ポイントは「雑収入」?事業者のポイント活用と仕訳

ネット社会になり、ネットショップ(ECサイト)の需要が高まりました。ビジネスの現場でも、「ネットショップで注文、事務所まで配達してもらう」スタイルが既に確立されています。

ネットショップの多くは、利用した金額に応じてポイントが貯まっていきます。ポイントは次回以降に割引を受けられたり、キャッシュと同じような使い方もできるので、これらをうまく活用すると、消耗品等の購入費用を抑えることができます。

プラーベートで上手にポイントを活用されている方は多くいらっしゃいます。けれども事業の場合、「ポイントは使用して良いのか?」「仕訳はどのようにすれば良いのか?」など、疑問を持たれている方は少なくありません。

そこで今回は、事業でのポイント活用と仕訳処理について、注意点も含めて詳しく説明していきます。

事業でもポイント利用はできる

事業でも、(ネットショップに限らず)各種ポイントは利用できます。「法人や事業者は会計の都合上ポイントの利用ができないのではないか」という話を時々耳にしますが、ポイント利用は税法上何の問題もありません。

一言で「ポイント」とは言っても、具体的にどのようなものがあるか挙げてみましょう。

  • クレジットカードのポイント
  • キャッシュレス利用による特典のポイント
  • 提携店舗だけで使えるポイント
  • 特定の店舗だけで使えるポイント
  • マイレージなど

法人は、個人よりも使う金額が大きいため、ポイントもあっという間に貯まっていきます。経費を少しでも抑えるのであれば、これらを活用しない手はありません。

ポイント仕訳方法と消費税の関係について

ここからは、実際の仕訳について解説していきます。

ポイント利用に関する仕訳処理は、ポイントの使い方で変わります。どのような使い方をしているのかを仕訳前に必ず確認するようにしましょう。

消費税の課税控除額を正しく計算するためにも、正しく仕訳することが大切です。

【ポイント使用例】

備品1,100円を購入する際に、ポイント300円分を利用

①300円分のポイント利用で、1,100円が800円に値引きされて、現金800円で購入した

    借方    /   貸方

消耗品費 800円  /  現金 800円

特別な仕訳は必要なく、通常の仕訳と同じです。

②1,100円の支払いにポイント300円分を充てて、残り800円分を現金で支払った

    借方    /   貸方

消耗品費 1,100円  /  現金 800円

               /   雑収入 300円

コンビニでの支払いで、ポイントと合わせてキャッシュレス決済を行なった場合も同様の方法で仕訳をします。

仕訳では「雑収入」と書かれていますが、実際に仕訳をするのは、「ポイントを使用したタイミング」です。(ポイントが付与された時の仕訳は不要です。)

③クレジットカードでのポイントを購入時に利用した場合

    借方    /   貸方

消耗品費 1,100円  /  未払金 800円

              /   雑収入 300円

④クレジットカード利用分の引き落とし時にポイントを利用した場合

    借方    /   貸方

未払金 1,100円  /  〇〇銀行 普通口座 800円

                         /     雑収入             300円

少し分かり辛く感じるかもしれませんが、ルールは単純です。「販売価格がいくらであるか」に気を付けていれば、仕訳で混乱することはありません。

不安な場合は、顧問税理士に相談するようにしましょう。

ポイント利用3つの注意点

注意1・仕訳は正しく行うようにしましょう

先ほど、ポイント利用の仕訳方法についていくつか例を揚げました。

複雑に感じられるかもしれませんが、これには理由があります。

仕入税額控除を利用するためには、正確な仕入金額を入れる必要があるからです。

「ポイントをどのように利用したのか」を無視した仕訳をしてしまうと、正しく計算ができません。

仕入額控除の対象となるものについては国税庁のホームページから確認ができます。

国税庁ホームページ「No.6451 仕入税額控除の対象となるもの」

こちらはインボイス登録をされていない方は「消費税を納めていないから関係ない」と思われるかも知れませんが、正しい仕訳は決算書の分かりやすさや、事業の状態を正しく把握する上で必要なことですので、ルール化して行うようにしましょう。

注意2・事業用とプライベート用は、明確に分けるようにしましょう

「ポイント」というと、現金よりも軽いイメージがあるかもしれませんが、これも会社の資産であることには変わりません。

事業で得たポイントは事業のものですので、プライベート利用しないようにしましょう。

私用で使ったポイントについても、会計上は仕訳が発生します。その場合、会社が個人に貸付を行ったことになります。

例え自分一人だけで事業を行っていたとしても、事業のお金を自分のお金のように使うことや、貸付を受けることは、事業の信用を下げることになります。もちろん銀行からの評価を下げ、いざ融資を受けたいという時に融資が降りなくなるなんてこともあり得ます。

また、会社のポイントを無断で利用することは「業務上横領罪」になります。

「ポイントくらい…。」と思われるかもしれませんが、ポイントも「お金」と同じです。決して軽く考えないようにしましょう。

注意3・ポイント活用については顧問税理士に相談するようにしましょう

今回はポイント活用と仕訳の事例を一部紹介させていただきましたが、ポイントは利用方法やタイミングによって仕訳・処理方法が変わります。

  • ポイントを景品に交換した
  • ポイントを商品券に交換した
  • ポイントを使って出張先のホテルに宿泊した
  • クレジットカードで貯まったマイルを航空券や別のポイントに交換した

ポイント利用は、現在はこれらが一般的ですが、今後は新しいポイントの仕組みも誕生するかもしれません。ポイントを上手に活用して、少しでも会社の経費を抑えたいという方は、まずは顧問税理士に仕訳処理を含めた相談をしてみてください。

最後に

今回は、事業者のポイント活用と仕訳について解説しました。

世の中には、事業者向けのポイント還元率の高いクレジットカードや、まとめ買いで割引が受けられる事業者向けのネットショップなど、個人向けとはまた違った魅力があるサービスが数多くあります。

事業者は使う金額が大きいからこそ、ポイント還元率の高いネットショップや法人カードなどを上手に利用していきましょう。

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税理士 山本聡一郎
山本聡一郎税理士事務所 代表税理士。1982年7月生まれ。名古屋市中区錦(伏見駅から徒歩3分)にてMBA経営学修士の知識を活かして、創業支援に特化した税理士事務所を運営。クラウド会計 Freeeに特化し、税務以外にも資金調達、小規模事業化持続化補助金などの補助金支援に力を入れている。
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