利益が残らないのはなぜ?売上高販管費率で見る経営

順調に業績が伸びているはずなのに、なぜか手元にお金が残らない。売上が増えているのに、思ったよりも利益が少ない。

もしかしたらそれは、売上高販管費率が高いからかもしれません。

経営の健全性を把握するためには、お金の流れを正確な数字で管理することが不可欠です。その中でも特に重要なのが「売上高販管費率」です。この比率は企業の売上高に対する販売費用と一般管理費用の割合を示し、経営状況を評価する上で重要な手がかりとなります。

資金が回っている間は、何となく問題がなさそうに見えても、様々な角度から数値化して分析をすると改善すべき点は見えてくるものです。

「売上高販管費率」の計算はそこまで難しくありません。

自社経営状況の把握は決算書を読むことも大切ですが、せっかくなら年に一度と言わず、数ヶ月ごとに「売上高販管費率」を確認してみましょう。常に自社の経営に改善点がないかチェックすることで、より経営の健全性を高めることができます。

売上高販管費率とは

売上高販管費率は、企業の売上高に対する販売費用と一般管理費用の割合を示す比率です。「販管費率」とも呼ばれます。販管費とは「販売費及び一般管理費」の略称です。販売費及び一般管理費とは、事業活動で発生した販売業務や管理業務の経費のことを指します。

使った経費については会計ソフトの集計機能を使ったり、損益計算書(P/L)で確認できます。これは企業がどれだけの売上高を販売や管理に費やしているかを示す重要な指標です。

高い販管費率は、コストが過剰であることや効率性の低さを示しているということです。

販売費及び一般管理費(販管費)は2つに分けられる

販売費及び一般管理費は主に2つに区分されます。

・販売費用

これは直接販売に関わる費用です。広告費用や営業員の歩合給与、販売手数料や商品の輸送費など販売促進にかける費用などが該当します。売上によって変動するのが特徴です。

・一般管理費用

企業全体の運営に関わる費用で、販売に関わるものではありません。こちらは、売上に関係なく毎月一定であることが特徴です。家賃・水道光熱費や保険料・社員の人件費・福利厚生費などがこちらに該当します。

販売費及び一般管理費(販管費)はこのように正式には2つに区分されますが、損益計算書(P/L)

では「販売費及び一般管理費」として合わせて記載されますので、同じく会社が売上を出すために使う費用だと認識しておけば問題ありません。

ここでの注意点は、商品の代金(売上原価)は販管費には含まれないということです。

販売管理費も売上の増減によって変動する特徴がありますが、一番売上増に従って増えていくのは売上原価になります。ここでは、売上原価は販管費の計算には入らないことだけ覚えておいてください。

販管費を下げるには、テレワークを導入して交通費を削減したり、オフィスを移転して家賃を下げるなど固定費を減らすことが有効です。より費用対効果の高い広告宣伝を行ったり、接待交際費を見直したり、車両費を削減するなどでも効果が期待できます。

売上高販管費率の計算方法

売上高販管費率は以下の式で計算されます。

売上高販管費率 = 販売費および一般管理費 ÷ 売上高 × 100%

売上高販管費率は一般的に、低いほど良いとされますが、業界や企業の特性によって適切な水準は異なります。

ぜひ一度ご自身の売上高販管費率を計算してみてください。

業界ごとの売上高販管費率の目安

業界ごとに適切な売上高販管費率の目安は異なりますが、一般的には同業他社との比較や過去の自社のデータを参考にします。

小売業や飲食業では販管費率が比較的高くなる傾向がありますが、製造業やソフトウェア開発などの技術集約的な業種では販管費率が低いことが一般的です。

自社の事業や規模での適切な売上高販管費率を知りたいという場合は、顧問税理士に聞くことで

目安になる数字を教えてもらえます。

ぜひ一度計算をしてみて、同業他社や業界平均と比べてみてください。

もちろん同業他社の数値や業界平均が正解というわけではありませんが、一つの基準とすることで現在の経営状況がよくお分かりになるかと思います。

けれども売上高販管費率は、ただ低ければ無条件に良いということでもありません。特に販売費は業績を伸ばす要となる費用なので、下げることばかりに注力するのではなく計画的に使うことを重要視するようにしましょう。

経済産業省HP「3.中小企業の販管費比率」

正しい経営状態を把握しよう

経営状況を正しく把握し、適切な対策を講じるためには、経営者本人が売上高販管費立について正しく理解して、定期的に客観的数字を確認して自己評価をする必要があります。

経営は常に改善の繰り返しです。売上高販管費率は数字で分かりやすく経営の改善点を教えてくれるメリットがありますので、ぜひ年一度の決算時だけでなく、数ヶ月に1回は見直しをしてリアルタイムな対応を心がけるようにしましょう。

その際は、税務や経営に関する知識と経験を持つ税理士のアドバイスを受けることで、より確かな経営判断を行うことが可能になります。これは事業を伸ばす上で重要なことです。

一度に全てを改善することは困難ですが、固定費の見直しや節税対策など、少しずつ取り組むことで、販管費全体を下げて経営状況の改善に繋げることができます。

今回は「売上高販管費率」をテーマとしましたが、経営者が把握すべき数字はまだ他にもたくさんありますので、このコラムを読みながら少しずつ学んでいただければ幸いです。

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税理士 山本聡一郎
山本聡一郎税理士事務所 代表税理士。1982年7月生まれ。名古屋市中区錦(伏見駅から徒歩3分)にてMBA経営学修士の知識を活かして、創業支援に特化した税理士事務所を運営。クラウド会計 Freeeに特化し、税務以外にも資金調達、小規模事業化持続化補助金などの補助金支援に力を入れている。
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