借金問題を抱え、返済に苦しんでいる方にとって、「自己破産」や「債務整理」という言葉は、解決の糸口となる可能性を示します。
けれども一方で、ご家族がいる場合、「自分の選択が家族にどのような影響を与えるのか」という点が、非常に気になるのではないでしょうか。
今回は、自己破産と債務整理の基本的な違いから、家族への影響、そして家族の状況がご自身の債務整理にどう影響するのかについて、税理士の視点も交えながら詳しく解説します。
このページの目次
自己破産と債務整理:2つの選択肢とその違い
日本には、借金問題を解決するための主な法的手続きとして、「自己破産」と「債務整理」の2つがあります。
①自己破産とは
概要
裁判所に申し立て、免責許可決定を受けることで、原則として全ての借金の支払義務を免除してもらう手続きです。
メリット
借金から解放され、生活を再建できる可能性が高い。
デメリット
一定の財産(不動産、高価な車など)を処分する必要がある。
ブラックリストに登録され、少なくとも7年間はクレジットカード・ローンの利用や新たな借り入れが難しくなる。
官報に氏名や住所が掲載される。
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②債務整理とは
債務整理は、自己破産以外の方法で借金問題を解決する手続きの総称です。
主なものとして、以下の3つがあります。
任意整理
債権者と直接交渉し、将来の利息のカットや分割払いの合意を目指す手続きです。
個人再生
裁判所に申し立て、借金の一部を減額してもらい、原則3年(最長5年)で分割返済していく手続き。
住宅ローンがある場合に、自宅を残せる可能性があります。
特定調停
債権者との話し合いによる和解を目指す手続き。簡易裁判所で行います。
自己破産と債務整理の主な違い
項目 |
自己破産 |
債務整理 |
借金の免除 |
原則として全ての借金の支払義務が免除される |
任意整理:将来利息のカットが中心、個人再生:借金の一部が減額、特定調停:債権者との合意による |
財産の処分 |
一定の財産を処分する必要がある |
基本的に財産を処分する必要はない(個人再生の場合は、住宅ローン特則を利用するなど条件あり) |
信用情報 |
ブラックリストに登録される |
ブラックリストに登録される |
手続きの主体 |
裁判所 |
任意整理: 債権者との直接交渉、個人再生:裁判所、特定調停:簡易裁判所 |
官報掲載 |
される |
基本的にされない |
家族はどうなる?配偶者や子供への影響
ご自身の自己破産や債務整理が、家族にどのような影響を与えるのかは、多くの方が心配される点です。
結論から言うと、原則として、ご自身の自己破産や債務整理が、配偶者や子供に直接的な法的な影響を与えることはありません。
例えば、ご自身が自己破産した場合でも、配偶者の財産が没収されたり、配偶者が借金を肩代わりする必要が生じたりすることはありません。
また、子供の進学や就職に直接的な影響が出ることも、一般的には考えにくいです。
ただし、間接的な影響はいくつか考えられます。
精神的な負担
ご自身の借金問題や法的手続きは、家族に精神的な負担をかける可能性があります。
生活への影響
ご自身の財産が処分されることで、家族の生活水準が下がる可能性があります。
将来の借入や契約への影響
子供が将来、進学のために奨学金を借りたり、賃貸住宅を契約する際に、保証人になれない場合があります。
自己破産や債務整理が家族に影響を与えるケース
ご自身の自己破産や債務整理が、家族の将来に影響を与える可能性は低いですが、家族の状況によって、自己破産や債務整理に影響を与えるケースがあります。
①家族が連帯保証人になっている場合
配偶者や子供が、ご自身の借金の連帯保証人になっている場合、ご自身の自己破産によって、連帯保証人である家族に一括請求が行われる可能性があります。
②共有名義の財産がある場合
配偶者と共有名義の不動産などがある場合、ご自身の自己破産手続きにおいて、その共有持分が換価処分の対象となる可能性があります。
③家族に安定した収入がある場合(個人再生)
個人再生手続きでは、返済計画の実現可能性が重要な要素となります。
配偶者など家族に安定した収入がある場合、その収入も考慮されて返済計画が立てられることがあります。
その場合、生活費など間接的に家族の負担が増える場合があります。
④家族が過去に自己破産や債務整理をしている場合
ご自身の自己破産手続きにおいて、過去に家族が自己破産や債務整理をしている事実が、手続きに影響を与える可能性は低いですが、 金融機関によっては、審査が厳しくなることも考えられます。
⑤家族に影響が及ぶ場合の具体例
家のローン
配偶者名義の住宅ローンであっても、ご自身が連帯保証人になっている場合は影響が出る可能性があります。
車のローン
ローン名義が配偶者であっても、ご自身が保証人になっている場合や、共有名義の場合は影響が出る可能性があります。
※家・車のローンに関する具体的な影響については、状況によって違うため、専門家に確認することをお勧めします。
進学、就職、奨学金
原則として、親の自己破産や債務整理が、子供の進学、就職、奨学金に直接的な影響を与えることはありません。
ただし、奨学金の保証人を親が務める場合、保証人の信用情報が審査に影響する可能性はあります。
子供の結婚
親の自己破産や債務整理が、子供の結婚やその後の結婚生活に直接的な影響を与えることは一般的にはありません。
けれども、相手によっては親族の経済状況について厳しくチェックすることもありますので、間接的な影響が全くないとは言い切れません。
自己破産・債務整理でお悩みであれば相談しましょう
借金問題は、一人で悩んでいても解決の糸口が見つかりにくいものです。
特に、ご家族への影響を考えると、誰に相談すれば良いか迷ってしまう方もいるかもしれません。
自己破産や債務整理は、法的な手続きであり、専門的な知識が必要です。
まずは、弁護士や司法書士などの専門家に相談し、ご自身の状況に合った最適な解決策を見つけることが大切です。
税理士は、税金の専門家ですが、経営者の方や個人事業主の方の債務整理に関する相談に乗ることもあります。
また、弁護士や司法書士と連携して、多角的なサポートを提供できる場合もあります。
もし、借金問題でお悩みであれば、一人で抱え込まず、専門家に相談することを検討してください。
早期の相談が、より良い解決に繋がる可能性があります。
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