投資信託(ファンド)は、資産運用の方法の一つとして利用されている金融商品です。株式の運用と異なり、ファンドマネージャーと呼ばれる資産運用の専門家が投資先を選定します。投資家から集められた資金をまとめて、国内外の投資対象(株や債券など)に向けて専門家が分散投資をして運用を進めていきます。
今回は、投資信託を行う場合の法人と個人との違い、法人が投資信託を行うメリットとデメリット、投資信託によってどのように法人の節税対策ができるかについて詳しく解説します。
このページの目次
法人の投資信託と個人の投資信託との違い
投資信託について、法人と個人の場合でどのような違いがあるかご紹介します。
|
法人 |
個人 |
口座の種類 |
一般口座のみ |
一般口座&特定口座 |
税率 |
実効税率 約23-35% |
20.315% |
借入金適用の可否 |
OK |
NG |
損失繰越 |
10年間 |
3年間 |
優遇措置 |
NISA/つみたてNISA利用不可 |
NISA/つみたてNISA利用可 |
個人と比較して、法人は損失繰越年数が長期にわたり税率が高いことがわかります。経営が好調な期間や繰越損失が続く場合に投資信託が向いています。
法人が投資信託をする場合のメリットとデメリット
法人が投資信託を行う場合のメリットとデメリットについて、それぞれの主なポイントをわかりやすく解説します。
【法人が投資信託を行うメリット】
税金対策ができる |
後述の「投資信託による法人の税金対策」を参照 |
⒈ 損失を翌年以降最大10年間繰り越しできる
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・青色申告を実施している法人が対象(法人税法) ・投資信託の運用により損失が発生したら、会社の損金として計上できる ・将来的に利益が出れば損失を相殺できる ・10年間の税負担を減らせる |
⒉ 低リスクで運用利益が実現可能 |
・資産を分散投資するので、市場変動によるリスクが少なくて済む ・種々の株や債券などに投資でき、1銘柄のリスクが少ない ・いつでも売買できる投資信託は、売却すれば急場の資金調達ができ資金繰りがしやすい |
⒊ 借入金で投資運用できる |
・金融機関からの借入金を投資信託へ利用できる ・経営好調なら、投資信託の運用利益が増大 ・自己資金を上回る資金の運用も可能で、利益率が見込める |
【法人が投資信託を行うデメリット】
⒈ 税制上の優遇措置がない |
・個人に適用される優遇措置が受けられない (例: NISA、つみたてNISA、特定口座など) ・法人税法により、投資で利益があっても非課税枠は適用されない |
⒉ 一般口座のみ利用可 |
・個人と違い、特定口座は選べない ・年間取引報告書(投資信託による損益集計)を作成する必要がある |
⒊ 保有するだけで課税される場合がある |
・取得時の単価より高騰して含み益が生じると、保有期間の利益分が課税対象になる ・売買目的で購入した場合、毎年決算期末に評価額の再計上が必要 |
投資信託による法人の税金対策
投資信託の場合、売却時の利益や分配金を受け取った分に対して税金を納付する必要があります。投資信託による法人の税金対策について、下記の3つにまとめました。
投資信託の運用損失を法人の黒字で補填する
法人事業がいくら黒字であっても、投資信託の運用や売却で損失が出た場合は損失を黒字分で補填して計上できます。
節税効果の例①:
- 年間の事業利益 400万円
- 投資信託の売却損失 200万円
- 課税対象額 (400万円-200万円)=200万円
→課税対象額200万円減の節税効果
法人の赤字を投資信託の運用利益で補填する
法人事業が赤字でも、投資信託の売却利益や分配金で補填して計上できます。
節税効果の例②:
- 年間の赤字額 200万円
- 投資信託の売却益 300万円
- 課税対象額 (-200万円+300万円)=100万円
→課税対象額を100万円に減らす節税効果あり
なお、上述の1と2の対策は、法人事業もしくは投資信託運用のいずれかで損失が発生した場合のみに当てはまります。もし両方とも黒字の場合は、その総計に課税されますので要注意です。
益金不算入の制度を受取配当(分配金)に適用する
定期的に分配金を受け取れる投資信託がありますが、分配金は利益計上するのが普通です。
ただし、二重課税を防止する目的で受取配当(分配金)の益金不算入という制度が適用されることがあります。外国株価指数連動型特定株式投資信託以外の株式投資信託の場合、受取配当(分配金)の20%が益金不算入となり、課税所得から差し引かれます。
▶︎国税庁 「法令解釈通達 第1節 受取配当等の益金不算入」
法人の投資信託や節税は、山本聡一郎税理士事務所にご相談ください!
資産運用の手段として注目を集めている投資信託ですが、法人で運用する場合は税率が高いだけでなく、個人運用と比べて違いが多くあります。
運用のメリットとしては税金対策になる、損失を翌年以降最大10年間繰り越しできる、低リスクで運用しやすい、借入金を投資信託へ利用できる点が挙げられます。
ただし、NISAのような税制上の優遇措置がない、特定口座がなく損益計算が必要となる、保有時の含み益は課税されるといったデメリットも覚えておきましょう。
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