役員報酬0円にするとどうなる?メリット・デメリット3選

役員報酬0円にするとどうなるメリットデメリット3選

起業したての頃は、売上が安定せず、資金繰りに苦労することが少なくありません。

特に法人化したばかりの社長は、日々の業務に追われ、将来の不安も尽きないと思います。

そんな中で「役員報酬を0円にする」という選択肢を考えている方もいるかもしれません。

けれども、役員報酬を0円にすることは、一時的には経費削減になりますが、その影響は思った以上に大きく、慎重に検討する必要があります。

今回は「役員報酬0円にするメリット・デメリット」について、分かりやすく、そして具体的な例を交えながらお伝えします!

役員報酬0円にするメリット

1.個人の節税になる

役員報酬が0円になると、個人の所得税や住民税がかからなくなります。

これにより、個人の税負担を大幅に軽減することができます。

例えば、年間で数十万円の税金を支払っていた方が、それを0円に抑えることができるのです。この節税効果は大きなメリットと言えるでしょう。

2.扶養に入ることができる

役員報酬を0円にすることで、社会保険を抜ける代わりに国民健康保険に加入することができます。

また、条件が合えば配偶者の扶養に入ることも可能です。

この場合、保険料の負担が0円になるため、家庭全体での負担を大幅に軽減することができます。

例えば、月々の保険料が数万円かかっていた場合、その負担がなくなるのは大きなメリットです。

会社側も社会保険の負担がなくなるため、全体的なコスト削減が見込めます。

全国の社会保険料の金額はこちらで確認してみてください。

令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)

また、配偶者の扶養に入ることで、配偶者が「扶養手当」を受給できる可能性もあります。(これは条件によります。)
その場合、配偶者の手取りが少しだけ増えることになります。

※配偶者の扶養に入るには、配偶者が社会保険加入者であることが条件になります。

配偶者が自営業で、国民健康保険に加入している場合は「扶養に入る」ことはできませんのでご注意ください。

3.人件費が減り、キャッシュフローに余裕が生まれる

役員報酬を0円にすることで、人件費が削減され、会社のキャッシュフローに余裕が生まれます。

これにより、他の事業投資や運転資金に回すことができるようになります。

例えば、新しいプロジェクトを立ち上げる際や、急な経費が発生した場合でも、キャッシュフローに余裕があれば迅速に対応できます。

これにより、企業の成長をサポートする強力な財務基盤を築くことが可能です。

役員報酬0円にするデメリット

1.報酬が0円だと生活が大変になる

役員報酬が0円の場合、当然ながら個人の生活費を賄う現金が入らなくなります。

特に家族を養っている場合や、住宅ローンなどの固定費がある場合は、非常に厳しい状況になります。

共働きの場合、配偶者の負担が一気に増えることになります。

事前に家族で話し合うことも忘れないようにしましょう。

対策としては、しっかりと貯金をしておくか、他の収入源を確保しておくことが必要です。

役員報酬0円にする前に、十分な生活費を貯蓄しておくようにしましょう。

中には、会社の経費で生活をすればいいと考える方もいるかもしれません。

この考え方は、非常に危険です。実際に税務調査であったのが、役員報酬が0円なのに、なぜ高級車に乗れるのか?と身辺調査をされ、法人の経費が否認され、かつ役員報酬になってしまったという事案があります。

税務調査についてさらに知りたい方はこちらの記事がお勧めです。

もしも会社設立時に、個人のお金を会社に貸付している場合は、その貸付分(役員借入金)を報酬の代わりに定額で返済するという方法もあります。(資本金に組み込んでいる場合は不可)

役員報酬は1年間変更できませんので、その間の生活に影響がないように事前に収入を得る計画を立てるようにしましょう。

●過去のコラム

2.利益が残りすぎて、法人の税金が高くなる恐れがある

役員報酬を0円にすることで、法人に利益が残りすぎると、法人税が高くなる恐れがあります。

法人税は利益に対して課税されるため、報酬を0円にしても、最終的には高額な法人税を支払うことになるかもしれません。

例えば、年間利益が大幅に増加した場合、その分の法人税も大幅に増えてしまいますので、計画的に利益を調整することが求められます。

3.会社の信用が下がるリスクがある

役員報酬が0円の黒字は、金融機関からの評価が下がるリスクがあります。

金融機関は、会社の収益状況だけでなく、経営者の報酬や生活状況も評価の対象とします。

例え黒字だとしても、役員報酬が0円の場合、会社の経営状況に疑念を持たれるリスクがあります。

また、個人の資金が不足して一時的に会社からお金を借りて(役員貸付金)しまった場合、決算書にその事実が載ってしまうと、一気に会社の評価は下がります。

金融機関が「役員貸付金」の勘定科目を見ると、良い顔をしないのは、「社長が会社を個人の財布扱いしている」と判断するためです。

そうなると、急な資金需要が発生した際に、金融機関からの融資が受けられない恐れがあります。

将来、金融機関からの融資を検討しているのであれば、安易に役員報酬を0円にすることは避けるようにしましょう。

まとめ

役員報酬0円にすることには、様々な負担を減らすメリットがありますが、生活費の確保や法人税の調整、金融機関からの評価など、デメリットも多く存在します。

慎重に判断し、必要ならば専門家に相談することをお勧めします。

役員報酬の設定は、企業の成長と安定に直結する重要な要素ですので、しっかりと計画を立てて進めていきましょう。

この情報が皆さんの経営に少しでもお役に立てれば幸いです。

もし、さらに詳しいアドバイスが必要であれば、ぜひお気軽にご相談ください。

これからも皆さんの成功をサポートする情報をお届けしていきます!

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税理士 山本聡一郎
山本聡一郎税理士事務所 代表税理士。1982年7月生まれ。名古屋市中区錦(伏見駅から徒歩3分)にてMBA経営学修士の知識を活かして、創業支援に特化した税理士事務所を運営。クラウド会計 Freeeに特化し、税務以外にも資金調達、小規模事業化持続化補助金などの補助金支援に力を入れている。
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