YouTuberの撮影で使った旅行・食事は本当に全額経費?税理士が教える『経費の境界線』

YouTuberの方の中には、「YouTubeの企画で使ったんだから、全部経費で落ちるでしょ?」

そう考えて、旅行代や高級レストランの領収書をすべて経費に計上していませんか?

最近、税務署はYouTuberやインフルエンサーへの調査を強化しています。
そこで最も厳しくチェックされるのが、「プライベートの支出を無理やり経費にしていないか」という点です。

「動画に出演させた=事業用」という単純な理屈は、税務調査では通用しません。
本記事では、YouTuberが迷いがちな経費の境界線と、税務調査で否認されないためのポイントを同じくYouTube発信をしている税理士が解説します。

1. 原則:「売上に貢献しているか」がすべて

税務上の経費の定義は、「事業を遂行するために直接必要なもの(売上を作るために必要な支出)」です。

YouTuberの場合、動画の再生数やチャンネル登録者数を増やすために必要な支出であれば経費になります。
しかし、以下の場合は「経費」とは認められにくくなります。

動画の趣旨と関係ない支出

料理チャンネルなのに、旅行動画を1本出したからといって、その旅行代すべてを経費にするのは困難です。

プライベートとの混同

家族旅行にカメラを持って行って一部を撮影しただけでは、その旅行は「家族旅行(私的支出)」とみなされます。

2. 【ケース別】旅行・食事・美容・実況の境界線

実務で特によく聞かれる3つの項目について、OK・NGの目安をまとめました。

① 旅行・交通費(旅行系・Vlog [ビデオブログ] など)

旅行系YouTuberやVlogの場合、どこまでが「取材」でどこからが「プライベート」かの区別が厳しく問われます。

経費として認められやすいケース
撮影場所の事前下見や、撮影許可を正式に取ってロケを行った際の交通費・宿泊費は、事業に必要な「取材費」です。

また、特定のホテルや観光地のレビューそのものが動画のメインコンテンツであれば、その滞在費も認められる可能性が高くなります。

注意が必要なケース(NGの可能性)
家族や友人が同行した場合、その同行者分の旅費まで経費に含めることはできません。

また、「実家への帰省」などプライベートな目的に対して、ついでにカメラを回した程度の動画では、旅費の全額を経費にするのは非常に困難です。

② 食事代(グルメレポ・大食いなど)

食事代は「人間が生きていくために必要な支出」とみなされるため、税務署のチェックが非常に厳しい項目です。

経費として認められやすいケース

動画内で実際に食べてレビューを行う「実食シーン」がメインの企画であれば、その食材費や外食代は「材料費」となります。

また、動画制作のスタッフや外部の協力者と企画について話し合うための会食(会議費・交際費)も、実態があれば認められます。

注意が必要なケース(NGの可能性)

編集作業の合間に一人で食べた単なる昼食代は、動画に出さない限り、事業主の生活費として扱われます。

また、動画に一瞬映っていたとしても、実態が友人との飲み会であれば、それはプライベートな支出と判断されるリスクが高いです。

③ 美容・衣装代(美容系・コスプレなど)

美容や衣服は「私生活でもメリットがある」とみなされるため、YouTuberとしての特殊性が問われます。

経費として認められやすいケース
普段使いができないようなコスプレ用の衣装や、舞台用の特殊なメイク用品、あるいは「新作コスメの全色レビュー」といった企画のために購入した化粧品は、事業に必要なコストと言えます。

注意が必要なケース(NGの可能性)

撮影で着用するとしても、普段の私服としても使えるブランド服などは、按分(プライベート分を差し引くこと)が必要、もしくは否認される恐れがあります。

また、普段の自分の身だしなみを整えるためのエステや散髪代は、原則として経費には認められません。

④ ゲーム実況・パチンコ実況(課金・軍資金など)

エンタメ系の実況動画では、「遊び」と「仕事」の区別が最も曖昧になりやすいため、非常に慎重な判断が求められます。

経費として認められやすいケース
ゲーム実況の場合、動画で紹介するために購入した新作ソフトや、実況に不可欠な専用の機材(キャプチャーボード等)は「備品」として認められます。

また、ソーシャルゲームの「ガチャ動画」などの企画のために支出した課金代も、その動画から売上(再生数等)が発生しているのであれば、制作費としての側面が強くなります。 

パチンコ実況等では、撮影を行うために必要な「軍資金」が経費の対象となります。

ただし、勝った際の「景品交換所での換金(収入)」を売上に計上していることが大前提です。

注意が必要なケース(NGの可能性)

撮影を行わずに個人的に楽しんでいるゲームの課金代や、動画には出していないプライベートなパチンコでの負け額は、当然ながら経費にはなりません。

また、スマホゲームの課金などで「数百万単位」の高額な支出がある場合、その動画単体で得られた収益とのバランスが著しく悪いと、税務調査で「趣味の支出」と指摘されるリスクが高まります。

3. 「家事按分(かじあんぶん)」を活用する

YouTuberは自宅で編集や撮影を行うことが多いため、「家事按分」が重要になります。

100%経費にするのが難しいものでも、「仕事で使っている割合」を合理的に計算して、その分だけを経費にする方法です。

家賃・光熱費: 部屋の面積比や、撮影・編集に使っている時間比で算出。

通信費・スマホ代: 動画のアップロードやSNS運用に使っている割合で算出。

PC・カメラ: 仕事用とプライベート用で分けるのが理想ですが、共有なら使用頻度で按分。

4. 税務調査で勝つための「証拠」の残し方

税務調査が入った際、調査官を納得させるのは「領収書」だけではありません。

以下の3つをセットで残しておくことが最強の防衛策になります。

領収書の裏にメモ: 「〇月〇日公開の〇〇企画用」と記載。

企画書や台本: 撮影のためにわざわざその場所・物が必要だったという経緯。

動画のURLやスクリーンショット: 実際にその支出がどう動画に使われたかの視覚的証拠。

5. YouTuberの税務について、税理士からアドバイス

「映っているから経費」ではなく、「この支出があったから、この動画が完成し、これだけの収益(またはその可能性)が生まれた」と説明できるかどうかが境界線です。

まとめ:グレーゾーンこそ専門家に相談を

YouTuberの経費は、一般的な事業に比べて「公私の区別」が非常に難しいのが特徴です。

安易に何でも経費にしていると、数年後の税務調査で重加算税を含めた多額の納税を強いられることにもなりかねません。

「これはどこまで経費になるの?」「この按分比率は妥当?」と不安になったら、ぜひ一度当事務所にご相談ください。

エンターテインメント業界特有の税務に精通したスタッフが、貴社の健全な運営をサポートいたします。

山本聡一郎税理士事務所でもYouTube発信を行なっております。
ぜひチャンネルをご覧ください。

【創業支援】税理士の山さん

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