経営をするなら知っておきたい!資金繰りの切り札・ファクタリングとは

事業を行う上で計画的な資金繰りは欠かせません。しかし、ビジネスの世界では、事業をどれだけ計画的に進めているつもりでいても、予測不能なことは起こります。ビジネスにはリスクがつきものです。時には資金繰りが厳しくなる事もあるでしょう。
そんな時に役立つ手段の一つが「ファクタリング」です。

今回はファクタリングの仕組みや、ファクタリングがどのような場面で役立つのかを紹介していきます。

けれども、このファクタリングという手段は「会社の最後の切り札」であり、「安易に使う

べき手段ではない」ということを先にお伝えしておきます。

その理由については、今回のコラムを読み進めていただくことでご理解いただけるかと思います。

そんなファクタリングをテーマに選んだのは、経営をされる方には、ぜひ知っておいていただきたい手段の一つでもあるからです。

それだけファクタリングには資金繰りの危機を乗り越える力を持っているということです。

ファクタリングとは?

ファクタリングとは、企業が保有する売掛金を第三者の金融機関(ファクタリング会社)に売却することで、即時に現金化させるサービスです。

売掛金は商品やサービスを提供した後、一定期間経過すると回収できますが、その期間を待たずに早期に現金を得ることが可能です。

活用される場面は、主に資金繰りが厳しい時になります。

例えば、

  • 売上は上がっているけれども、収益が後払いになってしまい、すぐには手元に現金が入らない
  • 銀行へ追加融資を申し込んだけれど時間を要してしまい、支払いまでに間に合いそうにない

場合などが挙げられます。

そのような時、ファクタリングは資金繰りの助けとなります。

ファクタリングの流れ

ファクタリングは、以下のようなステップで行われます。

①売掛金の生成

売掛金とは、企業が商品やサービスを販売した後、その代金を後日に受け取ることを約束した際に生じる債権のことを指します。

あなたの会社(売主)が商品やサービスを顧客(買主)に提供し、その代金の支払いを後日にすると、売掛金が生じます。

②売掛金の譲渡

売主はファクタリング会社に売掛金を譲渡します。それにより、顧客が支払うべき代金の受取人は売主からファクタリング会社に変わります。
この売掛金の譲渡によって、売主はファクタリング会社からすぐに現金を受け取ることができます。
ただし、ファクタリング会社はこのサービスの対価として一定の手数料を取ります。

手数料は一般的に2社間ファクタリングの場合は10~30%、3社間ファクタリングの場合は1~9%とされています。

これは一般的な数字なので、この他に売掛先の信頼度や回収リスクなども考慮して手数料は決定されます。

(2社間、3社間の取引の違いについては後ほど解説します。)

③代金の回収

請求書の支払日になると買主が支払いをします。
2社間ファクタリングの場合は、通常通り買主が売主に支払い、売主はその売上金をそのままファクタリング会社に支払います。
3社間ファクタリングの場合は、買主がファクタリング会社に直接支払います。

これで最終的な売掛金の清算となります。

このように、ファクタリングは「売掛金を早期に現金化する」手段として利用されます。

商品やサービスを提供した後、販売代金を受け取るまでに時間がかかると、企業の資金繰りに影響が出ることがあります。ファクタリングは、そのような時間をつなぐための有効な手段となるのです。

ファクタリング利用の注意点

ファクタリングが資金繰りの助けになることは事実ですが、利用する際にはいくつかの注意点があります。

1・手数料がかかる

ファクタリングの利用には手数料が発生します。

つまり早期に売掛金を現金化できるメリットを受け取る代償に、将来的なキャッシュが減るというデメリットを受ける、ということなのです。
ファクタリングを利用する際は、企業全体のキャッシュフロー管理に注意が必要です。

2・審査が必要である

ファクタリングは必要な時にいつでも無条件に利用できる、というものではありません。

ファクタリングを利用する際には、ファクタリング会社による審査があります。この審査では、売主企業だけでなく、取引相手である買主企業の信用度も重要な要素となります。
以下、それぞれの審査について説明します。

①売主企業の審査

売主企業に対する審査では、その財務状況、信用状況、取引履歴、取引先との関係などが確認されます。審査の目的は、売主企業が売掛金をきちんと回収できる能力を評価し、それに基づいて売掛金の価値を見積ることです。そのため、売主企業の信用度が高く、取引の履歴が長く、安定した取引関係を持っている企業ほど、ファクタリングの審査は通りやすくなります。

②買主企業の審査

一方、買主企業に対する審査も行われます。買主企業が売掛金をきちんと支払えるかどうかは、ファクタリング会社にとって重要なリスク要素となるためです。買主企業の信用状況や財務状況、過去の取引履歴などが審査され、その結果により、売掛金をどの程度現金化できるか(どの程度の割合で現金化されるか)が決まります。

これらの審査は、ファクタリング会社が自己のリスクを管理し、売主企業に対して適切なサービスを提供するために重要なプロセスとなります。
なお、ファクタリングはその特性上、銀行融資と違い、審査がスピーディーで、審査基準も少しですが緩やかであるとは言われています。

ファクタリングは取引先や金融機関にバレるのか?

ここで気がかりなことが1つあるのではないでしょうか?
ファクタリングが取引先や金融機関にバレるのではないかということです。

結論としては、ただファクタリングを利用するだけでは金融機関にバレることはありません。

取引先にバレないかという心配をされている方もいますが、2社間ファクタリングであればその心配はありません。しかし、3社間ファクタリングを行うと、支払先がファクタリング会社になるため、取引先に隠し通すことはできません。

ここで先ほど少し出てきた、ファクタリングの「2社間」と「3社間」の違いについて説明していきましょう。なぜ取引先にバレてしまうのかもここで理解できるはずです。

2社間ファクタリングとは

2社間ファクタリングでは、売主企業とファクタリング会社間だけで取引が行われます。
買主は原則としてこの取引に関与しません。この点が、3社間ファクタリング(売主企業、ファクタリング会社、買主企業が全員関与する形態)との大きな違いとなります。

お金の流れとしては、「ファクタリングの流れ」で説明した通り、売主は売掛金を譲渡して、ファクタリング会社から「売上額から手数料を差し引いた金額」を事前に受け取ります。その後、買主から入金があったときにそのまま全額をファクタリング会社に返済するのです。

けれども、ここでファクタリング会社に返済をしない売主も一定の割合で存在します。

つまり、2社間ファクタリングは、ファクタリング会社にとって非常にリスクが高いため、その分手数料も10%~30%と高めに設定されています。

※ファクタリング会社に返済しなかったらどうなるか

もしも売主がファクタリング会社に返済をしなかった場合、ファクタリング会社は買主に対して確認を行ったり、買主に対して売主が提供した商品やサービスの権利を主張する内容証明を送付する場合があります。

そのような場合は2社間ファクタリングを行ったとしても取引先に100%バレてしまいます。

それだけでなく、ファクタリング会社に対して債務不履行ということで責任を追求される立場になることは言うまでもありません。

3社間ファクタリングとは

3社間ファクタリングでは、2社間(売主企業とファクタリング会社)に買主企業も加わった3社間での取引になります。

買主が支払いを売主ではなくファクタリング会社にするという点が大きな違いです。

「ファクタリングを利用する会社は、資金繰りに困っている」というのは誰もが容易に想像できることです。資金に困っている相手(売主)から返済を受けるよりも、買主から直接支払いを受ける方がファクタリング会社にとってリスクは圧倒的に低くなります。
その為、手数料も1%~9%と低めに設定されているのです。
この3社間ファクタリングを行うために、ファクタリング会社と買主との間でやり取りが発生します。ファクタリング利用が取引先にバレるのはこのような理由からです。

金融機関にバレるのはどのような場合か

ファクタリングをただ利用するだけでは金融機関にバレることはないと前述しましたが、継続してファクタリングを続けると決算書(BSとPL)からバレる可能性があります。

ファクタリングは売掛金を譲渡するため、売掛金が不自然に減っている点について理由を尋ねられる場合があります。また、ファクタリングの手数料は「売掛債権売却損」という勘定科目で処理されます。この勘定科目を見るとファクタリングを利用したことがすぐに分かります。

ファクタリング利用を知られたとしても、一度くらいであれば問題ありませんが、手数料の金額が多く、継続的に利用していることを知られると、金融機関からネガティブな評価を受けることは避けられません。

ファクタリングは便利ですが、リスクが伴います

このように、ファクタリングはあくまで一時的な対策であり、恒常的に使用するべき手段ではありません。ファクタリングを利用すると手数料などのコストがかかり、また早期に売掛金を現金化することで将来のキャッシュが減少します。

さらに取引先や金融機関に知られることで、今後の取引に制限がかかったり、融資が通らなくなったりと、事業拡大をするどころか、事業を継続させる上での足枷になることは間違いありません。

そのため、ファクタリングという手段は積極的には使わず、最後の切り札としておきましょう。

基本的にはファクタリングを利用しなくても済むような健全な資金繰りを実現させることが大切です。事業計画と資金繰りの計画的な管理を行い、少しでも経営に余裕を持たせるようにしましょう。予測可能な支出の見直しや、固定費の削減、効率的な運用計画の策定など、あらかじめ可能な限り危険予測を行い、事業の健全な運営を目指すべきです。

経営者がファクタリングを正しく理解しておくべき理由

今回はあまり推奨していないファクタリングを紹介しましたが、今後利用することはないとしても経営をされる方にはぜひ正しく知っていただきたいと思います。

それは、いつ資金繰りの手段として必要とされるか分からないからというのも大きな理由ではありますが、もう一つ大切なことがあります。それは、取引先がファクタリングを利用する可能性も「0」ではないということです。もしも、自分が買主側の立場に立った時に、どのような対応をするのか。そして、万一の時にどのような経営判断をするのか。何事も冷静に対応するためには、正しく理解しておくことが重要なのです。

どれだけ自分が、健全な経営を目指して計画的に動いていても、他者とのつながりの中でビジネスをしている以上、リスクを「0」にすることはできません。

正しい知識をつけて、しっかり備えておきましょう。

リスクを考慮した資金繰り計画は、税理士にご相談ください

事業計画や資金繰りについての詳細なアドバイスが必要な場合は、山本聡一郎税理士事務所にご相談ください。

豊富な経験と専門的な知識を活用して、あなたのビジネスをサポートします。資金繰りの問題は事業の成功を左右する大きな要素です。適切な対策と事前の計画が、ビジネスを健全に成長させるための鍵となります。ぜひ一度、ご相談ください。

なお、借入の重要性の理解を深める記事はこちらが参考となります。

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税理士 山本聡一郎
山本聡一郎税理士事務所 代表税理士。1982年7月生まれ。名古屋市中区錦(伏見駅から徒歩3分)にてMBA経営学修士の知識を活かして、創業支援に特化した税理士事務所を運営。クラウド会計 Freeeに特化し、税務以外にも資金調達、小規模事業化持続化補助金などの補助金支援に力を入れている。
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