これから起業をしたい人から良く相談を頂くのは、個人事業主でスタートすべきか株式会社などの法人を作って事業を行うべきかということです。
今回は起業するならどちらがいいのかお伝えします。
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会社設立しなくても個人事業主としてスタートする方法もある
事業をスタートしたいからとりあえず株式会社または合同会社を作りました!という人がいらっしゃいます。もちろん、目的があっての会社設立であれば、問題はありませんが、とりあえず、事業をスタートしたいから会社設立しましたというのは計画性が全くないと等しいといえます。
事業は、わざわざ会社設立をしなくてもスタートすることができます。個人が税務署に行って、開業届を出して終了です(必ずしも開業届を出さなくても事業をスタートできます)。むしろ、会社設立をする方が、定款を作成し、登記したりするなど、時間・労力・コストがかかります。手っ取り早く事業をスタートしたいなら、個人事業主の方が有利です。
個人事業主でスタートすると思い立ったら、税務署への開業届などの手続きが必要です。詳細を知りたい方は以下の記事がおすすめです。
会社設立をすることのメリットとは
手間やコストがかかるならなぜ、株式会社が存在するのでしょうか?それは会社設立するメリットがあるからです。
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信用を得ることができる
会社設立をすることのメリットとしてあげられるのが、その事業の信用力です。会社設立をするうえで代表者の住所や資本金の額を法務局に提出し、登記をしなければなりません。個人事業よりも一定の手続きをふむわけですから信用力が増すわけです。
以前は、有限会社は最低300万円、株式会社であれば最低1,000万円の資本金が必要となりました。しかし、現在は1円の資本金で株式会社を作成できる時代ですから、株式会社だから信用できるというのは、昔ほどではないかもしれません。
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節税ができる
個人事業の場合は、所得税が課されることとなり、累進課税方式がとられており、5%から最大45%の税率が課されます。さらに住民税(10%)復興特別所得税(2.1%)も課されます。
一方で、法人の場合は、中小企業であれば800万円以下と以上で法人税率は異なりますが、最大でも23%ほどです。ですので、ある程度、儲け(所得)がある人は法人設立の方が有利となります。
なお、個人事業の場合、赤字であれば、以上の税金を支払う必要はありませんが、法人は赤字でも地方に均等割という税金を支払う必要があります。
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資金調達が行いやすい
もちろん、個人事業主でも日本政策金融公庫などから融資を受けることができますが、法人の場合は、融資のみならず、出資という方法で資金調達をすることができます。もちろん、個人事業主でも出資という概念がないわけではないですが、それは出資という名の借入に近いものでしょう。
一方、株式会社は、投資家などから出資を受けることができます。その出資金は返金する義務はなく、その対価として株式を発行することとなります。なぜ投資家は出資するのでしょうか?投資家は出資し、その株式を持つことで将来のキャピタルゲインや配当を得ることができるからです。
逆言えば、上記のメリットを享受する必要がなければ、わざわざ会社設立をする必要はないのです。
会社設立の流れを知りたい方はこちらの記事がお勧めです。
- 株式会社設立のための流れとポイント
節税目的で法人成りするのはやめよう
よく、個人事業主でスタートして、2年後ぐらいに法人成りするのがベストという考えを持っている人がいますが、果たしてそうなのでしょうか?
この理由は、消費税の免税期間に関係します。個人事業の場合、事業開始後、原則2年間は消費税を納める義務はありません。個人事業で売上高が1,000万円を超えた場合、その年の2年後から消費税を納めることとなります。しかし、消費税が課される前に法人化することでさらに原則2年間、消費税の免税期間を得ることができます。だから、2年後に法人化すべきという考え方が生まれるのです。
しかし、そもそも売上高が1,000万円を超えない事業であれば、法人化するメリットはありません。さらにいえば、法人化することで社会保険料を支払うことが義務化されます(個人事業で従業員が5人未満であれば任意)。
実は、消費税以上にこの社会保険の支払の方が会社経営を圧迫する可能性があります。消費税免税という目先の利益に溺れた法人成りはやめましょう。
まとめ
とにかく事業をスタートしたいのであれば、個人事業主でスタートすることをおすすめします。ある程度、事業がうまく軌道に乗った時点で法人化することを検討しても遅くはありません。そのタイミングは税理士などの専門家と相談しましょう。
法人を設立したはいいけど、事業のスタートがうまくいかないということは残念ながら多々あります。設立するのもお金がかかりますが、法人を解散・清算することにもお金が必要となるのです。計画のある会社設立にこころがけましょう。