その価格設定、本当に妥当?ROIから考える投資回収の基本と価格設定のヒント

その価格設定本当に妥当 ROIから考える投資回収の基本と価格設定のヒント

経営者の皆様、日々のビジネスにおいて、商品・サービスの価格はどのように決めていますか?

「競合他社と同じくらいで…」

「なんとなくこのくらいかな…」

といった、数字的根拠に基づかない価格設定をしている方も、実は少なくありません。

しかし、適切な価格設定は、事業の収益性を大きく左右する重要な要素です。

今回は、価格設定の基準となる「投資回収」の考え方と、その指標であるROI(投資収益率)について解説します。

具体的な事例を交えながら、価格設定の妥当性を見直すヒントをお届けします。

サービスの価格設定、なんとなくで決めていませんか?

投資回収という視点

サービスの価格設定は、企業の収益に直結する重要な意思決定です。

安すぎる価格設定は、売上が伸びても利益が出ず、事業の継続を困難にする恐れがあります。

一方、高すぎる価格設定は、顧客離れを引き起こし、売上減少に繋がるリスクがあります。

多くの企業が、競合他社の価格を参考にしたり、過去の経験に基づいて価格設定を行っていますが、これらは必ずしも自社の状況に合致しているとは限りません。

価格設定の際には、「投資回収」 という視点を持つことが重要です。

投資回収とは、事業に投じた資金(投資)を、将来の収益によって回収するまでの期間や、回収の度合いを考えることです。

価格設定は、この投資回収の期間や回収額に大きく影響を与えます。

ROI(投資収益率)とは?計算方法を理解する

投資回収の度合いを測る代表的な指標が、ROI(Return On Investment:投資収益率) です。

ROIは、投資した資本に対して、どれだけの利益が得られたかを示す指標で、投資の効率性を評価するために用いられます。

ROIの計算方法

ROIは、以下の計算式で求められます。

ROI(%) = 利益 ÷ 投資額 × 100

※利益とは、ここでは投資によって直接的に増加した利益(売上増など)から、その投資に関連する費用(売上原価、販管費など)を差し引いたものを指します。

投資額は、ここでは主に事業を開始・拡大するために最初に投じた資金(初期投資)を指します。

例えば、100万円の初期投資を行い、1年間で20万円の利益が得られた場合、ROIは(20万円 ÷ 100万円)× 100 = 20% となります。
単純に考えると、年間で投資額の20%の利益が得られるため、初期投資額を回収するには5年かかる計算になります。

ただし、これは毎年の利益が一定であるという仮定に基づいた概算であり、実際には利益の変動などを考慮する必要があります。

※実際は、ここまで単純な計算ではありません。
 開業時の初期投資や、運転資金など正確に把握した上で計算する必要があります。

ROIが高いほど投資回収期間は短くなるため、「投資効率が良い」と判断できます。

価格設定を行う際には、目標とするROIを設定し、それを達成できる価格帯を検討することが重要です。

また、ROIを基準に考えることでそのビジネスモデルが本当に持続可能であるかを判断することができます。

その価格設定は妥当なのか?具体的事例で検証

実際に、投資回収の考え方を価格設定にどのように活かすのか、具体的な事例を見ていきましょう。

事例1:ラーメン屋

 投資額: 店舗開設費用500万円

 目標回収期間: 5年

 目標年間利益: 500万円 ÷ 5年 = 100万円

 想定年間売上: 2,000万円

 目標利益率: 100万円 ÷ 2,000万円 = 5%

この場合、年間売上2,000万円で5%の利益を確保できる価格設定が必要になります。

一杯あたりの売上単価や、家賃、人件費、仕入れ代金、客数を考慮しながら、目標利益率を達成できる価格を設定します。

事例2:脱毛サロン

 投資額: 機器導入費用300万円

 目標回収期間: 3年

 目標年間利益: 300万円 ÷ 3年 = 100万円

 想定年間施術数: 1,000回

 目標単価: (100万円 + 年間固定費 + 年間変動費) ÷ 1,000回 = 施術単価

機器導入費用を3年で回収するために必要な年間利益を、想定される施術数で割ることで、最低限必要な施術単価を算出できます。

事例3:製造業

 投資額: 新設備導入費用1億円

 目標回収期間: 10年

 目標年間利益: 1億円 ÷ 10年 = 1,000万円

 目標生産量: 10万個

 目標単価: (1,000万円 + 年間固定費 + 年間変動費) ÷ 10万個 = 製品単価

新設備の導入費用を10年で回収するために必要な年間利益を、目標生産量で割ることで、最低限必要な製品単価を算出できます。

これらの事例からわかるように、投資回収の考え方を基準に価格設定を行うことで、根拠のある価格設定が可能になり、目標とする利益を達成するための道筋が見えてきます。

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価格設定を間違えるとビジネスは伸びない!安売りがダメな理由

安易な安売りは、一時的に顧客を増やせるかもしれませんが、長期的に見ると、企業の成長を阻害する大きな要因となります。

利益率の低下

安売りは、一つあたりの利益額を減らし、売上が伸びても利益が増えにくい構造を生み出します。

ブランドイメージの低下

過度な安売りは、製品やサービスの価値を下げ、「安かろう悪かろう」というイメージを持たれる恐れがあります。

価格競争への巻き込み

一度安売りを始めると、 競合他社との価格競争に巻き込まれやすく、抜け出すのが困難になります。

安売り競争で勝てるのは、最安値を出し続けられる大手企業だけです。
中小企業は価格競争に加わらないことが重要です。

投資余力の低下

利益が出ないと、新たな設備投資や人材育成に資金を回すことができず、企業の成長が停滞します。

販売コストの増加

安売りをすることで、一定の売上を保つために商品やサービスをたくさん売らなくてはいけなくなります。

それに伴い増加するのが人件費や広告宣伝費などのコストです。

ただでさえ安売りで利益を削っているにも関わらず、コストが増えるという悪循環に陥るのです。

このように、安売りは短期的には顧客の増加を見込めるものの、長期的に考えると自分の首を絞める行為にもなります。

適切な価格設定を行い、企業の収益性を確保し、持続的な成長を目指していきましょう。

製品やサービスの価値を正当に評価し、適正な価格で提供することが、長期的な成功に繋がります。

まとめ:ビジネスの投資回収、価格設定については税理士にご相談ください

価格設定は、企業の収益を左右する重要な戦略であり、投資回収の考え方は、その妥当性を判断するための有効なツールです。

なんとなく価格を決めている、競合他社の価格を参考にしているという方は、一度、投資回収の視点から価格設定を見直してみてはいかがでしょうか。

しかし、投資回収の計算や、適切な価格設定は、専門的な知識も必要となるため、難しいと感じる方もいるかもしれません。

そんな時は、税理士にご相談ください。

税理士は、企業の財務状況を把握し、投資回収の考え方に基づいた価格設定のアドバイスや、収益改善に向けた具体的な戦略を提案することができます。

ビジネスの成長戦略、そしてその根幹となる価格設定や投資回収について、ぜひ税理士にご相談いただき、健全な事業運営を目指しましょう。

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税理士 山本聡一郎
山本聡一郎税理士事務所 代表税理士。1982年7月生まれ。名古屋市中区錦(伏見駅から徒歩3分)にてMBA経営学修士の知識を活かして、創業支援に特化した税理士事務所を運営。クラウド会計 Freeeに特化し、税務以外にも資金調達、小規模事業化持続化補助金などの補助金支援に力を入れている。
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