グローバル化が進み、国内市場だけでなく海外市場に目を向ける企業が増えています。
特に近年は円安傾向が強まり、「外貨を稼ぐ」ことへの関心が高まっています。
海外ビジネスには、国内ビジネスにはない魅力的なメリットが存在する一方で、注意すべきリスクも多く潜んでいます。
今回は、税理士の視点から、海外ビジネスのメリットと、知っておくべき消費税還付の仕組み、そして見過ごせないリスクについて解説していきます。
このページの目次
円安は海外ビジネスの追い風!平均単価が上がる仕組み
円安が進むと、海外の顧客から見た日本の商品やサービスは相対的に安価になります。
例えば、100ドルの商品を輸出する場合、1ドル100円の時には1万円の売上でしたが、1ドル150円になると1万5千円の売上として計上できることになります。
このため、海外の顧客が同じ金額で購入できる日本の商品やサービスの量が増え、結果として日本円換算での売上額が増加する可能性があります。
つまり、海外向けビジネスにおいては、円安は平均単価の上昇につながる大きなメリットと言えるでしょう。
世界市場の大きさを味方に!国内人口の限界を超えるチャンス
日本の人口は減少傾向にありますが、世界の人口は増加の一途を辿っています。
海外ビジネスを展開することで、国内の人口という限られた市場から解放され、世界中の潜在的な顧客をターゲットにすることが可能になります。
巨大な市場を相手にビジネスを展開することは、売上拡大の大きなチャンスとなり、事業の成長を加速させる可能性があります。
言語や文化、商習慣の違いを乗り越える必要はありますが、その先に広がる可能性は計り知れません。
海外ビジネスのメリット!消費税還付の仕組みとは?
海外向けに商品やサービスを販売する場合、一定の条件を満たすと、日本国内で課税された消費税の還付を受けることができる場合があります。
これは、日本の消費税が「国内で消費されるもの」に課税されるという原則に基づいているためです。
消費税還付の仕組みとは(輸出免税)
・輸出取引は消費税が免除
海外への商品の輸出や、海外へのサービスの提供は、日本の消費税法上「輸出取引等」として扱われ、消費税が免除されます。
・仕入れや経費には消費税が発生
輸出のために国内で商品を仕入れたり、海外への販売活動に必要な経費を支払ったりする際には、原則として消費税が課税されています。
・還付の可能性
輸出売上にかかる消費税額はゼロである一方、仕入れや経費で支払った消費税額がある場合、その差額について一定の手続きを行うことで還付を受けることができるのです。
ただし、消費税の還付を受けるためには、課税事業者であること、輸出取引であることを証明する書類を保管していること、そして原則課税方式で消費税の申告を行っていることなどの条件を満たす必要があります。
●参考サイト
海外ビジネスのリスクも理解しておこう
魅力的なメリットがある一方で、海外ビジネスには以下のようなリスクも存在します。
郵送コストの負担(物販の場合)
海外への商品の郵送には、国内配送よりも高額なコストがかかる場合があります。
送料を誰が負担するのか、価格設定にどう反映させるかなどを慎重に検討する必要があります。
国際物流の不安定性
新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックや、国際情勢の変動などにより、国際物流がストップしたり、大幅に遅延したりするリスクがあります。
サプライチェーンの寸断や納期遅延は、ビジネスに大きな影響を与える可能性があります。
為替変動リスク(円高)
円安は追い風になりますが、逆に円高になった場合には、海外での売上を日本円に換算した際の金額が大幅に減少する可能性があります。
為替ヘッジなどの対策を検討することも重要です。
異文化・商習慣の違いによる失敗
日本人の感覚とは異なる商習慣や文化を持つ相手との取引では、意思疎通の失敗や予期せぬトラブル、詐欺などに遭うリスクも伴います。
事前の調査や信頼できる現地に詳しいパートナーの選定が重要です。
言葉の壁
海外の顧客や取引先とのコミュニケーションには、言語の壁が存在します。
最低限の英語力は必須となる場合が多く、必要に応じて通訳を雇ったり、AIツールを活用したりする準備も必要です。
ただし、AIに頼りすぎるのではなく、経営者自身も基本的なコミュニケーション能力を身につけておくことが望ましいでしょう。
まとめ
円安は海外ビジネスにとって大きなチャンスとなり、市場の拡大や消費税還付といったメリットも期待できます。
しかし、郵送コスト、物流リスク、為替変動リスク、異文化・商習慣の違い、言葉の壁といったリスクも十分に理解しておく必要があります。
海外ビジネスへの進出は、慎重な市場調査とリスク管理が不可欠です。
税理士をはじめとする専門家と連携し、メリットを最大限に活かしつつ、リスクを最小限に抑える戦略を立てることが、グローバル市場で成功するための鍵となるでしょう。