税務署により、納税者が適正に申告をしているかどうかを調査することを税務調査といいます。この税務調査も新型コロナウイルスの緊急事態宣言の影響を受けました。この税務署による調査が変わりつつあります。今回は、新型コロナウイルスによる税務署の調査の変化とともに持続化給付金のために確定申告を行ったことで明るみに出た無申告の洗い出しについて紹介します。
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3密を回避するため対面による実地調査は減少傾向にある
税務署が事前に納税者または代理の税理士に通知をして、合意を得たら事務所や自宅に調査を着手する。これが、納税者が適正に申告を行っているかどうかを調査する「税務調査」の流れです。
この税務調査は税務署の調査官と納税者、そして税務代理人の税理士も入り、申告内容が適切だったかを2~3日かけて実施していました。しかし、この状況は、密閉、密集、密接のいわゆる「3密」です。国からもコロナウイルス感染症を避けるためにも「3密」を控えるように求められています。
実際に緊急事態宣言の間は、当初、実施が決まっていた税務調査も延期されました。現在も、ピーク時に比べ、新型コロナウイルスの影響は徐々に減りつつありますが、3密の状況は受け入れづらい状況下のため、税務署も対面による税務調査には慎重にならざるを得ないといえます。
実地調査は減少しても異なる方法で税務調査は行われる
では、税務調査は今後、減少していくのかというと世の中、そこまで甘くはありません。実施調査は減少しても、異なる方法で税務調査は行われつつあります。その方法手段は「簡易な接触」であり、具体的に以下のような方法となります。
- 行政指導
この行政指導は、税務署から納税者に郵送し、申告内容全般について申告漏れがないか自主的な見直しを求める方法です。この行政指導には強制力はなく、あくまでも納税者の判断に委ねられます。しかし、回答をしなければ調査対象になる可能性があるため、心当たりがある場合には修正申告をしましょう。
- 文書による調査
文書による調査は、文書により申告内容について具体的な疑問点を確認する方法です。行政指導は、任意でしたが、文書による調査は決められた期日までに回答しなければなりません。ちなみに私も、文書による調査を受け、必要資料を税務署に送付したことがあります。もちろん、やましい箇所はありませんが、疑われることは気持ちいいものではありません。
- 税務署からの呼び出し
呼び出しは納税者に税務署に来てもらい、調査官が疑問点を尋ねることとなります。こちらも期日までに対応しなければなりません。
新型コロナの給付金の影響?今後は無申告の洗い出しも
令和元年分の確定申告は新型コロナウイルスへの対策のための持続化給付金のおかげで、今まで、確定申告を行っていなかった人もしっかりと確定申告を実施することとなりました。
しかし、給付金目当てで確定申告を行ったことで、今まで税務署が把握していなかった納税者が明るみに出ることとなりました。令和元年の確定申告をしても、平成30年以前は確定申告をする必要がなかったのかと税務署が思わないはずがありません。税務調査は最長過去7年間、さかのぼることができますから、今まで無申告だった人は、新型コロナが落ち着いてきたころには税務調査を意識する必要があるでしょう。
また、令和元年の確定申告を行い、持続化給付金を受けた以上、持続化給付金は課税対象のため、令和2年の確定申告も行わなければなりません(そもそも納税することは国民の三大義務です)。
確定申告が無申告だった場合の対処法
では、今まで無申告だった納税者はどうすればいいのでしょうか?それは、いずれ来るであろう税務調査の前に自主的に確定申告または修正申告をすることが選択肢となります。もちろん、延滞税は課されますが、無申告加算税などの加算税は課されないため早めに申告することをおすすめします。
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新型コロナウイルスのための給付金を受けたにも関わらず、結局、追徴課税を受けてしまったと、自ら首を絞めないようにこころがけましょう。