起業を考えるとき、「誰に、何を、どうやって売るか」というターゲット設定は、ビジネスの成否を分ける最も重要な要素です。
中でも、ビジネスの相手が「企業」か「個人」かによって、事業のあらゆる側面が大きく変わります。
本記事では、BtoB(Business to Business)とBtoC(Business to Consumer)のそれぞれの特徴と、集客、資金繰り、価格設定における違いを税理士の視点から徹底解説します。
このページの目次
1. BtoB(法人向けビジネス)の特徴
BtoBビジネスは、企業を顧客とする事業モデルです。
ITサービス、オフィス用品、コンサルティング、物流サービスなどがこれに該当します。
メリット
取引単価が高い
一度の取引で大規模な契約につながることが多く、高い売上を期待できます。
継続的な取引になりやすい
企業間の信頼関係が築ければ、長期的な取引やリピート契約に繋がりやすく、売上が安定しやすい傾向にあります。
価格競争に陥りにくい
導入後のサポートや専門的な知識、企業間の信頼が重視されるため、単純な価格競争になりにくいと言われています。
デメリット
契約までの時間が長い
複数の部署の承認が必要となるため、商談から契約までの期間が長くなります。
売上規模が限定的
顧客数が限られるため、急激な売上拡大は難しい場合があります。
2. BtoC(個人向けビジネス)の特徴
BtoCビジネスは、個人を顧客とする事業モデルです。
飲食、アパレル、美容室、小売業などがこれに該当します。
メリット
購買決定までの時間が短い
個人の意思決定で商品が購入されるため、契約までの時間が短く、即決もあり得ます。
市場規模が大きい
顧客となる個人が多いため、口コミやSNSなどで一気に広まれば、短期間で大きな売上を上げられる可能性があります。
価格設定の自由度が高い
ブランド力やコンセプト、希少性など、付加価値によって高単価での販売が可能です。
デメリット
取引単価が低い
個人の消費が主体のため、一度の取引単価は低くなりがちです。
競合が多い
参入障壁が低いため、多くの競合と価格やサービスで差別化を図る必要があります。
3. 集客方法の違い
BtoBとBtoCでは、顧客の購買行動が異なるため、集客方法も大きく変わります。
BtoB の集客方法
展示会、セミナー
企業の担当者と直接商談する機会を得られます。
専門メディアでの広告、記事
業界の担当者が情報収集するメディアに特化してアプローチします。
Webサイト(問い合わせフォーム)
サービスの詳細を網羅的に掲載し、興味を持った企業からの問い合わせを促します。
インサイドセールス
電話やメールでアポイントを取り、商談に繋げます。
BtoC の集客方法
SNSマーケティング
Instagram、X(旧Twitter)などでブランドのコンセプトや商品の魅力を発信し、ファンを獲得します。
リスティング広告、ディスプレイ広告
GoogleやYahoo!などで、商品の購買意欲が高いユーザーに広告を表示させます。
口コミ、レビューサイト
ユーザーのリアルな声が購買に大きく影響するため、口コミサイトへの掲載やキャンペーンが重要です。
4. 資金繰り・キャッシュフローの違い
BtoBとBtoCでは、決済方法が異なるため、キャッシュフローの特性も大きく異なります。
BtoB の資金繰り
後払い・請求書払い
多くの取引が後払い(掛け払い)で行われます。
売上は発生しても、入金まで1~2ヶ月かかることが一般的です。
そのため、売上が増えるほど、入金までの間に資金が不足する「黒字倒産」のリスクが高まります。
キャッシュフローの改善策
支払いを早める「ファクタリング」や、売掛金担保の融資などを活用して、資金不足を補う必要があります。
BtoC の資金繰り
即時決済
現金、クレジットカード、電子マネーなど、決済と同時に代金が回収されるため、キャッシュフローが安定しやすいです。
多額な仕入れ費用
商品を販売する場合、仕入れや在庫管理に多額の先行投資が必要となる場合があります。
価格設定の柔軟性
消費者の購買意欲を刺激するため、セールやキャンペーンを頻繁に行い、価格を変動させる戦略が一般的です。
5. 消費税・インボイス制度の注意点
BtoB ビジネスの場合
顧客である企業は、支払った消費税を控除(仕入税額控除)したいと考えます。
そのため、売上規模が1,000万円以下(免税事業者)であっても、企業と取引を続けるためには、適格請求書発行事業者(インボイス)として登録せざるを得ないケースがほとんどです。
登録しない場合、取引自体を打ち切られたり、値下げを要求されたりするリスクがあります。
BtoC ビジネスの場合
顧客が一般消費者であるため、消費者は支払った消費税の控除を必要としません。
したがって、売上規模が1,000万円以下の場合は、インボイス登録による影響はBtoBほど大きくありません。
登録せずに免税事業者のままでいるという選択肢が現実的です。
まとめ:あなたの事業はBtoB?それともBtoC?
BtoBとBtoCは、それぞれ異なる強みと弱みを持っています。
安定した売上と高い単価を求めるならBtoB
長期的な取引で安定した事業を築けます。ただし、契約までの粘り強い営業力と、キャッシュフロー管理が不可欠です。
市場の広がりと即時性を求めるならBtoC
多くの顧客にリーチし、短期間で売上を伸ばす可能性があります。ただし、激しい競争と価格変動への対応が求められます。
どちらの事業モデルにも税務・会計上の注意点があります。
特に、BtoB事業で発生しやすい資金繰りの問題や、BtoC事業での在庫評価、消費税計算など、専門的な知識が必要です。
起業前に、ご自身のビジネスモデルに合った最適な選択をするためにも、専門家である税理士にご相談ください。
