知らないと恐ろしいことに?知っておきたい役員報酬・賞与のルール

今回のテーマは「役員報酬と役員賞与」です。

役員報酬についてはコラムを過去に掲載しておりますが、今回は、さらに踏み込んだ解説をしていきます。

知らないと恐ろしいことに 知っておきたい役員報酬賞与のルール

世の中には節税テクニックや情報が溢れていますが、その中でも「これだけは外せない」というクリティカルなものも多くあります。それらを見落としてしまうことでかなりの痛手を被ることが実際にあるのです。

そこで今回は、法人の役員報酬・役員賞与で絶対に知っておきたいルールをお伝えしていきます。これは、法人規模は関係なく、全ての社長に知っていただきたい大切なことです。

従業員がいる法人の場合「会社の信用に関わる」ということで、厳格なルールを定めるところは多くありますが、一人社長の場合、「自分一人だから大丈夫」と、役員報酬のルールについて軽く考えてしまっている方も少なくありません。

けれども、役員報酬・賞与の支給については、税法上の厳格なルールを守る必要があります。これは健全な資金繰りをする上で避けて通ることはできません。

それでは、これから特に重要な3点についてお伝えしていきます。

なお、弊所が運営するYou Tubeチャンネルにおいて、役員報酬の金額についてまとめた動画がありますので、チェックしていただけると幸いです。



1 役員報酬の種類とルールを正しく理解する

まずは、役員報酬の種類と、それぞれのルールを正しく理解するようにしましょう。

以前コラムでも紹介しましたが、役員報酬・役員賞与それぞれの支給額・支給日については、定められた期限内に決定しなければいけません。

株主総会を開き、役員報酬や賞与について決議して、株主総会議事録を作成します。また、役員賞与に関しては税務署に事前に届出をしておかないと損金扱いにできません。

損金扱いできる役員報酬は3種類あります。

「定期同額給与」

「事前確定届出給与」

「業績連動給与」

①定期同額給与とは

「定期同額給与」というのは、毎月支給される「お給料」のことです。

役員報酬の支給額・支給日は「事業年度ごとに決定する」というルールがあるため、1度決めたら来期まで原則として変更はできません。

変更がないからと、そのまま金額を変えずに支給することは禁物です。なぜなら、定期的に社会保険料は改定されるためです。そのような時は、給与ソフトなどで管理することをおすすめします。

また、設立1年目で支給額・支給日を初めて決定する場合や、2年目以降で前期の報酬内容を変更する場合は、事業年度開始(期首)から3か月以内に株主総会で決議する必要があります。税務署への事前の届出は必要ありません。

②事前確定届出給与とは

「事前確定届出給与」とは役員賞与(ボーナス)のことです。あらかじめ税務署に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出することで損金扱いにできます。

届出の期限は新設法人は2ヶ月以内ですが、2期目以降の法人に関しては、株主総会で決議があった日から1ヶ月以内、または事業年度開始日から4ヶ月以内のどちらかになります。

③業績連動給与とは

「業績連動給与」とは、株式を公開している上場企業のみ対象となるものなので、ここでは「このようなものがある」ということだけ知っておいていただければと思います。



2 役員報酬・役員賞与の支給日について

「給与の支給日」について、従業員がいる会社の場合は、信用に関わることなので「何が何でも支給日を守る」と強く意識されていますが、一人社長の場合、どうしても「忙しい・手続きを忘れてしまう」などの理由で、報酬の支給日が毎月バラバラになってしまうケースも少なくありません。

定期同額給与 の支給日はズレても問題ない?

「定期同額給与」の支給日に関しては厳格には定まっていないため、支給日が一日ズレたところで、問題にはなりません。資金繰りの関係で、その月に自分の給与が払えないということもあるでしょう。そんな時は未払計上して、後の月で精算するなど、帳簿上しっかり辻褄が合っていれば大丈夫です。

けれども、月々のお給料を不規則に支給するというのはあまり好ましい状態ではありません。

スタートアップで資金繰りに慣れていない経営者も多いかとは思いますが、可能な限り支給日は守るようにしましょう。そのためにも税理士と頻繁に資金繰りについて話し合いをすることが大切です。

事前確定届出給与 の支給日は必ず守ること

「事前確定届出給与」は、税務署に届出た支給日を守らなくてはいけません。

さらに、支給日が2回ある場合は、「両方とも支給日を守っていなければどちらも損金にできない」というかなり厳しいルールがあります。

銀行の営業日の関係で支給日が前後してしまった場合も、損金として認められない場合があります。つまり、届出をする際に事前に支給日の曜日にも注意を払わなくてはいけないということです。うっかり土日祝に設定してしまったために、「支給日にお金を動かせない」ということがないようにしましょう。(帳簿上の日付が重要なのです。)

かなり厳しく感じられるかも知れませんが、これらのルールは役員の不正な報酬の水増しを防止するために、とても大切なものです。



3 役員報酬・役員賞与の減額と不支給決定について

別コラムでも解説しましたが、業績悪化による場合は、役員報酬の減額や、役員賞与の不支給は可能です。しかし、その際はどちらも臨時株主総会で決議しなくてはいけません。

また、減額や不支給が認められるのは、著しい業績の悪化とさらに第三者である利害関係者への支払いなど、役員給与を減額せざるを得ない事情がある場合に限ります。

・役員報酬を減額しなければ取引先への支払いが滞り会社の信用問題に関わる

・従業員の給与や業務委託への報酬を支払うために、役員賞与を不支給にしたい

上記のようなケースであれば減額・不支給は認められます。

しかし、単に「計画した数値に達していない」というだけでは減額・不支給は認められません。

また、役員賞与の不支給決定は必ず支給日前に行うようにしましょう。

支給日前の不支給決定と、支給日を過ぎてからの不支給決定では課税ルールが違うからです。

ここからは少し恐ろしい話をします。



うっかり支給日を過ぎたことによるペナルティとは

事前に役員賞与の不支給を決定した場合は、支給そのものがなくなるため、支給されない個人は当然所得税の課税はされません。しかし、支給日以降に不支給の決定をした場合は、個人も課税されます。それは支給日で課税関係が成立するためです。

つまり、会社の資金繰り都合で役員賞与は支給されない(できない)ので実際はお金を受け取っていないにも関わらず「お金を受け取った」と扱われ、同額分の所得税が課税されるということです。

もちろん、個人が課税されたとしても、法人側が同額の控除を受けられる訳ではありません。

サラリと書きましたが、想像してみるとかなり恐ろしいことですよね。

そのようなことを絶対に起こさないためにも、ルールをしっかり守って報酬の管理をしていきましょう。

過去の役員報酬に関するコラムはこちら

マイクロ法人・一人社長の役員報酬額を決定する時の3つのポイント



資金繰りは、「法人設立を決めた瞬間」から始まります

法人設立当初は、資金繰りの不安から「可能な限り支出を減らしたい」と考え、税理士との顧問契約を先伸ばしにされる方がいらっしゃいます。設立から半年後に顧問契約を結ばれる方や、決算直前まで顧問契約をされないという方など様々です。

けれども、資金繰りとは、法人設立前の事業計画や、設立時の届出も含めて既に始まっているのです。役員報酬・賞与の対策は最初が肝心です。スタートをベストな形で切ることができれば、税法が定めた厳格なルールも恐れる必要はありません。

法人をこれから設立される方も、「法人設立をしたけれど、まだ税理士と顧問契約をしていない」という方も、早急に信頼できる税理士と顧問契約を結んでいただくことをお奨めします。

「相談できる税理士が見つかっていない」という方は、ぜひ一度、山本聡一郎税理士事務所にご相談ください。

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山本聡一郎税理士事務所では、ホームページにおけるコラムによる情報発信のみならず、2023年10月よりYou Tubeチャンネル【創業支援】税理士の山さんをスタートしております。

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税理士 山本聡一郎
山本聡一郎税理士事務所 代表税理士。1982年7月生まれ。名古屋市中区錦(伏見駅から徒歩3分)にてMBA経営学修士の知識を活かして、創業支援に特化した税理士事務所を運営。クラウド会計 Freeeに特化し、税務以外にも資金調達、小規模事業化持続化補助金などの補助金支援に力を入れている。
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