税理士との顧問契約で何が変わる?節税効果と依頼できる業務内容を完全ガイド

税理士との顧問契約を検討中ですか?この記事では、顧問契約の基礎知識からメリット・デメリット、依頼できる業務、期待できる節税効果、料金相場、そして最適な税理士の選び方まで徹底解説。顧問契約であなたの事業がどう変わるのか、その具体的な答えと判断材料が全て手に入ります。

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税理士との顧問契約とは 基礎知識を解説

事業を運営していく上で、税金に関する悩みや経理業務の負担は多くの経営者が抱える課題です。「税理士に相談したいけれど、顧問契約って具体的に何をしてくれるの?」「どんなメリットがあるの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。この章では、税理士との顧問契約に関する基礎知識をわかりやすく解説し、顧問契約があなたのビジネスにどのような変化をもたらすのか、その第一歩をご案内します。

顧問契約の定義と一般的な役割

税理士との顧問契約とは、税理士と企業(法人)または個人事業主が継続的な契約を結び、毎月一定の顧問料を支払うことで、税務・会計に関する専門的なアドバイスや業務支援を定期的に受けることができるサービスです。一度きりの相談や確定申告のみの依頼といった「スポット契約」とは異なり、顧問契約では税理士がお客様の事業内容や経営状況を深く理解し、長期的な視点から経営をサポートする「パートナー」としての役割を担います。

顧問税理士の一般的な役割は多岐にわたりますが、主に以下のようなものが挙げられます。これらの業務は、税理士法によって税理士の独占業務として定められているものも含まれます。

  • 税務代理:法人税や所得税の確定申告、消費税申告、年末調整、各種届出書の作成・提出など、税務官公署に対する申告・申請・請求などを納税者に代わって行います。税務調査の際には、納税者の代理人として立ち会い、意見を述べることも重要な役割です。(参考:税理士法 第2条第1項第1号
  • 税務書類の作成:申告書や申請書、届出書、請求書など、税務官公署に提出する書類を作成します。これには、決算報告書や確定申告書などが含まれます。(参考:税理士法 第2条第1項第2号
  • 税務相談:税金の計算方法、節税対策、税制改正に関する情報提供、相続・贈与に関する相談など、税務に関するあらゆる相談に応じます。「こんな場合はどうなるのか?」といった具体的な税務上の判断についてもアドバイスを行います。(参考:税理士法 第2条第1項第3号
  • 会計業務のサポート:日々の記帳指導や記帳代行、会計ソフトの導入支援、月次試算表の作成とそれに基づく業績報告、決算書の作成支援など、企業の会計業務全般をサポートします。正確な会計処理は、適切な経営判断の基礎となります。
  • 経営コンサルティング:作成された会計データや財務諸表を分析し、経営上の課題発見や改善提案、資金繰りに関するアドバイス、事業計画の策定支援など、経営全般に関する相談にも対応します。数字に基づいた客観的な視点から、事業の成長を後押しします。

顧問契約を通じて、税理士は企業の内部事情や経営者の考えを深く理解し、単なる税務処理の代行者ではなく、経営戦略を共に考える信頼できる相談相手となります。これにより、経営者は税務や会計に関する不安から解放され、安心して本業に専念できる環境が整うのです。

顧問契約を結ぶ主な対象者 個人事業主と法人

税理士との顧問契約は、個人事業主と法人の両方が対象となります。ただし、事業の規模、業種、成長段階、そして経営者が抱える課題によって、顧問契約を検討する適切なタイミングや期待する役割は異なります。

個人事業主の場合

個人事業主の方が顧問契約を検討する主なケースやタイミングは以下の通りです。

  • 売上が一定規模に達したとき:一般的に、年間売上が1,000万円を超えると消費税の納税義務が発生する可能性があり、経理処理や申告が複雑になります。このタイミングで顧問契約を検討する方が多いです。
  • 所得が増え、節税を本格的に考え始めたとき:所得税は累進課税のため、所得が増えるほど税率も高くなります。適切な節税対策を行うことで、手元に残る資金を増やすことができます。
  • 経理業務の負担が大きくなったとき:事業が成長し、本業が忙しくなるにつれて、帳簿付けや書類作成などの経理業務に手が回らなくなることがあります。
  • 青色申告のメリットを最大限に活用したいとき:最大65万円の青色申告特別控除を受けるためには、複式簿記による記帳が必要です。税理士のサポートがあれば、正確な記帳と控除の適用が期待できます。
  • 法人成り(法人化)を検討しているとき:個人事業から法人へ移行する際には、設立手続き、税務上のメリット・デメリット、適切なタイミングなど、専門的な判断が求められます。
  • 資金調達や融資を考えているとき:金融機関からの融資審査では、事業計画書や試算表の信頼性が重要になります。税理士が関与することで、これらの書類の説得力が増すことがあります。

特に、白色申告から青色申告へ切り替えるタイミングや、従業員を雇用し始めたタイミングなども、税理士との顧問契約を考える良いきっかけとなるでしょう。

法人の場合

法人の場合、設立当初から税理士と顧問契約を結ぶケースが多く見られます。法人は個人事業主と比較して会計処理や税務申告が複雑であり、社会的責任も大きいため、専門家である税理士のサポートが不可欠と考える経営者が多いからです。

  • 会社設立時:法人設立登記後には、税務署や都道府県税事務所、市町村役場への各種届出が必要です。また、会計処理のルールも個人事業とは異なるため、設立当初から適切な体制を整えることが重要です。
  • 正確な月次決算と経営状況の把握:法人は、月次で経営成績や財政状態を正確に把握し、迅速な経営判断を行うことが求められます。税理士は月次試算表の作成を通じて、経営状況を可視化し、課題点を指摘します。
  • 複雑な法人税・消費税申告への対応:法人税や消費税の申告は、税法や通達が頻繁に改正されるため、専門知識なしに対応するのは困難です。申告ミスは追徴課税や加算税のリスクにつながります。
  • 資金調達・融資対策:金融機関は融資審査の際に、信頼性の高い決算書や事業計画書を重視します。税理士が作成に関与した書類は、信用度向上に繋がることが期待できます。
  • 税務調査への対応:法人は個人事業主よりも税務調査の対象となる可能性が高いと言われています。税務調査の際には、税理士が代理人として立ち会い、適切な対応をサポートします。
  • 経営全般に関する相談:成長戦略、M&A、事業承継、組織再編など、企業が成長する過程で直面する様々な経営課題について、専門的なアドバイスを受けることができます。

法人は、その規模の大小にかかわらず、会計処理の適正性や税務コンプライアンスの遵守が強く求められます。そのため、多くの中小企業にとって、顧問税理士は経理・財務部門の役割を一部代替する、あるいは強化する存在として機能しています。

以下の表は、個人事業主と法人が税理士との顧問契約を検討する主な理由や、契約によって得られる代表的なメリットをまとめたものです。

対象者 顧問契約を検討する主な理由・メリット
個人事業主
  • 売上増加や事業拡大に伴う経理業務の負担軽減と効率化
  • 青色申告(65万円控除等)を含む確定申告の正確性の担保と節税効果の追求
  • 消費税の課税事業者になった際の適正な申告(インボイス制度対応含む)
  • 法人成りを検討する際の税務・法務面からの総合的なアドバイス
  • 事業計画の策定支援や資金繰り改善に関する相談
法人
  • 会社設立時の各種税務関連届出の代行や会計システムの導入・運用支援
  • 月次決算による経営状況のリアルタイムな把握と、それに基づく迅速な経営判断
  • 複雑な法人税・地方税・消費税申告の適法かつ有利な処理、節税策の立案・実行
  • 金融機関からの融資審査における信頼性向上と円滑な資金調達支援
  • 税務調査の事前準備から立会い、事後対応まで一貫した専門的サポートによるリスク軽減
  • 予算実績管理、経営分析、事業承継計画、M&Aアドバイスなど、高度な経営課題への対応

このように、顧問契約は個人事業主・法人を問わず、事業の健全な成長と発展、そして何よりも経営者が本業に集中できる環境づくりに大きく貢献するものです。次の章以降では、顧問契約の具体的なメリット・デメリット、依頼できる業務内容、料金相場などについて、さらに詳しく掘り下げていきます。

税理士と顧問契約を結ぶメリット デメリット

税理士との顧問契約は、企業の経営や個人の事業運営において大きな影響を与える可能性があります。契約を検討する際には、その利点と注意点を十分に理解しておくことが重要です。ここでは、税理士と顧問契約を結ぶことの主なメリットとデメリットを詳しく解説します。

顧問契約のメリット

税理士と顧問契約を結ぶことで得られるメリットは多岐にわたります。専門的なサポートを受けることで、経営の安定化や事業の成長を促進する効果が期待できます。

専門家による節税対策と税務リスクの軽減

税理士は税法の専門家であり、常に最新の税制改正や法令の動向を把握しています。顧問契約を通じて、自社の状況に合わせた合法的かつ最適な節税対策のアドバイスを受けることができます。これにより、無駄な税金の支払いを抑制し、キャッシュフローの改善に繋がります。例えば、適切な勘定科目の選択、各種控除の活用、設備投資に関する税制優遇措置の適用など、専門家ならではの視点からの提案が期待できます。また、税務申告における計算ミスや解釈の誤りは、後に追徴課税や加算税、延滞税といったペナルティを課されるリスクを伴います。税理士に日常的な経理処理から申告業務までを委託することで、これらの税務リスクを大幅に軽減し、法令遵守(コンプライアンス)体制を強化することができます。

正確な月次決算と経営状況の把握

顧問税理士は、毎月の試算表や月次決算書を迅速かつ正確に作成し、経営者に対して分かりやすく報告してくれます。これにより、経営者は自社の最新の財政状態や経営成績をタイムリーに把握することが可能になります。「売上は上がっているはずなのに、なぜか資金繰りが苦しい」といった状況も、月次決算を通じて原因を早期に特定し、対策を講じることができます。客観的な数値データに基づいた経営判断は、事業の安定性と成長性を高める上で不可欠です。どんぶり勘定から脱却し、データドリブンな経営へと移行するための強力なサポートとなります。

経営に関する相談とアドバイス

税理士の役割は、単に税務申告書の作成代行に留まりません。多くの税理士は、クライアント企業の経営課題全般に関する相談相手としての役割も担っています。資金繰りの改善策、予算策定、コスト削減の提案、融資戦略、さらには事業計画の策定支援など、財務・会計の専門知識を活かした多角的なアドバイスを受けることができます。特に中小企業の経営者は、社内に相談できる専門家がいないケースも多く、税理士が外部の信頼できる経営パートナーとして機能することで、意思決定の質を高めることができます。

資金調達や融資支援の可能性

事業の成長や設備投資、運転資金の確保のためには、金融機関からの融資が不可欠となる場面があります。税理士は、金融機関が重視するポイントを理解しており、融資審査に通りやすい事業計画書や資金繰り表、試算表などの説得力のある資料作成をサポートしてくれます。また、日頃から税理士が関与し、月次決算等を通じて財務状況が適切に管理されている企業は、金融機関からの信頼を得やすく、融資交渉を有利に進められる可能性が高まります。税理士が金融機関との橋渡し役を担ってくれるケースもあります。

税務調査への対応と安心感

税務調査は、どのような企業や個人事業主にとっても、精神的・時間的な負担が大きいものです。顧問税理士がいれば、税務調査の事前通知があった段階から、適切な準備、資料の整理、想定される質問への対策などをサポートしてくれます。調査当日には、経営者に代わって、あるいは同席して税務署の調査官に対応し、専門的な見地から主張や説明を行います。これにより、不当な指摘や過大な要求を防ぎ、調査をスムーズに進めることができます。何よりも、専門家がそばにいるという精神的な安心感は非常に大きいでしょう。

本業に集中できる環境の確保

経理業務、記帳作業、給与計算、税務申告といったバックオフィス業務は、専門知識が必要で手間も時間もかかるものです。これらの業務を税理士にアウトソーシングすることで、経営者や従業員は、本来注力すべきコア業務(製品開発、営業活動、サービス向上など)にリソースを集中できます。これにより、業務効率の向上、生産性の向上、そして最終的には事業の成長へと繋がります。特に人手が限られている中小企業や個人事業主にとっては、大きなメリットと言えるでしょう。

顧問契約のデメリット

多くのメリットがある一方で、税理士との顧問契約にはいくつかのデメリットや注意点も存在します。これらを理解し、対策を講じることが、後悔のない契約に繋がります。

顧問料という固定費の発生

税理士と顧問契約を結ぶと、毎月一定の顧問料が発生します。これは、事業運営における固定費の増加を意味します。顧問料の金額は、企業の規模、業種、取引の複雑さ、依頼する業務範囲、税理士の経験や専門性などによって大きく異なります。特に、事業を開始したばかりで収益が不安定な時期や、小規模な事業の場合には、この固定費が経営を圧迫する要因となる可能性も考慮しなければなりません。そのため、提供されるサービス内容と顧問料のバランス、つまり費用対効果を慎重に見極める必要があります。

税理士との相性が合わない可能性

税理士は、経営に関するデリケートな情報も共有する重要なパートナーです。そのため、税理士との人間的な相性やコミュニケーションの取りやすさは非常に重要になります。どんなに優秀な税理士であっても、経営者の考え方やビジョンに共感してくれなかったり、話しにくいと感じたりする場合、良好な協力関係を築くのは難しいでしょう。また、期待していたアドバイスの質やレスポンスの速さなど、提供されるサービスのレベルが自社の求めるものと合致しないケースも考えられます。契約後にミスマッチが発覚すると、税理士の変更には手間や時間がかかり、新たな費用が発生する可能性もあります。契約前に複数の税理士と面談し、人柄やコミュニケーションスタイル、提案内容などを比較検討することが、このようなリスクを避けるために不可欠です。

税理士の顧問契約で依頼できる主な業務内容

税理士との顧問契約は、日々の経理業務から専門的な経営相談まで、幅広いサポートを受けることができるサービスです。顧問契約を締結することで、具体的にどのような業務を依頼できるのか、主な内容を詳しく見ていきましょう。これらの業務を通じて、経営者は本業に集中しやすくなり、企業の成長を加速させることが期待できます。

日常的な税務会計業務

企業の経済活動を正確に記録し、管理するための基本的な業務です。これらの業務を税理士に委託することで、経理業務の負担軽減と正確性の向上が期待できます。

記帳代行と会計帳簿の作成

日々の取引を記録する記帳業務は、正確な会計処理の基礎となります。具体的には、領収書、請求書、通帳のコピーなどの資料(証憑書類)をお預かりし、それに基づいて会計ソフト(弥生会計、freee、MFクラウド会計など)への入力を行い、仕訳帳や総勘定元帳、補助元帳といった会計帳簿を作成します。これにより、日々の取引が体系的に整理され、後の決算業務や経営分析がスムーズに行えるようになります。自社で会計ソフトを導入している場合には、入力内容のチェックや指導(巡回監査)を行うこともあります。

月次試算表の作成と報告

毎月、会計帳簿を基に月次試算表(貸借対照表、損益計算書など)を作成し、企業の財政状態や経営成績を報告します。月次試算表を通じて、最新の経営状況をタイムリーに把握できるため、問題点の早期発見や迅速な経営判断に役立ちます。税理士によっては、単に試算表を提供するだけでなく、その内容を分かりやすく解説し、経営上の課題や改善点についてのアドバイスも行います。

給与計算と年末調整

従業員を雇用している場合、毎月の給与計算は必須業務です。所得税や住民税の源泉徴収、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料など)の計算と控除、給与明細の発行など、煩雑な作業が伴います。また、年末には従業員の所得税を精算する年末調整も必要です。これらの給与計算および年末調整業務を税理士に依頼することで、法令に基づいた正確な処理が保証され、担当者の負担を大幅に軽減できます。法定調書合計表や給与支払報告書の作成・提出も代行可能です。

決算申告業務

事業年度の終わりには、その期間の経営成績と財政状態をまとめた決算書を作成し、それに基づいて税務申告を行う必要があります。これは企業にとって最も重要な税務業務の一つです。

法人税や所得税の決算申告書の作成と提出

法人の場合は事業年度終了後2ヶ月以内に法人税、法人住民税、法人事業税の申告・納税が、個人事業主の場合は暦年終了後(翌年2月16日から3月15日まで)に所得税の確定申告・納税が必要です。税理士は、会計帳簿に基づいて決算整理を行い、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュフロー計算書(必要な場合)、個別注記表などの決算書を作成します。そして、これらの決算書を基に、複雑な税法や各種特例を適用して税額を算出し、法人税申告書や所得税確定申告書を作成し、税務署へ提出します。電子申告システム(e-Tax)を利用した申告にも対応しており、スムーズな手続きが可能です。詳しくはe-Tax 国税電子申告・納税システムの公式サイトもご確認ください。

消費税の申告書の作成と提出

課税売上が1,000万円を超える事業者(一部例外あり)は、消費税の申告・納税義務が生じます。消費税の計算は、課税取引の判定、仕入税額控除の計算など専門的な知識が必要です。特にインボイス制度(適格請求書等保存方式)導入後は、より複雑性が増しています。税理士は、日々の取引から消費税の課税関係を正確に把握し、消費税申告書を作成・提出します。簡易課税制度の選択や、輸出取引における消費税還付申告など、有利な制度の適用についてもアドバイスを行います。

税務相談と節税コンサルティング

税金に関する悩みや疑問は尽きないものです。顧問税理士は、税務に関する良き相談相手となり、適法な範囲での節税策を提案します。

節税に関する具体的なアドバイス

企業の経営状況や将来の事業計画に合わせて、最適な節税策を提案します。例えば、役員報酬の適切な設定、生命保険や倒産防止共済(経営セーフティ共済)の活用、設備投資促進税制や中小企業投資促進税制などの税額控除や特別償却の適用、社宅制度の導入、出張旅費規程の整備など、多岐にわたるアドバイスが期待できます。重要なのは、単に税金を減らすだけでなく、企業のキャッシュフロー改善や将来の成長に繋がる節税策を選択することです。

税制改正への対応と情報提供

税法は毎年のように改正が行われます。最新の税制改正情報をいち早くキャッチし、その内容が企業経営にどのような影響を与えるかを分析し、適切な対応策をアドバイスします。これにより、企業は法改正にスムーズに対応でき、予期せぬ税務リスクを回避することができます。税理士からの定期的な情報提供は、経営判断においても非常に有益です。

経営サポート業務

税理士は税務会計の専門家であると同時に、多くの企業の経営状況に触れているため、経営に関する幅広い知見を持っています。これらの知見を活かした経営サポートも重要な業務の一つです。

経営分析と改善提案

月次試算表や決算書といった財務データを基に、企業の収益性、安全性、生産性、成長性などを多角的に分析します。同業他社の財務指標との比較や、過去からの推移分析を通じて、企業の強みや弱み、経営課題を明確にします。その上で、具体的な改善策(コスト削減、売上向上策、業務効率化など)を提案し、経営改善をサポートします。

資金繰り相談と改善策の提案

企業の継続的な成長のためには、安定した資金繰りが不可欠です。税理士は、資金繰り表の作成支援や将来のキャッシュフロー予測を通じて、資金ショートのリスクを早期に発見し、その対策を講じるサポートを行います。金融機関からの融資を検討する際には、事業計画書の作成支援や、金融機関との交渉に関するアドバイスも期待できます。適切な資金調達方法の選定や、運転資金・設備資金の管理方法についても相談可能です。

事業計画の策定支援

中長期的な視点での事業計画は、企業の成長戦略を描く上で非常に重要です。税理士は、現状分析を踏まえ、実現可能な経営目標の設定、具体的なアクションプラン、数値計画(売上計画、利益計画、資金計画など)の策定を支援します。金融機関からの融資や補助金申請の際に必要となる事業計画書の作成もサポートします。

その他 税理士によって異なる専門業務

上記の基本的な業務に加えて、税理士の専門性や得意分野によっては、以下のようなより専門的な業務を依頼できる場合があります。これらの業務は、企業の特定のニーズやライフステージに応じて提供されます。

専門業務の種類 主な内容
事業承継支援 後継者へのスムーズな事業引継ぎをサポートします。具体的には、自社株の評価、相続税・贈与税のシミュレーションと対策、種類株式の活用、持株会社の設立、経営権の移転計画策定など、税務・法務の両面から最適なプランを提案します。
M&Aアドバイザリー 企業の買収(Mergers and Acquisitions)や売却を検討している場合に、財務・税務デューデリジェンス(買収監査)、企業価値評価(バリュエーション)、M&Aスキームの提案、交渉支援などを行います。買い手側、売り手側双方のニーズに応じたサポートが可能です。
国際税務コンサルティング 海外進出企業や外資系企業に対して、国際的な取引に関わる税務問題(移転価格税制、タックスヘイブン対策税制、外国税額控除、租税条約の適用など)に関するアドバイスや申告業務を提供します。海外子会社の管理や国際的な組織再編に関する相談も含まれます。
IPO(株式公開)支援 株式上場を目指す企業に対して、資本政策の立案、内部管理体制の構築支援、上場申請書類(Ⅰの部、Ⅱの部など)の作成サポート、監査法人や証券会社との連携など、上場準備段階からの専門的なサポートを行います。
組織再編コンサルティング 合併、会社分割、株式交換、株式移転といった組織再編行為に関わる税務メリット・デメリットの分析、最適なスキームの提案、税務申告、法務手続きのサポートなどを行います。企業の成長戦略や経営効率化を目的とした組織再編を税務面から支援します。

これらの専門業務は、すべての税理士が対応しているわけではないため、依頼を検討する際には、事前に税理士事務所の得意分野や実績を確認することが重要です。自社の状況やニーズに合わせて、適切なサポートを提供してくれる税理士を選びましょう。

税理士との顧問契約で期待できる節税効果とは

税理士との顧問契約を検討する大きな理由の一つに、節税効果への期待があるのではないでしょうか。専門家である税理士は、最新の税法や税制優遇制度に精通しており、顧問先の状況に応じた適切な節税対策を提案・実行することで、納税額を適法な範囲で最小限に抑えるサポートを行います。これにより、企業のキャッシュフロー改善や内部留保の増加、ひいては事業の成長へと繋げることが可能です。本章では、税理士との顧問契約によって具体的にどのような節税が期待できるのか、その効果を最大化するポイント、そして注意すべき点について詳しく解説します。

顧問契約による具体的な節税事例

税理士が提案する節税策は、企業の業種、規模、経営状況、将来の事業計画などによって多岐にわたります。ここでは、個人事業主と法人に共通して適用できるもの、それぞれに特有な代表的な節税事例をいくつかご紹介します。

節税策の分類 具体的な内容例 主な対象者 期待できる効果
経費の適正化と計上漏れの防止 事業に関連する費用の正確な把握と計上、家事按分の適切な計算、消耗品費や交際費などの適切な処理 個人事業主・法人 課税所得の圧縮による所得税・法人税の軽減
青色申告の活用 青色申告特別控除(最大65万円または55万円)、青色事業専従者給与、純損失の繰越控除・繰戻し還付 個人事業主・法人 所得控除額の増加、家族への給与支払いによる所得分散、赤字の有効活用
各種所得控除・税額控除の活用 小規模企業共済等掛金控除(iDeCoなど)、生命保険料控除、医療費控除、住宅ローン控除(該当する場合)、中小企業投資促進税制、研究開発税制、所得拡大促進税制など 個人事業主・法人 課税所得の減少や算出税額からの直接控除による納税額の軽減
役員報酬・給与の最適化 役員報酬の定期同額給与・事前確定届出給与の適切な設定、従業員への決算賞与の支給タイミング検討 法人 法人税と役員・従業員個人の所得税・住民税のトータルでの税負担軽減、従業員のモチベーション向上
消費税の納税戦略 免税事業者の維持検討、課税事業者の場合は簡易課税制度と本則課税の有利選択、インボイス制度への対応と仕入税額控除の適正化 個人事業主・法人(課税事業者) 消費税の納税額の適正化、事務負担の軽減
倒産防止共済(経営セーフティ共済)の活用 掛金の全額損金算入(法人)または必要経費算入(個人事業主) 個人事業主・法人 将来のリスクに備えつつ、当期の課税所得を圧縮
設備投資・資産管理に関する節税 少額減価償却資産の特例(30万円未満)、中古資産の耐用年数短縮、オペレーティングリースの活用検討 個人事業主・法人 早期の費用化によるキャッシュフロー改善、投資判断の最適化
社宅制度の導入・活用 役員や従業員に社宅を提供し、一定額を家賃として徴収することで、差額分を福利厚生費として経費計上 法人 役員・従業員の実質手取り増加、法人の経費計上による節税

上記はあくまで一例であり、税理士はこれらの制度を複合的に組み合わせたり、企業の特性に合わせたより専門的なアドバイスを行います。例えば、出張が多い企業であれば出張旅費規程を整備することで日当を経費として計上し、節税に繋げることも可能です。

節税効果を最大化するためのポイント

税理士との顧問契約による節税効果を最大限に引き出すためには、いくつかの重要なポイントがあります。これらを意識することで、より効果的な税務戦略を構築できます。

  • 税理士との積極的なコミュニケーションと情報共有

    企業の経営状況や将来の計画(設備投資、新規事業、人員採用など)を税理士と密に共有することが不可欠です。早期に情報提供することで、税理士は先を見越した節税策や税務リスクの少ない選択肢を提案できます。

  • 期中からの計画的な節税対策の実施

    節税対策は、決算間際になって慌てて行うものではありません。期首から計画的に、月次決算などを通じて業績を把握しながら、適切なタイミングで対策を講じることが重要です。税理士と定期的なミーティングを持ち、進捗を確認しましょう。

  • 自社の状況に合わせたオーダーメイドの提案を求める

    一般的な節税策だけでなく、自社の業種、事業規模、成長段階、経営者の価値観などを総合的に理解した上で、最適な節税プランを提案してもらうことが大切です。遠慮なく質問し、納得できるまで説明を求めましょう。

  • 最新の税制改正への迅速な対応

    税法は毎年のように改正されます。有利な制度が新設されたり、既存の制度が変更されたりすることもあります。顧問税理士から最新の税制改正情報を入手し、自社に適用できるものがないか常に確認し、迅速に対応することが節税効果を高めます。

  • 決算予測と納税シミュレーションの実施

    期末が近づいたら、税理士に決算予測と納税額のシミュレーションを依頼しましょう。これにより、事前に納税資金の準備ができるだけでなく、残された期間で実行可能な節税策を検討する時間的余裕も生まれます。

過度な節税提案に注意 税務調査のリスク

節税は企業経営において重要な戦略ですが、行き過ぎた節税策は「租税回避行為」や「脱税」とみなされ、税務調査で指摘されるリスクが伴います。税務調査で申告内容に誤りや不正が発覚した場合、本来納めるべき税金(本税)に加えて、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税といった追徴課税や、納付が遅れたことによる延滞税が課される可能性があります。これらのペナルティは、企業の資金繰りを圧迫するだけでなく、社会的信用を損なうことにも繋がりかねません。

具体的には、以下のような点に注意が必要です。

  • 実態のない経費の計上や売上の隠蔽は厳禁

    架空の経費を計上したり、売上の一部を除外したりする行為は、明確な脱税行為であり、発覚した場合は重加算税を含む厳しいペナルティが科されます。

  • 経済的合理性のない取引を利用した節税

    節税のためだけに、事業の実態や経済的合理性を欠く複雑な取引スキームを組むことは、税務署から否認される可能性が高いです。税理士の提案であっても、そのスキームがなぜ合法で、どのようなリスクがあるのかを十分に確認しましょう。

  • 税理士の提案を鵜呑みにせず、リスクも確認する

    顧問税理士からの節税提案であっても、その根拠や法的な妥当性、潜在的なリスクについて十分に説明を求める姿勢が重要です。「絶対に大丈夫」といった安易な言葉を信用せず、複数の視点から検討することが望ましい場合もあります。

  • 税務調査で指摘された場合のペナルティの重さ

    前述の通り、追徴課税は非常に重い負担となります。例えば、意図的な不正行為と認定された場合の重加算税は、追加で納める本税の35%または40%と高額です。詳細は国税庁のウェブサイトで確認できます。(参考:国税庁「加算税の概要」

信頼できる税理士は、法令遵守(コンプライアンス)を大前提とし、合法的な範囲内で最大限の節税効果を目指すアドバイスを提供します。目先の税負担軽減だけを謳う過度な節税提案には慎重に対応し、長期的な視点で企業の健全な発展に寄与する税務戦略を税理士と共に築いていくことが肝要です。

税理士の顧問契約にかかる料金相場と契約形態

税理士との顧問契約を検討する際、多くの方が最も気になるのが「料金」ではないでしょうか。顧問料は決して安いものではなく、経営における固定費となるため、その相場や内訳、そしてどのような契約形態があるのかを事前に理解しておくことは非常に重要です。この章では、税理士の顧問契約にかかる料金の一般的な相場、料金を左右する要因、そして主な契約形態と契約時の注意点について詳しく解説します。適切な費用で自社に最適な税務サポートを受けるための知識を身につけ、後悔のない税理士選びを実現しましょう。

顧問料の一般的な相場 個人事業主と法人の場合

税理士の顧問料は、税理士事務所の方針、提供されるサービス内容、そして依頼する側の事業規模や業種、依頼業務の範囲によって大きく変動します。そのため、ここで示す相場はあくまで一般的な目安として捉え、具体的な金額は必ず個別の税理士事務所に見積もりを依頼して確認するようにしてください。顧問料は主に「月額顧問料」と「決算料」の2つで構成されることが一般的です。

月額顧問料の目安

月額顧問料は、毎月継続的に発生する費用です。通常、この料金には定期的な訪問やオンラインでの税務相談、会計帳簿のチェック、月次試算表の作成とそれに基づく経営状況の報告、節税に関するアドバイス、記帳指導などが含まれます。ただし、記帳代行(会計ソフトへの入力業務)を依頼する場合は、別途費用が加算されるか、月額顧問料が高めに設定されることが一般的です。

対象 月額顧問料の目安(記帳代行なしの場合) 備考
個人事業主 1万円~5万円程度 事業規模や業種、相談頻度により変動します。
法人(年商5,000万円未満) 2万円~7万円程度 設立間もない企業や小規模な企業が該当します。
法人(年商5,000万円~3億円程度) 5万円~15万円程度 一般的な中小企業が該当します。取引の複雑さで変動します。
法人(年商3億円超) 10万円~(個別見積もり) 事業規模が大きくなるほど、業務量が増加するため個別見積もりとなることが多いです。

上記の表はあくまで目安です。オンライン対応のみで訪問がない場合は比較的安価になる傾向があり、逆に訪問頻度が多い場合や、特殊な業種の場合は高くなることがあります。

決算料の目安

決算料は、年に一度の決算申告業務に対して支払う費用です。具体的には、決算書の作成、法人税申告書(法人の場合)または所得税申告書(個人事業主の場合)の作成・提出、消費税申告書の作成・提出などが主な業務内容となります。決算業務は税理士にとって専門性が高く、責任も重いため、月額顧問料とは別途請求されるのが一般的です。

決算料の相場は、月額顧問料の4ヶ月分から6ヶ月分程度とされることが多いですが、これも事業規模や申告内容の複雑さによって変動します。

対象 決算料の目安
個人事業主 5万円~20万円程度
法人 15万円~50万円程度(月額顧問料の4~6ヶ月分が目安)

例えば、消費税の還付申告や特殊な税額控除の適用など、複雑な処理が必要な場合は追加料金が発生することもあります。

顧問料を左右する要因

税理士の顧問料は、依頼する側の状況や要望によって大きく変動します。どのような要因が顧問料に影響を与えるのかを理解しておくことで、見積もり内容の妥当性を判断しやすくなります。

事業規模や売上高

企業の売上高や年商、従業員数といった事業規模は、顧問料を決定する上で最も基本的な要素の一つです。事業規模が大きくなるほど、取引件数や仕訳数が多くなり、会計処理や税務判断の複雑性が増します。これにより、税理士の作業時間や専門的な知識の必要性が高まるため、顧問料も高くなる傾向にあります。また、支店や営業所が複数ある場合、部門別会計が必要な場合なども影響します。

業種や取引の複雑さ

業種によっては、特有の会計処理や税務知識が求められることがあります。例えば、建設業における工事進行基準、医療法人や社会福祉法人の特殊な会計基準、不動産業における複雑な売買や賃貸借契約、輸出入業における消費税の還付手続きなどは、一般的な業種に比べて専門性が高いため、顧問料が高めに設定されることがあります。また、海外取引が多い場合の国際税務、M&Aや組織再編、連結納税といった高度な専門知識を要する業務も同様です。

訪問頻度や依頼業務の範囲

税理士にどの程度の頻度で訪問してもらうか、あるいはオンラインでの面談を希望するかによっても顧問料は変わります。毎月訪問してもらう場合は、隔月や四半期ごとの訪問に比べて顧問料は高くなります。最近では、Zoomなどのオンライン会議システムを活用し、訪問回数を減らすことでコストを抑えるプランを提供している税理士事務所も増えています。

また、顧問契約に含まれる基本的な業務(税務相談、月次決算、決算申告など)に加えて、記帳代行、給与計算、年末調整、社会保険手続きの代行、資金繰り相談、経営計画の策定支援、融資支援といったオプション業務を依頼する場合は、その分だけ顧問料が加算されます。どこまでの業務を依頼するかによって、総額が大きく変わるため、契約前に業務範囲を明確にすることが重要です。

顧問契約の主な契約形態と注意点

税理士との顧問契約は、一般的に長期間にわたる関係となるため、契約内容をしっかりと理解し、納得した上で締結することが大切です。契約形態や契約時の注意点について解説します。

顧問契約の形態は、税理士事務所や提供するサービスによって様々ですが、基本的には継続的な税務・会計サポートを前提とした年間契約(月次契約)が一般的です。その中で、サポート内容の範囲によっていくつかのプランが用意されていることがあります。

  • フルサポート型契約:記帳代行から月次監査、決算申告、税務相談、経営アドバイスまで、経理・税務に関する業務を幅広く網羅的に依頼する形態です。経理担当者がいない、または本業に集中したい企業に適しています。
  • 自計化支援型契約:企業側で会計ソフトへの入力(自計化)を行い、税理士は入力されたデータのチェック、月次決算のレビュー、税務相談、決算申告業務を中心に行う形態です。フルサポート型に比べて費用を抑えられる傾向があります。
  • 訪問型/オンライン特化型契約:税理士の訪問頻度や、対面での面談を重視するか、オンラインでのコミュニケーションを主とするかによって料金やサービス内容が異なります。

顧問契約を締結する際には、以下の点に特に注意しましょう。

  • 業務範囲の明確化:契約書に、月額顧問料や決算料に含まれる具体的な業務内容が明記されているかを確認します。例えば、「税務相談は月何回まで」「年末調整業務は別途費用か」「税務調査の立会いは含まれるのか、別途費用か」など、どこまでが標準サービスで、どこからがオプション(追加料金)となるのかを細かく確認しましょう。曖昧な表現がないか、疑問点は必ず質問して解消しておくことがトラブル防止につながります。
  • 料金体系と支払い条件の確認:月額顧問料、決算料の金額はもちろん、それ以外に発生しうる費用(例:記帳代行料、給与計算料、年末調整料、税務調査立会料、特殊な相談料など)についても事前に確認します。料金の改定条件や支払い方法、支払い時期もしっかりと把握しておきましょう。
  • 契約期間と解約条件の確認:顧問契約は通常1年契約で、その後自動更新となるケースが多いです。契約期間の途中で解約する場合の条件(解約申し出の期限、違約金の有無など)についても確認しておくことが重要です。万が一、税理士との相性が合わなかったり、サービス内容に不満があったりした場合に備えて、解約手続きについても理解しておきましょう。
  • コミュニケーション手段と報告体制の確認:税理士とのコミュニケーション方法(訪問、電話、メール、チャットツールなど)や、報告の頻度、担当者などを確認します。スムーズな連携が取れるかどうかは、顧問契約の満足度を左右する重要なポイントです。
  • 秘密保持義務の確認:企業の財務情報や経営戦略といった機密情報を扱うため、契約書に秘密保持義務に関する条項が適切に盛り込まれているかを確認します。
  • 責任範囲と免責事項の確認:税理士の責任範囲や、どのような場合に免責されるのかについても契約書で確認しておくとよいでしょう。

これらの点を踏まえ、複数の税理士事務所から見積もりを取り、サービス内容と料金を比較検討することで、自社に最適な顧問契約を見つけることができるでしょう。

顧問契約を結ぶ税理士の選び方と契約時の注意点

税理士との顧問契約は、事業の成長と安定に不可欠なパートナーシップを築く上で非常に重要です。しかし、どの税理士に依頼すれば良いのか、契約時に何を注意すべきか悩む方も多いでしょう。ここでは、自社に最適な税理士を選び、安心して顧問契約を結ぶためのポイントを詳しく解説します。

自社に合う税理士を選ぶためのポイント

顧問税理士は、単に税務申告を代行するだけでなく、経営に関する良き相談相手ともなり得ます。そのため、以下のポイントを総合的に比較検討し、長期的に信頼関係を築ける税理士を見つけることが肝心です。

専門分野や得意業種の確認

税理士にもそれぞれ得意とする専門分野や業種があります。自社の事業内容や規模、将来の展望に合った専門性を持つ税理士を選ぶことで、より質の高いサポートと的確なアドバイスが期待できます。

  • 業種特化型か確認する: 例えば、IT業界、飲食業、建設業、医療法人、輸出入業など、特定の業種には特有の会計処理や税制優遇が存在します。自社の業種に精通している税理士であれば、業界の動向を踏まえた節税策や経営アドバイスを受けやすくなります。
  • 事業規模や成長ステージへの対応力: 個人事業主なのか法人なのか、設立間もないスタートアップなのか、安定成長期なのか、あるいは事業承継を控えているのかなど、企業のステージによって必要なサポートは異なります。自社の現状と将来の成長ステージに合わせた実績やノウハウがあるか確認しましょう。
  • 特定の税務分野への専門性: 国際税務、相続・事業承継コンサルティング、M&A支援、組織再編、IPO支援など、高度な専門知識が求められる分野もあります。これらのニーズがある場合は、対応可能な専門性を持つ税理士や税理士法人を選ぶ必要があります。

コミュニケーションの取りやすさと相性

税理士とは、会社の財務状況というデリケートな情報を共有し、経営に関する重要な相談も行う間柄です。そのため、コミュニケーションの取りやすさや人間的な相性は非常に重要な選定基準となります。

  • レスポンスの速さと丁寧さ: 質問や相談に対して、迅速かつ丁寧に回答してくれるか確認しましょう。緊急時の対応力も重要です。
  • 説明の分かりやすさ: 税務や会計の専門用語を避け、経営者が理解しやすい言葉で説明してくれるか。難しい内容をかみ砕いて伝える能力は、信頼関係構築の基本です。
  • 相談しやすい雰囲気: どんな些細なことでも気軽に相談できる雰囲気があるか、親身になって話を聞いてくれる姿勢があるかを見極めましょう。高圧的な態度の税理士は避けるべきです。
  • 価値観や経営方針への理解: 自社の経営理念や将来のビジョンに共感し、共に事業の成長を目指してくれる税理士が理想的です。
  • 連絡手段の柔軟性: 電話やメールに加え、Chatwork、Slack、ZoomなどのコミュニケーションツールやWeb会議システムに対応しているかなど、自社が希望する連絡手段が使えるか確認しましょう。

料金体系の明確さと納得感

顧問料は毎月発生する固定費となるため、料金体系の透明性と提供されるサービス内容とのバランスをしっかり確認し、納得できる価格設定であることが重要です。

  • 顧問料に含まれるサービス範囲の確認: 月額顧問料には、具体的にどのような業務が含まれているのか(記帳代行の範囲、月次試算表の作成・報告、訪問頻度、相談回数など)を明確にしましょう。
  • 追加料金が発生するケースとその金額: 年末調整、給与計算、償却資産税申告、税務調査立会い、融資支援、事業計画策定支援などが別途料金となる場合があります。どのような場合にいくら追加費用がかかるのか、事前にリストアップしてもらうと安心です。
  • 複数の料金プランの有無: 事業規模や依頼したい業務範囲に応じて、複数の料金プランが用意されているか確認しましょう。自社のニーズに合わせて柔軟にプランをカスタマイズできると理想的です。
  • 費用対効果の説明: なぜその料金設定なのか、提供されるサービスによってどのようなメリット(節税効果、経営改善など)が期待できるのか、具体的に説明を求めましょう。

実績と経験年数

豊富な実務経験と専門知識を持つ税理士は、様々な事例に対応できるノウハウを蓄積しており、税務調査など不測の事態にも的確に対応してくれる可能性が高まります。

  • 同業種・同規模の企業の顧問実績: 自社と類似した業種や規模の企業のサポート実績が豊富であれば、業界特有の問題や課題解決にスムーズに対応してもらえるでしょう。
  • 税務調査の対応実績とノウハウ: 税務調査の立会い経験が豊富で、調査官との交渉力や的確な主張ができる税理士は心強い存在です。過去の対応事例や、どのような点に注意して日々の経理処理を行うべきかアドバイスをもらえると良いでしょう。
  • 税理士としての実務経験年数や事務所の設立年: 長年の経験は信頼性の指標の一つとなりますが、若手でもフットワークが軽く、最新のITツールに精通している税理士もいます。事務所全体の体制や、他の所属税理士の経験も考慮しましょう。
  • 顧客の声や評判: 可能であれば、既存のクライアントからの紹介を受けたり、客観的な評価(ただし、インターネット上の口コミは慎重に判断)を参考にしたりするのも有効です。

税理士との顧問契約締結までの流れ

顧問契約を締結するまでの一般的なステップを理解し、計画的に進めることで、ミスマッチを防ぎ、スムーズな契約へと繋げることができます。

  1. 情報収集・候補選定:

    まずは、自社のニーズに合いそうな税理士を探します。情報収集の方法としては、インターネット検索(税理士事務所のウェブサイト、税理士紹介サイト)、知人や取引先からの紹介、商工会議所や業界団体からの推薦などがあります。複数の候補をリストアップすることが重要です。

  2. 問い合わせ・初回相談(面談):

    気になる税理士事務所に連絡を取り、初回相談を申し込みます。多くの税理士事務所では無料相談を実施しています。この段階で、自社の事業概要、現在の課題、税理士に期待するサポート内容などを伝え、税理士の人柄や事務所の雰囲気を確認しましょう。オンラインでの面談に対応している事務所も増えています。

  3. 見積もり依頼・サービス内容の比較検討:

    複数の税理士事務所(目安として2~3社)から、具体的なサービス内容とそれに対する見積もりを取り寄せます。料金だけでなく、サービス範囲、得意分野、コミュニケーション方法などを総合的に比較検討します。不明な点は遠慮なく質問し、納得できるまで説明を求めましょう。

  4. 最終面談・条件交渉:

    候補を絞り込んだら、再度面談を行い、契約条件について詳細な確認や交渉を行います。担当してくれる税理士本人と直接話をし、長期的なパートナーとして信頼できるか最終判断します。

  5. 顧問契約締結:

    全ての条件に合意できたら、顧問契約書を取り交わします。契約書の内容を十分に確認し、疑問点がない状態で署名・捺印しましょう。

顧問契約書で確認すべき重要項目

顧問契約書は、税理士と依頼者双方の権利と義務を明確にするための非常に重要な書類です。後々のトラブルを避けるためにも、以下の項目は必ず確認し、理解した上で契約を締結しましょう。

確認項目 主なチェックポイント
業務範囲の明確化

月次顧問料に含まれる具体的な業務内容(記帳代行の範囲、試算表作成・報告の頻度と内容、訪問・面談の回数、税務相談の範囲など)が明記されているか。また、年末調整、給与計算、法定調書作成、償却資産税申告、税務調査立会いなどが顧問料に含まれるのか、別途費用が発生するのか、その場合の料金基準も確認します。

顧問料およびその他の費用

月額顧問料、決算申告料の金額。それ以外に発生しうる費用(例:特殊な税務相談、事業計画策定支援、融資支援コンサルティングなど)とその算定根拠。支払い方法(銀行振込、口座振替など)と支払期日も確認します。

契約期間と更新・解約条件

契約期間(通常1年間が多い)、自動更新の有無とその条件。中途解約が可能か、可能な場合の申し出期間、違約金の発生有無とその条件などを確認します。双方にとって公平な条件か検討しましょう。

守秘義務に関する条項

業務上知り得た依頼者の機密情報(財務情報、経営戦略、個人情報など)を適切に管理し、第三者に漏洩しないことを定める条項です。その範囲や例外規定を確認します。

責任範囲と免責事項

税理士の過失(例:申告ミスによる追徴課税)によって依頼者に損害が生じた場合の責任範囲(損害賠償の上限など)が定められています。また、依頼者側から提供された情報が不正確だった場合など、税理士が責任を負わないケース(免責事項)も確認が必要です。

資料の授受・保管・返還

会計帳簿や証憑書類などの資料をどのように受け渡し、誰が保管し、契約終了時にどのように返還されるのかを確認します。電子データでのやり取りが増えているため、その場合の取り扱いも明確にしておきましょう。

担当者の変更に関する規定

特に規模の大きな税理士法人や会計事務所の場合、担当者が変更になることがあります。その際の通知方法や、後任者の選定基準などについて記載があれば確認しておきましょう。

顧問契約書の内容に不明な点や納得できない部分があれば、契約締結前に必ず税理士に質問し、説明を求めることが大切です。必要であれば、弁護士などの専門家に契約書の内容を確認してもらうことも検討しましょう。口約束ではなく、全ての合意事項を書面に残すことが、後のトラブルを未然に防ぐ鍵となります。

こんな場合は税理士との顧問契約を検討しよう

税理士との顧問契約は、事業の成長段階や経営状況によって、その必要性やメリットの大きさが変わってきます。ここでは、具体的にどのような状況になったら顧問契約を検討すべきか、代表的なケースをご紹介します。ご自身の状況と照らし合わせ、最適なタイミングを見極めるための一助となれば幸いです。

顧問契約がおすすめなケース

以下のような状況に当てはまる場合は、税理士との顧問契約を積極的に検討することをおすすめします。専門家である税理士のサポートを受けることで、事業の成長を加速させ、経営の安定化を図ることが期待できます。

売上が一定規模を超えたとき

事業が成長し、年間の売上高が1,000万円を超えてくると、消費税の課税事業者となる可能性が高まります。消費税の申告は複雑であり、仕入れや経費にかかる消費税の取り扱い(仕入税額控除)など、専門的な知識が必要です。また、売上や利益が増加すると、それに応じて納税額も大きくなるため、計画的な節税対策の重要性が増します。税理士に依頼することで、適切な会計処理と納税予測、そして効果的な節税アドバイスを受けることができます。

さらに、事業規模の拡大は取引の複雑化を招きやすく、気づかぬうちに税務リスクを抱えてしまうこともあります。定期的なチェックを受けることで、これらのリスクを未然に防ぎ、安心して事業運営に集中できるようになります。

経理業務に手が回らないとき

日々の記帳作業、請求書の発行・管理、給与計算、年末調整など、事業運営には多くの経理業務が伴います。経営者自身がこれらの業務に追われ、本業である事業活動や経営戦略の策定に十分な時間を割けない状況は、成長の機会損失につながりかねません。また、経理担当者を新たに雇用するには人件費や採用・教育コストがかかります。

税理士に顧問契約を依頼し、記帳代行や給与計算などをアウトソーシングすることで、これらの負担を大幅に軽減できます。専門家による正確かつ迅速な処理は、経理ミスの防止にも繋がり、結果として追徴課税などの余計なコスト発生リスクを抑えることにも貢献します。

節税対策を本格的に行いたいとき

「節税」に関心を持つ経営者の方は多いでしょう。しかし、自己流の節税対策は知識の限界や解釈の間違いから、かえって税務調査で指摘されるリスクを伴うことがあります。税理士は、最新の税法や税制改正、各種優遇税制に精通しており、個々の企業の状況に合わせて合法的かつ効果的な節税策を提案してくれます。

例えば、役員報酬の最適な設定、適切な経費計上、設備投資や研究開発に関する税制優遇の活用、倒産防止共済(経営セーフティ共済)や小規模企業共済といった制度の活用など、多角的な視点からアドバイスを受けることができます。顧問契約を通じて継続的に相談することで、決算間際だけでなく、年間を通じた計画的な節税対策が可能になります。

経営判断に専門家の意見が欲しいとき

経営者は日々、様々な意思決定を迫られます。特に資金繰り、設備投資、新規事業への進出、M&Aといった重要な経営判断においては、客観的なデータに基づいた分析と専門的な知見が不可欠です。税理士は、月次決算書などの会計データをもとに、企業の財務状況を正確に分析し、経営上の課題や改善点を指摘してくれます。

単に数字を報告するだけでなく、その数字が持つ意味を解説し、将来の経営戦略について共に考えるパートナーとしての役割も期待できます。特に中小企業の経営者は孤独な判断を強いられることも多いため、気軽に相談できる専門家がいることは大きな安心材料となるでしょう。

将来的に融資や資金調達を考えているとき

事業の成長や設備投資のためには、金融機関からの融資や出資による資金調達が必要となる場面があります。金融機関は融資審査の際、事業計画書の実現可能性や決算書の信頼性を厳しくチェックします。税理士が関与して作成された事業計画書や月次試算表、決算書は、その客観性や正確性が高まり、金融機関からの信用を得やすくなります。

また、税理士は様々な金融機関とのネットワークを持っていることも多く、自社に適した融資制度の紹介や、融資申し込み書類の作成支援、場合によっては金融機関との面談に同席してくれることもあります。例えば、日本政策金融公庫の創業融資や各種制度融資の活用など、具体的なアドバイスとサポートが期待できます。

顧問契約以外の税理士活用方法 スポット契約など

顧問契約は継続的なサポートを受けるための有効な手段ですが、全ての事業者にとって唯一の選択肢ではありません。事業の規模や状況、税理士に依頼したい内容によっては、顧問契約以外の形で税理士を活用することも可能です。代表的なものとして「スポット契約(単発契約)」があります。

スポット契約とは、特定の業務や課題解決のために、必要な時だけ税理士に依頼する契約形態です。例えば、「確定申告書の作成・提出だけをお願いしたい」「税務調査の立ち会いだけを依頼したい」「創業時の融資支援だけを頼みたい」といったケースで利用されます。

顧問契約とスポット契約の主な違いを以下にまとめます。

特徴 顧問契約 スポット契約
契約期間 通常1年以上の継続契約 業務完了までの短期契約
費用 月額顧問料+決算料など(継続的な支払い) 業務ごとの個別見積もり(都度払い)
サポート内容 日常的な税務会計業務、経営相談、節税アドバイスなど包括的かつ継続的 依頼した特定の業務のみ(例:確定申告、税務調査対応)
メリット 継続的な経営状況の把握と proactive なアドバイス、節税効果の最大化、税務調査への安心感 必要な時だけ依頼でき、費用を抑えられる場合がある、特定の専門分野に特化した税理士を選びやすい
デメリット 固定費が発生する、相性が合わない場合の変更が手間 継続的な視点でのアドバイスは受けにくい、緊急時の対応が難しい場合がある、トータルコストが高くなる可能性

スポット契約が適しているのは、以下のようなケースです。

  • 起業したばかりで、まだ売上や取引量が少ない個人事業主の方
  • 年間の経理業務が非常にシンプルで、自分自身でほとんど対応できる方
  • 特定の課題(例:相続税申告、一度きりの税務調査)についてのみ専門家の助けが必要な方
  • まずは税理士のサービスを試してみたい、相性を見極めたい方

また、既に顧問税理士がいる場合でも、特定の複雑な税務問題や事業承継、M&Aなどの高度な専門知識を要する分野について、別の税理士に「セカンドオピニオン」を求めるという活用方法もあります。これにより、多角的な視点から最善の策を検討することができます。

顧問契約を結ぶか、スポット契約で対応するかは、自社の状況や税理士に求める役割を明確にした上で慎重に判断することが大切です。

まとめ

税理士との顧問契約は、専門的な知識に基づく節税対策や経営アドバイスにより、事業の安定と成長を力強く後押しします。日々の経理業務の負担軽減はもちろん、税務調査や資金調達といった重要な局面でも頼れる存在となるでしょう。自社に最適な税理士を見極め、信頼関係を築くことが、事業発展に向けた重要な一歩と言えます。

 

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