9月30日に愛知県も緊急事態宣言も解除されました。18日からは独自の厳重警戒宣言も解除され、全国的にも飲食店の時短営業も解除されており、まだまだ、マスクは外せない世の中ですが、アフターコロナを意識して経済が回り始めてきました。
さて、弊所では飲食店を営むクライアント様を多く抱えておりますが、時短営業に協力されたクライアント様から、協力金で思わぬ利益(所得)が・・・というお話をよくいただきます。
従業員を多く抱える飲食店さまにとっては、人件費・店舗の家賃で協力金なんて運転資金ですぐなくなってしまう現状かもしれません。
しかし、自分ひとりや家族でお店を切り盛りしている方、小規模の店舗にて飲食店を開いている方の中には、運転資金よりも協力金が多くもらえる協力金バブルが起きている方も少なからずいます。
今回は、思わぬ収入で税金が発生してしまった場合の節税の対象法及びリスクについてお伝えいたします。
このページの目次
協力金や月次支援金にはどんな税金が課される?
そもそも、協力金や一時支援金、月次支援金を受給したら、この収入って税金上、どんな扱いを受けるの?と疑問を持っている方もいるかもしれません。
結論からいうと、協力金や一時支援金などは、新型コロナウイルスの影響により減少した売上高の補てんの役割を果たすため、所得税または法人税の課税の対象となります。
一方で、協力金等を受取ったことで商品やサービスの提供が行われたわけではないため、消費税の課税対象にはなりません。ですので、協力金や支援金をもらった方は必ず、確定申告をしましょう。
協力金で思わぬ税金発生!具体的な節税方法3選
さて、家賃や人件費などの固定費を多く抱える飲食店では、協力金などは雀の涙にもならない状況かもしれません。
一方で、小規模の店舗にて1人で営業する飲食店では、時短営業中の売上にさらに協力金が上乗せになる形になりますから、もしかしたら、コロナ前の収入よりも令和3年の収入の方が大きくなるかもしれません。
さらに、飲食店の場合、通常、売上に対応する仕入などの原価が伴いますが、今回の協力金には原価がありませんから、利益がますます出やすくなる状況といえます(一部のニュースでは協力金で高級車を買ってしまったという方も耳にしました)。
一部の方はさておき、新型コロナが終息しつつあるものの、新型コロナの特別融資やこのさき、まだ何があるかわからないからできれば、税金を減らして、手元にお金を残しておきたいという考えを持つ方もいらっしゃいます。次は具体的な節税方法を確認していきます。
① 年内に必要な消耗品費の調達や修繕を行おう!
一番の節税の王道は将来への売上の増加のためへの投資のための必要経費や壊れていたものを治す修繕のためにお金を使い、必要経費を増やすことです。必要経費を増やすことで、利益(所得)が減るので、節税となります。なお、修繕の場合、現状が変わってしまうほどの大きな修繕の場合、減価償却の対象となる可能性があります。
ただし、税金を払いたくないからと必要のないものを買ったり、飲み食いをしたりする方もいますが、それは節税ではなくただの無駄遣いです。また、駆け込みで自動車を購入される方もいますが、消費税対策としては有効ですが、所得税や法人税の場合、原則、減価償却となりますので、お金を使ったわりに節税効果が薄い場合もありますので、注意が必要です。
② 中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)の利用
所得税の場合、利益(所得)が大きくなればなるほど、税率が5%(住民税含め15%)から45%(住民税含め55%)に上がる累進税率が適用されています。
また、法人税も中小企業の場合、年800万円以下の所得金額の場合15%ですが、800万円を超えると23.2%と税率が上がります。
個人事業主の方で今回の協力金を含めた場合、もしかすると、例年の年に比べ、所得税の税率が上がってしまう可能性があります。そこで、活躍するのが、中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)です。詳細は以前、まとめた記事があるので、参照ください。
中小企業倒産防止共済を利用することで、膨れ上がった所得を将来に繰延べることができるため、税率を下げることが出来ることができます。また、中小企業倒産防止共済は掛金の変更も容易のため、資金繰りが心配なときも安心して利用できるかと思います。
しかし、中小企業倒産防止共済を解約した場合には、雑収入として課税の対象となること、40ヵ月未満で解約してしまうと元本割れしてしまいますので、無理した掛金設定に注意しましょう。
③ 短期前払費用の特例を利用した家賃の1年前払い
上述した消耗品の購入や倒産防止共済の加入は通常の運転資金にさらに支出を伴うこととなります。
一方で、短期前払費用の特例を利用した家賃の1年前払いは、将来払うべきものを前もって支払うことで経費化できるので、将来的なキャッシュアウトを減らしつつ、節税効果を図ることができます。こちらも詳細は以前、まとめた記事があるので、参照ください。
デメリットは、一度、家賃の前払いをしてしまうと、毎年前払いをしないと税務上の否認のリスクが伴います。また、家賃ですと通常、大きな支出となりますので、1年分を一度になると資金繰りを悪化させる可能性があるので、最終手段として考えて頂ければ幸いです。
最後に
今回は協力金により思わぬ利益が生じてしまった場合の対処法をお伝えしました。今回、紹介した節税方法のうち、中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)の利用や短期前払費用の特例を利用した家賃の1年前払いは、税金の支払いを将来に繰り延べるだけの手段です。また、必要経費を増やすことも本当に必要なものを購入することは有効ですが、全てにおいて共通することは、ともに節税をするためには支出が伴います。
税金を中心に経営を考えてしまうと、資金繰りを悪化させることととなり、経営を悪化させる根源となります。過度な節税は避けつつ、資金があるときにしっかり納税した方が経営にとっては健全かもしれません。山本聡一郎税理士事務所では、節税のみのアドバイスだけではなく、資金繰りからアプローチした経営相談もさせて頂いております。無料相談も実施しておりますので、お気軽にご利用ください。