夫婦で一緒に自営業は節税になる?個人事業主が妻や家族を専従者にするメリットと注意点

個人経営の店舗や事業者、小さな会社では、代表者の妻が事務作業を担当したり、家族で事業を支える「家族経営」がよく見られます。特に起業初期には、採用費や人件費など様々な面を考えて、他人を雇う前にまず家族の助けを借りて、事業を軌道に乗せようとすることが多いかと思います。

家族(妻や夫)を従業員として雇用することには、「節税」はもちろん、それ他にも多くのメリットがあります。今回は、家族を従業員として雇う際のメリットや注意点について解説します。

自営業で家族・妻や夫を専従者にする6つのメリット

①既に信頼関係がある相手と仕事ができるので安心

創業初期にはコストを抑えるため、他人の雇用を控えた家族経営の事業者が多く存在します。家族・妻や夫を従業員にすると、お互いに分かり合っている相手と仕事をすることができるため、安心して忙しい創業期を乗り切ることができます。

②人件費を下げることができる

家族の手を借りることは、他人を雇用して給与を支払ったり、業務委託を利用するよりも人件費を下げることができます。家族専従者は労働基準法の対象にはならないため、たとえば妻が自営業の夫の手伝いを無給ですることは法的には何も問題はありません。

片手間でも誰かに何かを手伝ってもらうと、本来であれば時間や仕事内容に合わせた報酬を支払わなくてはいけません。けれども家族関係だからこそ、その辺りの費用を抑えることが可能になります。

③採用のコストを抑えられる

もしも創業期から外部の人材を採用するための活動を行うと、書類選考や面接、応募者との連絡などの手間とコストがかかり、本業に集中できず売上の低下につながる恐れがあります。ここ最近は人手不足が深刻化しているため、より採用のコストは上がっていると言われています。

また、仮にうまく採用できたとしても、ミスマッチで早期退職する場合もあります。人手は必要でも、事業者自体が人材を受け入れる仕組みが整っていないことも多く、採用した人材が定着しないという問題も実際起こっています。

これらの理由から、家族の手を借りることは非常にメリットが大きいとされています。

④夫婦で所得を分散すると節税効果がある

・個人事業主本人の節税メリット

家族・妻や夫を従業員にすることで、所得を分散させることができ、節税効果が期待できます。

たとえば、同じ2,000万円の所得を考えた場合、世帯主が1人で2,000万円を稼ぐよりも、夫婦で1,000万円ずつ稼いだ方が、トータルの所得税や住民税が安くなります。所得税は累進課税制度を採用しているため、所得が高いほど高い税率が適用されます。1人で2,000万円を稼ぐ場合、高い税率が適用されますが、夫婦でそれぞれ1,000万円ずつ稼ぐ場合は、低い税率が適用される部分が多くなるため、結果的に税負担が軽減されます。

また、住民税も同様に、所得に応じた課税が行われるため、所得を分散することで節税効果が期待できます。

・専従者にとっての節税メリット

従業員となる家族・妻・夫側も「給与所得控除」を受けられるため、こちらも節税につながります。

個人事業主自身には給与がないため、給与所得控除は適用されませんが、家族従業員が給料を受け取る場合、家族それぞれに給与所得控除が適用されます。例えば、家族が3人従業員として給料を受け取る場合、それぞれに給与所得控除が適用されるため、合計で大きな節税効果が期待できます。

ただし、事業専従者として届出を行った場合は、配偶者控除と扶養控除が受けられない点に注意が必要です。これらの控除が適用されないことで、場合によっては節税効果が減少することもあるため、事前に計算し、慎重に判断することが重要です。

国税庁 青色事業専従者である妻

このように、家族を従業員として雇用することで、家族内で所得を分散させ、節税効果得ることができるのです。

⑤報酬額を調整して扶養内に抑えることが可能

家族専従者は、労働基準法の対象にはなりませんので、最低賃金や労働時間に関する決まりはありません。そのため、長時間労働をしていたとしても、報酬額を抑えることで扶養扱いにすることが可能です。そうすることで、世帯全体の節税に繋げることができます。

⑥家族専従者の場合、労働保険の手続きが不要

通常、従業員を雇用する場合は労働保険(雇用保険・労災保険)に入れなくてはいけません。

この手続きは手間がかかる上に、事業者の費用負担が発生します。

けれども、家族専従者の場合、下記の条件を満たさない働き方をしていれば、労働保険の加入は不要です。

※以下の条件を満たす場合は労働保険に加入しなくてはいけないということです。

  1. 個人事業主の指揮下で働いていること
  2. 他の従業員と同じ条件で勤務すること
  3. 賃金の条件や計算方法が他の従業員と同じであること
  4. 役員でないこと

厚生労働省 雇用保険制度Q&A

家族(妻・夫)を専従者にする際の4つの注意点

①実際の労働に見合った報酬額を設定すること

家族という理由だけで過度に高い報酬を出すと、税務調査において給与が損金として認められない場合があります。他の従業員がいてもいなくても、従業員の間で公平性を保つことが重要です。

個人事業主の税務調査についてまとめた記事はこちらとなります。

税務調査が入りやすい個人事業主の具体的な特徴と改善策

税務調査が入りやすい個人事業主の具体的な特徴と改善策

家族の給与を損金として認めてもらうには、実際どのような業務を担当しているのか、勤務時間などを証明する書類が必要になります。タイムカードなどの勤務の記録をしっかり残しておくようにしましょう。

②各種保険について専門家に確認すること

人を雇用することで、条件によっては各種保険の加入が必要になります。

労働保険の加入要件は先ほど紹介しましたが、家族でも他人でも人を雇用する場合は、自己判断をせずに必ず専門家に相談するようにしましょう。

③家族を専従者にする際は、まず税理士に確認すること

法人と個人事業主では、専従者の給与に関する手続きが異なります。

通常、個人事業主が家族に支払う給与は経費として認められておらず、所定の手続きを行う必要があります。また、青色申告・白色申告でそれぞれ必要な手続きや条件が異なります。

さらに法人の場合は、従業員とするのか、役員とするのかでも手続きは大きく変わります。

現状どのような方法がベストなのか、判断をするためには専門家の知識が必要です。家族・家族以外の雇用を考えている場合は、事前に税理士に相談するようにしましょう。

国税庁 No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除

A1-11 青色事業専従者給与に関する届出手続

④専従者の意向を必ず確認し、尊重すること

これまでに専従者になることで、節税や人件費・採用費コストの削減に繋がるというメリットをお伝えしましたが、この方法を取り入れる際には、専従者になる家族に対して正式に了承を得ることが大切です。

相手が家族・配偶者でも、しっかり仕事に見合った報酬を求めることもあります。

家族を「タダで使える労働力」と捉えて、家族関係に甘えて無茶な働き方をさせた結果、離婚などの家庭崩壊に繋がることも少なくありません。無給で働かされていた妻が離婚の際に、慰謝料としてこれまでの働きに相当する報酬を支払うように求めるケースもあります。

元々は節税や、家族で事業を大きくしていくことを目指していたのが、家族関係が壊れてしまっては意味がありません。

家族とは言っても「一人の人間」であることは変わりありません。「タダで使える」「都合よく使える」と考えるのではなく、事業に関わる家族全員が納得できる形で進めていきましょう。

家族を専従者にすることを検討中の方は、ご相談ください

個人事業主や一人社長は、一人で何役も掛け持ちしなくてはいけないため、とにかく忙しいものです。「事業規模が小さければ、事業者の負担も少なく済む」ということはありません。事業が軌道に乗る前であっても、どうしても誰かの助けが必要な場面は数多くあるものです。

家族の助けを借りて事業を大きくすることは、人手不足の解消にも節税にも繋がり非常に多くのメリットがあります。

「家族の力を借りたい」

もしも、少しでもそのようにお考えの方は、ぜひ一度山本聡一郎税理士事務所までご相談ください。

個人事業主としてさらに節税対策を知りたい方はこちらの記事がおすすめです。

個人事業主のための税金対策〜節税のポイントを解説〜

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税理士 山本聡一郎
山本聡一郎税理士事務所 代表税理士。1982年7月生まれ。名古屋市中区錦(伏見駅から徒歩3分)にてMBA経営学修士の知識を活かして、創業支援に特化した税理士事務所を運営。クラウド会計 Freeeに特化し、税務以外にも資金調達、小規模事業化持続化補助金などの補助金支援に力を入れている。
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