所得拡大促進税制(賃上げ優遇税制)のメリットと3点の注意点とは

 年末になると税制大綱の情報がテレビ番組でのニュースでも取り上げられるようになります。今回の税制大綱で大きく取り上げられる所得拡大促進税制。ニュースでは賃上げ優遇税制とも呼ばれていますが、この所得拡大税制は今回の税制大綱で大きく変わる模様です。

 全容がみえてきましたので、今回は2022年度の税制大綱で所得拡大促進税制がどのように変わるのか?そして、所得拡大税制の利用するうえでのメリット及びデメリットをお伝えします。

2022年度の税制大綱で所得拡大促進税制(賃上げ優遇税制)はどう変わる?

 所得拡大促進税制は大企業、中小企業により適用条件が異なりますが、共に賃金の引き上げや教育訓練などの取り組みに応じ3段階で条件が設けられます。

 大企業は継続して雇用する人の給与総額を3%以上増やせば対象となる一方で、中小企業では大きく適用要件が緩和され、新規採用も含めた雇用者全体の給与総額を1.5%以上増やすことを条件としています。

 現行の所得拡大促進税制は中小企業においても前年度から継続して雇っている人の給与の総額により、増加したか否かにより判断されたため、例え、決算書の前期比較で給与項目が増加していても適用できないということが実務上よくありました。

 今回は中小企業の場合は、新規雇用者も計算に含まれるため、従来よりも使い勝手が良くなったと考えています。

所得拡大促進税制(賃上げ優遇税制)による税額控除はどうなる?

 気になる所得拡大促進税制の税制優遇を確認していきます。

大企業における所得拡大促進税制は最大30%の税額控除

 大企業の場合には、継続雇用、つまり前年度から継続して雇っている人の給与の総額を見て判断をしていきます。なお、さらなる条件として、従業員への還元などを配慮していることを自社のウェブサイトで宣言していることも必要となります。

 前年度に対し3%以上増えれば、雇用者全体の給与総額を増やした分の15%を法人税から差し引きます。4%以上増やせば控除率を10%分上乗せして25%控除します。さらに教育訓練費を20%以上増やせばさらに5%分を積み増し、最大30%の税額控除を適用することができます。

中小企業における所得拡大促進税制はなんと最大40%

 中小企業は上述のとおり、大企業とは異なり、継続する雇用者だけではなく、新規の雇用者も含む全体の給与総額に着目します。

 前年度と比較し1.5%以上増やせば、増やした分の15%分を法人税額(個人事業主の場合には所得税額)から減らします。総額を2.5%以上増やせば控除率を15%拡大し、教育訓練費を10%以上増やすとさらに10%上積みされ最大40%の税額控除となります。

経営力向上の証明は廃止へ

 従前では、教育訓練費の10%以上の増加に代わり、適用年度終了の日までに中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けており、経営力向上計画に基づき経営力向上が確実に行われたことにつき証明がされていることにより上乗せ措置がされました。しかし、今回は廃止された模様です。

 しかし、経営力向上計画の作成は補助金の加点になるなどメリットはあります。

経営力向上計画について知りたい方はこちらへ

所得拡大促進税制の適用により注意すべき3点とは

所得拡大促進税制は、他の税制と比べて適用要件と申請の難易度が高くないため、非常に使い勝手のよい税制の一つです。ただし、適用において注意すべきことがあります。

社員の給与は簡単には下げられない

 所得拡大促進税制を適用したいからと過度に社員の給与を上げてしまうのは禁物です。

 節税したいからと所得拡大促進税制を適用するために社員の給与をあげた結果、将来的に人件費が経営を圧迫する可能性があります。一度上げてしまった給与を簡単に下げることはできません。それでも適用したいのであれば、賞与などで調整してあげた方が社員も納得感はあるかもしれません。なお、自分自身の給与、親族への給与は計算では対象外です。

税額控除よりも社会保険料の負担が増加する可能性も

 意外と盲点となるのが社会保険料です。法人税や所得税を減らしたいがために臨時で賞与や昇給させ、所得拡大税制を適用できた一方で、増加額によっては社会保険料も増加してしまう可能性があります。

 節税はできたけども、社会保険料による支出が増えてしまったことにならないように、シミュレーションをしっかり行いましょう。

赤字企業においては所得拡大税制の恩恵は受けられない

 所得拡大促進税制は支払った法人税または所得税に対し減税されます。当然ですが、税金を払っていない企業においては、いくら従業員の給与が増えて所得拡大促進税制の要件に当てはまっても控除する税金がないので、恩恵は受けられません。当たり前の話ですが。

 なお、中小向けの補助金に、賃上げする赤字企業を対象にした特別枠を設けることも検討されています。

あなたの会社は所得拡大促進税制の適用ができていますか?

 所得拡大促進税制は要件さえ当てはまってしまえば使える、使い勝手のいい税制の一つです。ただし、計算が面倒くさいなどの理由で使っていない、検討すらしない税理士もいるのも事実です。

 山本聡一郎税理士事務所では、クライアント様との決算の事前打ち合わせで所得拡大税制が適用できるか否か検討しております。もし、自社でも適用できるのではないかと思ったら、顧問税理士に一度、確認をとるようにしてみましょう。山本聡一郎税理士事務所では、無料相談を実施しておりますので、適用できるか否か迷ったらご相談ください。

 また、私見ですが所得拡大促進税制は狙って使うものではなく、頑張ってくれた社員には日ごろから給与により還元することで、結果的に所得拡大促進税制が使えたという棚からぼたもち感覚で使っていきたい税制と考えております。

 節税することは重要ですが、あまりに税金を中心に考えてしまうと、経営に歪みが生じる可能性がありますので、注意しましょう。

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