令和2年9月に入り、新型コロナウイルスの影響により先行き不透明感がましてきました。個人事業主の方の中には、8月に消費税の中間申告の納付書が突然届き、思わぬ支払で戸惑ってしまった方も多いのではないでしょうか?
新型コロナウイルスの影響により、売上が激減してしまった方は仮決算を組むことに中間消費税の納付額を減らすことができる可能性があります。
今回は消費税の仮決算について紹介をいたします。
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中間消費税はどのように決まるのか?
今まで、毎年消費税を払っていたのに、今年になって初めて中間消費税の納付書が届いた!昨年は中間消費税を支払ったのに、今年は届かなかったという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
中間消費税の支払は一定のルールに基づいて発生します。
消費税の中間申告は直前の課税期間の確定消費税額によって、発生の有無が決まります。直前の課税期間の確定消費税額という聞きなれない言葉がでてきましたが、簡単に言ってしまえば、個人であれば前年に支払った確定消費税額・法人であれば前事業年度に支払った確定消費税額となります。
上図の通りに、直前の課税期間の確定消費税額が48万円以下であれば中間消費税は発生しません。48万円超から400万円以下の場合は、直前の課税期間の確定消費税の6/12つまり半額を中間申告として支払うこととなります。400万円超から4,800万円以下の場合には、前年の課税期間の確定消費税の3/12の金額を中間申告で年3回、そして、4,800万円超の場合は前年の課税期間の確定消費税の1/12の金額を中間申告で年11回支払うこととなります。
さらに確定消費税額ですが、これは国税の部分の7.8%の金額を指します。消費税は10%ではないの?と考えた方もいると思いますが、普段私たちが支払っている消費税というのは、国税の消費税7.8%+地方税の消費税2.2%を支払っています。余談ですが、軽減税率の場合は国税の消費税6.24%+地方税の消費税1.76%となります。
国税の部分で48万円超えるか否かで中間消費税が発生するか決まるのですが、国税に係る消費税をいくら払っているか分からない人も多いかと思います。そこで前年の消費税(地方消費税も含む)に置き換えた表も準備しましたので、ご参考にしてください。なお、計算を簡略化するため軽減税率はなかった前提としておりますのでご容赦ください。
つまり、前年の支払った消費税額が約60万円を超えたあたりから中間消費税が発生するという認識があれば大丈夫かと思います。
中間消費税の申告・納付方法
中間消費税の計算方法は分かったけれども、中間消費税の納付金額が前年に支払った消費税額によって決まってしまうから、今更ジタバタしてもしょうがないのでは?と思われた方もいるはず。中間消費税の納付税額の算出方法は2種類あります。「予定申告方式」と「仮決算方式」です。なお、中間法人税も同様の方式となります。
一般的に用いられる「予定申告方式」は、上述のとおり、前年に支払った消費税額を基に中間消費税を計算する方法となります。税務署から納付金額が予め記載された納付書が送られてきますので、それを支払ったと同時に消費税の中間申告があったとみなされます。実務的には、税務署から送られてきた金額を支払うだけなので、手間はまったくかかりません。
一方の「仮決算方式」は、前年の消費税の金額は関係なく、中間申告の対象期間(個人事業主の場合は1月 or 1月~3月 or 1月~6月)において仮決算を組んで中間消費税の納付を計算する方法です。実務的に考えると、予定申告方式で支払えばいい金額をわざわざ計算しなければなりませんので、手間が発生します。顧問税理士がいる場合には、追加料金が発生するか、対応してくれない税理士がいるかもしれません。
なぜなら、中間消費税は前払金の性格のため、中間消費税を少なくしても、確定申告で年額を計算し、中間消費税の差額分を支払うわけですから、節税効果があるわけではありません。また、結果的に年税額が少なくなり、中間消費税を余分に支払ってしまっても還付されますので、多く支払っても結果的には損はしません(還付加算税がつくので、少しは得するかもしれません)。
新型コロナウイルスの影響を受けた事業者ほど仮決算を組むべき
前年の消費税額が512万円以下の個人事業者の方の場合、令和2年8月31日までに中間消費税の納付をしなければなりません。しかし、その中間消費税は前年の消費税額を基に計算がされています。承知の通り、新型コロナウイルスの蔓延は令和2年度からであり、新型コロナウイルスの影響が終焉しない限りは売上が昨年度を大きく上回ることは難しいかと思われます。
上述のとおり、仮決算を組む「仮決算方式」には節税効果はありません。しかし、資金繰りの面から考えればとても効果がある方法といえます。中間消費税に支払うべき金額を家賃・人件費などの運転資金に回すことで大事な手元資金を有効活用できるからです。
また、新型コロナウイルスの影響にかかわらず、前年度に突発的な売上があがった・今年に多額の設備投資をしたなどイレギュラーなイベントが生じた場合にも仮決算による資金繰り効果はあります。
まとめ
新型コロナウイルス対策として、給付金や特別融資に目が行きがちですが、既存の税制をうまく活用することで節税や資金繰りの改善を行うことができます。
コロナ禍で数多くの事業者が生き残ることができるかとともに税理士も同様にこの緊急事態の中、多くの事業者を助けることができるかが今後選ばれる税理士として残っていくかの分かれ道ではないかと考えています。
仮決算をはじめ税制を活用したコロナ対策を検討したい方はぜひご相談ください。