「いよいよ事業が拡大してきた。そろそろ一人、スタッフを採用したいな。」
そう考えたとき、経営者の頭をよぎるのは
「給料以外にどれくらいコストがかかるのか?」
「何か国からのサポートはないのか?」
という不安と期待ではないでしょうか。
初めての採用は、会社にとって大きな一歩ですが、同時に雇用保険や社会保険の負担など固定費も一気に増えます。
そこで賢い経営者が必ずチェックしているのが、従業員の採用や雇用継続に活用できそうな助成金や補助金の存在です。
今回は、初めて従業員を雇う際に検討すべき主要な支援策と、失敗しないための準備について解説します。
このページの目次
1. そもそも助成金と補助金は何が違う?
雇用シーンでよく耳にするこの2つ、実は性質が全く異なります。
要件を満たせばもらえる助成金
主に厚生労働省が管轄しており、財源は企業が支払う雇用保険料です。
「正社員化した」「研修を行った」など、国が定める要件を満たし、適切な手続きを行えば、高い確率で受給できるのが特徴です。
採択に通ればもらえる補助金
主に経済産業省などが管轄しており、財源は税金です。
事業拡大やIT導入などの投資を支援するもので、予算枠が決まっているため、申請しても審査(採択)に通らなければ1円ももらえません。
2. 狙うべきは助成金
初めての採用において、確実性を重視するなら狙うべきは助成金です。
「人を雇用する」という行為そのものが受給のきっかけになるため、制度を正しく理解していれば、採用コストを大幅に軽減できるからです。
3. 初めての採用で検討したい主要助成金
初めての雇用で使いやすい、代表的な助成金を紹介します。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
もっともメジャーな助成金です。有期雇用(アルバイト等)で雇い、半年後に正社員へ転換させることで受給できます。
メリット: ミスマッチを防ぎつつ、まとまった資金を確保できる。
非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を行った事業主に対して助成される制度です。
特定求職者雇用開発助成金
高齢者や障害者など、就職が困難な求職者をハローワークなどの紹介により雇い入れた事業主に助成される制度です。
高齢者(60歳以上)や障害者、母子家庭の母など、就職が困難な方をハローワーク等の紹介で雇い入れる場合に受給できます。※対象者によって助成額が変わります。
両立支援等助成金
育児休業や介護休業を取りやすい環境を整え、実際に利用者が選ばれた場合に支給されます。最初から「働きやすい職場」であることをアピールできるため、採用力の強化につながります。
育児休業や介護休業など、仕事と家庭の両立を支援する制度を導入・利用した事業主に対して支給される助成金です。
人材開発支援助成金
採用した従業員に対して、専門的な研修や訓練を行った際にかかる経費や、訓練期間中の賃金の一部が助成されます。未経験者を採用して育てたい場合に非常に有効です。
企業が労働者に対して職業訓練や研修を実施した際の費用や賃金の一部を助成する制度です。
4. 【重要】助成金を受け取るために、採用前に準備すべきこととは
助成金は「雇ってから考える」では手遅れになるケースがほとんどです。
雇用保険・社会保険の加入
助成金の原資は雇用保険です。
また、正社員雇用であれば社会保険への加入も必須要件となります。
これらへの未加入は法律違反とみなされ、助成金の申請資格を失います。
就業規則の整備
多くの助成金で「就業規則に転換ルールが明記されていること」などが求められます。
10人未満の事業所でも、助成金申請のためには規則を作成し、実態に即した運用が必要です。
法定帳簿の管理
出勤簿(タイムカード)、賃金台帳、労働者名簿の「法定三帳簿」が1分単位で正確に管理されている必要があります。
5. 従業員雇用後にも活用できる助成金とは
人を雇った後も、会社の成長段階に合わせて活用できるものがあります。
働き方改革推進支援助成金
生産性を高めるために、新しい勤怠管理システムの導入や、労働時間の短縮に取り組む際に活用できます。
労働時間の削減や勤務間インターバル制度の導入など、働き方改革に取り組む中小企業を支援する助成金です。
業務改善助成金
生産性を向上させ、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を引き上げた場合に、設備投資費用の一部が助成されます。
賃上げと設備投資を同時に考えているなら必見です。
生産性向上のための設備投資などを行い、事業場内最低賃金を引き上げた場合に費用の一部が助成されます。
6. 山さんのアドバイス:助成金は「後払い」という罠
ここが一番の注意点です。
助成金は、先にお金を払って(給料を半年~1年払い続けて)、その実績を報告した後に入金されます。
「助成金が入るから給料が払える」という考えは大変危険です。
まずは「助成金なしでも半年間は雇用を維持できるキャッシュフロー」があるかを確認しましょう。
採用や雇用で活用できる補助金はあるのか
「採用」そのものを直接の目的とした補助金は、実はそれほど多くありません。
しかし、「新しい事業を始めるために人を雇う」という文脈であれば、活用できる強力な補助金が存在します。
事業再構築補助金、ものづくり補助金
これらは本来、設備投資やシステム開発を支援するものですが、事業の拡大に伴う人件費が加味されたり、雇用を増やすことで審査が有利になったり、補助率がアップする特例が設けられることがあります。
新分野展開や事業転換などの大胆な事業再構築を行う中小企業を支援する補助金制度です。
●参照:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金総合サイト
中小企業の革新的な設備投資やサービス開発を支援する補助金制度です。
デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)
新しい従業員を雇う際、その人のためのパソコンや、非効率な業務を改善するためのクラウドソフト(勤怠管理や給与計算など)を導入する費用を補助してもらえます。
●参照:中小企業庁(経済産業省)デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)
中小企業が生産性向上のためにITツール(ソフトウェアやクラウドサービス等)を導入する際の費用の一部を補助する制度です。
山さんの視点:補助金は「攻め」、助成金は「守り」
補助金は「新しいことを始めるための資金」として活用し、助成金は「雇用という継続的なコストを支える資金」として活用するのが賢い経営者のやり方です。
どちらも「公的な支援」であることに変わりはありませんが、自社のフェーズに合わせて使い分けることが重要です。
7. 従業員の長期的な雇用のために大切なこと
助成金をもらうことだけがゴールではありません。
大切なのは、雇った人が「この会社で長く働きたい」と思える環境を作ることです。
適切な給与、明確な評価制度、そして何より経営者との信頼関係。
これらが揃って初めて、採用はコストではなく投資に変わります。
まとめ:採用は守りを固めてから攻める
初めての採用における助成金活用は、雇う前の書類準備と雇った後の資金繰り計画がセットで必要です。
「うちはどの助成金が使える?」
「手続きが難しそう」
と不安な方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。
提携する社労士とともに、貴社の「攻め」の採用を全力でサポートいたします。
山本聡一郎税理士事務所 YouTubeチャンネル:【創業支援】税理士の山さん
山本聡一郎税理士事務所 代表税理士。1982年7月生まれ。名古屋市中区錦(伏見駅から徒歩3分)にてMBA経営学修士の知識を活かして、創業支援に特化した税理士事務所を運営。クラウド会計 Freeeに特化し、税務以外にも資金調達、小規模事業化持続化補助金などの補助金支援に力を入れている。
