決算期をまたぐプロジェクトの正しい経理処理|収益費用対応の原則・仕掛品を税理士が解説

「プロジェクトが長引いて、決算をまたいでしまった…。」

「外注費だけは支払ったけど、まだ売上が立たない…。」

システム開発、ウェブ制作、コンサルティング、大規模な製造プロジェクトなど、完了までに時間がかかる業務を抱える経営者にとって、決算期をまたぐプロジェクトの経理処理は頭を悩ませる問題です。

「まだ売上が立っていないのに、支払った外注費は経費にできるのか?」

「今期の利益が減ってしまうのでは?」

結論から言うと、決算期末時点でまだ完了していないプロジェクトのために支払った外注費や材料費は、今期の経費にはできません。

この記事では、決算期をまたぐプロジェクトの会計処理について、「収益費用対応の原則」という考え方を軸に解説します。

正しい処理を理解し、会社の経営状態を正確に把握するためのヒントをお伝えします。

1・ なぜ計上できない?決算期をまたぐプロジェクトの経費

決算期末時点でまだ完了していないプロジェクトの経費は、一時的に「資産」として扱います。

これは、会計の基本的な考え方である「収益費用対応の原則」に基づくためです。

この原則は、「ある期間の収益(売上)と、その収益を得るためにかかった経費は、できる限り同じ期間に計上しなければならない」というルールです。

もし、プロジェクトが完了していないのに外注費だけを経費に計上してしまうと、次のような問題が起きてしまいます。

正確な利益がわからない:売上がゼロなのに経費だけが発生し、赤字に見えてしまう。

誤った経営判断:実際には収益を生むはずの経費が計上され、会社の収益性が低く見えてしまう。

これを防ぐため、支払った経費は一時的に「資産」として扱い、プロジェクトが完了したタイミングで改めて経費に振り替える処理を行います。

2・解決策は「仕掛品」。経費を資産に計上する処理

決算期をまたぐプロジェクトのために支払った経費は、「仕掛品」や「未成工事支出金」といった勘定科目を使って、経費ではなく資産として計上します。

【勘定科目】

仕掛品(しかかりひん):製造業の原材料費や、システム開発の外注費など

未成工事支出金:建設業などの材料費や外注費

【仕訳の例】

決算期末までに、プロジェクトの外注費を100万円支払った場合

    借方   /    貸方

仕掛品 100万円 /  普通預金 100万円

このように処理することで、経費は翌期以降に繰り越され、今期の利益が不当に減ることはありません。

3・仕掛品に関する注意点

仕掛品は、一般的に業務委託費や仕入れなどの経費を分けずに、製造原価の要素として含めて計上します。

これは、仕掛品がまだ完成していない製品であり、その製造に要したすべてのコストを一つの資産として捉えるためです。

製造業で例えると、製造途中の部品がまさにこの仕掛品に該当します。

また、仕掛品は決算期をまたがない場合でも使用します。
仕掛品は、製造にかかった経費を、その製品が販売されたタイミングで初めて計上するために必要な勘定科目です。
これにより、売上と経費が正しく対応し、期間ごとの正確な利益を計算することができます。

たとえ製造期間が数日であっても、製品が完成して売れるまでは、その製造に費やされた材料費や人件費、外注費などは、一時的に「仕掛品」という資産として扱われます。

この会計処理は、企業の財政状態や経営成績を正しく把握するために、期をまたぐかどうかにかかわらず適用されます。

4・プロジェクト完了時に「売上原価」に振り替える

プロジェクトが完了し、無事に取引先に引き渡した時点で、ようやく売上と経費を計上します。この時、「仕掛品」として計上していた資産を「売上原価」として経費に振り替えます。

【仕訳の例】

翌期にプロジェクトが完了し、150万円の売上を計上した場合

    借方    /    貸方

売掛金 150万円  /  売上高 150万円 

売上原価 100万円 /  仕掛品 100万円

このように、売上と対応する経費を同じ会計年度に計上することで、会社の一連の経営活動を正しく表現できるのです。

5・プロジェクト長期化によるキャッシュアウトに注意!

今回は会計処理をメインにご説明しましたが、プロジェクトの長期化は、資金繰りの観点からも注意が必要です。

プロジェクトが長期化すればするほど、会社のキャッシュフローは悪化します。

本来3ヶ月で完了するはずだったプロジェクトが6ヶ月に延びた場合、予定していた売上金が手に入らない期間が長くなります。

この間も、仕入れや人件費などの支払いは発生し続けるため、キャッシュアウトのリスクが高まります。

特に、決算期をまたぐプロジェクトは大きなリスクを伴います。

決算後は、顧問税理士への決算料の支払い、そして法人税の納付など、まとまったキャッシュが会社から出ていく時期です。

この重要な時期に、予定していたプロジェクトが完了しないことは、資金繰りをさらに逼迫させることになります。

プロジェクトを長期化させないことは、円滑な事業運営において最も重要な経営判断の一つです。

プロジェクトが長期化しやすい事業では、キャッシュアウトのリスクに備え、融資を検討しておくことが重要です。

まとめ:正確な経理が、未来の経営を支える

決算期をまたぐプロジェクトの会計処理は、会社の財務状況を正しく把握するために非常に重要です。

正しい知識がなければ、「今期の利益が減るのでは…」と不必要な不安を感じたり、逆に誤った処理をして税務調査で指摘を受けたりするリスクがあります。

この処理は少し複雑ですが、決して難しいものではありません。

もしご不安があれば、いつでもお気軽にお声掛けください。

リスク対策の融資も含めた経営全体の相談に対応いたします。

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税理士 山本聡一郎
山本聡一郎税理士事務所 代表税理士。1982年7月生まれ。名古屋市中区錦(伏見駅から徒歩3分)にてMBA経営学修士の知識を活かして、創業支援に特化した税理士事務所を運営。クラウド会計 Freeeに特化し、税務以外にも資金調達、小規模事業化持続化補助金などの補助金支援に力を入れている。

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