。
加入者が毎月一定の掛金を拠出し、個人で金融商品を選んだ上で運用と管理を行います。
掛金は最大で月額6万8,000円まで拠出でき、全額所得控除が可能なため高い節税効果が期待できます。ちなみに、すでに小規模企業共済制度に加入している場合でも併用は可能です。
【企業型確定拠出年金】
個人型確定拠出年金と同様、老後の資金作りを目的とした年金制度ですが、こちらは企業が一定の掛金を拠出し、加入者(従業員)が金融商品を選んで資産運用を行います。
また、毎月の掛金や運用益が非課税になるというメリットも。さらに、年金として受け取る場合には雑所得として公的年金等控除、一時金として受け取る場合には退職所得控除の対象になるため、受け取る側にも大きなメリットがあります。
まとめ
今回は、中小企業向けに退職金を支給するメリットや役員退職金の準備方法について解説しました。
退職金の準備には国の制度や共済、生命保険など様々な活用方法がありますが、節税効果が高く、退職金を支払う側にも受け取る側にもメリットが大きい「企業型確定拠出年金制度」を導入するのがおすすめです。他の制度との併用もできるので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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