日本政策金融公庫の創業融資|申込の流れと必要書類チェックリスト【名古屋の税理士が解説】

開業資金を日本政策金融公庫(以下、公庫)で借りようと決めたら、次に気になるのは「何から手をつければいいか」と「どの書類をそろえればいいか」です。

この記事では、公庫の創業融資を申し込むときの流れを、事前相談から融資金が口座に入るまで5つのステップに分けて説明します。後半には、これから創業する方向けの必要書類を、個人と法人に分けたチェックリストにしています。

まず全体像:申込から融資実行までの5ステップ

ステップ やること 主な準備物
1. 事前相談 電話で問い合わせるか、オンライン・支店窓口で相談する(相談は予約制) 事業の概要、必要な金額のメモ
2. 申込 インターネット申込(24時間365日受付)で申し込み、書類の電子データを提出する 創業計画書、本人確認書類など
3. 面談 資金の使いみちや事業計画について話す(オンライン面談も可) 事業計画に関連する資料、資産・負債がわかる書類
4. 審査 店舗や事業所の予定地を担当者が訪問し、融資の可否が判断される 物件の資料
5. 契約・送金 電子契約サービスで契約し、指定口座に融資金が送金される 送金先口座

公庫の創業予定者向けの手続き案内には、申込から融資金の受取りまでの期間の目安は書かれていません。物件の契約や設備の発注の日程は、融資が決まる前提で組まず、余裕を持たせておくと安全です。

創業融資で使う主な制度「新規開業・スタートアップ支援資金」

公庫で創業資金を借りる場合、中心になるのは「新規開業・スタートアップ支援資金」です。

対象になる人

新たに事業を始める方と、事業を始めてからおおむね7年以内の方が対象です。あわせて、適正な事業計画を立てていて、それを実行する力があると認められることが条件になっており、その確認のために創業計画書を提出します。

融資限度額・返済期間・利率

項目 内容
資金の使いみち 事業を始めるため、または事業開始後に必要な設備資金・運転資金
融資限度額 7,200万円
返済期間 設備資金20年以内、運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内を含む)
利率 基準利率。女性・35歳未満・55歳以上の方などの要件に当てはまる場合は特別利率。創業期の方は原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)引下げ
担保・保証人 創業期の方は原則として無担保・無保証人。それ以外は希望を聞いたうえで相談して決める

ここでいう「創業期の方」とは、新たに事業を始める方、または事業開始後に税務申告を2期終えていない方です。利率の数字は時期や使いみち、返済期間、担保の有無によって変わります。この記事では数字を載せていないので、申し込む時点で公庫の利率一覧を確認してください。

創業融資はいつまで使える?

「創業融資はいつまで使えるのか」という疑問に対しては、上の対象者の条件が答えになります。事業開始後おおむね7年以内であれば、新規開業・スタートアップ支援資金の対象です。「開業前しか使えない」わけではありません。

申込の流れを5ステップで解説

ステップ1 事前相談

融資制度や手続きの問い合わせは、公庫の事業資金相談ダイヤル(0120-154-505、平日9時〜19時)で受け付けています。申込前にじっくり相談したい場合は、オンラインまたは支店窓口での相談を予約できます。

この段階で、どの制度が使えそうか、いくら程度の申込が現実的かを確認しておくと、創業計画書の数字を組み立てやすくなります。

ステップ2 インターネット申込

申込は、公庫のインターネット申込を使います。24時間365日受け付けていて、書類は電子データで提出します。郵送で申し込むこともでき、その場合は「借入申込書(国民生活事業用)」もあわせて提出します。

ステップ3 面談

申込後、公庫の担当者と面談します。公庫の案内では、資金の使いみちや事業計画について話を聞くとされていて、オンラインでの面談にも対応しています。具体的には、次のような点を説明できるようにしておくと安心です。

  • 資金を何にいくら使うか
  • これまでの仕事の経験と、今回の事業との関係
  • 売上や利益の見込みと、その根拠
  • 自己資金をどのように準備したか

創業計画書に書いた内容を、自分の言葉で説明できるかどうかが見られます。公庫からは、面談の際に事業計画に関連する資料や、資産・負債がわかる書類を準備するよう案内されています。数字の根拠になった資料(見積書、取引先とのやり取り、商圏の調べなど)も手元にそろえておきましょう。

ステップ4 審査

公庫は、面談の内容と提出書類をもとに事業計画をさまざまな角度から検討し、融資するかどうかを判断します。審査の過程では、店舗や事業所の予定地を担当者が訪問します。

ステップ5 契約・送金

融資が決まると、契約手続きの案内があります。契約は「日本公庫電子契約サービス」を使ってWeb上で行い、手続きが終わると指定の口座に融資金が送金されます。

返済は原則として毎月行います。返済方法には、元金均等返済、元利均等返済、ステップ(段階)返済などがあります。

必要書類チェックリスト

これから創業する方が、インターネットで申し込む場合の書類です(公庫「創業予定の方」の案内より)。

書類 個人 法人 補足
創業計画書 ○ ○ 公庫の様式をダウンロードして作成
本人確認書類 ○ ○ 運転免許証(両面)、マイナンバーカード(表面のみ)、パスポート(顔写真のページと現住所等のページ)のいずれか
履歴事項全部証明書または登記簿謄本 − ○
見積書 △ △ 設備資金を申し込む場合
許認可証 △ △ 飲食店など許可・届出が必要な事業
不動産の登記簿謄本または登記事項証明書 △ △ 担保を希望する場合
都道府県知事の推せん書、または生活衛生同業組合の資金証明書 △ △ 生活衛生関係の事業。推せん書は設備資金の申込額が500万円以下なら不要
送金先口座の通帳の写し △ △ 電子契約サービスを使う場合。表紙と見開き1ページ目(通帳がない口座はマイページ画面の写しなど)
電子契約サービス利用申込書 − △ 代表者が2名以上の法人で、電子契約サービスを使う場合
借入申込書(国民生活事業用) △ △ 郵送で申し込む場合

○=必要 △=該当する場合に必要 −=不要

様式は公庫の「各種書式ダウンロード」ページから入手できます。

すでに事業を始めていて税務申告を終えている方は、必要な書類が変わります。公庫の「お手続きの流れ」のページで、ご自身の状況に合った案内を確認してください。

創業計画書で見られるポイント

創業計画書は、審査の中心になる書類です。公庫は「創業計画書セルフチェック」や「創業計画の書き方」を公開しているので、書き終えたら一度照らし合わせてください。ここでは特に質問が集中しやすい3点を挙げます。

自己資金と、そのお金の貯め方

公庫のQ&Aでは、自己資金は重要な要素のひとつだとしたうえで、それ以上に創業計画全体がしっかりしているかが重要だと説明しています。また同じ回答の中で、公庫が融資先の創業企業を対象に行った調査(新規開業実態調査)では、創業資金の総額に占める自己資金の割合は平均で2割程度だと紹介しています。

公庫は面談の際に、資産・負債がわかる書類を準備するよう案内しています。自己資金を貯めてきた口座の通帳などで、そのお金がどのように貯まってきたかを説明できるようにしておきましょう。まとまった入金がある場合は、どこから入ったお金かも説明できるようにしておきます。

事業経験と、売上見込みの根拠

同じ業種での勤務経験や、その中で担当していた業務は、計画の実現性を判断する材料になります。売上の見込みは「客単価×客数×営業日数」のように、計算の過程を示せる形にしておくと説明しやすくなります。

資金の使いみちと見積書の整合

創業計画書の「必要な資金」に書いた金額と、見積書の金額が合っているかは、確認されやすい点です。見積書の日付や宛名、税込か税抜かもそろえておきましょう。

書類準備でつまずきやすい点

  • 物件や設備の見積書が、創業計画書の金額と合っていない
  • 許認可が必要な業種で、取得の時期を確認していない
  • 通帳に説明しにくい入出金があり、面談で答えに詰まる
  • 法人設立前に申し込むか、設立後に申し込むかを決めていない

法人にするか個人で始めるかは、融資の申込名義にも関わります。判断に迷う場合は「個人事業主・無限責任と法人・有限責任の違い」もあわせてご覧ください。

名古屋・愛知で申し込む場合

公庫の申込窓口は、法人で創業する場合は本店所在地、個人で創業する場合は創業予定地の近くの支店が通常の担当です。名古屋市内で開業する場合も、この考え方で担当の支店が決まります。支店の一覧は、公庫の店舗案内で確認できます。

公庫の融資だけでなく、愛知県や名古屋市の制度融資(信用保証協会の保証付き融資)を組み合わせる方法もあります。どの金融機関と取引を始めるかで迷っている場合は、「信用金庫と銀行の違い」も参考にしてください。

税理士に相談すると変わること

創業融資の準備で税理士に相談すると、主に次の点で手間と不安を減らせます。

  • 売上・経費の見込みを、根拠のある数字に組み立てられる
  • 面談で聞かれやすい点を事前に確認できる
  • 個人で始めるか法人を設立するか、税金と融資の両面から判断できる

新規開業・スタートアップ支援資金には、次の条件をすべて満たす方に特別利率が適用される区分があります。

  • 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している、または適用する予定である
  • 自分で事業計画書を作っている
  • 認定経営革新等支援機関(税理士、公認会計士、中小企業診断士など)の指導と助言を受けている

山本聡一郎税理士事務所は認定経営革新等支援機関です。この利率区分を利用できるかどうかは、事業計画の内容や公庫の要件によって決まります。申込前の段階でご相談いただければ、利用できる可能性を一緒に確認します。

山本聡一郎税理士事務所では、名古屋・愛知で開業する方の創業融資をサポートしています。詳しくは「創業融資サポート」をご覧ください。

よくある質問

創業前でも申し込めますか?

申し込めます。公庫は創業予定の方向けに手続きを案内しており、創業計画書をもとに事業計画の内容が確認されます。創業予定の方の書類一覧には、確定申告書や決算書は含まれていません。

自己資金がなくても申し込めますか?

公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」の案内には、自己資金を申込の条件とする記載はありません。ただし公庫のQ&Aでは、自己資金は重要な要素のひとつとされています。自己資金の考え方は「名古屋で創業融資を受ける完全ガイド」で、代表自身の体験とあわせて説明しています。

まとめ

公庫の創業融資は、事前相談 → 申込 → 面談 → 審査 → 契約・送金の順に進みます。書類は創業計画書を中心に、本人確認書類、見積書(設備資金がある場合)、許認可証(必要な業種)、法人の場合は履歴事項全部証明書をそろえます。

創業計画書の数字の組み立てや面談の準備に不安がある場合は、早めに専門家へ相談してください。

制度の全体像や、当事務所の代表が公庫の創業融資を利用したときの体験は「名古屋で創業融資を受ける完全ガイド」をご覧ください。

この記事の執筆・監修

山本聡一郎(税理士)
山本聡一郎税理士事務所 代表
名古屋税理士会 中支部所属(税理士登録番号 第141212号)
認定経営革新等支援機関
プロフィール・事務所概要

最終確認日:2026年10月31日

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