会社の決算期(事業年度の締め日)は設立時に定めますが、事業の状況に応じて変更することができます。
決算期を変えることで、節税効果が得られる場合があるため、業績や資金繰りを考慮しながら適切なタイミングで変更するのは、経営戦略として有効です。
しかし、決算期の変更にはメリットだけでなくデメリットもあるため、事前にしっかり検討することが大切です。
ここでは、決算期変更における節税効果とそのメリット・デメリットについて詳しく解説します。
このページの目次
決算期変更で節税効果が生まれる仕組み
決算期を変更して、税負担を分散したり、収益や支出のタイミングを調整したりすることで、結果的に節税につながるケースがあります。
以下では、具体例を交えて解説します。
(1) 利益の平準化による税負担軽減
例えば、ある飲食店を運営する会社では、繁忙期が年末年始に集中し、その年度の利益が通常より大幅に増加すると予想されました。
この場合、決算期を現在の3月末から12月末に変更すると、繁忙期の売上を次年度に繰り越せるため、一度に発生する税負担を軽減できます。
【具体例】
変更前
4月~3月の決算で、12月から3月までの繁忙期売上が全て一度に計上され、高額な法人税が課される。
変更後
決算期を12月末にすることで、翌年1月以降の売上は次年度分として計上され、利益が分散される。
(2) 消費税の免税基準の活用
新設法人の場合、設立初年度および2期目までは消費税が免除されることがあります。
この期間を最大限に活用するため、決算期を短縮することで、免税期間を実質的に延ばせる場合があります。
ただし、インボイス登録した場合や資本金が1000万円を超えるなど特例により免除されない場合もあるので、専門家に相談しましょう。
【具体例】
設立時期
2024年4月1日に設立し、通常の決算期を翌年3月末とした場合、免税期間は2024年4月~2026年3月までの2期分。
変更後
設立後に決算期を9月末に変更すると、1期目(2024年4月~2024年9月)と2期目(2024年10月~2025年9月)が短期決算となり、免税期間が1年延びる。
これにより、消費税負担を抑えて、より事業を安定させることが可能。
⚫︎国税庁 No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例
決算期を変更するメリット
決算期変更には、節税効果以外にも次のようなメリットがあります。
(1) 業績や資金繰りに合わせたタイミングで支出を調整できる
決算期を繁忙期以外に設定することで、業務が落ち着いたタイミングで決算処理や税金支払いを計画的に行えるようになります。
また、資金繰りが厳しい時期に決算が重なる場合、期末をずらすことで、支出の負担を軽減できます。
(2) 繁忙期や他の締め処理と重ならないようにできる
決算期を自社の繁忙期や取引先の締め処理と重ならないように調整することで、従業員の負担を軽減し、業務効率の向上にもつながります。
特に、経理や財務のスタッフが少ない場合、業務の集中を避ける効果が期待できます。
(3) 節税効果を狙ったタイミングで計画的な設備投資が可能になる
設備投資を行う場合、利益が多いタイミングで一括で計上できれば節税につながります。
決算期を調整して年度内に設備投資を済ませることで、利益圧縮効果を高められる場合もあります。
(4)役員報酬の変更が可能になる
役員報酬額は一度決定すると、原則として1年間は変更できないルールになっています。
ただし、決算期を前倒しすることで、新しい事業年度の開始に伴い役員報酬の変更が可能になります。
特に、役員報酬は業績悪化など合理的な理由がある場合に限り事業年度の途中で減額できますが、増額することは基本的にできません。
そのため、決算期の変更を検討する際には、役員報酬の変更も併せて検討しておくと良いでしょう。
⚫︎マイクロ法人・一人社長の役員報酬額を決定する時の3つのポイント
決算期を変更するデメリット
一方で、決算期の変更には次のようなデメリットも考えられます。
(1) 短期間で複数の決算処理が発生する可能性がある
決算期を短縮した場合、短期間で決算処理が必要になるため、経理や財務の負担が一時的に増加することがあります。
特に、会計や税務の処理が煩雑になるため、負担の軽減策を講じておくことが重要です。
(2) 決算書の比較が難しくなる
決算期の変更により、会計期間が従来と異なるため、決算書の比較が難しくなることがあります。
特に、外部の金融機関や投資家に対して説明が必要な場合、期中の変更による売上や利益の変動をしっかりと説明する必要があります。
(3) 決算期の変更には多くの費用と手続きが伴う
決算期を変更する場合には、株主総会での決議や定款の変更、税務署への届出など、さまざまな手続きが必要です。
これらの手続きに伴い、専門家への手数料が発生することもあります。
さらに、取引先や金融機関への説明が求められる場合もあり、これに時間や労力がかかる点にも注意が必要です。
決算期の変更には、費用と労力が伴うことを理解しておくことが大切です。
4. 決算期変更の実施手順と注意点
決算期の変更は株主総会での決議及び税務署などへの届出が必要です。
具体的には以下のような手順を踏みます。
①株主総会での決議
決算期変更は、株主総会での決議を経て行う必要があります。
取締役会がある会社は取締役会での議決が必要な場合もあるため、手続き方法を確認しておきましょう。
③税務署などへの届け出
決算期を変更する場合、税務署や都道府県、市町村への変更手続きも必要です。
忘れずに届け出を行いましょう。
まとめ 決算期の変更は、税理士に相談しながらスムーズに進めましょう
決算期の変更は、節税効果や資金繰りの調整、業務効率の向上といったメリットがある一方で、短期間での決算処理負担や、決算書比較の難しさといったデメリットも伴います。
将来的な事業計画や税務効果を見据えながら、決算期変更が適切かを検討する際には、ぜひ税理士に相談し、最適なアドバイスを受けることをおすすめします。
決算期の調整で節税を狙う場合や手続きの流れを知りたい場合は、専門家に相談してスムーズに進めていきましょう。
当事務所でもご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。