ケーキ屋・お好み焼き屋は本当に潰れない?小麦粉の原価率とビジネスの実態

「小麦粉ビジネスは儲かるから潰れない」という話を聞いたことがあるかもしれません。

これは、主要原材料である小麦粉の原価が非常に安いという事実に基づく通説です。

しかし、これは大きな錯覚であり、実際には数多くの店が経営難に陥っています。

成功している「小麦粉ビジネス」がなぜ潰れないのか、それは原価の低さではなく、原価率の周辺にあるコストやビジネスモデルの仕組みといった、多面的な戦略によって成り立っているからです。

1. 「潰れない」通説の根拠と経営者が考えるべき真のコスト

① 通説の根拠:小麦粉の安さとその限界

小麦粉の原価は最終製品の価格に占める割合が低いため、全体的に原価率が低いという錯覚を生みました。

しかし、経営者が本当に目を向けるべきは、原価率そのものではなく、その変動リスクと周辺コストです。

② 見落とされがちな周辺コスト(数字例で比較)

ケーキやお好み焼きの真のコストは、小麦粉そのものではなく、高価な副材料や非効率な人件費、そして廃棄ロスによって決定されます。

※下記数字は概算です。割合はそれぞれの店舗により異なります。

項目 ケーキ屋のコスト構造 お好み焼き屋(セルフ型)のコスト構造
主要原価率 35%~45%(バター、卵、フルーツなど高価) 25%~35%(肉、魚介、キャベツなど)
人件費率 25%~35%(熟練パティシエが必要) 15%~20%(アルバイト主体)
周辺コスト 廃棄ロス率:5%~10% 廃棄ロス率:2%~5%
合計コスト 65%~90%に達する可能性があり、変動リスクが高い 42%~60%に収まりやすく、構造が安定している

この数字からわかるように、原価率が低いと思われがちなビジネスでも、廃棄ロスと人件費が加われば、売上の大半がコストに消えるリスクがあるのです。

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2. ケーキ屋はなぜ潰れない?人件費と廃棄ロスを乗り越える差別化

ケーキ屋は、高い専門性を持つため、高い原価と人件費を確実に回収するための戦略が必須であり、安易に潰れないわけではありません。

① 製造の難しさ:廃棄ロスと需要予測の壁

ケーキは生菓子であり、日持ちがしないため、製造予測ミスが経営を最も圧迫する要因となります。

イベント特需の波をいかに正確に予測し、廃棄と臨時人件費のバランスを取るかが生命線です。

② 付加価値の最大化:高単価を可能にするイベント性

高いコストを回収しなぜ潰れないかというと、ケーキが持つ付加価値を最大化しているからです。

ケーキは単なる食べ物としての価値だけでなく、「誕生日のお祝い」や「特別な日の贈り物」といったイベントの象徴としての意味を持ちます。

この付加価値があるからこそ、高い単価を設定し、高コストを回収できるのです。

ターゲット設定

「日常使いのケーキ屋」(単価500円)なのか、「特別な日の高級店」(単価1,000円)なのかで、材料の質、パティシエのスキル、店舗デザイン、全てが変わります。

③ リスク分散戦略:焼き菓子と販路の多角化

利益率を高め、廃棄ロスリスクを抑えるために、リスク分散戦略が重要です。

廃棄リスクの分散

焼き菓子や冷凍ケーキ(日持ちする商品)を増やすことで、生菓子の廃棄リスクを分散させ、事業の安定性を高めます。

販路の構築

焼き菓子や冷凍ケーキはネット販売も可能なため、店舗販売以外の販売ルートを構築することで、収益を安定化させることができます。
特に、食品系のEC市場が大きく拡大していることから、ネット販売は現代の経営戦略において不可欠な販路となっています。

●参照リンク:令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました

食品系のEC市場拡大を裏付ける資料として
https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250826005/20250826005.html

3. お好み焼き屋は儲かる?人件費効率と品質で勝つ仕組み

お好み焼き屋は、儲かる仕組みを構築することが「潰れない店」への近道です。

これは、単なる小麦粉の原価の安さではなく、サービスレベルと価格帯のポジショニングによって決まります。

① ポジショニング:セルフ型 vs 専門サービス型

「儲かる」構造を作るためには、明確なポジショニングが必要です。

ポジション セルフサービス型(低コスト戦略) 専門サービス型(高単価戦略)
店側サービス お客様自身が焼く。 店員が席で焼き上げるサービスを提供。
価格帯 低~中価格帯。 単価を下げ、回転率で勝負。 中~高価格帯。 食材やサービス付加価値で勝負。
人件費効率 アルバイト主体で人件費を劇的に抑制。 熟練スタッフによる高付加価値で人件費を回収。

② 収益性を高める「仕組み」の差別化

「儲かる」店は、アルコール飲料やサイドメニューなど、主力商品よりも原価率が低く利益率の高い商品で客単価を引き上げる仕組みを構築しています。

周辺コストの転換

アルコール飲料やサイドメニューは、お好み焼きよりも原価率が低く、客単価を引き上げる高利益商品です。

例えば、お好み焼きで利益率20%でも、アルコールで利益率60%を確保できれば、客単価5,000円に対して利益率35%を目指せる仕組みになります。

結論:成功は「原価率の数字」の奥にある

「小麦粉ビジネス」の成功は、「小麦粉の原価が安い」という幻想に依存するのではなく、原価率の周辺にあるコストやリスクをどう管理するかにかかっています。

安易に「原価が低いから潰れない」と考えるのは危険です。

経営者が目を向けるべきは、単なる原価率ではなく、多角的な視点から数字を分析し、事業全体のリスクを低く抑えることです。

人件費効率の視点

熟練を要するケーキ屋では高い人件費を回収できるだけの差別化ができているか。

お好み焼き屋では、ポジショニング(セルフ型か専門型か)に応じて人件費を適切に管理できているか。

廃棄ロスの管理

日持ちしない商品(ケーキ)の製造予測能力、または保存が効く商品(お好み焼きの主材料)への依存度。

といった、ビジネスモデル全体のリスクを管理する戦略こそが、「潰れない店」になるための唯一の戦略です。

まとめ:複雑な原価やコストの計算は税理士にお任せください

今回は小麦粉ビジネス(ケーキ屋・お好み焼き屋)を例に、原価率が低いと言われている飲食ビジネスの実態を解説しました。

本コラムでお伝えしたかったのは、起業の際、どの業種であっても「原価率が低い=儲かる」と安易に考えてはいけないということです。

事業成功の秘訣は、主要原価だけでなく、人件費や廃棄ロスといった周辺コストに目をやり、全体を通した業務効率化やリスク分散の仕組みを構築することにあります。

この仕組みさえ確立できれば、多少原価率が高くても、収益性の高いビジネスを成功させることが可能です。

しかし、これらの複雑な原価率の計算、周辺コストの正確な把握、そして全体を見据えた事業計画の設計は、専門知識なしに行うのは困難です。

当事務所では、飲食業や小規模ビジネス特有のコスト構造を理解し、貴社のビジネスモデルに合わせた最適な財務戦略をサポートいたします。

原価率や周辺コストの計算、そして「潰れない」ための事業計画設計でお悩みの際は、ぜひ一度当事務所にご相談ください。

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