これから事業を始められる方に伝えたい。青色申告と白色申告の特徴とメリット・デメリット

年が明け、確定申告の時期が近づいてきました。

確定申告の方法には青色申告と白色申告の2種類があります。
今回はこの青色申告・白色申告の特徴とメリット・デメリットについて基本部分をお伝えしていきます。

これから副業を始めようと思われている方や独立・フリーの働き方を検討されている方には事前に知っていただくことで、開業手続きや経理処理、確定申告がスムーズになります。

なかなか周囲の人に聞けない、自分で調べるにも調べ方がわからないという方は、ぜひ今回の記事を参考にしていただければ幸いです。

事業主にとっての白色申告・青色申告それぞれの特徴とメリット・デメリット

まず青色申告・白色申告の話の前に、少し帳簿の説明をしましょう。

事業を始めると帳簿をつけることが義務付けられています。

帳簿とは「事業でのお金の動きを記録する書類」のことですが、この帳簿をつけるのが「苦手だ」「嫌いだ」という事業主は少なくありません。

確定申告時は帳簿の提出は求められないため、つい記録を省いてしまったり、後回しにしてしまいがちになりますが、何かあった時に開示を求められる大切な書類であり、帳簿をしっかりつけていないとペナルティが課される場合もありますのでしっかりつけましょう。

それでは、青色申告・白色申告について紹介していきます。

白色申告とは

確定申告には方法が2種類あり、青色申告以外で申告する場合は全て白色申告と定義されています。

白色申告は、簡易帳簿(単式簿記)で、青色申告の複式簿記と比較すると帳簿をつけるのがとても簡単です。
また、白色申告は事前に届出をする必要もありません。

白色申告のメリット

帳簿をつけるのが簡単である

白色申告の簡易帳簿は単式簿記形式で、1回の取引に対し1つの科目に絞って収支を記録する単純な記帳方法です。

所得金額が正確に計算されており、取引内容が明確にされていれば、日々の合計をまとめて記載しても問題ありません。

帳簿の付け方の例は

日付          摘要     金額

2023.1.6    ボールペン代  現金100円

このように記載します。

家計簿やおこづかい帳をイメージされると分かりやすいのではないでしょうか。

提出書類は確定申告書Bと収支内訳書、控除証明書類だけで良い

白色申告はとにかく簡易的であるというのが最大のメリットです。
確定申告時に必要な書類も少なく済むので確定申告の手間暇を考えるとそこまで売上がないという場合は、白色申告で簡易的に済ますのも一つの方法です。

白色申告のデメリット

特別控除を受けることができない

 白色申告には青色申告のような特別控除がありません。

 ある程度売上がある場合に白色申告をすることは節税上、不利になるということを理解しておく必要があります。

家事関連費は経費の範囲が限定されている

 白色申告の場合、家事関連費に関しては主たる部分を事業に使用していなければ経費にすることができません。
青色申告者の場合は、自宅や車などプライベートと事業で共有している部分について、少しでも事業で使っていることが明らかであれば経費にできますが、白色申告では業務で50%以上、またはプライベートと事業とが明確に区別できることなど要件が厳しいのです。

手間の割にメリットが少ない

 白色申告は帳簿は簡単ですが、領収書や請求書、納品書など、各種取引に関する書類を管理義務については青色申告と同じなので、一定の手間はかかります。けれどもその割にメリットが少ないのです。

青色申告とは

青色申告では複式簿記での申告が義務付けられています。
仕訳帳・総勘定元帳を作成し、確定申告時には確定申告書B・青色申告決算書・控除証明書類の提出が必要です。また青色申告をするには事前に申請をして承認を受ける必要があります。

青色申告のメリット

 白色申告と比べると手間がかかって面倒臭そうな印象の青色申告ですが、それ以上のメリットがたくさんあります。

最高65万円の特別控除が受けられる

これは青色申告最大のメリットですので、事業者にはぜひ利用していただきたいものです。
最高65万円の特別控除を受ける場合は、e-Taxによる申告をする必要があります。
(e-Taxの他には、電子帳簿保存という方法もあります。)
e-Tax・電子帳簿保存による申告を行わない場合は特別控除額は55万円。
青色申告でも帳簿を簡易帳簿にする場合はの特別控除額は10万円です。

 h3 専従者給与を経費にできる
青色申告の場合、生計を共にする家族への給料を妥当な金額であれば上限なしで経費にすることができます。

白色申告でも経費扱いは可能ですが、最高でも86万円までと上限額が決まっています。

赤字を3年間繰り越しできる

 赤字を3年間繰越できます。赤字が続いた次の年に大きく黒字を出しても、繰越した分をマイナスにできるので、その分の節税が可能です。

1年目 -50万(赤字)

2年目 -50万(赤字)

3年目 100万(黒字)

このような場合、赤字は3年繰り越せるので、3年目の100万円の黒字分を相殺して利益を0円にして節税することができます。

家事按分でプライベートで使っているものでも仕事で使えば経費扱いにできる

白色申告の項目でも書いていますが、自宅や自家用車など、プライベートと事業で共有している部分について、少しでも事業で使っていることが明らかであればその部分については経費扱いにすることができます。

 少額減価償却資産の特例が受けられる

通常は10万円を超える設備は一括で経費扱いにできず、耐久年数に合わせて減価償却していかなくてはいけませんが、上限300万円まで、30万円以下であれば一括で経費にできます。

デメリット

事前に申請をしなくてはいけない

 青色申告をするには、事前に申請が必要です。
 また、申請には期限があり、青色申告の対象となる年の3月半ばまで(開業年の場合、開業日から2か月以内)に、管轄の税務署へ青色申告承認申請書」を提出しなくてはいけません。白色申告で十分だと思っていたら、予想以上に利益が多く、年末近くになって慌てて青色申告にしたいと思っても認められません。

複式簿記の作成には仕分けの知識が必要

複式簿記は少し複雑です。1回の取引を複数の科目で記録する記帳方法を取るので、仕分けの知識が多少なりとも必要になります。借方・貸方の基本を理解しなくてはいけないので、会計関係が苦手な方にとっては自分で作業することに苦痛を感じるかもしれません。

簿記3級レベルの知識があれば、複式簿記作成には十分ですので、これを機に勉強される方もいらっしゃいます。

会計ソフトの導入が必要

青色申告の仕分けや帳簿作成はかなり複雑なので、会計ソフトの導入は必須になります。会計ソフトを導入すると、自動計算もしてくれるので経理処理に時間をかけなくても済みます。入力した内容をもとに、補助簿の作成もしてくれるので、とにかく経理処理は苦手で時間をかけたくないという方(ほとんどの方が当てはまると思います)は導入するようにしましょう。
無料の会計ソフトもありますが、無料だとできる範囲が限定されるので有料プランでの使用をおすすめします。

結論 :青色申告をおすすめします

青色・白色それぞれのメリットやデメリットを考慮した上の結論として、青色申告を強くおすすめします。

副業の場合、最初に売上がなく特別控除が必要ない場合は単式簿記で、利益が増えたら複式簿記に切り替えるようにして上手に使い分けていきましょう。

事業者になるのであれば、事業のお金の流れを理解、把握することも大切です。
早い段階で自分の事業の数字を理解できるようになるためにも、売上が少なく経理処理の負担が少ないうちから青色申告で事業の会計に慣れておくと良いでしょう。

開業届提出時に一緒に青色申告の申請も行えば、税務署に行く手間も一度で済みます。

おまけ 白色・青色関係なく必要な補助簿とは

こちらでは白色・青色関係なく必要な帳簿(補助簿)について簡単に紹介します。

 現金出納帳

日々の現金の入出金を記録するものです。


預金出納帳

普通預金や当座預金など、事業用の口座の入出金を記録するための帳簿です。
通帳の記録だけだと情報として不十分な為、預金出納帳に詳細を記録します。

売掛帳

売上に関する取引の内容を発生順に記帳するための帳簿のことです。
未入金のものの管理に重要なものです。資金繰りで必須とされています。

買掛帳

仕入に関する取引の内容を発生順に記帳するための帳簿のことです。
支払いまだのものを管理します。こちらも資金繰りで非常に重要です。

経費帳

仕入(売上原価)を含まない経費を記帳する帳簿です。

固定資産台帳

事業のために使用している減価償却資産を管理するための帳簿です。
減価償却資産とは「10万円以上かつ使用期間1年以上の資産」と定義されています。

他にも、受取・支払手形記入帳なども存在します。
事業のお金の動き方に合わせた帳簿が必要なのです。

業種によっては必要ないものもあるでしょう。
例えばもみほぐしの自宅サロンで現金商売をしている場合は、取引上売掛・買掛がない為、売掛帳・買掛帳は存在しないことになります。

けれども、そのあたりの判断について自信がないのであれば、まずは税理士に相談するようにしてください。

青色申告の概要をまとめたものが国税庁のHPにあります。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/0021005-120_03.pdf

最後に 帳簿のつけ方がどうしてもわからないときは?

事業の帳簿は少し複雑です。経理処理に慣れるまでは少し時間がかかります。
経理関係に時間を割くことなく自分の事業に集中したいという方は、ぜひ一度税理士にご相談ください。

参考記事:記帳を税理士に依頼するメリット

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税理士 山本聡一郎
山本聡一郎税理士事務所 代表税理士。1982年7月生まれ。名古屋市中区錦(伏見駅から徒歩3分)にてMBA経営学修士の知識を活かして、創業支援に特化した税理士事務所を運営。クラウド会計 Freeeに特化し、税務以外にも資金調達、小規模事業化持続化補助金などの補助金支援に力を入れている。
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