ビジネスを円滑にする鍵?手土産代の勘定科目と経費の境界線

手土産は、ビジネスシーンで関係を円滑にし、信頼関係を深めるための有効な手段です。

けれども、手土産はプライベートとの境界線も曖昧な特性があるため、その経費を計上する際には十分注意する必要があります。

具体的には、「誰に、どのような状況で渡すのか」により、処理する勘定科目が変わってきます。
経費として認められるかどうかは、ビジネスに関係しているかどうかで判断されるのです。

ここでは、手土産代の経費処理について詳しく説明し、具体的な仕訳例と実例を交えながら解説します。

取引先や顧客への手土産

取引先や顧客への手土産は、ビジネス関係を円滑にし、信頼を築くための手段であるため「接待交際費」として経費に計上されることが一般的です。

なお、交際費の定義や法人における交際費の取り扱いについては国税庁のHPにて公表されています。

No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算

取引の促進や関係構築が目的であるため、業務に直接関連していると判断されます。

仕訳例

勘定科目:接待交際費

借方:接待交際費 5,000円 / 貸方:現金 5,000円

摘要:(取引先名:必須)取引先訪問時の手土産

実例

①取引先への年末年始の挨拶用手土産
毎年末、取引先に対して「今年もお世話になりました」と感謝を込めて手土産を贈るケースです。年末年始のご挨拶としては広く行われており、殆どの場合が経費として認められます。

※挨拶まわりに持参するタオル代の場合、取引先相手であれば「交際費」・不特定多数に配布する場合は「広告宣伝費」として処理されます。

②新製品リリース時の感謝の品
新製品のリリース時、初期段階で協力してくれた顧客に対して、感謝の気持ちを込めた手土産を贈る場合。
感謝を伝え、今後の協力をお願いする意図があるため、「接待交際費」に該当します。

③訪問時の挨拶としてのお菓子や地元の特産品
初訪問や定期的な商談の際に、ビジネスを円滑に進めるための手土産を持参することもあります。
たとえば地元特産品やお菓子などが一般的で、こちらも「接待交際費」として経費計上可能です。

2・従業員や社内メンバーへの手土産

社内の従業員や役員に対して、感謝や慰労の意味を込めた手土産は、「福利厚生費」として計上できます。

社内の士気を高めるためのもので、業務環境を改善する目的があると判断されるためです。

仕訳例

勘定科目:福利厚生費
借方:福利厚生費 3,000円 / 貸方:現金 3,000円

摘要:社内イベント時の手土産

実例

①社内イベント(忘年会や歓送迎会)での手土産
忘年会や歓送迎会など、社内イベントの際に持参するお菓子や記念品。
全従業員に対して平等に提供されるものとして「福利厚生費」で経費計上が認められやすいです。

②社員旅行の際の差し入れ
社員旅行時に、移動中のバスや宿泊先で楽しめるお菓子や飲み物を提供するケースです。
全員に配られるため、「福利厚生費」として認められます。

③毎月の業務成績達成への小さな感謝品
月末に成績を達成したチームやメンバーに、ちょっとしたお菓子を差し入れることもあります。

業務へのモチベーションを高める目的として、「福利厚生費」で計上可能です。

●福利厚生費に関する過去のコラムはこちら

3・クレーム対応時のお詫びの菓子折り

クレーム対応時の謝罪としてお詫びの菓子折りを渡す場合も、業務上の対応として経費に計上できます。

主に「接待交際費」や「営業外費用」として処理されます。

仕訳例

勘定科目:接待交際費 または 営業外費用
借方:営業外費用 4,000円 / 貸方:現金 4,000円

摘要:(取引先名:必須)クレーム対応のお詫び品

お詫びの品に関する注意

お詫びに菓子折りを持参する場合は経費計上が可能ですが、現金での対応は経費処理が異なるため、注意が必要です。

謝罪で現金を渡す場合は、領収書を受け取ることができないと想定されるため、謝罪の現金を渡した事実を別の方法で証明する必要があります。
詳しくは専門家に確認するようにしてください。

実例

①商品不良のお詫びとしての菓子折り
商品に不具合があった際、謝罪の一環として菓子折りを持参する場合。

修繕や返品とともにお詫びとして贈るもので、「営業外費用」として処理されるケースが一般的です。

②納期遅れのお詫びとしての手土産
納期が遅れた場合、ビジネス継続のための誠意として手土産を持参することがあります。

今後の取引を円滑にする目的での謝罪対応として、「接待交際費」に計上されることが多いです。

③スタッフの対応ミスのお詫び品
担当者のミスによりトラブルが発生した際に、顧客の信頼回復を図るための謝罪品です。

このようなケースでも、ビジネス継続のための支出として認められます。
こちらも「接待交際費」または「営業外費用」として処理するのが一般的です。

4・まだ取引が発生していない関係への手土産

新規取引を見込んでいる関係への手土産は、将来的なビジネスのための「投資」として捉えられ、「接待交際費」として認められる場合があります。
ただし、ビジネス関係が進展する可能性が高い場合に限定され、実際に効果を発揮する可能性が見込まれるケースに限ります。

仕訳例

勘定科目:接待交際費
借方:接待交際費 6,000円 / 貸方:現金 6,000円

摘要:(相手の名前:必須)新規取引先への挨拶品

実例

①新規顧客との初回商談での手土産
初回の商談時に、取引開始を見据えた挨拶としてお菓子や特産品を贈るケースです。
今後の関係を築くための手段として、経費として認められやすいでしょう。

②業界の展示会で接点を持った企業へのフォローアップ
展示会や業界イベントで名刺交換した企業に、後日関係構築を目的とした手土産を送る場合です。
新しい商機を見込んだものであるため、接待交際費で経費とすることが可能です。

③将来的に業務提携を考える企業への訪問時の手土産
取引開始前の業務提携の可能性を探るための訪問時に持参する手土産も、関係性を築くための接待交際費として認められる可能性があります。
こちらもビジネスとして進展が見込める場合に限り、経費計上が適用されます。

まだ取引が発生していない関係の相手に関しては、取引の可能性があることを客観的に証明できるようにしておきましょう。

過去のメールやチャットの履歴、作成した見積書などがあれば、よりスムーズに経費として認められるでしょう。

5. 領収書の但し書きに注意

手土産代を経費にする際には、領収書の但し書きに業務用であることを示す内容を明記するようにしましょう。
以下のような但し書きを活用し、経費としての正当性を明確にすることで、税務調査時にもスムーズに説明できます。

取引先・顧客向け:「取引先訪問用手土産」「ご挨拶用」

社内用:「社内イベント用手土産」「福利厚生用」

謝罪対応:「クレーム対応用菓子折り」

※それぞれ相手方の名前も記録しておくようにしましょう。

但し書きが曖昧だと、プライベートの支出とみなされる可能性もあるため、ビジネス用途がわかる表現が望ましいです。

フリーランスも手土産代は経費計上可能

フリーランスの方も、取引先への手土産を経費として計上することが可能です。

ただし、フリーランスの場合、事業とプライベートの区別が曖昧になりやすいため、経費として認められるためには、仕事に関連していることを明確に説明できる必要があります。

たとえば、クライアントとの会議時や、新規提携先への訪問時に渡す手土産であれば、「接待交際費」として認められますが、一方で、個人的な付き合いとして贈る手土産は経費にならないため注意が必要です。

まとめ:手土産代の経費計上は、相手・目的に合わせて適切な処理を

手土産代を経費に計上する際は、相手や目的に応じた適切な処理が大切です。
取引先へのご挨拶、社内メンバーへの福利厚生、クレーム対応でのお詫び、新規取引を見込んだ挨拶など、それぞれに合った勘定科目や仕訳方法を選びましょう。
経費処理をしっかりと行うことで、手土産がビジネスを円滑に進める「鍵」として有効活用できます。
また、税務調査でも安心でき、ビジネスの信頼性も向上します。
ご不安な場合は、ぜひ山本聡一郎税理士事務所にご相談ください

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税理士 山本聡一郎
山本聡一郎税理士事務所 代表税理士。1982年7月生まれ。名古屋市中区錦(伏見駅から徒歩3分)にてMBA経営学修士の知識を活かして、創業支援に特化した税理士事務所を運営。クラウド会計 Freeeに特化し、税務以外にも資金調達、小規模事業化持続化補助金などの補助金支援に力を入れている。
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