決算書を正しく読むために押さえたいポイント・損益計算書の読み方(基礎編)

以前のコラムで、社長が決算書を読めることのメリットについてお伝えしました。

社長が決算書を読めるようになることで得られる3つのメリットとは

今回は、決算書(損益計算書)の読み方について、社長として「ここまで分かればOK」という部分だけをお伝えしていきます。細かいところを取り除いた基本中の基本です。決算書を読むだけであれば、それで十分です。

決算書は大きく分けて2つある

決算書というと複雑なイメージを持たれがちですが、この2点だけ理解しておけば充分です。

・どれだけ儲かったか

・財産はどのくらいあるのか

そして、この2点を表しているのが損益計算書と貸借対照表です。

「儲け」(1年でいくら儲かったか)を扱う損益計算書はP/L と呼ばれています。

「財産」(その結果、財産はいくらになったか)を扱う貸借対照表はB/S と呼ばれています。

この2点だけは覚えておいてください。この2点さえ分かれば大丈夫です。

他の書類やデータは分からなくても問題ありません!税理士という専門家がついていますから。もちろんそれ以上に理解を深めることも重要ですが、社長は事業を成長させるという重要な役割を担っています。それ以上は、税理士にお任せいただければと思います。

今回は損益計算書(P/L)について解説します。

貸借対照表(B/S)については次回解説しますので、ぜひ今回の記事と合わせてご確認いただければと思います。

(h2)損益計算書で会社の儲けが丸わかり

損益計算書では「1年でどのくらい儲けが出たか」ということが分かります。損益計算書では「儲け」の種類を明確に区別しています。「儲け」には種類があります。決算書を読み、事業を正しく評価するためには「儲け」の種類を理解することが必要です。

「儲け」と聞くと、多くの方が「売上」「利益」を思い浮かべるかと思います。

コーヒー店で例えると、コーヒーを販売していただいた代金が「売上」です。このようなサービス提供で作ったお金を会計用語では「収益」と呼びます。けれども、単純に「収益=儲け」にはなりません。コーヒー店でコーヒーを販売するには、コーヒー豆代や、ストローなどの消耗品代、店員の人件費など、さまざまな経費が必要です。これらの経費を会計用語では「費用」と呼びます。売上からこれらの費用を引くと「利益」が残ります。

計算式:収益(売上) - 費用(経費) = 利益(マイナスの場合は「損失」)

この計算式が全ての基本となりますので、しっかり押さえておきましょう。

※「収益」と「利益」は言葉が似ていますが意味が異なりますのでご注意ください。

「収入・収益」「費用・支出」の違いとは?

会計の世界では「収入・収益」「費用・支出」という「似ているけれど、それぞれ意味が異なる言葉」が存在します。これらの言葉を正しく理解しておくと、どの種類のキャッシュがどのような動きをしてるのかが分かるので、資金繰りで正しい状況判断ができるようになります。

「収入」と「収益」

「収入」と「収益」は、どちらも「お金が入る」ということを示していますが、意味は大きく異なります。

「収益」とは、サービス提供により入るお金、つまり「売上金」のことです。

けれども「収入」には、売上以外で入ってくるお金も含まれます。例えば、銀行からの融資や、役員個人から借りたお金です。これらは確かにお金は会社に入りますが「収益」ではありません。いずれは返さなくてはいけないものなので、これを「収益」と考えるのは違いますよね。そのため、「収入」と「収益」は明確に違うものだと理解しておく必要があります。

「収入」が多いからと、手放しで喜ぶのは「ちょっと待った!」という事です。

「支出」と「費用」

「支出」と「費用」は、どちらも「お金が出ていく」時に使う言葉ですが、こちらも意味が異なります。

収益を生み出すのにかかる経費(出ていくお金)を「費用」と呼びます。つまり「収益」と対比するのが「費用」です。

一方で、「収入」と対比するのが「支出」です。これは借入金の返済が該当します。お金は出ていきますが、元の持ち主に返すお金であり「費用」には該当しません。

このように「収入・収益」「費用・支出」これらの言葉には明確に違いがあります。 

図にするとこのような形です。

「収入」と「支出」は単に現金の出し入れを表しているに過ぎないということです。

損益計算書は「収益・費用・利益」の3つで構成されており、図にするとこのような形になります。左右で必ず数字が同じになるのが特徴です。

  

 

最初にお伝えした「収益(売上) - 費用(経費) = 利益(マイナスの場合は「損失」)

」の基本的な計算式を図にした形になります。

損益計算書に書かれている「5つの利益」で会社が分かる!

損益計算書には5種類の利益が出てきます。これらの情報で会社の実態がよく分かります。そのため、ここは絶対に押さえておきましょう。

儲けには様々な種類があります。ただこれらを全てひっくるめて数字が良かったとしても、それは果たして事業で得た利益なのか、その年に土地などの資産を手放したことによって得た利益なのか、調べてみないと分からないものです。

前者であれば事業は好調だと言えますが、後者の場合はどうでしょうか?たまたま事情があってその年に土地を売っただけかも知れませんし、資産を手放してでも現金を作らなくてはいけない事情があったかも知れません。

ここから先は、「もしも自分が取引先や投資家の立場だったらどう考えるか」という視点で読み進めてみてください。

5つの利益・その1「売上総利益」

売上総利益は、企業が商品・サービスを販売した際の総収益(総売上)から直接かかる費用を差し引いたものです。

計算式:売上総利益 = 総収益 – 直接的費用

費用には直接的にかかるものと、間接的にかかるものがあります。

その区別についてはコーヒー店の例で説明しましょう。

直接的にかかる費用とは、コーヒー販売で直接必要になる費用です。

・コーヒー豆代

・ストロー・紙カップなどの消耗品代

・店員の人件費

・店舗家賃など

これらが直接的費用です。

売上総利益は、「総収益(総売上)からこれらの直接的費用のみ」を差し引いたものだと覚えておいてください。「経営でかかった全ての費用」を差し引くということではありませんので、ご注意ください。

5つの利益・その2「営業利益」

営業利益とは通常の営業活動によって得た利益を示します。

計算式:営業利益 = 売上総利益 – 販売費及び一般管理費(間接的費用)

先ほど求めた売上総利益は、総収益(総売上)から直接かかった費用を差し引きました。

ここでは、さらに「販売費及び一般管理費」と呼ばれる、収益(売上)を上げるためにかかった間接的費用を差し引いて営業利益を計算します。

「販売費及び一般管理費」は、よく「販管費」と省略されます。

コーヒー店で再び例えてみましょう。

・コーヒー店運営本部の役員・管理部門の人件費

・サービスPRの広告宣伝費

・通信費

・法定福利費

・事務所ビルの家賃など

これらは、「販売費及び一般管理費」(販管費)と呼ばれ、コーヒーの販売に直接関わっていないため、間接的にかかった費用とされます。

5つの利益・その3「経常利益」

経常利益とは、読んでその字の如く、会社の平常時の利益を示したものです。会社の評価をするのに、この「経常利益」は必ず押さえていただきたい最重要事項です。

経常利益は、通常の営業で得た収益だけではなく、営業外の収益や費用も含め、会社の普段のお財布事情を教えてくれます。特別な事情(土地建物の売却による収益・災害による大きな損失など)を除いた「会社の普段の状態」を評価するのに必要なものです。

計算式:経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用

それでは営業外収益・営業外費用とは具体的にどのようなものなのでしょうか。再びコーヒー店で例えましょう。

【A社の場合】

コーヒー店を経営するA社は、中部地区に直営店が数店舗あり、営業利益は500万円です。さらにA社は株式投資を行なっており、配当により40万円利益(営業外収益)があるので、最終的にA社の経常利益は540万円となりました。

【B社の場合】

コーヒー店を経営するB社も、中部地区に直営店が数店舗あり、営業利益はA社より少し多めの520万円となりました。けれども借入金があり、銀行への支払い利息(営業外費用)が20万円あります。最終的にB社の経常利益は500万円となりました。

いかがでしょうか?

営業利益ではB社が少し上でしたが、このように営業外収益・営業外費用の要素が加わり数字は大きく変わってきました。営業利益だけで判断をすると、B社の方が好調に思えますが、経常利益を確認していないと実態を知ることができませんので注意が必要です。

「売上額や営業利益だけで会社の評価をしてはいけない」ということです。

・営業外収益とは

受取利息、受取配当金、有価証券利息、土地建物の家賃収入など

・営業外費用とは

支払利息、社債利息、創立費や開業費償却など

※銀行借入などを行なっていると、営業外費用が高くなる傾向にあります。

さぁ、残りあと2つ。ゴールはもうすぐです!

5つの利益・その4「税引前当期純利益」

税引前当期純利益とは、税金を差し引く前の利益額を指しており、「おおよその課税対象金額はこれくらい」という意味ではありますが、ただそれだけではありません。

ここには、経常利益には載っていない特別な事情によるお金の動きが入ってきます。通常では発生しないような損益で、「たまたま今期に発生した臨時的なもの」も含まれているのです。「特別損益の部」と呼ばれるものです。

・特別利益とは

土地建物などの固定資産の売却、長期保有していた株式や証券の売却

・特別損失とは

役員の退職金の支払い・地震や水害などによる損失・移転や撤退による原状回復工事・車両などの減価償却資産の処分費用

計算式:税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 – 特別損失

冒頭で紹介した「土地を手放して得た利益」はこちらに追加されるということです。

「税引前利益」には特別事情が含まれているため、ここの数字は「会社評価の参考」程度にしておきましょう。

5つの利益・その5「当期純利益」

いよいよ最後です。

「税引前当期純利益」から法人税などの税金を差し引いたものが「当期純利益」となります。

計算式:当期純利益 = 税引前当期純利益 – 法人税等の税金

これが会社に最終的に残る利益です。ここがプラスに終わることを目指していきたいものです。

知識をつけて自社の決算書を正しく評価してみよう

今回は決算書の読み方として、損益計算書の基本についてお伝えしてきました。

実際は、利益を計算する上で在庫の計算方法や、どのタイミングで売上計上するか(発生主義と現金主義の考え方)など、かなり細部までルールが決まっています。けれども、決算書を読むだけであれば、とりあえずその辺りの理解があまりなくても問題ありません。一度に理解しようとすると混乱しますので、まずは基本部分だけ知っておきましょう。それより難しいことは税理士など会計の専門家に頼るようにしてください。

今回の目的は「決算書を正しく読み、自身の会社を含め、事業について正しい評価ができるようになること」です。ただ評価するだけではなく、そこから経営の改善点を見つけることができればさらに良いですね。税理士と相談しながら、より良い経営を目指していきましょう。

長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございます。

次回は貸借対照表の読み方についてお伝えします。

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