【銀行が融資したくなる決算書】個人事業主・法人別の審査対策と試算表活用法

融資の審査で決算書の提出を求められ、言われるままに書類を用意したけど結果は否決。

担当者からは「今回は見送りとなりました」の一言だけ。何がいけなかったのか、誰も教えてくれない。

そんな経験をお持ちの経営者は多いのではないでしょうか。

実は、融資が通らない経営者の多くが見落としているのが「銀行の視点」です。

決算書は税務申告のための書類であると同時に、銀行が融資判断をするための最重要資料でもあります。

銀行が決算書のどこを見て、何を判断しているかを知ることが、融資審査を通過するための第一歩です。

この記事では、銀行の審査基準から個人事業主・法人それぞれの対策、弱い決算書でも融資を有利に進める方法まで、名古屋のITに強い税理士の視点から体系的に解説します。

このページの目次

1.銀行は「返せるかどうか」で融資を決める

銀行が融資審査で最も重視するのは、担保の有無でも事業規模でもありません。

シンプルに言えば、「この経営者は貸したお金をちゃんと返せるか」という一点です。

かつては不動産担保や保証人を重視する傾向がありましたが、現在は金融庁の方針もあり、事業の収益力・返済能力を中心に審査する「事業性評価」が主流になっています。

●参照:金融庁 平成 26 事務年度 金融モニタリング基本方針 (監督・検査基本方針)

つまり、担保がなくても、事業がしっかり利益を生み出していれば融資が受けられる時代です。

逆に言えば、担保があっても利益が出ていない事業には融資が難しくなっています。

経営者が「返せる根拠」を数字で示せるかどうかが、融資の可否を分けます。

2.銀行融資で提出を求められる書類とは

融資申請の際、銀行から求められる主な書類は以下の3種類です。

それぞれの役割を理解しておくことで、準備の漏れを防ぎ、審査をスムーズに進められます。

決算書

法人の場合は「法人税申告書の決算書一式」、個人事業主の場合は「確定申告書・青色申告決算書(または収支内訳書)」が該当します。

銀行が最も重視するメイン資料で、過去2〜3期分の提出を求められるのが一般的です。

決算書は「過去の経営実績」を示す書類であるため、直近の決算から日数が経過している場合は内容が古くなります。

その補完として試算表が重要な役割を果たします。

試算表(個人事業主・法人ともに必須)

試算表とは、月次ベースで集計した収支の一覧表です。

決算書が「年間の決算」であるのに対し、試算表は「今この時点の業績」を示します。

銀行への融資申請には、個人事業主・法人を問わず、直近の試算表の提出を求められるケースが多いです。

なお、日本政策金融公庫の場合、法人は決算後6か月以上経過している場合に試算表の提出が必要とされています。

個人事業主については公庫のルール上は任意ですが、直近の業績を示す資料として準備しておくことを推奨します。

試算表が提出できない状態(未作成・数字が未締め)では、審査がスムーズに進まないケースもあります。

月次でしっかり作成・管理しておくことが前提条件です。

●参照:日本政策金融公庫 小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】

勘定科目内訳書などの附属明細

勘定科目内訳書とは、売掛金・借入金・役員報酬などの科目について、相手先や金額を一覧で示した書類です。

「決算書の数字の裏付け」として銀行が確認します。

たとえば売掛金が多い場合、「どの取引先にいくら請求しているか」を内訳書で確認することで、回収リスクを判断します。

内訳書が雑だったり、記載が曖昧だったりすると、それだけで審査の印象が悪くなります。

●参照:日本政策金融公庫 小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】

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3.銀行が貸借対照表で真っ先にチェックする5つのポイント

貸借対照表(BS)は会社の「財産と借金の一覧」です。

銀行は融資審査においてBSから会社の安全性・返済能力を確認します。

特に注目される5つのポイントを解説します。

現預金は月商の2〜3か月分あるか

銀行が最初に目を向けるのが現預金の残高です。

一般的に「月商の2〜3か月分以上の現預金がある会社は資金繰りが安定している」と判断されます。

現預金が少ない場合、売上の回収が遅れたり、急な支出が発生したりした際に資金が枯渇するリスクがあります。

銀行は「この会社は日常的に資金不足になりやすい体質ではないか」を確認しているのです。

逆に現預金が多すぎる場合も「なぜこれほど手元にあるのか」と疑問を持たれることがあります。

既存の借入金の返済原資として積み立てているなど、理由を説明できるようにしておくことが大切です。

自己資本比率──融資通過ラインの目安

【計算式】自己資本比率(%)= 純資産 ÷ 総資産 × 100 

(純資産:貸借対照表の純資産の部の合計 総資産:資産の部の合計)

自己資本比率は会社の財務的な安定性を示す指標です。

この比率が高いほど、借入金に頼らずに事業を運営できていることを意味します。

中小企業庁「2021年版中小企業白書」によると、中規模企業の自己資本比率は2019年度時点で約42.8%、小規模企業は約17.1%となっています。

●参照:中小企業庁 2021年版中小企業白書 第1節 中小企業の財務基盤・収益構造と財務分析の重要性

融資審査における実務上の目安としては20〜30%以上とされることが多いですが、業種によって平均値が大きく異なるため、同業種の平均値と比較することが重要です。

業種別の経営指標については、日本政策金融公庫が「小企業の経営指標調査」を公表しており、自社の業種の平均値を確認する際に活用できます。

●参照:日本政策金融公庫 小企業の経営指標調査

借入金の返済能力(債務償還年数)

【計算式】債務償還年数(年)= 借入金残高 ÷(税引後利益 + 減価償却費)

ここで出てくる「減価償却費」とは、設備や機械などの資産価値の目減り分を毎年費用として計上するものです。

帳簿上は費用ですが、実際には現金が社外に出ていかないため、返済原資として加算できます。

【計算例】 

借入金残高:3,000万円 税引後利益:250万円 減価償却費:50万円

3,000万円 ÷(250万円 + 50万円)= 10年

※減価償却費が大きいほど返済原資が増え、債務償還年数は短くなります。

債務償還年数銀行の評価融資審査への影響
5年以内◎ 非常に良好融資審査で高評価。追加融資も受けやすい
5〜10年○ 良好問題なし。標準的な返済能力とみなされる
10〜15年△ 要注意審査が通る場合もあるが、説明が求められやすい
15〜20年▲ 懸念あり融資審査で慎重に判断される。改善策の提示が必要
20年超× 危険水域審査否決のリスクが高い。抜本的な改善が必要

●参照:国税庁 No.2100 減価償却のあらまし

売掛金・在庫の回転は正常か

売掛金が多い場合、銀行は「本当に売掛金を回収できるのか」を確認します。

長期間未回収の売掛金は「不良債権」として資産から除外して評価されます。

特に関係会社や個人への売掛金は回収リスクが高いとみなされることがあります。

同様に在庫も、「売れない在庫を抱えていないか」を確認されます。

在庫の回転期間が業種平均より著しく長い場合は、不良在庫とみなされ資産価値を低く評価されることがあります。

売掛金・在庫の明細については勘定科目内訳書でしっかり説明できる状態にしておくことが重要です。

決算書の数字と実態がかけ離れていないか

銀行は提出された決算書をそのまま受け入れるわけではなく、内部で「実態バランスシート」への修正を行います。

経営者がこの事実を知らないまま融資に臨むと、自分では「問題ない決算書」と思っていても、銀行側の評価が大きく下がっているケースがあります。

銀行が行う主な修正項目は以下の通りです。

  • 役員貸付金:回収の見込みがなければ資産から除外
  • 不良在庫・不良売掛金:回収・換金できないと判断されれば評価額を減額
  • 含み損のある不動産:帳簿価額ではなく時価で再評価し、純資産を減額
  • 保険積立金:解約返戻金ベースで再計算

これらを銀行に指摘される前に自分で把握し、説明できる状態にしておくことが、審査での信頼につながります。

4.損益計算書で銀行が見る3つのポイント

損益計算書(PL)は「1年間でどれだけ稼いで、どれだけ使ったか」を示す書類です。

銀行はPLから会社の収益性と返済能力を読み取ります。

営業利益・経常利益・当期純利益はプラスであるか

PLには複数の利益段階があります。

  • 営業利益:本業の稼ぎ。本業でどれだけ稼げているかを示す最重要指標
  • 経常利益:営業利益に金融収支(支払利息など)を加減したもの。借入コストを含めた実力値
  • 当期純利益:税金・特別損益を含めた最終的な利益

銀行が特に重視するのは「営業利益」と「経常利益」で、本業できちんと利益を出しているかどうかが重要です。

たとえ当期純利益が赤字でも、不動産売却など一時的な特別損失が原因であれば、営業利益・経常利益がプラスであれば評価されます。

「なぜこの利益段階で黒字・赤字になっているのか」を自分の言葉で説明できることが重要です。

実際に返済に使える現金が確保できるか

【計算式】返済原資(簡易CF)= 税引後利益 + 減価償却費 

先述の通り、減価償却費は帳簿上の費用ですが実際には現金が社外に出ていかないため、返済原資として加算できます。

たとえば、税引後利益が100万円でも減価償却費が300万円あれば、返済原資は400万円です。

「赤字だけど減価償却費が大きい」会社は、見た目より返済能力が高いケースがあります。自社の数字を計算し、銀行との面談で活用しましょう。

3期分の推移がトータルで上向きであるか

銀行は直近1期だけでなく、過去3期分の推移を確認します。

1期だけを点で見るのではなく、「線として上向きか下向きか」を判断します。

1期だけ黒字でも前2期が赤字であれば「たまたま黒字になっただけでは?」と懸念されます。

逆に1期赤字でも、「前2期は黒字→今期は一時的要因で赤字→直近の試算表では回復中」という文脈を示せれば、評価が上がることもあります。

3期分の数字をトータルで上向きのストーリーとして語れるかどうかが、審査官を納得させるカギです。


自社の決算書が銀行にどう評価されているか、気になりませんか?

「BSとPLの数字は把握しているけど、銀行の視点で見るとどうなのか不安」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

名古屋市のITに強い税理士事務所が、クラウド会計を活用しながら融資審査に強い決算書づくりをサポートします。

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5.融資審査で通りやすい個人事業主の特徴

個人事業主の場合、法人の決算書に相当するのが「確定申告書」と「青色申告決算書(または収支内訳書)」です。

これらが銀行に提出するメイン資料となります。融資審査で通りやすい個人事業主には、いくつかの共通した特徴があります。

青色申告を行っている

個人事業主が銀行融資を申請する際、白色申告では貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)を提出できません。

白色申告の提出書類は「収支内訳書」のみであり、銀行が審査で最も重視するBSとPLが存在しないため、そもそも審査の土台に乗れない場合があります。

一方、青色申告では複式簿記による記帳が義務付けられており、BSとPLを含む「青色申告決算書」を作成・提出できます。

銀行はこれをもとに財務状況を詳細に確認できるため、審査において圧倒的に有利です。

また、青色申告では最大65万円の特別控除が受けられます(e-Taxでの電子申告または電子帳簿保存が要件、令和2年分以降)。

この控除により課税所得が適正に計算され、利益の実態が正確に反映された申告書となるため、銀行からの信頼も高まります。

融資を検討している個人事業主で、まだ白色申告をしている方は、早急に青色申告への切り替えを検討することをお勧めします。

●参照:国税庁 青色申告特別控除の適用要件について

正しい経費の計上・按分ができている

個人事業主が注意すべきは、事業経費と個人的な支出の混同です。

自宅兼事務所の家賃・光熱費・通信費などは、事業使用割合に応じた「按分」が必要です。

銀行は経費の内容を確認し、「業種に照らして不自然に多い経費がないか」をチェックします。

たとえば、飲食業でもないのに接待交際費が売上の20%を占めていたり、経費が多すぎて利益がほぼゼロになっていたりすると、審査の印象が悪くなります。

正しい按分ルールを徹底し、私的な支出を事業経費に混入させないことが、健全な申告書と融資審査の通過につながります。

利益率が業種平均から大きく外れていない

銀行は業種ごとの平均的な利益率を把握しています。

自社の利益率が業種平均と大きくかけ離れている場合、「なぜこの利益率なのか」を説明できなければ不信感を持たれます。

利益率が著しく低い場合は経費過多・価格競争力の低下が疑われ、逆に高すぎる場合は「売上や経費の計上に問題がないか」を疑われることもあります。

日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」で業種別の平均指標を確認し、自社の数字と比較しておきましょう。

●参照:日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」

6.融資が通りやすい法人は何が違うのか

法人の融資審査でも基本的な審査ポイントは個人事業主と共通ですが、法人特有の論点があります。

融資が通りやすい法人には次のような共通点があります。

決算前から税理士と連携し、決算書を戦略的に整えている

融資が通りやすい法人は、決算が終わってから「どう見せるか」を考えるのではなく、決算前から税理士と連携して「銀行に評価される決算書」を意識して数字を整えています。

具体的には、役員報酬・減価償却の方針・在庫評価・引当金の計上など、決算書の数字に影響する意思決定を期中から行います。

決算後に数字を動かすことはできませんが、決算前であれば合法的な範囲で最適化が可能です。

「決算書は税申告のためだけのもの」という認識から脱却し、「融資審査のための経営資料」として戦略的に活用することが、融資に強い会社への第一歩です。

適切な役員報酬を設定している

役員報酬は、法人の利益と経営者個人の所得の両方に影響します。

役員報酬を高く設定しすぎると法人の利益が圧縮され、融資審査での評価が下がります。

一方、低すぎると経営者個人の返済能力への信頼が薄れます。

銀行は「役員報酬を差し引いた後でも法人に十分な利益が残っているか」を確認します。

また、役員報酬は原則として期中変更ができない(事業年度開始から3か月以内の改定のみ認められる)ため、期初の設定が重要です。

税理士と相談しながら、法人の利益確保と経営者の生活費のバランスが取れた役員報酬を設定しましょう。

将来性のある事業である根拠を数字で示している

スタートアップや創業間もない会社は、決算期数が少なく過去の実績で判断することが難しいため、「将来性の根拠」を示すことが特に重要です。

具体的には事業計画書の提出が効果的です。

売上予測・費用計画・返済計画を数字で示し、「なぜこの数字が実現できるのか」という根拠(既存顧客の契約状況、業界トレンド、競合優位性など)を添えることで、審査官が稟議を通しやすくなります。

なお、日本政策金融公庫では創業融資制度があり、業種別の事業計画書のサンプルも公開されています。

創業初期の融資を検討している場合は参照してみてください。

●参照:日本政策金融公庫「財務診断サービス」

7.赤字で決算書が弱くても融資を有利に進める3つの方法

「決算書が赤字だから融資は無理」と諦めている経営者は少なくありませんが、それは必ずしも正しくありません。

銀行は赤字そのものより、「なぜ赤字なのか」「これからどうなるのか」を重視します。

弱い決算書でも融資を有利に進める3つの方法を解説します。

試算表で今の業績を示してフォローする

決算書は過去の数字です。決算から数か月が経過している場合、直近の業績は試算表でしかわかりません。

活用のポイントは2つです。

決算後に業績が改善している場合、直近の試算表が「売上増・黒字転換・返済順調」を示していれば、過去の弱い決算書を補完できます。

「去年は赤字でしたが、直近6か月は黒字が続いています」という文脈で試算表を提示することで、審査官が上司への稟議を通しやすくなります。

また、普段から毎月銀行に試算表を届けている会社は、申し込み時にいきなり提出するより、銀行の社内格付けが高くなる傾向があります。

「この会社は数字を把握している」という信頼が、融資審査の大きなアドバンテージになります。

月次でしっかり締め、信頼性の高い状態に保つことが前提条件になります。

赤字の原因と具体的な改善計画をセットで出す

赤字決算や売上の急増・急減が起きた場合、銀行が最も聞きたいのは「なぜそうなったのか」と「これからどうするのか」です。

説明が有効なパターンの例として以下が挙げられます。

  • 設備投資による一時的な減価償却費の増加で赤字になったが、投資効果により来期以降の売上増が見込める
  • 主要取引先の倒産による売上急減だったが、新規顧客の開拓により直近試算表では回復基調にある
  • 外部環境による売上減だったが、業態転換・コスト削減により損益分岐点を引き下げた

「原因の説明」と「具体的な改善策・数字の根拠」がセットになっていることが重要です。

言い訳で終わるのではなく、「改善の筋道が見える」説明が審査官の信頼を勝ち取ります。

債務超過では、実態純資産の計算と解消ロードマップを明確にする

債務超過(純資産がマイナス)は融資審査において最も厳しい状況の一つです。

ただし、債務超過だからといって融資が絶対に不可能というわけではありません。

まず取り組むべきは「実態純資産」の計算です。

簿価ベースの決算書では債務超過に見えても、含み益のある不動産や保険解約返戻金などを時価評価すると、実態では純資産がプラスというケースもあります。

次に「解消ロードマップ」の提示です。

「毎年○万円の利益を積み上げることで、○年後に債務超過を解消できる」という具体的な計画を数字で示すことが不可欠です。

口頭の説明だけでなく、計画書として提出することで審査官が稟議を組みやすくなります。

なお、個人事業主の場合は「債務超過」という概念は使われませんが、「純資産(=資産-負債)がマイナスの状態」として同様の論点が生じます。


赤字・債務超過でも、あきらめる前に一度ご相談ください。

「決算書に自信がない」「どう銀行に説明すればよいかわからない」という状況こそ、税理士のサポートが力を発揮します。

名古屋市のITに強い税理士事務所が、試算表の整備から銀行への説明資料づくりまで、一緒に取り組みます。

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8.銀行融資の審査でよくあるQ&A

Q. 日本政策金融公庫と民間銀行で見るポイントに違いは?

基本的な審査の視点(返済能力・収益性・安全性)は共通ですが、いくつかの違いがあります。

日本政策金融公庫は政府系金融機関であり、創業間もない会社や担保・実績の乏しい事業者にも積極的に融資します。

事業計画の実現性・経営者の熱意・事業の社会性も評価されます。

民間銀行は財務内容の安定性・過去の実績・取引関係を重視する傾向があります。

初めての融資や創業融資であれば日本政策金融公庫から始め、実績を積んでから民間銀行との取引を広げるのが一般的な流れです。

Q. 個人事業主が法人化すると融資は通りやすくなる?

個人事業主の法人化が融資に有利になるかどうかは、状況によります。

法人の方が有利になる点として、社会的信用度の向上・決算書の形式的な整備・役員報酬による所得分散が挙げられます。

一方で、法人設立直後は決算期数が少なく、実績の証明が難しいというデメリットもあります。

個人事業主として数期の実績を積んでから法人成りし、安定した法人決算書を作っていくという戦略が有効なケースも多いです。

融資のタイミングと法人成りのタイミングは税理士と相談しながら決めることをお勧めします。

Q. 決算書提出のタイミングはいつが最適?

一般的に「決算後2〜3か月以内」が最も適切なタイミングです。

決算が確定し申告が完了した直後は、最新の決算書が揃っており、銀行側も情報を把握しやすい状態です。

反対に、決算から半年以上が経過すると情報が古くなるため、試算表を添付して直近業績を補足することが重要になります。

また、急な資金需要に備えて、銀行との関係を日常的に維持しておくことが理想です。

Q. 税理士に関与してもらっていない場合、審査で不利になる?

税理士が関与していない決算書(自計化・無署名)は、銀行から「信頼性が低い」と判断されることがあります。

特に、勘定科目の処理が不適切だったり、内訳書が未整備だったりする場合は審査の印象が大きく悪化します。

また、税理士の署名・関与がある申告書は、一定の品質基準が担保されているとみなされます。

融資を重要な経営課題と考えるのであれば、税理士への依頼は費用対効果の高い投資といえます。

9.銀行が「貸したい」と思う経営者の共通点

決算書の数字だけが審査のすべてではありません。

最終的には「この経営者に貸して大丈夫か」という人間的な信頼も、融資判断に大きく影響します。

事業の数字を自分の言葉で語れる

銀行の担当者が最も信頼するのは、「数字を自分の言葉で説明できる経営者」です。

売上・利益・借入残高・返済原資を即答でき、「なぜこの数字になっているのか」「来期はどう改善するか」を具体的に話せる経営者は、審査で高く評価されます。

「税理士に任せているので詳しくわからない」という回答は、銀行担当者の信頼を大きく損ないます。

月次試算表を毎月確認し、自社の数字を常に把握しておく習慣を作ることが重要です。

銀行に対して情報開示を怠らない

業績が悪いときこそ、銀行への情報開示が重要です。

「都合の悪い情報を隠す経営者」は銀行から最も嫌われます。

逆に、業績が悪化した原因と対策を自ら開示し、月次試算表を定期的に届けている経営者は、長期的な信頼関係を築けます。

銀行との関係は融資申請の時だけのものではありません。

普段から情報を共有し、担当者が上司に「この会社は安心して融資できる」と報告できる状態を作っておくことが、長期的な資金調達の安定につながります。

経営者個人の信頼性が高い

銀行は事業だけでなく、経営者個人の生活面や人間性も間接的に評価します。

具体的には以下のような点が影響することがあります。

  • 家族がいる・生活基盤が安定している
  • 過度なギャンブル・浪費の形跡がない(カードローン・消費者金融の利用履歴など)
  • 税金・社会保険料の滞納がない
  • 過去に金融事故(債務不履行・自己破産など)がない

これらは直接聞かれることは少ないですが、信用情報の照会や担当者との面談を通じて銀行側が把握するケースがあります。

事業の数字を整えると同時に、個人の信用力も日頃から維持することが重要です。

まとめ:融資に強い決算書は、良い経営の「結果」である

この記事では、銀行が融資審査で見るポイントから、個人事業主・法人それぞれの対策、弱い決算書でも融資を有利に進める方法まで解説してきました。

最終的にお伝えしたいのは、「銀行が融資したくなる決算書」は、特別な操作によって作られるものではなく、日々の正しい経営の積み重ねの結果として自然に出来上がるものだということです。

  • 毎月試算表を締め、自社の数字を把握する
  • 経費を適正に計上し、利益をしっかり確保する
  • 銀行に対して定期的に情報開示を行い、信頼関係を築く
  • 決算前に税理士と連携し、戦略的に決算書を整える

これらの積み重ねが「融資に強い経営体質」を作り、必要なときに必要な資金を調達できる会社につながります。


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※本記事の内容は2026年10月時点の情報に基づくものです。税制・制度の改正により内容が変わる場合があります。最新情報は各公的機関の公式サイトでご確認ください。

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