「起業3年で潰れる」は本当か?生存率の真実と、継続がもたらす恩恵

これから起業を考えているあなた、この通説を知ってつい二の足を踏んでいませんか?

「起業した会社の9割は3年以内に潰れる」という通説は、多くの起業家を不安にさせてきました。

この通説は果たして本当なのでしょうか?

本記事では、公的な統計データを参照し、この通説の真実を明らかにします。

そして、「潰れる=倒産」という誤解を解き、起業家が直面する本当の壁と、それを乗り越えることの大きなメリットについて解説します。

1. 統計データが示す「起業後の生存率」の真実

① 驚きの真実:企業全体の5年後生存率は8割超

「起業した会社の9割は3年以内に潰れる」という通説は、統計的には誤りであることが分かります。

中小企業庁の統計データによると、創業後5年を経過した日本における企業全体の生存率は、80.7%です。

●参照リンク:中小企業庁 第2節 起業・創業

このデータが示すように、実際は5年後でも約8割の企業が存続しており、「ほとんど潰れる」という通説は、少なくとも企業全体で見れば誤りであることがわかります。

② 現実の厳しさ:ベンチャー企業の生存率は格段に低い

しかし、この「8割生存」というデータは、負債を完済して廃業した小規模企業や個人事業主を含む企業全体の数字です。

成長を目的とするベンチャー企業や、外部資金を調達したスタートアップに限定すると、その生存率は格段に厳しくなります。

「起業した会社の9割は3年以内に潰れる」とまではいきませんが、厳しい数字が出ています。

経過年数ベンチャー企業の生存率
5年後15.0%
10年後6.3%
20年後0.3%

これは、成長戦略の失敗、資金調達の失敗、市場環境の激変などにより、資金が尽きる前に「倒産」や「廃業」を選択せざるを得ないベンチャー企業・スタートアップの現実の厳しさを物語っています。

●参照リンク:日経ビジネス 「創業20年後の生存率0.3%」を乗り越えるには

2. 「倒産」と「廃業」の決定的な違い

「潰れる」という言葉は、一般的に「倒産」を連想させますが、統計上の消滅の多くは「廃業」です。

この違いを理解することが重要です。

倒産(破綻)とは

債務超過や支払不能など、経営が行き詰まり、事業継続が困難な状態です。

多くは法的な手続き(破産など)に進みます。

廃業(任意解散)とは

廃業とは、倒産と違い、自らの意思で事業活動を終了させることです。 

負債を完済できる資産超過の状態で事業を畳むケースがほとんどです。

廃業の理由には、「後継者不足」や「健康上の理由」といった事情もありますが、「思ったより儲からない」「将来が見えない」といった理由で、資金が尽きる前に諦めてしまうケースが少なくありません。

3. 個人事業主・ひとり社長 特有の「3年目の壁」

個人事業主や法人化した「ひとり社長」といった小規模事業者が、3年以内に事業継続を諦めるケースが多いのには、特有の理由があります。

これは、「廃業」の選択に直結する大きな壁です。

① 精神的・肉体的な限界

全ての業務(営業、経理、実務)を一人で担うため、過度な多忙により肉体的・精神的な限界を迎えやすいのです。

燃え尽き症候群(バーンアウト)に陥り、事業継続の意欲を失うことがあります。

② 資金繰りの孤独

顧問税理士がいない、または資金繰りの相談相手がいないため、キャッシュフローの悪化に対してプレッシャーや孤独に耐えきれず、資金が尽きる前に早めに事業を畳む判断をしがちです。

③ 従業員不在による信用獲得や事業成長の遅れ

従業員がいないという形態は、銀行融資や大企業との取引において信用力低下につながり、事業拡大の機会を逃しやすい傾向にあります。

従業員不在では事業の成長速度も緩やかになりがちです。

4. 諦めずに「3年以上の継続」を目指す経済的メリット

起業家にとって、事業が軌道に乗らなくても「細々とでも」3年以上継続することには、短期的な利益を超えた大きな経済的(会計・税務の視点を含む)メリットがあります。

① 損失の繰越控除(最長10年)

事業が赤字(損失)を出した際、その損失を翌年以降に最長10年間繰り越して、将来の黒字と相殺できます。
3年目までに生じた赤字は、4年目以降の利益を打ち消す「将来の節税資産」となります。

長く続けるほど、この節税の機会が増えます。

② 金融機関の信用獲得

3期分(3年分)の決算書が揃うことで、融資の審査において企業の継続性や財務状況が客観的に判断できるようになり、信用度が向上します。

特に3期連続で黒字であれば、大型の融資を受けやすくなります。

③ 消費税の課税猶予

新設法人は、原則として設立から最大2年間(基準期間なし)、消費税の納税義務が免除されます。

3年目以降に課税事業者となった後も、売上が安定していれば納税資金の計画が容易になります。

④ 減価償却費の全額計上

高額な設備投資(固定資産)の費用は、通常、数年にわたって経費化されます。

3年以上事業を継続することで、初期の大きな投資費用(償却費)を全額経費として計上し終えることができ、税負担が軽減される段階に入ります。

5. 事業を3年続けられた経営者・事業主の大きな3つのメリット

① 経営者としての経験値

経営の3年間は失敗と改善の宝庫です。

市場のニーズ、顧客獲得のノウハウ、資金繰りの感覚など、経営者に必須の経験値が圧倒的に蓄積されます。

この3年間の経験値をもとに、事業を一気に成長させる経営者は少なくありません。

② 信用力の向上

取引先や顧客は、3年間事業を継続している企業・事業者を信頼します。

これは、新しい取引を開拓する上で「倒産の可能性が低い」という客観的な証明になります。

例え規模が小さくても3年以上同じ事業をコツコツ続けていることで、信頼性や誠実性の証明になります。

③ 経営者としての確固たる自信につながる

最初の3年間を生き残ったという事実は、経営者自身の大きな自信となり、その後の困難を乗り越える原動力となります。

まとめ:「3年で潰れる」の真実と、生き残るための視点

「起業3年で9割が潰れる」という通説は、企業全体で見れば誤りです。

しかし、成長を目指すベンチャー企業にとっては、データが示す通り、極めて厳しい現実が待っています。

本当の真実は、「3年以内に倒産する企業は少ない」が、「ひとり社長」を含む多くの事業者が、困難によって自ら廃業を選んでいるということにあります。

起業家は、資金が尽きる前に諦めるのではなく、3年以上の継続によって得られる「税務上の優遇」や「金融機関からの信用」といった長期的なメリットに目を向けて、苦しい時期をなんとかして踏ん張ることが求められます。

山本聡一郎税理士事務所は、スタートアップと創業間もない事業者に特化した税理士事務所です。

起業や創業で不安な点や、継続力のあるビジネスモデルの構築、そして3年以上の継続を見据えた最適な資金繰りや節税戦略について、経験豊富な税理士が親身になってサポートいたします。

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