融資の返済が苦しい場合はリスケ・減額できる?決断のタイミングとデメリットとは

売上が落ち込み、銀行への返済がキャッシュフローを圧迫している――。
そんな時、検討すべきなのが返済の減額、つまり融資のリスケです。

しかし、リスケはあくまで最終手段です。

まずは今の状況がどれほど危険なのかを知り、自力でできることがないかを確認しましょう。

1. あなたの会社は大丈夫?理想の「借入返済比率」とは

銀行がチェックし、経営者が目安にすべき指標の一つが「債務償還年数(さいむしょうかんねんすう)」です。

理想的な目安:(借入金残高 ÷ キャッシュフロー※1) ≦ 10年以内 

※1 キャッシュフロー ≒ 当期純利益 + 減価償却費※2
※2 減価償却費は、帳簿上の費用であって、実際には手元に残っている現金のため、キャッシュフローに含まれます。

銀行が正常な会社と見なす絶対的なボーダーライン、それが債務償還年数10年以内です。

これが15年、20年を超えてくると、自力での返済は困難とみなされます。

また、売上に対する年間返済額の割合は、一般的に売上の5%~10%以内に収まっているのが理想的です。

これを超えると、資金繰りが一気に苦しくなります。

シミュレーション:もしA社長(飲食店経営)が相談に来たら

売上がコロナ前の8割までしか戻らず、毎月の返済が苦しくなったA社長を想定してみます。

状況(仮定)
 ・借入残高:4,000万円

 ・年間利益:100万円 + 減価償却費:100万円 = 年間キャッシュフロー:200万円
 ・年間返済額:600万円
 ・すでに税金や社会保険料に滞納がある状態

【放置した場合のリスク】 

「あと1,000万円追加で借りて一発逆転!」と考え、銀行へ追加融資を申し込んでも、債務償還年数が20年(デッドラインの2倍)を超えている状態では、審査に通る可能性は極めて低いです。

焦ってビジネスローン等に手を出すと、さらに資金繰りが悪化し、最終的には役所からの差し押さえで事業停止に追い込まれる「最悪のシナリオ」が現実味を帯びてきます。

【専門家が提案する解決のステップ(一例)】 

このような切迫した状況では、追加融資(借金を増やすこと)ではなく、「リスケと分納による止血」を優先的に検討します。

  1. 役所への相談(差し押さえの回避)
    滞納がある場合は、まず税務署や年金事務所へ。
    誠実に現状を報告し、「経営改善計画」を提示することで、差し押さえを猶予してもらいながら分納を継続できる道を探ります。
  2. 銀行へのリスケ要請
    役所との調整状況を報告しつつ、返済条件の変更を依頼します。
    例えば、年間600万円の返済を一時的に「利息のみ」に抑えることができれば、その分を納税や事業立て直しの原資に回せます。
  3. 事業モデルの見直し
    浮いた資金で「不採算メニューの廃止」や「コスト削減」を断行し、年間CF(キャッシュフロー)を改善して、自力返済ができる体質へ戻していく計画を立てます。

◼︎補足として

この指標は、労働集約型や知識集約型をベースとした中小企業の一般的な基準です。
※例に挙げた飲食店もこのカテゴリーに入ります。

不動産賃貸、設備投資型製造業などの資本集約型の場合、債務償還年数が20年でも許容される場合があります。
理由としては、資本集約型の場合、建物や機械などの資産が手元に残っており、その資産価値で借金の担保が取れているからです。

また、ITスタートアップ、SaaSなどのコンテンツ・プラットフォーム型の場合、初期段階では「計算不能(赤字)」でも融資や投資が実行されます。

これらのビジネスはJカーブを描く成長を前提としているため、今の利益ではなく将来の市場シェアで判断されるためです。

一方で薄利多売モデルと言われる卸売業・商社の場合、返済比率が売上の5%でも死活問題になります。
粗利益(利益率)がそもそも2~3%しかないケースが多く、売上の5%を返済に回すと、利益がすべて吹き飛ぶからです。

ここでは「売上」に対する比率よりも、「粗利益」に対する返済比率を見るのが実務的です。

2. リスケを決断すべき本当のタイミング

リスケを検討すべきなのは、資金がショートする3~6ヶ月前で、その時点でリスケの相談をするかどうかを決めなくてはいけません。

来月で資金が尽きるという段階になってから相談に行くのでは手遅れということです。

翌月以降の資金繰り表を作成し、半年以内に現金が底をつくと予見できたときが理想のタイミングです。

この段階であれば、まだ銀行も「再建の意思がある」と見てくれます。

一度でも引き落としができず延滞が始まってしまうと、銀行の態度は一気に硬化し、リスケの交渉難易度は格段に上がります。

3. 【要注意】返済減額と税金・社会保険料の危険な関係

経営が悪化すると、銀行の返済を優先し、税金や社会保険料の支払いを後回しにするケースが非常に多くなります。

しかし、これは経営上最もやってはいけないことなのです。

① 国や税務署は銀行より強い権限を持つ

銀行は話し合いに応じ、合意があれば返済を待ってくれます。

しかし、税務署や年金事務所は法律に基づき、裁判所の許可なく独自の権限で口座や売掛金を差し押さえることができます。

② 返済減額の絶対条件とは

銀行がリスケを承認する際、ほとんどの場合、税金や社会保険料を滞納していないこと(または分納の正式な合意があること)を求められます。

滞納があると、銀行は「リスケで返済を待ってあげても、そのお金が役所に差し押さえられるだけなら意味がない」と判断し、リスケを拒否します。

4. 融資リスケの相談前に!社内で検討すべきこと

銀行へ行く前に、自社でやれることをやり切っているかが成否を分けます。

① 遊休資産や過剰在庫の売却

会社に遊休資産がある場合は、それらを現金化させましょう。
過剰在庫についても同じく現金化し、少しでも返済に回す姿勢を見せることが大切です。

② 役員報酬の見直し

社長や役員自身の痛みを伴う改革は必要です。

返済の減額を相談しても、社長・役員が多額の報酬を受け取っているのが分かれば、「まずは社長自身の生活費を削るのが筋ではないですか?」と、厳しい指摘を受ける可能性が高くなります。

③ 徹底的なコスト削減

サブスク、賃料、広告費などを削り、1円でも多く返済に回す努力をしているかを銀行はチェックしています。

5. 【要注意】銀行は社長のSNSをチェックしている

リスケの交渉中、あるいはリスケを実行している期間中、絶対に気をつけなければならないのがSNSでの発信です。

① 銀行員や税務署員もSNSで実態を調査している

今や金融機関の担当者が融資先の社長のSNS(Instagram、X、YouTubeなど)をチェックするのは常識です。

「返済が苦しい」と頭を下げている一方で、高級レストランでの会食、海外旅行、ブランド品の購入などを投稿していれば、一瞬で信頼を失います。

② 格付けへの影響

銀行員は「貸したお金が社長の放蕩に使われているのではないか?」と疑います。

不適切な投稿が続けば、「この社長に再建の意思なし」と判断され、リスケの打ち切りや追加融資の永久拒絶に繋がるリスクがあります。

③ 税務署への「証拠」提供

SNSで「プライベートを満喫!」と書いた旅行を、帳簿で「視察研修費」として経費計上していれば、税務調査で言い逃れができません。

これらは何も、今回のようなリスケに限った話ではありません。

通常の税務調査や借入審査の際にも、社長のSNSは常にチェックされているということを忘れないようにしましょう。

6. 融資リスケのメリットと最大のデメリット

リスケのメリットは、元金の返済をストップし「利息のみ」にしたり、返済額を半分にしたりして、手元に現金を残せることです。

一方でデメリットとして、新規融資が止まります。リスケ期間中は追加で借りることができません。

7. 追加で融資を受けて、返済に充てることはできる?

「リスケをして融資が止まるくらいなら、新しくお金を借りて今の返済に充てればいい」と考える経営者は少なくありません。

しかし、これは非常に危険なタコ足配当ならぬタコ足返済の状態です。

① 借金で借金を返すのは延命に過ぎない

根本的な経営改善(赤字の解消)ができていない状態で追加融資を受けても、それは問題を先送りにしているだけに過ぎません。

借金が膨らむほど、将来払うべき利息も増え、再建のハードルはどんどん高くなります。

② 銀行は返済原資を見ている

銀行が追加融資をするのは、あくまでそのお金を使って利益を出し、返せる見込みがある時だけです。

返済のために借りるという姿勢が見えた瞬間、銀行の審査は一気に厳しくなります。

「これ以上借りても、返済のために消えていくだけだ…」と感じた時こそが、追加融資を諦め、リスケによって「流出を止める」決断をすべきタイミングなのです。

8. リスケを成功させるための「経営改善計画書」

銀行がリスケに応じてくれるのは、今だけ待てば、将来的に立て直せるという根拠がある時だけです。

・なぜ資金繰りが悪化したのか?

・どのような施策で黒字化するのか?

・いつから返済を元に戻せるのか? 

これらをまとめた経営改善計画書の提出が不可欠です。

まとめ:リスケの成否は税理士との連携が不可欠です

返せないから黙って引き落としを止める(延滞)のが最悪のパターンです。

一度でも延滞すれば、銀行の態度は硬化し、その後の支援は極めて困難になります。

融資のリスケを成功させ、事業を再建させるためには、税理士との密な連携が不可欠です。

銀行が求めているのは、経営者の精神論ではなく、税理士の視点で作成された客観的で緻密な経営改善計画です。

現状の資金繰りを正しく分析し、将来の黒字化に向けた筋道をプロが数字で証明することで、銀行は初めて安心して返済を待ってくれます。

また、社会保険料や税金の滞納がある場合、銀行交渉はさらに複雑になります。

資金がショートする数ヶ月前に、まずは私たちと一緒に数字を整理し、銀行へ再建の意思を伝えに行きましょう。

当事務所では、銀行交渉に強い計画策定と、経営者の皆様の伴走支援を全力で行っています。

山本聡一郎税理士事務所でもYouTube発信を行なっております。 

ぜひチャンネルをご覧ください。 

【創業支援】税理士の山さん

 

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