「今時は賃貸が良い!」「持ち家がやっぱり一番!」このような住宅の賃貸・持ち家論争は昔からありました。「賃貸・持ち家、どちらがお得か」というのは、個人の価値観やライフスタイルによって変わるため、どこまでも決着がつかない永遠のテーマです。
そこで今回は、あえて法人経営者に限定して「お得なのはどちらなのか」を税理士目線でお伝えしていきます。
個人の価値観やライフスタイルは一旦置いておいて、経営者のキャッシュ面にだけ注目した「極めて限定的な視点」で結論を出していくので、ひとつの参考にしていただければ幸いです。
このページの目次
まだ家を買っていないなら、経営者は「賃貸」の一択です!
いきなり結論ですが、現在「まだ持ち家がない」「住宅の購入予定はない」ということであれば、賃貸住宅を強くお勧めします。
理由①賃貸住宅は節税効果が高い
賃貸住宅は、経営者にとって非常に節税効果が高くお勧めです。
節税効果が高い理由は、会社名義で契約して社宅として利用することで家賃を会社の経費にできるからです。これが経営者が賃貸住宅に住む一番大きなメリットです。
※社宅に関する過去の記事はこちら
「会社経営者必見!自宅を社宅に変えることで節税と家賃軽減を実現」
家を購入する場合、「住宅ローン減税」を受けられますが、経営者が賃貸住宅に住んで受けられる節税効果の方が大きいため、賃貸住宅は経営者にとって非常にお得であると言えます。
※住宅ローン減税の詳細はこちら
理由②賃貸は自由に住み替えができる
経営者はどうしても収入が不安定になりがちです。
会社が最初から順風満帆であれば問題ありませんが、今は大企業でも傾くような先の見えない時代です。収入に合わせて住まいを変えられることは賃貸住宅の大きなメリットです。
また、収入だけでなく「会社の場所が変わった」「働き方が変わった」という場合でも、その変化に合わせて利便性の高い住宅に住み替えることができますし、会社事情の引越しであれば、引越し費用を経費にできます。(引越し費用の負担についてはケースバイケースなので、顧問税理士に確認されることをお勧めします。)
収入や働き方が大きく変わる可能性が高い経営者こそ、賃貸の特性を上手に活用していきましょう。
理由③賃貸では、住居に関する費用を会社の経費にできる
賃貸住宅を会社名義で借り入れて「会社社宅」にすれば、敷金・礼金・共益費・保証料・火災保険などの住宅にかかる費用は全て会社の経費にすることができます。
ただし、入居者の過失によって生じた傷や汚れによる原状回復費用に関しては、一般的には入居者の負担になるため、会社負担にすることはできません。その点だけご注意ください。
※詳細は社宅に関する過去の記事をご覧ください。
「会社経営者必見!自宅を社宅に変えることで節税と家賃軽減を実現」
ここまでで、経営者に賃貸住宅を強くお勧めしましたが、この記事を読まれている方の中には既に住宅を購入された方もいらっしゃるかと思いますので、今度は持ち家の経営者の方が有利な点をいくつか紹介していきます。
持ち家の経営者、賃貸住宅にはない3つの強みをフル活用
①持ち家は信用につながる
銀行から借り入れをするという時に、やはり代表者個人に資産があることは大きな信用になります。代表者の持ち家を担保にすることで、事業融資のハードルは下がると言われています。
ただし、会社が何期も連続で赤字を出していると、そもそも会社に対する信用が大幅に下がっています。「持ち家さえあれば融資を無条件に認められる」ということにはなりませんので、ご注意ください。
また、持ち家が信用につながるかどうかは、その家が「担保」として機能するかによります。
持ち家が担保として評価される条件としては、主に以下のような場合です。
- 既にローンの支払いが終わっている(またはローン返済残高が少ない)
- ローンを滞りなく返済している
- 土地が付いている
- 築浅物件である
一方でこちらに該当する場合は、持ち家を担保にすることが難しく、融資を受けるのであれば、自己資金(現金)を少しでも増やすことが重要です。
- 頭金を入れずにフルローンを組んでいる
- 住宅ローンの返済が始まったばかりである(返済残高がたくさんある)
- ローンの返済が滞ったことがある
- 土地が付いていない(定期借地権など)
- 物件が古い
- 既に抵当権が設定されている
令和時代になり、数多くの経営者インフルエンサーが「家を持たない暮らし」について発信するようになりました。それにより「社長なのに賃貸?儲かってないの?」と思われる心配もなくなりました。
それでも、持ち家の経営者に対するプラスイメージは強いものです。経営者の住宅ローン審査は非常に厳しいため、それらの事情を知っている人からは「持ち家がある=審査に通った・経済力がある」と高く評価されます。
②持ち家は事務所利用も登記も自由自在
持ち家の場合、店舗兼住宅・事務所兼住宅など、自由にカスタマイズできます。注文住宅であれば、事前に希望を伝えることができますし、建売や中古でも、自由にリノベーション可能です。リノベーション費用は自宅も兼ねている場合は按分が必要ですが、事務所や店舗の施工費として部分的に経費にすることができます。
また、持ち家であれば、法人登記も自由です。
賃貸住宅の場合、管理会社や大家の許可を得る必要があります。そもそも「登記NG」の物件が大半を占めます。そのような意味では、持ち家は完全に持ち主の自由にできる「城」ということになります。
③長期的に考えると購入の方がお得な場合もある
トータルで支払う金額だけを考えると、持ち家の方が長い目で見ればお得な場合があります。
もちろんこれは「頭金をどのぐらい入れるか」「ローンを何年で組むか」「地価はどうなるか」などにもよります。けれども、賃貸住宅の家賃を払い続けたり、途中の引越し費用・契約時の初期費用などを考えると、持ち家に長く住み続ける方が全体的に出費が少なく済むケースも少なくありません。
「少しでも持ち家に関する費用を経費にしたい」という方は、自宅を事務所とすることで、固定資産税・住宅ローンの金利・火災保険や建物の減価償却費を経費にすることができます。
詳細は顧問税理士ご確認ください。
既に持ち家がある方は、持ち家のメリットを最大限活用していきましょう。
結論 まだ家を買っていないなら、経営者は「賃貸」一択です!
事業とはどうしても不安定なものです。収入が安定するかどうか分からない状態で、長期の住宅ローンを組むのはかなり危険な行為です。
「どうしても持ち家が欲しい」という経営者には、ある程度事業を軌道に乗せて、収入や自己資金を増やした上で、頭金を多めに用意した短期ローンを組まれることをおすすめします。
それまで、賃貸のメリットをしっかり活かして(節税して)キャッシュを手元に残していきましょう。
または、現在会社員でこれから起業をする予定であれば、会社員のうちに住宅ローン組むことも一つの方法です。
けれども、起業は何が起こるかわからない世界です。「会社員時代の収入と同額の収入が得られること」を前提としてローンを組むのは非常に危険です。
どちらにしても住宅購入は人生での大きな買い物になるので、できるだけお金の専門家からアドバイスをもらうようにしましょう。
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山本聡一郎税理士事務所では、主に創業支援を中心としたサポートを行なっています。
一人で、会社・個人両方の節税を行うのはなかなか難しいものです。そんな時はぜひ専門家に頼っていただければと思います。
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