個人事業主の決算と確定申告の違いとは

個人事業主として事業を営む中で、毎年欠かせない重要な手続きが「決算」と「確定申告」です。しかし、これらの用語が似ていることから、混同されがちですが、全く別のものです。

けれども多くの方が「決算って何?」「確定申告とはどう違うの?」と疑問を持たれるのも事実です。

そこでこのコラムでは、個人事業主が理解しておくべき「決算」と「確定申告」の違いについて、詳しく解説していきます。

決算とは?

決算とは、事業年度の終了時に1年間の事業活動を総括し、収支の結果をまとめることです。

これにより、その年度の利益や損失が明らかになります。

個人事業主の場合、決算月は12月と税法で決まっています。

ちなみに、法人の場合は決算月は自由に設定可能です。

決算の目的は、主に次の3つです。

1. 事業の成果を把握する

決算を行うことで、1年間の事業活動がどの程度の利益を生み出したのか、またはどれほどの損失が発生したのかを把握することができます。

これは、事業の健全性を確認し、将来の経営戦略を立てるための重要な情報となります。

2. 税務申告の準備

決算は、税務申告(確定申告)の基礎資料となります。

決算で集計したデータをもとに、最終的な所得税額を計算し、税務署に報告します。

正確な決算を行うことが、正確な確定申告につながるのです。

時々、「税務調査は法人だけで、個人事業主には来ない」と思われている方がいらっしゃいますが、個人事業主にも税務調査が入る可能性は十分にあります。

そのため、毎年確実に決算を行うことが重要です。

3. 資金調達や対外的な信用のための資料作成

決算書は、金融機関からの融資を受ける際や、取引先との信用を得るための資料としても利用されます。

正確な決算書は、個人事業主としての信頼性を高め、事業拡大のための重要なツールとなります。

決算の主な作業内容

決算の具体的な作業内容は次のとおりです。

1・売上の集計

1年間に得た売上をすべて計上します。

未収入金も含めて、正確に集計することが重要です。

2・経費の集計

事業に関連するすべての経費を集計します。

仕入れ、人件費、家賃、通信費などが含まれます。

3・減価償却費の計上

事業用の資産(例えば、パソコンや車両など)について、減価償却費を計上します。

これは、資産を購入した際の支出を複数年にわたって費用として計上する手続きです。

4・損益計算書の作成

売上と経費を集計し、その結果としての利益または損失を示す損益計算書を作成します。

これらの作業を通じて、決算はその年の事業の結果を集約し、可視化させます。

確定申告とは?

確定申告とは、決算で集計した事業の利益や所得に基づいて、税務署に対して税金を申告し、納付する手続きです。
確定申告は毎年1月1日から12月31日までの所得について、翌年の2月16日から3月15日までの間に行います。

●過去コラム

国税庁 所得税の確定申告

確定申告の目的

確定申告の主な目的は次のとおりです。

1・所得税の納付
確定申告により、その年の所得に基づいて所得税額を計算し、納税します。

税務署に対して正確な所得額を報告し、正しく税金を納めなくてはいけません。

2・保険料や住民税の計算基礎となる
確定申告で申告した所得額は、保険料(国民健康保険)や住民税の計算の基礎になります。

これにより、翌年度の保険料や住民税額が決定されます。

3・税務リスクの軽減
正確な確定申告を行うことで、税務署からの調査や追徴課税のリスクを軽減することができます。

不正確な申告は、ペナルティの対象となる可能性があるため、注意が必要です。

各年分の無申告分に関しては、原則として、納付すべき税額に対して下記の加算税がかかります。

・50万円までは15%

・50万円を超える部分には20%

金額が大きければ大きいほどにペナルティも大きくなります。
確定申告は確実に行うようにしましょう。

●国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき

確定申告の主な作業内容

確定申告の具体的な作業内容は次のとおりです。

1・所得の計算

決算で集計した売上や経費をもとに、課税対象となる所得を計算します。

2・各種控除の適用

青色申告控除や扶養控除、保険料や年金控除など、各種控除を適用して最終的な課税所得を計算します。

3・申告書の作成

国税庁の確定申告書作成コーナーや会計ソフトを利用して、申告書を作成します。

必要事項を正確に入力し、申告書を作成します。

4・税金の納付

申告書を提出した後、計算された税額を納付します。納付方法には、振替納税、クレジットカード納付、コンビニ納付などがあります。

確定申告は、事業の結果を税務署に報告し、税金を納めるための手続きです。

これを怠ると、後でペナルティが発生する可能性があるため、期限内に正確に行うことが求められます。

●確定申告に関する過去のコラム
今年こそオンライン化!e-Taxで確定申告をするメリット

決算と確定申告の違いとは?

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ここまでの説明でお分かりのように、決算と確定申告は密接に関連していますが、別物なのです。

個人事業主の決算とは

事業の1年間の収益状況を把握するために行う内部的な作業です。

売上や経費を集計し、その年の利益や損失を算出します。

個人事業主の確定申告とは

決算で得た結果をもとに、税務署に対して所得を申告し、税金を納付するための外部手続きです。

決算は確定申告のための準備作業であり、確定申告は決算結果を税務署に報告し、適切な税金を支払うための手続きです。

つまり、決算で集計したデータを使って、確定申告を行うという流れになります。

決算と確定申告を確実に行うために大切なこと

個人事業主にとって、決算と確定申告のどちらも重要な作業です。

この2つを効果的に行うためには、次のポイントを参考にして、バランスよく進めることが大切です。

1. 日々の帳簿管理を徹底する

決算や確定申告がスムーズに進むためには、日々の帳簿管理が重要です。

毎日の取引を正確に記録し、定期的に帳簿を整理することで、決算時に慌てることなく作業を進めることができます。

また、定期的に帳簿をチェックすることで、誤った記帳や経費の漏れを防ぐことができます。

2. 適切な会計ソフトを利用する

個人事業主にとって、適切な会計ソフトを利用することで、決算や確定申告の負担を大幅に軽減できます。

多くの会計ソフトは、自動で帳簿を整理し、必要な帳票を作成してくれるため、経理業務が効率化されます。

また、青色申告を行う場合でも、会計ソフトを利用すれば、正確な申告書を簡単に作成できます。

3. 専門家のサポートを受ける

決算や確定申告に不安がある場合は、税理士などの専門家に相談することも一つの手です。
税務や会計のプロからアドバイスを受けることで、より正確かつ効果的な経理処理が可能になります。
特に、事業規模が大きくなってきた場合や、複雑な経理処理が必要な場合は、専門家のサポートを受けることを検討しましょう。

4. 税務リスクを軽減するための対策を講じる

確定申告において、適正な申告を行うことで税務リスクを軽減できます。

不正確な申告や申告漏れがあると、後で税務署からの指摘を受けるリスクが高まります。

そのため、決算時にしっかりと売上や経費を集計し、正確な確定申告を行うことが大切です。

また、過去の申告内容を確認し、必要に応じて修正申告を行うことも重要です。

最後に 複雑な決算・確定申告は山本聡一郎税理士事務所へ

決算と確定申告は、個人事業主にとって避けては通れない重要な手続きです。

それぞれの役割や違いを理解し、適切に対応することで、事業の健全な運営と税務リスクの軽減を図ることができます。

特に、日々の帳簿管理を徹底し、必要に応じて専門家の助言を受けながら進めることで、スムーズに決算と確定申告を行うことが可能です。

しっかりと準備を行い、正確な決算と確定申告を行うことで、事業の安定と成長につなげていきましょう。

個人事業主としての経営を成功させるためには、これらの手続きを正しく理解し、適切に対応することが不可欠です。

今後も事業を継続し、発展させるために、決算と確定申告の重要性をしっかりと認識し、計画的に対応していくことが求められます。

・日々の業務に忙しく、そこまで手が回っていない…。

・正しく決算と確定申告ができているか不安になってきた。

そのような事業主様は、ぜひ山本聡一郎税理士事務所までご相談ください。

当事務所では、決算・確定申告の対応だけでなく、日々の経理業務を効率化させるためのアドバイスやサポートも行っております。

現状のお悩みをぜひお聞かせください。

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税理士 山本聡一郎
山本聡一郎税理士事務所 代表税理士。1982年7月生まれ。名古屋市中区錦(伏見駅から徒歩3分)にてMBA経営学修士の知識を活かして、創業支援に特化した税理士事務所を運営。クラウド会計 Freeeに特化し、税務以外にも資金調達、小規模事業化持続化補助金などの補助金支援に力を入れている。
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