企業の存続に不可欠な資金繰り。
特に、新たな期が始まる4月は、年間を見据えた資金繰り計画を立てる絶好のタイミングです。
キャッシュアウトは企業にとって命取りであるということは、これまでもお伝えしてきました。
どんなに帳簿上の利益が出ていても、手元の資金がショートすれば、いとも簡単に倒産という最悪の事態を招きかねません。
新年度のスタートダッシュを決めるためにも、足元の資金状況をしっかりと把握し、計画的な資金繰りを始めることが重要です。
本日は、期初めから意識すべき資金繰り対策の重要性、陥りがちな資金繰りの失敗例、そして健全な資金繰りのために必要な事業計画について、税理士の視点から更に深く掘り下げて解説します。 新年度を迎え、新たな気持ちで事業に取り組む皆様にとって、資金繰り改善の一助となれば幸いです。
このページの目次
計画的な資金繰りは期の初めが重要!キャッシュアウトは赤信号
黒字倒産は他人事ではない
企業の血液とも言えるキャッシュフロー。
その管理を怠り、資金繰りが悪化すると、黒字倒産という矛盾した事態に陥ることがあります。
これは、売掛金の回収遅延や、予期せぬトラブルによる支出で、一時的に資金が不足し、支払いが滞ってしまうことで起こります。
特に、期の初めである4月に、年間を通じた計画的な資金繰りを意識することは、その後の安定した事業運営の土台となります。
年度初めにしっかりと資金計画を立てることで、年間の資金の流れを詳細に予測し、必要な資金を適切なタイミングで、適切な金額を確保するための準備を余裕を持って行うことができます。
無計画は資金ショートのリスクを高める
逆に、計画なしに、その場しのぎの資金繰りを繰り返していると、突発的な支出に対応できず、資金ショートに陥るリスクが加速度的に高まります。
また、キャッシュフローに関する不安は、経営者の精神的な負担となり、本来注力すべき事業戦略の策定や実行に支障をきたす場合もあります。
新年度の始まりに、将来を見据えた資金繰り計画を策定し、 安定した資金繰りを確保することは、持続的な事業成長の鍵と言えるでしょう。
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決算間際の慌てた節税、計画性のない経費支出はNG
資金繰りを悪化させる要因の一つに、決算間際になって、慌てて行う節税対策があります。
節税自体は、企業の利益を守るために重要な取り組みです。
しかし、効果を十分に検討せず、単に利益を圧縮するためだけに、不要な備品を購入したり、前倒しで経費を計上したりすることは、本末転倒です。
これらの行為は、一時的に税負担を軽減するかもしれませんが、手元の貴重な資金を減らすだけで、長期的な視点で見ると、キャッシュフローを悪化させるだけだったということが少なくありません。
また、計画性のない経費の使用も、資金繰りを圧迫する大きな原因となります。
「まだ予算が残っているから」「今買っておけば、後々使えるだろう」といった安易な考えで、必要性の低いものを購入し続けていると、気が付いた時には、肝心な支払いに必要な資金が底をついていた、という深刻な事態になりかねません。
たとえ少額の経費でも、積み重なると大きな金額になるため、日頃から計画的に経費を使用する意識を持つことが重要です。
特に売上が増えている時は、気が大きくなりがちです。
また、多忙な時期もゆっくり考える時間が取れなくなる為、だからこそ計画やルールを事前に決めておくことが大切なのです。
新年度は、経費の使い方についても、改めて見直す機会です。
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節税テクニックより重要な事業計画
事業計画こそ健全な資金繰りのコンパス
健全な資金繰りのためには、事業計画の策定が欠かせません。
節税そのものは現金を残すためには大切なものですが、「持続的な経営」という目線で考えると枝葉の話になります。
幹の部分である「事業計画」こそが経営では最も重要なのです。
事業計画は、企業の短期的な目標だけでなく、中長期的な目標達成に向けた、具体的な行動計画を示すものです。
同時に、将来の収益や費用の見込みを詳細に立てる上で、欠かすことのできない重要なツールとなります。
綿密な事業計画に基づいて、日々の業務を実践することで、会社として資金の安定と成長の両立が可能になります。
事業計画を念入りに立てることの恩恵とは
事業計画をしっかりと立て、その計画に基づいて、日々の業務を遂行することで、以下のような プラスの効果が期待できます。
まず、具体的な目標と、それを達成するための行動計画に基づいているため、より現実的で、精度の高い収益予測が可能になります。
次に、計画に基づいて、経費の使用を厳格に管理することで、無駄な支出を徹底的に削減し、貴重な資金の流出を最小限に抑えることができます。
さらに、計画に基づいて、必要な資金のタイミングと金額を正確に把握できるため、適切な時期に、適切な方法で資金調達を行うことが可能になります。
そして、事業計画の策定過程で、潜在的なリスクを洗い出し、事前に対応策を検討しておくことで、予期せぬ事態が発生した場合でも、冷静かつ迅速に対応することができます。
つまり、事業計画は、単なる目標設定のツールではなく、健全な資金繰りを実現し、 資金計画リスクを管理するための、非常に有力なコンパスとなるのです。 新年度の始まりに、改めて事業計画を見直し、資金繰りの安定化に役立てることをお勧めします。
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年間を通した資金繰り計画は税理士と一緒に立てましょう
年間を通した資金繰り計画の策定は、専門的な知識や豊富な経験が必要となる場合があります。
税理士は、企業の過去から現在までの財務状況を詳細に把握しており、そのデータを分析し、将来の収益や費用を予測に基づいて、現実的な資金繰り計画を立てる強力なサポートを提供することができます。
税理士に相談することで、経営者自身では気づきにくい、資金繰りの問題点や、改善のための具体的な対策を見つけることができます。
また、税務や会計の専門知識を活かし、適切な収支予測、投資計画、そして資金調達計画を策定することができます。
さらに、計画の実行状況を定期的に監視し、財務的な目標達成に向けて、必要に応じて計画の見直しや改善を行う継続的なサポートも期待できます。
新年度の始まりである4月こそ、税理士と共に、年間を通した詳細な資金繰り計画を策定し、財務的な安定を確保し、持続的な事業成長を目指しましょう。