うっかり、会社名義のクレジットカードでプライベートな買い物を決済してしまった…。
クラウド会計が普及した今、レシートを登録する際に自動で同期されてしまい、慌てた経験がある経営者や経理担当者は少なくありません。
プライベートな買い物は、会社の経費にはなりません。
誤った処理は税務調査で指摘され、会社の信用問題にもつながりかねませんので、気付いたらすぐに対処する必要があります。
この記事では、プライベートな支出を会社カードで決済してしまった場合の正しい経理処理と、放置してしまった場合に発生するリスクについて、税理士が解説します。
1. プライベートな支出は「経費にならない」が鉄則
会社の経費として認められるのは、事業を遂行するために必要な支出のみです。
プライベートな支出は、たとえ会社のクレジットカードで決済しても、事業活動とは関係がないため、経費として計上することはできません。
誤って経費として処理してしまうと、「仮装経理」と見なされ、税務調査で指摘を受ける原因となります。
その場合、本来支払うべき税金に加えて、追徴課税や延滞税が課されることになります。
会社の信用を失うことにもつながりかねないため、気づいた時点で正しく処理することが重要です。
2. 正しい経理処理の方法:「役員貸付金」で処理する
プライベートな支出を会社カードで決済してしまった場合、その支払いを会社が一時的に立て替えたとみなし、「役員貸付金」として処理するのが正しい方法です。
これは、会社が社長や役員にお金を貸し付けたという形になり、会社の資産として計上されます。
役員貸付金で処理する際の具体的な仕訳例
例えば、社長が会社のクレジットカードでプライベートな飲食費1万円を決済してしまったとします。
(1)カード決済時(費用として処理しない)
借方 / 貸方
役員貸付金 10,000円 / 未払金(クレジットカード)10,000円
プライベートな支出は経費ではないため、「飲食費」などの費用勘定は使いません。
(2)社長が会社に1万円を返済した場合
借方 / 貸方
普通預金 10,000円 / 役員貸付金 10,000円
この処理により、会社の帳簿上は費用が発生せず、最終的に社長からの返済で相殺されるため、税務上の問題は生じません。
役員借入金や未払い給与との相殺も可能?
もし、社長が会社に対して「役員借入金」がある場合や、「未払い給与」がある場合は、役員貸付金と相殺して清算することも可能です。
この場合は、帳簿上での処理のみ行われ、実際の金銭のやり取りは発生しません。
借方 / 貸方
役員借入金 10,000円 / 役員貸付金 10,000円
または
未払金 10,000円 / 役員貸付金 10,000円
3. 「役員貸付金」を放置すると発生するリスク
役員貸付金は、その名の通り「会社が役員にお金を貸している状態」です。
この貸付金が高額・長期化すると、以下のようなリスクが発生します。
① みなし利息の課税
税務署は、会社が役員に無利子でお金を貸していると、「会社が役員に利益を供与している」と見なすことがあります。
これを「みなし利息」と呼び、本来受け取るべき利息分を会社が収益として計上し、税金を支払うよう求められる可能性があります。
② 金融機関からの印象悪化
役員貸付金は、貸借対照表上は「資産」に分類されますが、金融機関はこれを実質的な貸倒れリスクのある債権とみなします。
そのため、役員貸付金が高額だと、「社長が会社を私物化している」「社長個人の資金繰りが厳しいのではないか」というマイナスイメージを与え、融資の審査に不利になることがあります。
役員貸付金は貸借対照表には極力載らないようにさせることが重要です。
※逆に役員借入金については会社の負債扱いにはなりますが、これは載っていても金融機関からの印象は悪化しません。
役員が会社の運転資金のために個人資産を入れているということであり、役員が会社を私物化しているとはみなされないためです。
まとめ
プライベートな買い物を会社カードで決済してしまった場合は、放置せず、気づいた時点で「役員貸付金」として処理し、速やかに精算することが最も重要です。
日々の経理処理の積み重ねが、会社の健全性を保つ上で不可欠です。
「経理処理の仕方が分からない」「貸付金が高額になってしまった」など、経理や税務に関してお困りのことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。
山本 聡一郎(やまもと そういちろう)
山本聡一郎税理士事務所 代表税理士/MBA(経営学修士)
税理士登録番号:第141212号
所属:名古屋税理士会 名古屋中支部
学位:MBA(名古屋商科大学大学院)
認定経営革新等支援機関
1982年生まれ。名古屋市中区錦(地下鉄伏見駅徒歩3分)にて、創業支援・融資支援・経営相談に強い税理士事務所を運営。
名古屋商科大学大学院でMBA(経営学修士)を取得。税務・会計の専門知識に加え、経営戦略や財務分析の視点から、中小企業の経営をサポートしている。
特に、会社設立や創業融資、資金繰り改善、節税対策を得意とし、創業予定者から事業拡大を目指す経営者まで幅広く支援。近年は、事業承継や非上場株式の評価にも力を入れている。
また、クラウド会計ソフト「freee」の導入・活用支援にも注力し、ITや生成AIを活用した経理業務の効率化を推進している。
自身も事務所を経営する立場として、税金の相談だけでなく、経営者が抱える資金繰りや将来の事業展開についても一緒に考えることを大切にしている。
「税務のことはもちろん、経営のことも気軽に相談できる税理士」を目指し、日々、中小企業経営者に寄り添った支援を行っている。
